東武20000系電車

半保護されたページ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Bsx (会話 | 投稿記録) による 2018年11月17日 (土) 00:36個人設定で未設定ならUTC)時点の版であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

東武20000系
(20000型・20050型・20070型[1])
東武20000型電車
(2008年4月27日/姫宮 - 東武動物公園)
基本情報
運用者 東武鉄道
製造所 東急車輛製造
アルナ工機
製造年 1988年 - 1997年
製造数 24編成192両
運用開始 1988年3月25日
主要諸元
編成 8両編成
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500 V
(架空電車線方式)
最高運転速度 100 km/h (東武線内)
80 km/h (日比谷線内)
設計最高速度 110 km/h
起動加速度 3.3 km/h/s
減速度(常用) 3.7 km/h/s
減速度(非常) 4.5 km/h/s
全長 18,000 mm
全幅 2,874 mm
全高 4,145 mm
主電動機 20000型 直流複巻電動機 TM-83
20050型・20070型 三相交流誘導電動機 TM-92
主電動機出力 20000型 140 kW
20050型・20070型 150 kW
歯車比 20000型 5.44
20050型・20070型 6.21
制御方式 20000型 AFE式主回路チョッパ制御
20050型・20070型 VVVFインバータ制御
制御装置 20000型 AFE2 (東洋電機製造製)
20050型・20070型 GTOサイリスタ素子方式インバータ ATR-H8150-RG642A (東洋電機製造製)
制動装置 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ
保安装置 東武形ATS新CS-ATC
テンプレートを表示

東武20000系電車 (とうぶ20000けいでんしゃ) は、1988年 (昭和63年) 3月25日に運行を開始した東武鉄道通勤形電車伊勢崎線帝都高速度交通営団 (営団、現・東京地下鉄)日比谷線との直通運転用として、2000系の置き換えのために製造された。

本項では、初期型の20000型電車[1]、ならびにマイナーチェンジ車の20050型電車[1]および20070型電車[1]について記述し、さらに20000型・20050型・20070型を4連化して地方線区向けに投入した20400型電車[1]についても記述する。なお、個々の編成を表す場合は浅草中目黒寄り先頭車の車両番号の末尾に「F」 (「編成」を意味する英語Formationの頭文字) を付して表記する。

概要

非冷房車であり、かつ老朽化していた日比谷線直通用の2000系を置き換える目的で製造された。1988年 (昭和63年) から営団でも車両冷房を開始することになったが、日比谷線では車両の更新も兼ねており、まずこの20000型が最初に営業運転を開始し、次いで営団03系東京急行電鉄(東急)1000系の順で営業運転を開始した。

乗り入れ先となる日比谷線の当時の規格に合わせて18 m級車体となっており、編成はすべて制御車電動車のみのMT比6M2T・8両固定編成で構成されている。

20000型・20050型・20070型は系列の違いによる運用の区別はなく、全編成共通で東武車の運用 (運行番号の末尾「T」) で使用されている。定期列車の走行区間は、南栗橋 - 北千住 - 日比谷線中目黒間であり、2013年 (平成25年) 3月15日まで日比谷線のもう一つの相互直通運転先となっていた東急東横線への乗り入れはなかった。日比谷線への直通列車のほか、東武線内のみを走行する列車や、走行距離の調整で日比谷線内のみを走行する列車もある。いずれも各駅停車で運行される。

全車3扉車編成と一部5扉車編成が混用される東武スカイツリーラインと日比谷線とを直通する列車の車両を4扉車に統一し、日比谷線のホームドア設置を進めるために、2017年から日比谷線直通用の車両を20m級車体・7両編成の70000系電車に置き換えており、2019年度までに全車が日比谷線直通運用から撤退することとなっている。余剰となった20000型・20050型・20070型を4両・ワンマン化して全面リニューアルし、20040型として宇都宮線等に投入している。

系列別概要(新造車)

20000型

ほぼ同時期に導入された10030系に準じて、オールステンレス製軽量車体構造およびボルスタレス台車が採用された。両開き3扉車の窓配置はdD2・2D2・2D1と本系列独特の配置としている。主回路制御は有楽町線直通用の9000系と同様に、AFE (自動界磁励磁制御) 式主回路チョッパ制御を採用している。主電動機は10000系列との共通の、出力140 kW直流複巻電動機を採用している。1992年 (平成4年) までに8両編成13本 (104両) が落成した。

20050型

1992年 (平成4年) 12月29日より運行を開始した第2世代車両。車体構造は第1世代の20000型におおむね準じるが、日比谷線での朝ラッシュ時の混雑緩和を目的として編成の前後各2両を5扉車としている。8両編成8本 (64両) が在籍し、先頭車の正面には5扉車であることを示す「5DOORS」マークを掲出する。

主要機器の見直しも行われ、主回路制御にGTOサイリスタ素子によるVVVFインバータを採用するとともに、LED行先表示器液晶車内案内表示器 (シャープ製。5扉車の増設ドアを除く全ドア配置)、ドアチャイムなどを装備している。このうち液晶表示器は維持費がかかり、液晶ディスプレイ自体の劣化も進んでいため、1999年 (平成11年) に9050系のものとともに撤去し、その位置は広告枠としたが、2010年末頃から10000系修繕車と同様のLEDスクロール式表示器が千鳥配置 (左右交互配置) されている[要出典]

20050型から自動放送装置を設置した。伊勢崎線内・日比谷線内ともに女性の声で英語放送にも対応している。伊勢崎線内では当初男性の声であったが、2011年頃に50050系などと同じ女性の声に更新され、英語放送に対応した。なお日比谷線内での自動放送は東京メトロ発足後しばらく使用されていなかったが、2004年秋頃に使用を再開した。

20050型の導入当初は東武線内では5扉開閉での運用を行っていなかったが、1993年 (平成5年) 3月1日から日比谷線03系とともに5扉開閉を開始した。この時は、以降の混乱を避けるため同年2月26日から2月28日まで朝ラッシュ時の8本の列車のみで試験的に実施していた。2014年 (平成26年) 時点での5扉車の3扉開閉は、整列乗車のために始発駅でのみ行われ、発車後に車掌より次の駅から5扉すべて開閉する旨のアナウンスがなされている。

2000年 (平成12年) 3月8日に中目黒駅構内で発生した脱線衝突事故により、21852Fの中間車2両 (モハ23852・モハ24852) の車体が2001年 (平成13年) 4月に東急車輛製造において代替製造された。これは修理扱いで事故による廃車とはしていない[要出典]

20070型

1997年 (平成9年) 3月25日に運行を開始した第3世代車両。8両編成3本 (24両) が在籍しているが、これらは置き換え用ではなく、列車増発用として製作された。この頃から全車両の車体側面部に「日比谷線 直通」と表記したプレートを貼付するようになった。

5扉車の所要編成数に達していたことから、両端の5扉車を3扉車に戻している。主要機器はおおむね20050型に準じているが、シングルアーム式パンタグラフ30000系に準じたLEDスクロール式車内案内表示器 (千鳥配置) を装備している。さらに補助電源装置は東芝IGBT方式SIV (190 kVA) に変更の上容量増強した。車体では、戸閉装置を変更し、側扉のガラスを複層ガラスに変更した。

仕様

20000型 20050型 20070型
制御装置 AFE式主回路チョッパ
AFE2 (東洋電機製造製)
GTOサイリスタ素子方式VVVFインバータ
ATR-H8150-RG642A (東洋電機製造製)
制動装置 回生ブレーキ併用全電気指令式電磁直通空気ブレーキ (HRD-2R)
保安ブレーキ
抑圧ブレーキ (耐雪ブレーキ)
回生ブレーキ併用全電気指令式電磁直通空気ブレーキ (HRD-2R)
駆動装置 TD撓み板継手中空軸平行カルダン (TD-81) TD撓み板継手中実軸平行カルダン (TD-88)
主電動機 直流複巻電動機 TM-83 出力140 kW 三相交流かご形誘導電動機 TM-92 出力150 kW
補助電源装置 東芝GTOサイリスタ素子方式SIV (INV033-A0) 容量140 kVA 東芝製GTO素子方式SIV (INV033-A0) 容量140 kVA 東芝製IGBT素子方式SIV 容量190 kVA
起動加速度 3.3 km/h/s
減速度 3.7 km/h/s (常用)、4.5 km/h/s (非常)
営業最高速度 100 km/h (日比谷線内80 km/h)
歯車比 5.44 6.21

編成表

 
← 浅草・中目黒
南栗橋 →
形式 クハ21800形
(Tc1)
モハ22800形
(M1)
モハ23800形
(M2)
モハ24800形
(M1)
モハ25800形
(M3)
モハ26800形
(M1)
モハ27800形
(M4)
クハ28800形
(Tc2)
搭載機器   CHOP SIV1,CP CHOP CP,CP CHOP SIV1  
車両番号 21801

21813
22801

22813
23801

23813
24801

24813
25801

25813
26801

26813
27801

27813
28801

28813
形式 クハ21850形
(Tc3)
モハ22850形
(M5)
モハ23850形
(M2)
モハ24850形
(M7)
モハ25850形
(M3)
モハ26850形
(M7)
モハ27850形
(M6)
クハ28850形
(Tc4)
搭載機器   VVVF SIV1,CP VVVF CP,CP VVVF SIV1  
車両番号 21851

21858
22851

22858
23851

23858
24851

24858
25851

25858
26851

26858
27851

27858
28851

28858
形式 クハ21870形
(Tc1)
モハ22870形
(M1)
モハ23870形
(M2)
モハ24870形
(M3)
モハ25870形
(M4)
モハ26870形
(M3)
モハ27870形
(M5)
クハ28870形
(Tc2)
搭載機器   VVVF SIV2,CP VVVF CP,CP VVVF SIV2  
車両番号 21871

21873
22871

22873
23871

23873
24871

24873
25871

25873
26871

26873
27871

27873
28871

28873
凡例
  • CHOP:主回路チョッパ制御装置
  • VVVF:VVVFインバータ制御装置
  • CP:空気圧縮機
  • SIV1:GTO式静止形インバータ (140 kVA)
  • SIV2:IGBT式静止形インバータ (190 kVA)

上記のデータは鉄道図書刊行会『鉄道ピクトリアル』2008年1月臨時増刊号「東武鉄道特集」による。

付記

  • 非常用ドアコックは、地上専用車とは異なり東京メトロの車両と同じものが使用されている。また、非常通報ボタンの下にも東京メトロの車両と同じ注意書きプレートが掲出されている。
  • かつては車内に東京メトロ・東京都交通局 (都営地下鉄) の路線図 (メトロネットワーク) は掲出されていなかった。
  • 一部の編成においては車体にラッピング広告が掲出されることがある。
  • 20000型21803Fは、2007年11月10日から同年11月30日までの期間限定で「東武鉄道創立110周年記念トレイン」として運用され、車内には同社の歴代車両のポスターが掲出された。
  • 1995年にアルナ工機で製造された伊予鉄道610系電車は前面形状こそ独自設計の非貫通型であるが、側面窓配置は20000型3扉車に準じている。
  • 20000型21811Fは1995年3月20日に発生した地下鉄サリン事件で被害に遭った編成である。

20400型

東武20400型
基本情報
運用者 東武鉄道
製造所 東急車輛製造
アルナ工機
製造年 1988年 - 1997年
改造所 津覇車輛
日立製作所[4]
改造年 2018年
改造数 22編成88両を予定[2]
運用開始 2018年9月3日[3]
主要諸元
編成 4両編成
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500 V
(架空電車線方式)
設計最高速度 110 km/h[5]
起動加速度 2.23 km/h/s[5]
減速度(常用) 3.7 km/h/s[5]
減速度(非常) 4.5 km/h/s[5]
全長 18,000 mm
全幅 2,857 mm[5]
車体幅 2,855 mm (車幅灯間)
2,776 mm (基準面間)[2]
全高 4,145 mm[5]
4,080 mm (パンタ折り畳み高さ)[2]
車体高 3,565 mm
3,990 mm (冷房装置部)[2]
床面高さ 1,125 mm[2]
台車 TRS-92M (M車用 SS-133)
TRS-92T (Tc車用 SS-033)[2]
主電動機 三相交流誘導電動機 TM-92
主電動機出力 150 kW
歯車比 6.21
制御方式 VVVFインバータ制御
制御装置 GTOサイリスタ素子方式インバータ ATR-H8150-RG642A (東洋電機製造製)[2]
制動装置 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ
テンプレートを表示

東武スカイツリーライン・日比谷線直通運転用の新車両として70000系電車の投入が2017年から始まっており、70000系の投入によって余剰となる当系列については、2017年6月の有価証券報告書にて「4両編成・ワンマン化改造工事」の予定があることが明らかにされ[6]、2018年6月の東武宇都宮線の利用促進キャンペーン「東武宇都宮線フリー乗車DAY」の詳細公開で形式が20400型となること、宇都宮線で運用されることが明らかとなった[7]

2018年7月、20000系の車両を4両編成に改造した20400型電車が報道陣向けに公開された[4]

2018年9月3日から日光線南栗橋駅以北と宇都宮線で営業運転を開始した[8][4][3]

20400型は種車の種類により4型式に分類される[4]

  • 20410型 - 先頭車・中間車とも旧20070型。SIVはIGBT素子
  • 20420型 - 先頭車は旧20000型、中間車は旧20070型。SIVはIGBT素子
  • 20430型 (導入予定) - 先頭車・中間車とも旧20050型。SIVはGTO素子
  • 20440型 (導入予定) - 先頭車は旧20000型、中間車は旧20050型。SIVはGTO素子

20000系からの改造内容

今回の改造工事は日立製作所津覇車輌の両社で実施されており、以下の改造が行われている。

  • 車体の帯色は「SL大樹」をイメージした濃紺色[4]に変更、扉位置の視認性の向上のためドア横に黄色の横縞を加えている。先頭車前面の前面窓下部には濃紺色の上に黄色を配置
  • ワンマン運転を行うため、乗務員室にワンマン対応機器の設置によるワンマン化対応改造、運転台のコンソールを一新するとともに主幹制御器を左手操作式のワンハンドルマスコンに変更[4]運転台下の足元ヒーターに温風ヒーターを新たに設置[要出典]
  • 運転台の右側に配置されているモニター装置は新形の日立製のSynaptraに変更、放送装置には自動案内放送装置を新たに設置[4]
  • 前照灯がコイト電工製の熱線入りの花形LEDタイプに交換、行先・列車種別表示装置もコイト電工製のセレクトカラータイプのフルカラーLEDに変更[9]
  • 車内の設備は70000系ベースに内張り・床材・腰掛けがリニューアルされ、浅草方からの2両目と3両目にある中間車の連結側にフリースペースを設置、座席のドア回りに大型の袖仕切を設置、客室扉上部の鴨居部の車内案内装置は横長のLCD式に変更[4]され千鳥状に配置[2] (1両当たり3ヶ所)
  • パンタグラフは浅草方から2両目の中間車に1基増設する形で2基搭載[4]。20050型を種車とする場合は、既存の下方交差型の物をシングルアーム型に交換[2]
  • コンプレッサ (電動空気圧縮機 ナブテスコHS-20C[2]) を先頭車2両に設置[4]
  • 東武鉄道初となる客室扉の個別ドア開閉ボタン (車外は開ボタン、車内は開閉ボタン) を設置[4]

これに加えて、20430型(旧20050型の5ドア車両)は、5ドアのうち2ドアの客室扉部全体を塞ぎ、1100mm[2]の側窓および座席の設置と座席下に900Wのヒーターを設置[要出典]して、3ドアに改造する予定としている[4][9]

脚注

  1. ^ a b c d e 東武では同一系列内の区分に関して「型」の表記を使用しており、本系列においてはそれぞれ20000型・20050型・20070型と表記される。
  2. ^ a b c d e f g h i j k 山賀一俊「MODELERS FILE 東武鉄道20400型 <補遺>」『とれいん』第44巻第11号、(株)エリエイ 出版部 プレス・アイゼンバーン、2018年11月、18 - 25頁。 
  3. ^ a b 東武20400形が営業運転を開始”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2018年9月4日). 2018年9月7日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l 草町義和 (2018年7月21日). “徹底解説! 東武鉄道のローカル列車用改造車「20400型」”. 乗りものニュース. 2018年7月22日閲覧。
  5. ^ a b c d e f 20400型 - 車両紹介”. 東武鉄道. 2018年11月16日閲覧。
  6. ^ "第197期 有価証券報告書" (PDF) (Press release). 東武鉄道. 23 June 2017. p. 26. 2017年6月23日閲覧
  7. ^ "6月16日(土)「東武宇都宮線フリー乗車DAY」の詳細が決まりました!" (PDF) (Press release). 東武鉄道. 6 June 2018. p. 5. 2018年6月11日閲覧
  8. ^ "2018年度の設備投資計画について" (PDF) (Press release). 東武鉄道. 27 April 2018. 2018年5月1日閲覧
  9. ^ a b 前里孝 (2018年7月19日). “東武鉄道20400型電車のお披露目”. モデラーな日々 - 月刊とれいんスタッフブログ. 2018年7月24日閲覧。

外部リンク