和田慎二
![]() |
和田 慎二 | |
---|---|
本名 | 岩本 良文 |
生誕 |
1950年4月19日![]() |
死没 | 2011年7月5日(61歳没) |
国籍 |
![]() |
職業 | 漫画家、漫画原作者 |
活動期間 | 1971年 - 2011年 |
ジャンル | 少女漫画 |
代表作 |
『超少女明日香』シリーズ 『怪盗アマリリス』 『ピグマリオ』 『スケバン刑事』など |
和田 慎二(わだ しんじ、本名:岩本 良文(いわもと よしふみ)、1950年4月19日 - 2011年7月5日[1])は、日本の漫画家。広島県呉市出身[1]。漫画原作者・挿絵画家としての仕事も手がけていた。
略歴[編集]
代表作に『超少女明日香』シリーズ、『忍者飛翔』、『怪盗アマリリス』、『ピグマリオ』、『スケバン刑事』、『少女鮫』など。
1971年、東海大学在学時に「パパ!」(『別冊マーガレット』9月号)でデビュー[1]。
ジャンルは少女漫画に分類されるが、作風としては壮大なファンタジーに加えて大胆なアクションを取り入れたものが多い。
中でも『スケバン刑事』は根強い人気がある作品であり、コミックは累計で2000万部を超えている。また実写作品としてシリーズでテレビドラマ化されている。1985年にフジテレビと東映の制作により主人公・麻宮サキを斉藤由貴が演じた第1シリーズは和田の意向がほとんど反映されず、和田自身が納得のいく内容ではなかったが高視聴率作品となった。以後、麻宮サキ役は南野陽子、浅香唯が演じてこれらのシリーズも高視聴率を記録し映画版も作成されるなど好評だった。なお、和田は『II』のみ好意的な評価を下している。テレビシリーズ3作目において、和田は「ただのスケバンが強い敵を倒すのが『スケバン刑事』の面白さだ。スーパーヒーローものがやりたければ他でやれ!」「自分の為だけに闘うヒロインがあるか? なぜ学生刑事が生まれてきたのかを理解していない!」と激怒し[2]、その後は『スケバン刑事』の新作のオファーが来ても断っていた。しかし主役が大ファンだった「あやや」ならということで映画化を許諾し、テレビシリーズ終了後の2006年には4代目となる主人公・麻宮サキを松浦亜弥が主演、深作健太監督作品として映画化された。
また大学卒業後の1974年に作品『キャベツ畑でつまずいて』の中で、日本で最初に「ロリータ・コンプレックス」という言葉を使ったといわれている[3][4]。
集英社『別冊マーガレット』、白泉社『花とゆめ』などの少女誌で主に執筆していたが、『少女鮫』の終了後、少年誌やミステリー・ホラー誌などを中心に執筆。その後、白泉社と決裂して版権を引き上げ、メディアファクトリーから新作や過去の代表作を新装出版した。
2011年7月5日、虚血性心疾患のため自宅で[5]死去。61歳没[1][6][7]。秋田書店の月刊少女漫画誌『ミステリーボニータ』にて連載中だった「傀儡師リン」(コミックス既刊14巻まで)が遺作となった[1]。
特色[編集]
登場人物[編集]
和田の作品には、一度出演したキャラクターが後の作品で再登場する例がたびたびある。
例として、『スケバン刑事』には神恭一郎・海堂美尾・スガちゃんなど。これらは彼の他の作品にも登場しており、特に神恭一郎は和田がデビュー当時より執筆を続けていた単発読切シリーズの一つである『神恭一郎シリーズ』の主人公である(なお『スケバン刑事』の第二部は、『神恭一郎シリーズ』の完結編という意味合いも持つ)。『スケバン刑事』終了後は神は死亡したとして、同作品のキャラクターだったムウ・ミサがその跡を継いだ。またスガちゃんは、『スケバン刑事』後は『怪盗アマリリス』に主人公宅のお手伝いさんとしてレギュラー出演している。『スケバン刑事』でサキ自身や事件で関わった人間が傷病で入院することがあったが、唯名純子・榊原亜子とその両親なども世話になった藤野病院の院長である藤野医師が同作終了後『怪盗アマリリス』に出演し、森村海が奈々の正体を伯父の転警部に隠蔽すべく駅のホームの階段からわざと転落し部分的記憶喪失を装った際に藤野病院に入院している。また、藤野医師は姉の自殺の真相を探ろうとする小沢亜弓の孤独な戦いを描いた『5枚目の女王(クィーン)』で信楽老に新聞記者の恋人・浦部を殺され、若王子高校の悪徳教師・野田双平に強姦・妊娠させられて彼の勤務する若王子高校で投身自殺した亜弓の姉・由美を診察していた。同じ「シリーズ 風がめざめる時代(とき)」三部作の1つである「緑色の砂時計」でも強姦された伊庭燿子の処置と肺炎で入院した兄・雄二の治療を行い、姉弟の一線を越えて妊娠の末に自殺した姉との過去もあり兄妹を救おうと尽力している。
和田自身もデビュー初期の兄貴シリーズから、漫画家の「岩田慎二(いわた しんじ)」通称「岩(がん)さん」や「ヒゲクマ」[8]の名で劇中に登場することが多く、実写でもヨーヨー売りの男性役で映画『スケバン刑事』(1987年))にカメオ出演している。
スターシステム[編集]
和田は手塚治虫のスター・システムを積極的に継承している漫画家のひとりである。しかも人間の顔に関する二通りの考え方(「顔が似ているから性格も似ている」と「顔は同じであるが性格はまったく違う」)のどちらも取り入れている。例えば、『怪盗アマリリス』の黒沢ゆかりと『超少女明日香 黄金のドクロが笑う』の黒百合島のアッパラパー娘は同じ性格・同じ役割を持つのに対し、『恐怖の復活』の鳴海麻矢と『スケバン刑事』の鳴海碧子は、まるで違う役柄を演じ分けた例である。『少女鮫』の石動医師と『Lady Midnight』の木場刑事、『怪盗アマリリス』の麻丘社長と『傀儡師リン』のバイオリニスト麻丘雅(これに関しては名前が一緒)も、一人の役者が異なる役を演じていると考えることができる。神私立探偵事務所に所属する前の海堂美緒と神の親友・西園寺京吾を描いた『バラの追跡』があるが、2人が登場するも設定を変更して夫婦として描かれた『バラの迷路』がある。また、『愛と死の砂時計』で正直者で評判とされながらも実は一生遊んで暮らせる金になる儲け話を待っていた強欲な老人だった用務員が真犯人の麻矢に撲殺されるが、『スケバン刑事』のパイロット版「校舎は燃えているか!?」と本編の「3匹の蛇編」以降で登場した用務員は『愛と死の砂時計』に登場した用務員と瓜二つでもサキのおしめを替えたこともある彼女の母ナツの昔馴染の好々爺として描かれた。また、『超少女明日香』で田添社長の秘書として潜入した芙蓉夫人のスパイ・八雲が『スケバン刑事』で信楽老の第二秘書グループから第一秘書グループに昇格した八雲、『怪盗アマリリス』でマナベプロの新社長・八雲翔、『傀儡師リン』では阿積美保の弟・阿積八雲として登場した。『呪われた孤島』で悪魔の女医・日下部亜矢の悪行を知りながら愛する助手・遠藤は『騎士よ…』で自身をドン・キホーテだと思い込んだ月面総司令官と共に爆散した結晶惑星の巨大な破片から月と主人公ミック・ラル・ホワイトを守るために殉じた。
パロディキャラクター[編集]
初期作においては、掲載当時は著作権に対して大らかな時代であったこともあり、複数のパロディキャラやメカが登場していた。例としては以下の通り。
- 『超少女明日香』の四重奏(カルテット)
- 『呪われた孤島』のキャラクター
- 間久部五郎(マック):元ネタは手塚治虫のキャラクターロック・ホームこと「間久部緑郎」より名前をもじってつけられている。同人誌の「マックとユミ」シリーズのキャラクターであり、「四次元コート」では牧村五郎であり、「バラ屋敷の謎」共々に設定は変更されながらもユミと共演している。相手役は「四次元コート」と「バラ屋敷の謎」では浅野ユミ、「呪われた孤島」では網元の娘・小座倉曜子である。
- 『炎の剣』のキャラクター
- エクル国の王女ヒルダ(ヒルディアス)姫:『太陽の王子 ホルスの大冒険』のヒロインから名が採られている。また、設定等は異なるも『わが友フランケンシュタイン』に薄幸の美少女ヒルダが登場した。
- 『ラムちゃんの戦争』シリーズのキャラクター及びメカニック
- ラム:元ネタは『うる星やつら』のヒロイン。[9]
- ジオン公国軍のノーマルスーツを着込んだ「シムス・アル・バハロフ」中尉のような教育ママ。
- メカではモノアイを持つ「ムーミン型モビルスーツGB(ガバ)」(武器は耳から発射するムーミンバルカンとアイアンネイル)。その量産型「ニョロニョロ型モビルスーツ」
- GBに関しては「ム、ムーミンでっか?」「トーベ・ヤンソンに怒られまっせ」と、劇中で登場人物に語らせるセルフパロディや、プラモデル「トキメキGBちゃん」(バンダイのフィギュアキット「トキメキラムちゃん」パロディ)なども展開された。
- 「大魔神ロボ」
- 「VF-1 バルキリー型可変美少女ロボ」と、その母艦っぽい「南の島に墜落したオーバーテクノロジーを秘めた巨大宇宙船」
等が登場している。
作品リスト[編集]
- 洋子の海[10]
- 〈マックとユミ〉シリーズ
- 四次元コート[11]
- バラ屋敷の謎
- 呪われた孤島
- 炎の剣
- 騎士よ…
- 夏に来たイブ[12]
- 愛と死の砂時計
- オレンジは血のにおい
- 5枚目の女王(クイーン)
- 朱雀の紋章
- アラビアン狂想曲
- 大逃亡
- Lady Midnight
- 怪盗アマリリス
- 姉貴は年下!?
- 銀色の髪の亜里沙
- クマさんの四季
- ケンタッキーのクマ母さん
- 少女鮫
- スケバン刑事
- 忍者飛翔
- ピグマリオ
- ラムちゃんの戦争
- わが友フランケンシュタイン
- 左の眼の悪霊 → 左の目の悪霊[16] → 左の眼の悪霊[17]
- あさぎ色の伝説
- 超少女明日香シリーズ
- 緑色の砂時計
- 恐怖の復活(ホラー・リザレクション)
- 傀儡師リン
- 〈恵子とパパ〉シリーズ
- 〈エコと兄貴さま〉シリーズ
- 私と兄貴のアップルパイ
- キャベツ畑でつまずいて
また、当時の『マーガレット』や『花とゆめ』の漫画家たちとコラボレーションしていた事もある(例:『スケバン刑事』と『ガラスの仮面』美内すずえ、『超少女明日香』と『紅い牙』柴田昌弘など)。
漫画原作[編集]
- 白龍(絵:衣谷遊)
- 神に背を向けた男(絵:浜田翔子)
- ブレイズ (絵:はしもとさかき)
- ドラゴンアイズ(絵:葉月暘子)
- ブラック・マスク-黒仮面-(絵:葉月暘子)
- 一角獣(UNICORN)(絵:葉月暘子)
- クレオパトラブレスト(絵:葉月暘子)
- CROWN(絵:氷栗優)
- ネメシスの剣(絵:伊藤伸平)
- リオン(絵:島崎譲)
- Kiyoshirou伝奇ファイル(絵:細雪純)
- オーディンの薔薇(絵:富樫じゅん)
キャラクターデザイン[編集]
交友・アシスタント関係[編集]
交友[編集]
- 吾妻ひでお
- 高千穂遙
- 竹本泉
- 美内すずえ
- 山田ミネコ
- 共に鈴木光明の門下生。雑誌、単行本の紹介記事の特集では互いに寄稿している。
- 森勇気
- 元々和田の熱烈なファンであり、ファンクラブにも所属していた漫画家。生前の和田との共作やアシスタント経験もある。
アシスタント[編集]
脚注[編集]
- ^ a b c d e 訃報:和田慎二さん61歳=漫画家 - 毎日jp(毎日新聞) 2011年7月6日閲覧
- ^ 和田慎二「メイキング・オブ スケバン刑事 PART10」『スケバン刑事 10巻 青き狼の群れ』白泉社文庫、1995年
- ^ 日本のサブカルチャーにおける 《ルイス・キャロル=ロリータ・コンプレックス》
- ^ 藤本由香里 「実録!「生き字引」伝説」 『米澤嘉博に花束を』 虎馬書房、2007年8月19日、52-53頁。
- ^ 時事ドットコム:漫画家の和田慎二氏死去
- ^ 「スケバン刑事」漫画家の和田慎二さん死去 読売新聞 2011年7月6日閲覧
- ^ 漫画家の和田慎二さんが死去「スケバン刑事」の作者 共同通信 2011年7月10日閲覧
- ^ 『炎の剣』に奴隷商人として登場していた。
- ^ このような意見もあるが、ラムちゃんの戦争の初出は1978年『月刊プリンセス』4月号、うる星やつらの第一話は1978年『週刊少年サンデー39号と、ラムちゃんの戦争の初出の方が早いため、誤りである。
- ^ 別冊マーガレット少女まんがスクール第39回金賞受賞作。近く掲載予定とされながらも結局は未発表作品となり長らく読者の目に触れることはなかったが、秋田書店「和田慎二傑作選 恵子とパパと洋子の海」に収録された。
- ^ 秋田書店「和田慎二傑作選 亜里沙とマリア」に収録された。
- ^ 『和田慎二傑作選 血塗られた恐怖』に未収録であるにも関わらず、編集印刷ミスにより「左の眼の悪霊」の冒頭に2ページ混入してしまう。
- ^ 死闘を繰り広げたサキと麗巳だったが、そんな2人が「もしもサキと麗巳が敵ではなく友人として出会っていたら」をコンセプトに描かれたパラレルワールドの作品。そのため、麻宮サキが「天宮佑希」、海槌麗巳が「氷室麗華」に変更されている。新学生刑事・吉村美鈴が麗華に心酔する部下として登場して佑希を敵視しており、碧子は麗華に同士だった彼女に敵として看做される。
- ^ 『スケバン刑事』の後日譚。主人公はムウ=ミサ。サキに失恋して彼女とその伴侶である神恭一郎の死後、神の事務所を受け継いで新たな恋をするも相手は復讐鬼であり病死により再び恋する女性を失う。花とゆめCOMICS「超少女明日香 雨の封印」にのみ収録されている。
- ^ 海堂美尾の過去が描かれた番外編。
- ^ 『神恭一郎事件簿』第3巻に収録された際、「目」に変更された。
- ^ 『和田慎二傑作選 血塗られた恐怖』に収録された際、再び元の「眼」に戻された。
- ^ このタイトルで、恵子とパパシリーズが纏められ大都社から出版された
- ^ 本作は唯一パパの死後の作品であり、作者は本作をもってシリーズを完結させるつもりだった。しかし、読者の猛反対により断念してシリーズを続けることになった。
- ^ “〈私のコミック履歴書〉作家 高千穂遙さん - コミック・ブレーク - 本に出あう - コミック・ブレーク - BOOK asahi.com:朝日新聞社の書評サイト”. 朝日新聞 (2011年9月21日). 2011年9月25日閲覧。
外部リンク[編集]
|