「中村せん・りつ」の版間の差分

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== 概要 ==
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[[中村主水]]([[藤田まこと]])の家族であり、彼と合わせて中村家と呼称されることもある。婿で立場の弱い主水に対して、婿いびりを行うのが恒例のネタとなっており、仕事人シリーズにおいては、基本的に各回の最後は中村家のシーンの[[ストップモーション]]で終わるという構成(つまりオチを担当)になっていた(ただし『[[必殺仕事人2009]]』ではその役回りは[[東山紀之]]が当主を演じる渡辺家に変更された)。当初はあくまで脇役であったが、『[[暗闇仕留人]]』でレギュラー出演となり、ホームドラマとしての要素が強くなった『[[必殺仕置屋稼業]]』で後のシリーズへの原型がほぼできあがった。
[[中村主水]]([[藤田まこと]])の家族であり、彼と合わせて中村家と呼称されることもある。婿で立場の弱い主水に対して、婿いびりを行うのが恒例のネタとなっており、仕事人シリーズにおいては、基本的に各回の最後は中村家のシーンの[[ストップモーション]]で終わるという構成(つまりオチを担当)になっていた(ただし『[[必殺仕事人2009]]』ではその役回りは[[東山紀之]]が当主を演じる渡辺家に変更された)。当初はあくまで脇役であったが、『[[暗闇仕留人]]』でレギュラー出演となり、ホームドラマとしての要素が強くなった『[[必殺仕置屋稼業]]』で後のシリーズへの原型がほぼできあがった。

必殺シリーズのプロデューサーを務めた[[山内久司]]は、シリーズ第1作『必殺仕掛人』の構想時から、シリーズのホームドラマ要素を強く望んでいた<ref name="kiru">必殺を斬る</ref>。中村家は、その代表例であり、山内はせんとりつを「必殺の一番の特徴」と評している<ref name="asahi">[http://asahi.co.jp/hissatsu/ 朝日放送「必殺シリーズ作品総編集」極私的回想録]</ref>。暗殺者を主題とする作品にあって、舞台設定とは正反対のコメディタッチの中村家のやり取りは、[[深作欣二]]や[[工藤栄一]]など初期シリーズの監督達からはしばしば作品の完成度を損なうものとして拒絶されたが、山内は押し通したという。山内は中村家のやり取りがまったく無駄なものであることを認めつつ、シリーズが成功を収め、長く人気を得られたのは、このホームドラマ要素であると述べている<ref name="asahi" /><ref name="kiru" />。


外出も含めて、基本的に2人で行動しており、登場シーンも2人一緒が圧倒的に多い。
外出も含めて、基本的に2人で行動しており、登場シーンも2人一緒が圧倒的に多い。
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先代・中村主水も婿養子であり、せんとの間にりつ・たえ(妙心尼)・あや(糸井あや)の娘3人と男子1人をもうける。そして先代は失踪する(せん達の婿いびりに耐えられなくなったのが原因と思われる描写がある、『必殺仕事人』第12話)。せんはその後、女手一つで子供たちを育てたが、跡取りになる男子が早死にしたため、りつの娘婿として遠縁にあたる北大路主水(現・中村主水)が中村家当主として迎えられた。
先代・中村主水も婿養子であり、せんとの間にりつ・たえ(妙心尼)・あや(糸井あや)の娘3人と男子1人をもうける。そして先代は失踪する(せん達の婿いびりに耐えられなくなったのが原因と思われる描写がある、『必殺仕事人』第12話)。せんはその後、女手一つで子供たちを育てたが、跡取りになる男子が早死にしたため、りつの娘婿として遠縁にあたる北大路主水(現・中村主水)が中村家当主として迎えられた。


『[[必殺仕事人2010]]』で、主水に西方赴任の命<ref>「西方」は必殺シリーズでしばしば見られる死の暗喩であり、『2010』撮影直前に主水役の[[藤田まこと]]が亡くなったことからの措置とその含意である。</ref>が下ったことで、江戸を去った。
『[[必殺仕事人2010]]』において、主水に下された命により江戸から中村家は去っている<ref name="butaiura">中村家に貼られた引っ越しの張り紙にある「菊」「西国への異動」は死を暗示させる描写・比喩として折々に使用されており、藤田の死去に因縁づけているのではないかと思われる。</ref>。


== 中村せん ==
== 中村せん ==

2012年7月22日 (日) 13:53時点における版

必殺シリーズ > 中村せん・りつ

中村せん(なかむら せん)と中村りつ(なかむら りつ)は、必殺シリーズの登場人物である。同シリーズの主要な登場人物である中村主水の妻、およびその義母。義母であるせんを菅井きんが、妻であるりつを白木万理が演じた。

このページでは中村家に関しても解説する。

概要

中村主水藤田まこと)の家族であり、彼と合わせて中村家と呼称されることもある。婿で立場の弱い主水に対して、婿いびりを行うのが恒例のネタとなっており、仕事人シリーズにおいては、基本的に各回の最後は中村家のシーンのストップモーションで終わるという構成(つまりオチを担当)になっていた(ただし『必殺仕事人2009』ではその役回りは東山紀之が当主を演じる渡辺家に変更された)。当初はあくまで脇役であったが、『暗闇仕留人』でレギュラー出演となり、ホームドラマとしての要素が強くなった『必殺仕置屋稼業』で後のシリーズへの原型がほぼできあがった。

必殺シリーズのプロデューサーを務めた山内久司は、シリーズ第1作『必殺仕掛人』の構想時から、シリーズのホームドラマ要素を強く望んでいた[1]。中村家は、その代表例であり、山内はせんとりつを「必殺の一番の特徴」と評している[2]。暗殺者を主題とする作品にあって、舞台設定とは正反対のコメディタッチの中村家のやり取りは、深作欣二工藤栄一など初期シリーズの監督達からはしばしば作品の完成度を損なうものとして拒絶されたが、山内は押し通したという。山内は中村家のやり取りがまったく無駄なものであることを認めつつ、シリーズが成功を収め、長く人気を得られたのは、このホームドラマ要素であると述べている[2][1]

外出も含めて、基本的に2人で行動しており、登場シーンも2人一緒が圧倒的に多い。

それぞれの名前の由来は「戦慄」より。なお、菅井・白木共に必殺シリーズ終了直前までこのことに気付かなかったと言う。

中村家

代々、江戸町奉行所の同心を勤めてきた家柄である。現当主・中村主水は娘婿である。先代(せんの夫)の名前も中村主水であるが、当代との直接的な関係性は描写されていない。先々代当主の名も中村主水である。

先代・中村主水も婿養子であり、せんとの間にりつ・たえ(妙心尼)・あや(糸井あや)の娘3人と男子1人をもうける。そして先代は失踪する(せん達の婿いびりに耐えられなくなったのが原因と思われる描写がある、『必殺仕事人』第12話)。せんはその後、女手一つで子供たちを育てたが、跡取りになる男子が早死にしたため、りつの娘婿として遠縁にあたる北大路主水(現・中村主水)が中村家当主として迎えられた。

必殺仕事人2010』で、主水に西方赴任の命[3]が下ったことで、江戸を去った。

中村せん

中村家先々代当主・中村主水の娘。同家先代当主・中村主水の妻。現当主・中村主水の妻・中村りつの母であり、主水の義理の母、姑に当たる。

早くに夫を亡くし、女手一つで子供たちを育てあげた。娘婿の中村主水に対しては、あまりにも怠惰な生活ぶりに手を焼いている。このだらしない娘婿を「ムコ殿!」(初期のシリーズでは「主水殿」と呼ぶこともあった)と叱責し、長々と中村家の由緒云々が語られ、(せんから見て)立派な先祖達の言行と主水の失敗を比較するのが決まったパターンである。もっとも、せんからすれば、主水に中村家の当主として立派に振舞ってほしいとの思いから行われる叱責である(主水の裏稼業が露見しそうになり、せんとりつを連れて江戸から逃げようと家に帰った折、せんが主水を頼りにしていることを偶然聞いてしまい、逃げるのを止めて戦うことを決意するエピソードも存在する)。

演じる菅井きんにとっては当たり役となったが、せんのイメージが強すぎて、娘の縁談が破談することを恐れ、『新・必殺仕置人』のクランクイン直前に降板を希望したことがある。この時は製作スタッフが菅井に配慮し、結果として降板せず、娘の縁談も無事成功したというエピソードがある(詳しくは必殺シリーズ#中村主水の主人公問題を参照)。

中村りつ

中村主水の妻であり、中村家先代当主の中村主水・中村せん夫妻の長女。

せんによると、見合いの席で一目惚れして、北大路主水を婿養子に迎える(見合席で妥協したというセリフもある)。主水の怠惰な性格には、母せんと共にまいっており、一緒に叱責するのが常だがせんとは異なり、主水を陰でフォローしている。また、細面で馬面の主水をせんが貶すことがあるが、りつにとっては好みらしい。実際に、主水と二人きりの時には、主水に甘えたりもしている(後述の白木の発言も参照)。ただし、主水のへそくりをせしめたり、高価な着物を購入したりしていることもまた事実である。

りつを演じた白木は、かつてはお色気女優・白木マリとして知られていたが、この役を演じることで、時代劇女優としてのイメージが定着した。白木が『いつみても波瀾万丈』に出演した際、りつの話題になり、その際「りつは中村主水を愛しているが、母親の手前つい厳しくしてしまう」と発言している。

なお、演じた白木万理は『必殺仕置人』から芸名を変えた。これは、芸能界への復帰ということで心機一転を込めて改名した直後にりつ役の話が来たため、偶然そうなったように見えるだけで、りつ役と改名に直接的な関係は無い。

登場作品

テレビシリーズ

テレビスペシャル

舞台

せんは、「必殺ぼたん燈籠」を最後に舞台に出演していない。

  • 藤田まこと特別公演「新・必殺仕置人」(1977年、新歌舞伎座
  • 納涼必殺まつりシリーズ(1981年 - 1987年の8月下旬、京都南座
    • 必殺女ねずみ小僧(1981年)
    • 必殺・鳴門の渦潮(1982年、それに先駆けて名鉄ホールで上演された)
    • 必殺ぼたん燈籠(1983年)
    • からくり猫屋敷(1984年)
    • 琉球蛇皮線恨み節(1985年)
    • 女・稲葉小僧(1986年)
    • 地獄花(1987年)
  • 藤田まこと特別公演「必殺仕事人 中村主水参上!(地獄花改め)」(1988年、梅田コマ・スタジアム
  • 藤田まこと特別公演「必殺仕事人 主水、大奥に参上!」(1989年、梅田コマ・スタジアム⇒新宿コマ劇場⇒1991年、名鉄ホール)
  • 藤田まこと特別公演「必殺仕事人 地獄花」(1990年、名鉄ホール)
  • 南座八月公演「必殺/中村主水、大奥に参上!」(1996年、京都南座)
  • 藤田まこと特別公演「必殺仕事人/主水、大奥に参上!」(1997年、新宿コマ劇場⇒1998年、中日劇場劇場飛天⇒1999年、全国巡業⇒2002年、明治座

劇場映画

パチンコ機

いずれも京楽産業.から発売。

脚注

  1. ^ a b 必殺を斬る
  2. ^ a b 朝日放送「必殺シリーズ作品総編集」極私的回想録
  3. ^ 「西方」は必殺シリーズでしばしば見られる死の暗喩であり、『2010』撮影直前に主水役の藤田まことが亡くなったことからの措置とその含意である。