波形メモリ音源

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

波形メモリ音源(はけいメモリおんげん)は1980年代に多用された音源の1つ。

概要[編集]

『波形メモリ音源』はビデオゲーム機等の音源チップや音源方式を指す言葉である。

PCM音源に似た原理構成だが、1つの周期に用いられるサンプル数が短く使用するリソースに対し、多彩な音作りが可能であるため、制限の大きな環境におけるハードウェア実装のひとつである。その特性から、メモリ容量に対するコストが高かった1980年代に多用された。後述するようにサンプル数が短いものの、PCMに似た特性を持つため、PCM再生を行うソフトウェアも存在する。

2000年代に生じたチップチューン人気に伴い、同ミュージシャンの間で再注目されるとともにこの言葉が使われるようになった。

特徴[編集]

PSG音源とよく誤解されるが、概要のとおり、短いサンプルにより生成される波形であるため、類似した音色を生成することも可能であるが、その音色の自由度ははるかに高いものとなっている。

PCM音源に似た原理(構成)だがより単純で、一つの音色に使うメモリは多くの音源で高々32バイトと少ない。

音が細かい矩形波で構成されている(矩形補間)ため、音程が低くなればなるほど模倣の元となった波形の音色との開きが出てくる。例えば正弦波を模倣した波形で低域を再生した際、正弦波本来の音よりも「プツプツ」というクリックノイズが目立つ現象が発生する。

「時間的な音色変化の無い簡易版アナログシンセ」的な音源として主に用いられている。音源のピッチやアンプはメインプロセッサ側から制御する事が多く、ハードウェア側ではなく、ソフトウェア的にエンベロープやLFO等の処理を行っている。一方フィルター処理は複雑なことから、波形メモリ音源制御における過去の導入実例は少ない。

成熟期(『スペースマンボウ』とそれ以降)には高速に波形を更新することで時間的な音色変化を実現している。また、制御する側で1周期ごとに波形を更新すればPCM音源のようにサンプリング音声を発声させることも可能である[1]

ナムコの業務用ビデオゲームでは一時期波形メモリ音源単独で使われていたが、多くの環境では内蔵音源ではそれ以外の特性を持つ出力ポートやチップとの併用、拡張音源としては、予め内蔵されているPSGpAPU、ノイズジェネレータ等と組み合わせて使われることの方が多くあった。

ゲーム機に搭載された主な波形メモリ音源[編集]

各音源のスペック[編集]

  • 波形メモリのサンプル数(1ループあたり)
    • 4 - 128 : N106など
    • 32 : SCC、ワンダースワンなど
    • 64 : FDSなど
  • 波形メモリの量子化ビット数
    • 4 : C15、C30、N163、GB、WS
    • 5 : PCエンジン、PC-FX
    • 6 : FDS
    • 8 : SCC
  • チャンネル数(同時発音数、和音数)
    • 1 : FDS、GB
    • 5 : SCC
    • 2 - 4 : ワンダースワン(左右、中央にパンポットを指定することが可能)
    • 4 - 6 : PCエンジン、PC-FX(左右独立の4bit音量レジスタにより、ステレオ発音可能)
    • 1 - 8 : C15(16個のレジスタ設定により同時発音数・音程精度を変更可能。実際は3~4和音で使用された)
    • 1 - 8 : N163(左右、中央にパンポットを指定することが可能)
    • 8 / 16 : C30(システムI搭載バージョンではステレオ発音可能)

C30(ナムコカスタム音源)の特徴[編集]

C30は複数のバージョンが存在し、1波形当たりの音量とチャンネルがそれぞれ4bitモノラル・15bitモノラル・4bitステレオと異なる。また、C30のチャンネル数は8または16(内4つはノイズ切替可)を選択可能だが、16チャンネルモードにおいては音質低下リスクが存在したため実際には8チャンネルモードが使われた。

FDS音源(ファミコンディスクシステム音源)の特徴[編集]

ファミコンディスクシステムに採用されたFDS拡張音源(RP2C33に組み込み)は、波形メモリを土台としながらも位相変調 (Phase Modulation) によるFM的な周波数の変調が可能である。そのためFM音源の一種に数えられることがあり、コナミより1987年に発売されたディスクシステム用ソフト『愛戦士ニコル』の説明書には、メーカー側の公式見解として「FM音源」が搭載されていると記載されていた。変調 (PWM) により出力波形を生成、などの特徴があり、独特のサウンドを持つ。

SCC音源の特徴[編集]

SCCで同時発声可能な波形は4つで、チャンネル数より1つ少ない。これは4chと5chが同じ1つの波形データを参照するために起こる。SCC-Iは5つのチャンネルごとに、異なる波形を同時発声可能[3] 。いくつかのリビジョンが存在し、制限は使用するチップにより異なる。

PCエンジン音源の特徴[編集]

PCエンジンの音源はCh.0とCh.1をLFOで合成させてFM音源のような変調音を作ることが可能。また、タイマー割り込みでサンプリング周波数7kHz相当の5bitPCM音声が再生可能。

WS音源(ワンダースワン音源)の特徴[編集]

ワンダースワンの音源は2chをPCMに、4chをノイズ音源に切り替えることが可能。

波形メモリ音源を使った主なゲーム[編集]

その他の波形メモリ音源使用例[編集]

波形メモリ音源エミュレータ[編集]

  • Chip32(VSTプラグイン。最大同時発音数・8)
  • プチコンmkII(サンプル数・64または128、量子化ビット数・8、最大同時発音数・16)
  • 1チップMSX(SCC-I互換音源。性能はSCC-Iに準ず)
  • GXSCC(プリセット音色によるSMFプレーヤー。システムエクスクルーシブを用いて任意の波形を使用できる。)
  • FlMML(ニコニコ大百科で「ピコカキコ」の名称で利用されているMMLプレーヤー)
  • SiON(すたどんたんのシンセエンジンにも採用されている)
  • SCM(X68000用を祖とする音源ドライバ。SCCの音の再現を目指すところから開発が始まったソフトウェア音源。M2 (ゲーム会社)ではその後継ドライバが使用されており、ゲームボーイアドバンス用ソフトウェアである「デ・ジ・キャラット でじこミュニケーション」「でじこミュニケーション2(にょ)」では、同機種としては高音質なBGMの再生を可能にしている。)

その他各種ゲームマシン・PCエミュレータの一部に組み込まれている。

特にFIMML・SiONなどFlashで動作する波形メモリ音源は、同時発音数の多さやフィルタ・エフェクタが使用可能である事など性能面の向上が行われている。2009年以降はAdobe Flex3およびAdobe FlashCS4以降のダイナミックサウンド生成機能(ActionScript3拡張ライブラリの1つ)を用いた波形メモリ音源のエミュレートが可能[4]となっており、現在様々なシンセライブラリが公開されている。

脚注[編集]

  1. ^ 裕之氏によるSCCでのソフトウェアPCMの実装例 他にもワンダースワンなどでの実装が存在している。
  2. ^ ナムコのファミコン用MMC搭載音源名として『N106』『N106/163』が用いられる事があるが、「N106と呼ばれるチップは実はN160の事だと思われる」旨を、開発者の石村繁一が雑誌上で述べている。シューティングゲームサイドVol.8「日本のゲームを変えた70~80年代のナムコの技術【後編】ナムコ音源伝説」
  3. ^ 裕之氏によるSCC音源の解析
  4. ^ 音源の再現にはAction scriptによるプログラミングやライブラリの組み込みによる「エミュレート環境の構築」が必要

関連項目[編集]