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2012年2月15日 (水) 08:49時点における版

スナッチャー
ジャンル サイバーパンクアドベンチャー
ロールプレイング(SDスナッチャー)
対応機種 PC-8801mkIISR以降
MSX2
PCエンジン
メガCD(欧米版のみ)
プレイステーション
セガサターン
開発元 PC-8801MSX2PCエンジン
コナミ
プレイステーション
コナミコンピュータエンタテイメント大阪
セガサターン
コナミコンピュータエンタテイメントジャパン
発売元 コナミ
人数 1人
メディア PC-8801
5"2Dフロッピーディスク×5枚組
MSX2
3.5"2DDフロッピーディスク×3枚組+SCCカートリッジ
PCエンジンプレイステーションセガサターン
CD-ROM×1枚組
発売日 PC-8801
日本の旗 1988年11月26日
MSX2
日本の旗 1988年12月13日
日本の旗 1990年4月27日(SDスナッチャー)
PCエンジン
日本の旗 1992年8月7日(PilotDisk)
日本の旗 1992年10月23日(CD-ROMantic)
プレイステーション
日本の旗 1996年2月16日
セガサターン
日本の旗 1996年3月29日
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スナッチャー』(SNATCHER)は、1988年にコナミ(現・コナミデジタルエンタテインメント)から発売されたアドベンチャーゲーム小島秀夫監督作品。

架空の近未来を舞台に展開される「サイバーパンク・アドベンチャー」である(最初期の雑誌広告では「サイケデリック・アドベンチャー」と表記されていた)。

概要

当時のコマンド選択式アドベンチャーゲームにおいて主流であった「単純なコマンド選択」だけではなく、謎解きとしてキーワード入力を求めたり、ストーリー進行に併せて簡単なガン・シューティングシーンを取り入れるなど、随所にプレイヤーを飽きさせない工夫・演出・表現が施されている。

後に『メタルギアソリッド』シリーズで有名となる小島秀夫が監督した初期の作品であり、映画『ブレードランナー』をモチーフとした(小島本人の口から明言されている[1]サイバーパンク世界が舞台となっている。小島作品としては、映画的演出を導入した最初のゲームであり、そのゲーム設計や表現は後に発売された『ポリスノーツ』の原型ともなった。

この作品の主軸には、当時におけるソビエト連邦(通称・ソ連。現・ロシア連邦)の存在がキーポイントとして置かれている。オリジナル版が発売された1988年当時はアメリカとソ連という両大国を主軸とした東西冷戦時代がまだ続いており、社会主義国家であったソ連は情報管制が敷かれ、国の内部が西側諸国から見えない、見えにくい秘密の多い国であった。チェルノブイリ原発事故や、北方領土を軍事的に実効支配されている問題などもあって、秘密主義的なソ連に対して当時の日本人は「よくわからない」未知の大国に対する畏怖感をもっていた。この作品は、そんな旧ソ連に対する畏怖感を身近な人間にも置き換えている。

各機種での発売

  • 1988年11月26日 『スナッチャー』 PC-8801MkIISR以降版
  • 1988年12月13日 『スナッチャー』 MSX2
  • 1990年4月27日 『SDスナッチャー』 MSX2版
  • 1992年8月7日 『スナッチャー PilotDisk』 PCエンジン SUPER CD-ROM²版(PCエンジン版の体験版)
  • 1992年10月23日 『スナッチャー CD-ROMantic』 PCエンジン SUPER CD-ROM²版
  • (1994年12月15日 欧州にて『SNATCHER』 Mega CD版)
  • (1994年12月15日 北米にて『SNATCHER』 Sega CD(北米版メガCD)版)
  • 1996年2月16日 『スナッチャー』 プレイステーション版(PCエンジン版からの移植)
  • 1996年3月29日 『スナッチャー』 セガサターン版(PCエンジン版からの移植)

注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


ストーリー

2042年のネオ・コウベ・シティ(現在の神戸)を舞台に、人間を殺しその人物と入れ替わって潜伏している正体不明のアンドロイド「スナッチャー」と、それを追う捜査官(ジャンカー、JUNKER)である主人公ギリアン・シードとの戦いを描く。

主な登場人物

  • 声優はPCエンジン版以降において全て共通。
  • (括弧)内は海外版声優。

JUNKER所属

ギリアン・シード (Gillian Seed) 声 - 屋良有作 (Jeff Lupetin)
本作の主人公。スナッチャーの特定、排除を行う役割(ランナー)を担う。
舞台から3年前、第17次シベリア捜索隊によって、原因不明の記憶喪失状態でジェミーと共に発見、保護される。妻(発見前の所持品から判明)のジェミーとは2年前に別居。保護された後に特殊訓練を受け、通称JUNKERとなった彼が、ネオ・コウベ・シティに配属された所からストーリーが始まる。
メタル・ギアmk-II (Metal Gear Mk.II) 声 - 小山茉美 (Lucy Childs)
ギリアンを補佐する小型の二足歩行ナビゲーターロボット。 ハリーが20世紀の遺物であるメタル・ギアの設計図を元に開発した。通称「メタル」。高度な人工頭脳と高い分析能力を持つ。規則には厳しいものの、お茶目で憎めない性格設定がされており、場面や現場の解説やアドバイスをくれたり、ギリアンのボケに対してツッコミを入れたりもする。
もともとは、MSX2で発売されたゲーム『メタルギア』に登場した兵器の名称であり(メタル・ギアmk-IIの登場時には初代メタルギアの音楽が流れる)、搭載型二足歩行戦車「メタル・ギア」に由来する。ハリー・ベンソンが初代メタル・ギアの兵器資料を発見。殺戮兵器としてではなく平和利用としてデザインを継承、外観と二足歩行を受け継いでいる。mk-IIの表記は、本作の初版販売対象機種であるPC-8801mkIISRに由来し、2番目の「メタル・ギア」という意味でもある。このためか、MSX2版メタルギア2 ソリッドスネークの取扱説明書に収録されている資料欄では各種メタル・ギアのサイズ比較表にメタル・ギアmkII(SR以降)と書かれている。
なお、小型メタル・ギアは『メタルギアソリッド4』(PS3)にも、ソリッド・スネークのパートナーのオタコンが作ったメタル・ギアmk-IIが登場。従来のメタル・ギアと違い、ラジコン操作。人を殺すほどの力は持っていないが、電気ショックで敵を麻痺させることが可能。また、SDスナッチャーにはメタル・ギアmk-IIに代わり、さらに小型で手のひらサイズのプチメタルが登場する。
小山茉美の演じるメタル・ギアmk-IIの声はエフェクターを通さない完全な肉声で、しかもおよそロボットとは思えない個性的な、いわゆる『アラレちゃん声』で喋り、これに違和感を感じたプレイヤーも多かった。これについては後に小島が「セリフもゲーム内容もドロドロした物が多く、そういうシーンと気持ちの切り替えができるように、あえて個性的なアラレちゃん声を採用した」と語っている[2]。なお海外版の音声はエフェクターを通したロボット声になっている。
ミカ・スレイトン (Mika Slayton) 声 - 冨永みーな (Kimberly Harne)
あらゆる情報の処理を担当するオペレーター。JUNKER本部の受付もやっている。
ベンソン・カニンガム (Benson Cunningum) 声 - 納谷悟朗 (Ray Van Steen)
JUNKERの指揮をとるリーダー。元FOXHOUND戦略教官。
ハリー・ベンソン (Harry Benson) 声 - 槐柳二 (Ray Van Steen)
通称おやじさん。備品の開発、整備を行うメカニック。ランナーの使うブラスターの開発、メタルギアmk-IIやリトルジョンなどナビゲーターの開発を行っている。若くして博士号を複数持つ天才だが、脳細胞を活性化させる薬物を投与したため、その副作用で実年齢よりも老化が進んでいる。酒が好きで、いつも傍らに日本酒の酒瓶を置いている。
ジャン・ジャック・ギブスン (Jean Jack Gibson) 声 - 井ノ口勲 (Jim Parks)
腕利きのランナー。ギリアンの同僚だが、ギリアンがJUNKERに配属されたその日に殺害された。
リトル・ジョン (Little John)
ギブスンのナビゲーターロボット。メタル・ギアmk-IIと対照的にギブスンの性格に合わせ無口に設計されている。正式名称「LITTLE JOHN msx 011」
  • その他のランナー達(名前だけで登場しなかった人物)
    • ルイス・ギルモア(ランナー:殉職
    • セルジオ・グレイザー(ランナー:殉職)
    • デビッド・ジョンソン(ランナー:退職)
    • シュルツ・デッカード(ランナー:殉職)

その他

ランダム・ハジル (Randam Hajile) 声 - 塩沢兼人 (Jim Parks)
腕利きのバウンティー・ハンター(賞金稼ぎ)。敵か味方か、神出鬼没の謎の男。
ジェミー・シード (Jaime Seed) 声 - 井上喜久子 (Susan Mele)
別居中のギリアンの妻。ギリアンと同じく記憶喪失中である。物語の鍵となる人物。
カトリーヌ・ギブスン (Katherine Gibson) 声 - 富永みーな (Lynn Foosaner)
ジャン・ジャック・ギブスンの一人娘。学校に通う傍ら、モデルとしても売り出し中のコケティッシュ美少女
イザベラ・ベルベット (Isabella Velvet)
ホログラム・ビジョンの人気女優。
ナポレオン (Napoleon) 声 - 納谷悟朗 (Jim Parks)
情報屋。ある物にアレルギー反応を示す。同じ小島作品の『ポリスノーツ』で、ある場所に後姿でカメオ出演している。

用語解説

スナッチャー
正体・目的が一切不明のアンドロイド。人間を殺害し、殺害した人間とすり替わる(スナッチ)ことからスナッチャーと呼ばれる。素体は金属製の人体骨格標本のような形状をしている。すり替わった人間の性別・体型をはじめとした身体的特徴をすべて似せることができる(血液型まで同じにすることができる)ため、一旦すり替わってしまうとスキャニング以外の手段でスナッチャーと判断することは非常に困難である。しかし筐体のサイズ限界があり、子供老人、また背が極端に高い人間といった身体的に極端な特徴を持つ人間をスナッチすることはできない。骨格チタンをはじめとする超硬金属製であり、ランナーやバウンティ・ハンターが所持するブラスター以外で破壊することは不可能に近い。力が強く、口腔奥にブラスターガンを装備。頭部に主要機器が集中しており、頭部の装甲の薄いスリット部分を狙い撃ちすることで機能を停止させることができる。
JUNKER
Judgement Uninfected Naked Kind & Execute Rangerの略であり、一般人に紛れたスナッチャーを特定し、処理することを任務とする政府直属機関のことを指す。JUNKERと言う名前で敵がアンドロイドである事から、「屑鉄処理人」ともよばれる。また、実際にスナッチャーを捜索・処理する者は、JUNKER内では通称「ランナー」と呼ばれる。過去に魔女狩りじみた暴動が起きたため、証拠を揃えて令状が下りるまで被疑者をスキャンニング(X線等で透視)することを「スキャニング条例」により禁じられている。そのため、ランナーは被疑者がスナッチャーであるという証拠を集め、「スキャニング令状」を取得した上でスキャニングをしなければならない。スキャニングによりスナッチャーと判明すればその時点で処理を行う(上の許可はいらない)。
ナビゲーター
ランナーに支給される、ランナーの業務サポートを行う小型の二足歩行ロボット。いろいろな物を調査するための各種センサーサーチライトマニピュレータ、事件現場の分析や証拠物品の解析ができる人工頭脳を持ち、「スキャニング令状」を得ることにより被疑者をスキャニング、スナッチャーかどうかの最終判断を下す。またビデオフォンを内蔵しており、JUNKER本部をはじめとした各所への通信機としても使用される。各ランナーの『相棒』として、ランナーの性格に応じた性格付けがなされており、ギリアンのメタルギアmk-IIが饒舌であるのに対し、ギブスンのリトルジョンは寡黙である。
バウンティ・ハンター
慢性的なランナーの不足を補うために、スナッチャーを処理することを政府が特別に許可・登録した賞金稼ぎのこと。ランダム・ハジルがこれに該当する。

特記事項

本来の構想
当初、本作はACT.5までの全5章構成で開発していたが、開発期間の長期化により会社から半分に分けるように命じられ、ACT.1とACT.2のみの未完の状態で発売された。
後編となるACT.3〜5は一つの作品としてはボリュームが不足するため、ACT.3の前に大統領選に絡んだスナッチ計画を阻止するエピソードを追加する予定であった。また、ネオコウベシティのスナッチャーの秘密基地を破壊し、シベリアの本拠地に向かった後のシナリオも存在した。しかし1作目の段階で1年半もの開発期間がかかってしまったために、続編の話は会社側で反故にされ実現しなかった[3]
クイーン病院の地下は上階と同構造ではなく、スナッチャーと遭遇したら銃撃戦を行う3Dダンジョンにして、地下道からフレディ家や工場跡に繋がることで謎が解けるというものを作っていたが、これも開発途中で頓挫した[3]
寄り道
小島作品の特徴である、ゲームクリアとは直接関係の無い「寄り道」的なイベントはこのゲーム内でも随所に見られる。主なものに「うどん屋」「占い師」「ガシャポン」「ネオコウベ焼き」「エッチQ2」「電話で身の上相談」等がある。殆どは特定の場所でコマンドを繰り返し選択することで、イベントに遭遇したり、イベント関連のコマンドが新たに追加される。また、一部のイベントは見つけることで他のシーンでも連鎖的に変化が発生する。一例を挙げると、最初のミッションで「ハエ」を敵と誤認するイベントを出すと、以後のイベントで「ハエ」に絡んだ台詞が度々表示されるようになる。
この他に、プレイヤーの興味を引くような「おもしろコマンド」を表示して、あえてそのコマンドを選択させる事で話を横道に反らすような寄り道もある。一例として、とある女性の家を訪問した際に「見せる JUNKER証」を選ぶべきところを「見せる 男の証明」を選択すると悲鳴を上げて追い返され、以降ほとぼりが冷めるまで門前払いにされる。
また、本部のデータベースでは、ゲーム中のキーワードの他に開発スタッフや声優の名前でも検索が可能である。
PCエンジン版以降では、CD-ROMの大容量を生かして、これら「スタッフの遊び心」が大幅に追加されている。その為、一度ゲームを解いてもこれらのイベントを見つけるために、何度もプレイする面白さを見出した。
登場人物の音声による警告
通常のPCエンジンのCD-ROMは、誤ってCDプレーヤーなどのオーディオ機器にセットした場合、「このCDはゲームソフトです」と音声による警告がされるが、本ゲームのPCエンジン版のCD-ROMには、ギリアンとメタルギアによる漫才風の警告メッセージが収録されている。通常通りCD-ROMを使用している限り、まったくこのメッセージを聞く機会はないので、この事を知らない者が意外に多い(なお、セガサターン版にも同じメッセージが収録されているが、プレイステーション版には存在しない)。なお、PCエンジンのCD-ROMはトラック1が前述の警告音声で、トラック2がCDプレイヤーで再生してしまうとスピーカー破損の可能性もあるゲームデータなのであるが、トラック3以降にはゲームの音楽が収録されているため、サウンドトラックCDとしても使える(内蔵音源の曲は聴けない)。
映画『ブレードランナー』へのオマージュ
本作のモチーフとなった映画『ブレードランナー』へのオマージュと見られる演出や設定が随所に点在する。
  • 一番わかりやすいもので、アルタミラ前でのうどん屋(映画ではヌードルバー)の店主との掛け合いで映画と丸々同じ台詞回しがある。
店主「空きました、空きました、いらっしゃい、いらっしゃい。・・・さぁどうぞ。なにしましょうか?」
主人公「これを4つくれ」
店主「2つで充分ですよ!」
主人公「いや4つだ」
店主「2つで充分ですよ!」
主人公「うどんも」
店主「わかってくださいよ!」
主人公「(・・・女房に言われたっけ。よく食べるわねって・・・)」(映画では「よく食べるわね」の代わりに「あなたは冷たい魚ね」)
  • 同じくアルタミラ前でギリアンが「誰か変な物を落としていったぞ!」と言う事があるが、この台詞は映画の繁華街(リドリー・ヴィル)での雑踏シーンで繰り返し聞こえてくる日本語のガヤ(人の声)と同じである。
  • イワンのアパートの浴室のバスタブを調べるとギリアンが「どうした?ウロコでも見つけたか」と言うが、映画では実際に捜索中にバスタブで見つけた蛇の鱗が、その後の捜査の重要なカギになっている。
  • イザベラ・ベルベットの経歴にある「リドリー・スコッティ監督に認められてデビュー」のリドリー・スコッティは、映画の総監督のリドリー・スコットのもじりである。
  • PCエンジン版以降でオープニングロールの途中に挿入されるダウンタウンの背景は、映画のデザインを担当したシド・ミードが描いたイメージボードの一枚の模写である。
  • JUNKER殉職者の中に「デッカード」の名前がある。デッカードは映画の主人公の名前である。
また、以下の各設定やアートワークは、映画からインスパイアを受けたものと思われる。
  • ランダム・ハジルの容姿が、映画のロイ・バッティ(レプリカント)と酷似している。
  • ハリー・ベンソンの「実年齢より老化が進んでいる」という症状は、映画でレプリカントの設計をしていたJ.F.セバスチャンと同じ設定である。
  • オープニングに出てくる、中央に大きなピラミッド状のビルがある遠景は、映画の冒頭で出てくる2019年ロサンゼルスの遠景のカットと酷似している。ちなみに中央の大きなピラミッド状のビルは、映画ではレプリカントを製造しているタイレル社のビルである。また本部のあるビルが円筒状の高層ビルというのも映画と同じである。
  • JUNKERが使用する武器は「ブラスター」というハンドガンであるが、映画で主人公(デッカード)が使用する武器も「デッカード・ブラスター」と呼ばれるハンドガンである。その他、専用車両にスピナー(トライサイクル)を使用している、主人公が茶色いトレンチコートを着ているなど、アイテム面では映画にインスパイアされている部分が大きい。

移植版比較

移植の背景

昔のゲーム制作は供給対象ハードウェアの機能的制約に縛られることが常であり、本作の制作もその影響を受けている。そのため同じ作品の移植とは言っても、移植ごとにその作品内容は異なっている。また小島が開発に直接関わっているのはPC-8800シリーズ版・MSX2版・PCエンジン版のみであり、それ以降のMega CD版・Sega CD版は翻訳スタッフによる勝手な改変、プレイステーション版・セガサターン版は関係ないところで勝手に作られており中身の改竄がなされているので、ユーザーにはプレイして欲しくないと小島は語っている[3]

比較

PC-8800シリーズ版
開発期間や供給媒体容量の問題から、後半部分を大幅にカットされ、ACT.1とACT.2のみの未完の作品となってしまった。
本作は専用音源対応である。当時はゲーム制作において自由に音色を作ることが難しかったため、音や音楽の表現において特有の価値を持つ供給形態となった。PC-8801シリーズ版は内蔵音源でのプレイも可能であるが、更にサウンドボードIIを搭載することにより音源パートの拡張を可能とした。
またパソコン版に限り、主人公のファーストネームを「ギリアン」から好きな名前に変更ができた(新規ゲーム開始時のみ)。
パソコン版はエンドロールが非常に長いのも特徴で、全長で20分近くある。クレジットの中にはパッケージをシュリンクしているシールのデザイナーや、テキストの入力で使用されたエディタの名称まで記載されている。
パソコン版は当初はPC-8800シリーズ専用ソフトとして企画されたが、役員会で「発売本数を確保するため、MSX2版も作成すること」という条件が出されたため、PC-8800シリーズとMSX2での発売となった。
MSX2版
PC-8800シリーズ版と同時発売の予定であったが、約一ヶ月遅れで発売された。
MSX2版はゲーム本体にSCCカートリッジが同梱されており、装着することでSCC音源+PSGによる独特な音色を楽しむことが出来た。また、このSCCカートリッジには音源の他にFDアクセスの頻度を減らすためのキャッシュRAM(64KB)が内蔵されており、その為プレイ時にはSCCカートリッジが装着されていないとソフトが起動しない作りとなっている(事実上のプロテクトドングルになっている)。またキャッシュRAMへのアクセスが止まるとゲーム自体がフリーズするため、説明書にはMSX本体のポーズボタンやスピコンを使用しないよう注意書きがある。ちなみに本製品に添付されたSCCカートリッジは、その後DTMとしてSCC音源を鳴らすためのツールやMMLが開発され、単体でも重宝されるアイテムとなった。
内容面ではPC-8800シリーズ版のダウンサイズコンバートとなっているため、音源部分を除いてほぼ同じ作りとなっているが、画像データの圧縮・展開アルゴリズムが最適化されていないため、データをロードしてから画像が表示されるまでに非常に時間がかかる。細かい部分では「チームロゴのMETALSLAVEの表示がない」「タイトル画面のみアナログ16色を使用」「シューティングシーンのクロスハッチと攻撃弾をスプライトで描画」などの違いがある。
使用されているBGMも、PC-8800シリーズ版がFM音源の音色でバラエティを持たせているのに対して、MSX2版は音源パートを重ねることで音の厚みでバラエティを持たせており、大分曲調が異なる。曲のテンポもMSX2版の方がアップテンポでノリを重視させている。PC-8800シリーズ版の方がどちらかと言えば映画的な曲調なのに対して、MSX2版はいかにもゲームサウンド的な曲調に仕上がっている。
MSX2版は非公式ながら、ファンによって翻訳されたポルトガル語版と英語版が存在する。この版ではSCCカートリッジがなくてもゲームが稼働するようになっている。
SDスナッチャー(MSX2版)
先発版のリメイクであり、オリジナル版では存在しなかった最終章であるACT.3が存在する。エンディングを除きキャラクターを2頭身のSD(スーパーデフォルメ)化し、ロールプレイングゲームという異なる表現形態を採って制作された。コミカルな雰囲気と裏腹に内容ではシリアスな展開が続きSDと言えどあなどれない作りとなっている。またハリーの助手「ジェフリー・トネガワ」など、本作のみのオリジナルキャラクターも登場する。本製品もSCCカートリッジが同梱されており(スナッチャー添付のSCCカートリッジと互換ではない)、SCC音源+PSGによるBGMを楽しむことが出来た。
本作での小島は「原作、ダイアローグ、企画サポート」とクレジットされており、オリジナル版でお蔵入りとなったACT.3の脚本部分を供出したものと思われる。
PCエンジン SUPER CD-ROM²版
『CD-ROMantic(シーディーロマンティック)』と銘打っており、SUPER CD-ROM²用ソフトとして、(当初の構想であるACT.3〜ACT.5までの内容を1章分に再構築した)ACT.3を収録して完結させた初めてのアドベンチャーゲームとしての完全版となる(ちなみに同社初のCD-ROMを使用したソフトでもある)。CD-ROMの特性を活かして、オリジナルと同構図のグラフィックにアニメーション効果、声優による音声等が追加され、より映画的な演出が可能となった。またCD音声の再生ではローランドのRSS(Roland Sound Space)技術を用いた疑似サラウンドが採用された。内蔵音源を使用したBGMは、波形メモリ音源とサンプリングドラムを使用してMSX2版を意識した音色となっている。追加されたACT.3は、実質的なアドベンチャーパートは冒頭部分のみで、後半の大部分が首謀者が延々と謎解きを語るシーンに当てられた。本作はゲーム雑誌「ファミコン通信」のクロスレビューで、8・9・8・8の33点であった。
生産コストの安いCD-ROMを生かした販売戦略として、本製品発売に先駆けてパイロットディスク(体験版、予告編、設定資料、制作者インタビューなどを収録)が制作され、安価で発売された。このパイロットディスクは発売本数が極端に少なく、発売当時は入手困難であった(後の小島作品である『ポリスノーツ』でも、3DO版でパイロットディスクが制作された)。ちなみにパイロットディスクの体験版において「ACT.1 SNATCH」のテロップ画面で流れるBGMは、製品版で使用されたジングルではなく、パソコン版と同じ「Evil Ripple」のアレンジ曲が使用されている。また、看板に描かれているNECロゴが赤文字の旧ロゴになっている(製品版では青文字の新ロゴになっている)。
Mega CD版、Sega CD版
PCエンジン版をベースとした移植版。英語版として台詞も新規収録され欧州(Mega CD)および北米(Sega CD)にてリリースされた。内蔵音源で演奏されるBGMはPC-8800シリーズ版のサウンドボードIIに近いものとなっている。Sega CD版ではシューティングシーンでコナミ製の光線銃「ジャスティスファイヤー」に対応している。
プロローグデモ後のオープニングロールは日本地図からネオコウベシティの位置が明示される演出で始まり、ゲームの舞台が日本国内の都市であることが強調されている。また旧来より説明書内の読み切りコミックとして収録されていたプロローグの一部である、ギリアンとジェミーの面会シーンがデモとして挿入される等、オープニングは凝った仕上がりとなっている。
開発は日本で行われたが小島は今作には関与していない。その為、小島の意図しないところで翻訳スタッフによる設定や名称、シナリオの一部変更がなされている。修正の大部分は表現における国内外のカルチャーギャップの吸収である。主な変更箇所は下記のとおり。
  • 年代設定が全て5年後に繰り下げられている。それに合わせ、チェルノートン研究所での事故発生が1991年→1996年に、ゲーム本編開始時の年代が2042年→2047年にそれぞれ変更されている。
  • カトリーヌの年齢設定が14歳から海外での成人年齢に当たる18歳に引き上げ。変更されたのは年齢のみで、キャラクターデザインやグラフィック面での変更はない。
  • 捕鯨問題に配慮してギブスンがアウターヘブンで食べた物が鯨肉から水牛に変更。
  • JUNKERの正式名称が、いわゆる「インチキ英語」からネイティブで通用する名称に変更。
英語版:Japanese Undercover Neuro-Kinetic Elimination Rangers
国内版:Jugdement Uninfected Naked Kind & Execute Ranger
また海外でリリースされるゲームは、購入したゲームが短時間で終了してしまわないよう難易度を高めに設定するのが通例で、この海外版もACT.3に高難度のシューティングシーンが追加され、クリアを困難にしている。
後述のプレイステーションやセガサターンでも海外版は発売されておらず、本バージョンが唯一の正規品の英語版となるため、海外のスナッチャーファンは必須のソフトとなっている(本製品発売以前は、前述のMSX2版が唯一の英語版であった)。
プレイステーション版、セガサターン版
基本的な内容はPCエンジン版と同じだが、CGムービーの追加、グラフィックや演出面の化粧直し、BGMの差し替えなど、次世代機に合わせたリニューアルを施している。しかし、監督の小島をはじめとするオリジナルのパソコン版、PCエンジン版のスタッフは既にPS版およびSS版『ポリスノーツ』の開発に移行していたため、この移植には関わっていない。
プレイステーション版はハードメーカーによる残酷描写への規制のため一部シーンにモザイクが掛けられている。
また、旧機種では実際の映画や物語から引用した演出が各所に見られたが(バーでのSFコスプレ、電光掲示板広告など)、PS版およびSS版においては著作権上の問題から、コナミキャラクターを用いた内容の物に全て差し替えられた。
解説書では、ベンソン・カニンガム役のクレジットが「納悟朗」と誤植されている。正しくは「納悟朗」である。

以上で物語・作品・登場人物に関する核心部分の記述は終わりです。


関連商品

スナッチャー(サウンドトラック)
PC-8801mkIISRのサウンドボードII版BGMを収録したサウンドトラック。随所に英語音声によるショートドラマを挿入したドラマCD仕立てになっている。付属のライナーノーツは、開発スタッフによる座談会(小島秀夫は「企画のスネーク小島」として参加)の他、日の目を見なかったパソコン版ACT.3の原画も載っている貴重な資料となっている。
パーフェクトセレクション スナッチャー&SDスナッチャー
アレンジャー5名による、スナッチャーとSDスナッチャーのフルアレンジバージョン9曲を収録したアレンジアルバム。
スナッチャー・サウンドクリップ
PCエンジン版の発売前に、PC Engine FANとのタイアップ企画で応募者全員にプレゼントされた8cm CD。アレンジBGMやショートドラマ、予告音声などを収録。ショートドラマでは、ギリアンの声は屋良だが、他のキャラクターは別のキャストになっている。
THE CYBER PUNK ADVENTURE SNATCHER -ZOOM TRACKS-
PCエンジン版のサウンドをベースに、古川もとあきコナミ矩形波倶楽部)書き下ろしのアレンジ曲2曲と未使用曲4曲を含めた全11曲を収録したサウンドトラック。
SCCメモリアル・シリーズ スナッチャー -ジョイントディスク-
MSX2のSCC版BGMとSDスナッチャーのBGMを全曲収録したCD3枚組のサウンドトラック。初回版には外ケースが付いており、ジャンカー・キーホルダーが同梱されていた。
ミディパワー バージョン5.0 スナッチャー
ローランドMIDI音源のSC-88で作成したスナッチャーとSDスナッチャーのアレンジ曲を収録したアレンジアルバム。
パーフェクトセレクション スナッチャー・バトル
スナッチャーとSDスナッチャーのハードロック・アレンジバージョン。坂本英三によるボーカル曲も収録。
SNATCHER>>POLICENAUTS 小島秀夫監督作品 音楽集 黒盤
小島秀夫監督作品のスナッチャーとポリスノーツのコンビネーションアルバム。

その他

雑誌広告の遍歴

PC-8801シリーズ版/MSX2版

以下は全て「マイコンBASICマガジン」掲載の広告。

  • 1988年1月号(広告初掲載)
サイケデリック・アドベンチャー『スナッチャー』
PC-8801mkIISR/MR/FR/FH/MH/VA/MA/FA
FM音源対応 5"ディスク2枚組 1988年2月発売予定
  • 当初は同じPC-88シリーズで発売予定だった『マルチモードRPG 救世樹 マーゼル神話』とセットで広告が打たれていた
  • 1988年2月号
  • ディスク枚数の「2枚組」の表記が外れる
  • 「1988年2月発売予定」が「今春発売予定」に変更
  • 1988年3月号
  • 「今春発売予定」が「現在開発中」に変更
  • 1988年4月号~6月号
(広告掲載なし)
  • 1988年7月号
  • 「予告第1弾」の文字が入る
  • 「サイケデリック・アドベンチャー」が「サイバーパンク・アドベンチャー」に変更
  • MSX2版の発売予定が追加される
MSX2対応 3.5"2DD(ディスク3枚組)+SCCカートリッジ付
価格未定 緊急制作開始!/8月全国発売予定
PC8801版も同時発売
  • 『救世樹』の広告が消える
  • 1988年8月号
  • 予告第2弾
MSX2対応 3.5"2DD(ディスク3枚組)+専用サウンドカートリッジ付 9,800円
PC8801(SR以降)対応 5"2D(ディスク5枚組) FM音源対応(ステレオ) 8,800円
11月下旬全国同時発売
  • 『コナミ・サイバーパンクフェスタ』開催
タイトル名『ス○ッチャー』の○に入る文字をハガキで応募するもの。商品は10万円商品券、トランシーバーなど。
  • 1988年9月号
  • MSX用ソフト広告の一画に「発売延期のお知らせ」が掲載されるのみ
  • 1988年10月号
  • MSX用ソフト広告の一画に「11月下旬発売予定」が掲載されるのみ
  • 1988年11月号
  • 予告第3弾
11月26日同時発売
  • 1988年12月号
  • 「予告第○弾」→「ついに登場」に
  • 発売日は「11月26日同時発売」のまま
  • 1989年1月号
  • パソコン版スナッチャーの広告掲載終了(入れ替わりでPC-98版『電脳将棋』の広告になる)
  • スーパーソフトコーナーの「チャレンジ!ADV」でスナッチャーの特集が組まれる
SDスナッチャー(MSX2版)

以下は全て「MSXマガジン」掲載の広告。

  • 1990年1月号
MSX2/MSX2+ ディスク+SCCカートリッジ
1月発売予定 9,800円(税別)
  • 1990年2月号~4月号
(広告掲載なし)
  • 1990年5月号
  • 「1月発売予定」→「4月26日発売」に変更
  • 1990年6月号
  • 「4月26日発売」→「好評発売中」に変更
  • 1990年7月号

トリビア

このゲームは元々「JUNKER」というタイトル名が考えられていたが、商標が取れなかったため(MSXで『雀華(じゃんか)』という麻雀ゲームが発売されていたためと言われている)、やむなく「SNATCHER」のタイトル名になった[4]。しかし今度は海外でSFホラー映画の『SF/ボディ・スナッチャー』と混同される羽目になった。

スナッチャーのCD-ROMバージョンを開発するにあたり、CD-ROMをフル活用できるプラットフォームとして、PCエンジンの他にPC-9821FM-TOWNSでの発売も検討されたが、最終的にはハードウェアの普及台数の多さでPCエンジンがプラットフォームとして選ばれた[5]。その後、PC-9821では同じ小島秀夫が手がけたアドベンチャーゲームの『ポリスノーツ』が発売されている。

射撃訓練システムのジャンカーズ・アイは、1980年代後半にゲームセンターで設営されていたセガの「ブルズ・アイ」が元ネタである

参考文献

  1. ^ 『ゲーム・マエストロ VOL.2』(毎日コミュニケーションズ)
  2. ^ 『月刊PCエンジン特別編集 スナッチャー公式ガイドブック』(小学館)
  3. ^ a b c 小島秀夫の「ヒデラジ」第295回、第296回
  4. ^ 『チャレンジ!! パソコンAVG&RPG V』(電波新聞社)
  5. ^ 『月刊PCエンジンFAN 1992年7月号』(徳間書店)

関連項目

外部リンク