放送休止

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放送休止(ほうそうきゅうし)とは、放送局がその放送を休止することである。

午前中の放送開始から深夜の放送終了まで放送休止の時間帯を設けない全日放送体制をブランケット・カバレッジという[1]。アメリカや日本など先進国の放送局ではブランケット・カバレッジが確立されている。

日本[編集]

概要[編集]

番組内容の変更により予定していた番組の放送を取りやめることも放送休止と呼ぶことがあるが、一般的には送信機(放送機)からの放送電波の送出を計画的に止める停波のことを示す。 基幹放送局においては、総務省令電波法施行規則第40条第1項第2号(5)に「運用許容時間中において任意に放送を休止した時間」とされ、無線業務日誌への記録を義務付けている。

日本放送協会(NHK)の基幹放送局は放送法第86条第1項により、総務大臣の認可を受けなければ、原則として基幹放送局若しくは放送の業務を廃止し、又はその放送を12時間以上(協会国際衛星放送は、24時間以上)休止することができない。

定期的な放送休止[編集]

その日予定されていた全番組の終了による放送休止[編集]

その期日に編成されている放送番組をすべて完了し放送終了となってから次の放送開始までの放送休止。時間調整の意味合いも持たせ、カラーバー環境映像やお天気カメラの映像などを流すケースや、一旦送信所からの電波送出を停止して、放送再開の数十分前から再び電波を送出するようなケース。

ブランケット・カバレッジ確立前の番組編成での放送休止[編集]

全日放送体制(ブランケット・カバレッジ)の確立前の番組編成では放送開始から放送終了までの一定の時間帯(正午頃から夕方頃まで)放送を休止するケースが散見された。特に独立局においては1980年代まで全日放送体制が確立されていなかった。同様の理由により、独立UHF局では当時、一日の放送開始時間が午前9時前後、局によっては夕方から遅めに設定されていたところも存在する。

不定期な放送休止[編集]

放送設備の点検整備などによるもの[編集]

民間放送(民放)ラジオ放送局では深夜放送が行なわれない日曜深夜(日付の上では月曜未明)を放送機器の保守点検のための時間帯として予定していることが多く、この時間帯には大地震、暴風雨などの非常事態で報道特別番組が必要な時を除き、番組放送の予定は組まれない。従って特に放送設備の保守点検などがなければ、その日予定された全番組の終了に伴い翌日の放送開始まで停波の状態となる。放送機器の保守点検が行われているときには、試験電波として断続的にテストトーンや音楽が送出される、あるいは無変調もしくは停波の状態となる。

多くの放送局では日曜日のメンテナンスは概ね午前1時台か2時台-5時までとされていたが、TBSラジオ製作の「あなたへモーニングコール」の放送が2004年4月から1週間通し(月曜~日曜の毎日。一部局除く)となったため、多くのクロスネット局などはそのため月曜付けの放送開始を4時に繰り上げた影響もあり、メンテナンスの時間枠確保の観点から日曜付けの放送終了を繰り上げる局が増えている。ただし「-モーニングコール」は2013年3月に終了したため、一部の局では同4月以後、月曜の放送開始を5時に戻している局も多い。また、土曜日の早朝にもブランクを設ける局が増えた。

同様に民放テレビジョン放送局においても日曜深夜を放送機器の保守点検のための時間帯として予定していることが多いが、2003年に三大都市圏(東京・名古屋・大阪)から開始された地上波デジタルテレビジョン放送では空中線も含めた完全多重化設備となっている例も多くあり、こういったところでは年間を通じての終夜放送が実施されている。

近年の大きな放送休止の例として、CBCラジオが、長島ラジオ送信所全面改修のため、2009年2月1日~2月28日の毎日、24時(0時)から28時(4時)までの約4時間、停波したものが挙げられる。

放送休止の対象地域は従来、放送エリア内全域であったが、近年では各地域ごとあるいは各送信所ごとなどの限定した放送休止(当該地域以外は放送を行うもの。主にNHKや北海道内の民放各局などでこのケースとなっている)もある。

なおNHKでは全国的に今日、完全多重化されていない設備であってもなるべく減力放送による対応とし、点検整備のための放送休止を行わないようにしている。

NHKの放送休止は2000年6月まではそれぞれのチャンネル別に全国一斉に行っていたが、有事・災害時(災害対策基本法施行義務)の編成に対応できるよう、2000年7月以後、総合テレビラジオ第1FMの24時間実施される地上総合放送については、一応のメンテナンス日(総合テレビ・FMは第1・3日曜、ラジオ第1は第2・4月曜+および各チャンネルとも年2回の集中メンテナンス日)を設定しているが、休止する・しない、あるいは減力を行うかについては各局の任意判断となった。なおEテレ2000年4月-2006年3月まで終日24時間放送だったが、大地震津波発生時以外の有事編成の義務が無かったため、毎月第2・4・5日曜の深夜放送休止は全国一斉に行っていた。(平日の集中メンテナンスによる休止は各局任意だった)

また、NHK菖蒲久喜ラジオ放送所から送信されているラジオ第1放送は2000年7月以後、メンテナンス実施日は出力を300kWから200kW、ないしは10kWに下げる減力放送で通常放送をしていたが、2008年9月22日深夜(9月23日未明)3時から5時と、同12月9日深夜(12月10日)1時から3時の各2時間は停波を伴う放送休止を久しぶりに実施した。

現在、ラジオ深夜便はラジオ第1・FM同時放送(午前1時から5時)としているが、局舎移転や送信設備の大規模な更新作業など、やむをえない事情で電波を止めなければならない場合を除き、前述の有事対応のために放送休止日でもどちらか一方の電波は出すようにしている。24時間放送が本格化し、2000年7月から、地域ごとの任意設定による休止が行われるようになってからは、各放送局ごとに放送休止となる日時・放送波についての告知(近畿地方・東海地方については大阪名古屋が一括して掲載)を載せている。

放送衛星あるいは通信衛星が地球または月の影に入るために電力不足になり運用を停止するもの[編集]

による放送休止。充電せずにトランスポンダを使い続けると電池が空になり、最後には管制所からの指令を受けたり運用状態報告のためのテレメトリー信号を出したり出来なくなってしまう。地球による食は春分秋分前後の深夜帯、月による食は年数回日中に放送休止されていた。現在では大容量の蓄電池を搭載しているため食であっても常時放送は可能である。

その他の放送休止例[編集]

オイルショックに伴う放送休止[編集]

日本では第一次及び第二次のオイルショックの際、節電のためテレビジョン放送の放送休止を行った。第一次オイルショックではNHKは日中(主として総合テレビは午後3-4時台[2]、教育は午後2-5時台)と深夜(午後11時以後)に放送を休止、民間放送各局も午前0時以降の放送を休止した。第二次オイルショックの際も、NHK総合は平日(日-木曜)は原則午後11時15分、金・土曜は午前0時で、民放の多くも午前0時台後半から1時台[3]に放送を終了している。

また先述したとおり、一部では、オイルショックに加え、番組ソフトが不足していたこともあり、日中の放送を休止し、カラーバーやレコード音楽を放送していたことがあった。中には夜の数時間のみしか放送を行わない局が存在した。

東日本大震災に伴う電力節減に協力するための放送休止[編集]

NHKでは教育テレビ(Eテレ)と衛星第2テレビで2011年3月15日〜3月19日までの間、0:00〜5:00まで放送休止(前者は完全停波だが、計画停電の無い一部地域のデジタル放送では停波を伴わない放送休止のところもあった。後者は停波を伴わない放送休止)。

放送大学では2011年3月17日〜3月31日までの間、テレビ・ラジオとも7:30〜21:30と放送時間を通常より4時間短縮し、それ以外の時間帯は前後数分間の試験電波を除いて放送休止(地上波は完全停波。スカパー!、ケーブルテレビ局向け配信では停波を伴わない放送休止)。

自己制裁による放送休止[編集]

TBSテレビではオウム真理教事件に関連し(TBSビデオ問題)、しばらくの間自主的に午前0時[4]をもってテレビ放送を終了した。なお、5月20日から23日の4日間は、放送大学より終了時間が早かった。なお、放送開始時刻は、21日は午前5時25分、22日24日は午前4時50分、25日は午前5時35分開始だった。

NHKの受信料収入減少に伴う放送休止[編集]

経費削減のための終夜放送の見直しが行われ、2006年4月以降、教育テレビ、デジタル衛星ハイビジョン放送(2011年3月で閉局)において実施されている。

二酸化炭素排出抑制のための放送休止[編集]

NHK教育テレビ(現・Eテレ)が2008年7月6日12月29日、「SAVE THE EARTH」プロジェクトの一環として、前者は午後11時をもって放送終了。7月7日午前4:30(本来は5時の予定がウィンブルドン選手権延長で急遽繰り上げ)まで休止した。後者は午前5時から午後0時30分までと午後9時から30日午前5時までの放送を休止した。

法令に基づく処分を受けての業務停止[編集]

コミュニティ放送局BIWA WAVEで2007年、無許可での設備変更と運用が発覚。これにより2008年、10日間の運用停止命令が行政処分として下された。これは現在の電波法および放送法の施行後、放送局に対する初の運用停止命令である。その後放送は再開されたものの、2年後の2009年6月、廃局。

破綻や廃止による放送休止(閉局・廃局)[編集]

愛知国際放送(RADIO-i)が2010年6月15日、経営状態悪化により9月末での解散を発表(同年10月1日午前0時をもって放送終了)。衛星放送局やコミュニティ放送局では数例あるが、一般放送事業者では史上初めての「閉局(廃局)」となった。同局の放送免許は同年10月7日付で総務省東海総合通信局へ返上され、法人としての「愛知国際放送」は清算され消滅となった。このケースは「放送休止」というよりも「放送終了」である。

なおRadio-i廃止から3年半後の2014年4月1日から、同じ周波数(名古屋のみ)で、InterFMが運営する「InterFM NAGOYA[5]が開局し、事実上放送再開した。

衛星放送のスロット数再編による放送休止[編集]

BS・CSのデジタル放送では物理チャンネルスロット(伝送帯域)が割り当てられており、スロットを再編する作業のために放送休止し停波もされる。BSデジタル放送の例では2007年11月25日深夜(11月26日未明)にBSデジタル放送(BS-1・3・13・15ch)のチャンネルのスロット再編に伴う放送休止(BSアナログ放送BS-5・7・11chは放送休止無し)、2011年3月31日深夜(4月1日未明)はNHK-BSの再編に伴うBS-15chのスロット再編でNHK-BSが全チャンネル放送休止(この時はスロット再編に無関係のNHK-BSアナログ放送BS-7・11chも放送休止になった)になった。

実験による放送休止[編集]

地上デジタル放送移行に伴う地上アナログ放送停波で発生する問題の洗い出しの為、2010年1月22日正午から24日正午までの48時間、石川県珠洲市能登町の一部でアナログ放送休止実験が行われた。

放送休止と中波遠距離受信(DX)[編集]

かつてNHK中波放送(AM放送)は毎日、深夜になると一斉に放送を休止していた。中波は夜間、電離層によって遠距離まで伝搬するようになる性質がある。中波放送用電波帯域のうち、NHKの親局および中継局の占める割合は相当であることから、この休止時間中は帯域が大きく空き、遠距離にある日本国外の中波放送局の電波を受信するといった「DX」には格好のものとなっていた。原理的には太平洋全域、また特に冬季は北欧、すなわち北極圏または北極圏近縁にあるNHKの親局や中継局と同一周波数の中波放送局の放送まで受信できるのであるが、現在では「ラジオ深夜便」が毎日終夜放送されており、概ね日本国内の民放中波ラジオ局のみ、また日本国内の民放ラジオ局であっても、NHKの親局や中継局の周波数と近接している(上下9KHzの関係にある)放送局の放送受信は困難になった。

韓国[編集]

韓国では地上波の放送は原則として1日19時間に制限されている[6]。メディア法により新聞社に対して許可された放送局(総合編成チャンネルという)では24時間放送が可能である[6]

関連項目[編集]

参考文献等[編集]

  1. ^ 『現代風俗史年表―昭和20年(1945)~平成9年(1997)増補版』 河出書房新社、1999年
  2. ^ ただし週末・祝祭日と、平日でも国会中継高校野球中継があれば放送していた
  3. ^ 1974年上半期は大阪では午前0時丁度で打ち切ることで合意していて、11PM讀賣テレビ放送が担当する火曜・木曜はネット局向けの裏送りとなることがあった。
  4. ^ 実際は1996年5月20日は特別番組「視聴者の皆様へ」放送の為に午後11時56分で、21日23日は午後11時50分で、24日25日午前0時20分でそれぞれ放送終了。TBSラジオでは、この期間中も通常通り深夜放送を実施した。
  5. ^ 体裁上はInterFMの放送支局(中継局)に準ずる
  6. ^ a b 久田和孝、韓相宇 『日本人が知りたい韓国人の当たり前』 三修社、2017年