井上尚弥 対 ルイス・ネリ戦

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井上尚弥 対 ルイス・ネリ戦
開催日 2024年5月6日
認定王座 WBAWBCIBFWBOリングマガジン世界スーパーバンタム級タイトルマッチ・WBC世界スーパーバンタム級ダイヤモンド王座決定戦
開催地 日本の旗 日本東京都文京区
会場 東京ドーム
放送局 Amazon Prime Video (日本限定)[1]
ESPN+ (全米)[2]
Sky Sports (全英)[3]
実況・解説 鈴木健(Amazon:実況)、森昭一郎(Amazon:実況)、立本信吾(Amazon:実況)[4]長谷川穂積(Amazon:解説)、山中慎介(Amazon:解説)、上田晋也(Amazon:ゲスト)、竹内由恵(Amazon:MC)[5]
主催 ボブ・アラムトップランク
オスカー・デ・ラ・ホーヤ(ゴールデンボーイ・プロモーションズ)
フェルナンド・ベルトラン(サンフェル・プロモーションズ)
ブレンダン・ギボンズ(ビバ・プロモーションズ)
本田明彦(帝拳プロモーション
大橋秀行大橋ボクシングジム
井岡弘樹 (井岡ボクシングジム)
守安竜也 (倉敷守安ボクシングジム)
ウェブサイト 2024 4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ 井上尚弥 vs ルイス・ネリ

井上尚弥 対 ルイス・ネリ
Monster(怪物) Pantera(豹)
比較データ
31歳 年齢 29歳
日本の旗 日本神奈川県座間市 出身地 メキシコの旗 メキシコバハ・カリフォルニア州ティフアナ
26戦26勝(23KO)無敗 戦績 36戦35勝(27KO)1敗
165cm 身長 165cm
171cm リーチ 169cm
オーソドックス 特徴 サウスポー
井上真吾
大橋秀行
指導者 サミール・ロサーノ
WBA世界スーパーバンタム級スーパー王者WBC世界スーパーバンタム級王者・IBF世界スーパーバンタム級王者・WBO世界スーパーバンタム級王者・リングマガジン世界スーパーバンタム級王者
世界2階級4団体統一王者
世界4階級制覇王者
評価 WBC世界スーパーバンタム級1位・WBO世界スーパーバンタム級2位・WBA世界スーパーバンタム級5位
元世界2階級制覇王者

井上尚弥 対 ルイス・ネリ戦(いのうえなおや たい ルイス・ネリせん)は、2024年5月6日、日本東京都文京区東京ドームで開催予定のプロボクシングの試合。WBAWBCIBFWBO世界スーパーバンタム級統一王者井上尚弥と、WBC世界スーパーバンタム級1位のルイス・ネリが行うタイトルマッチ。会場となる東京ドームでのプロボクシング興行は、1990年2月11日に行われたマイク・タイソン 対 ジェームス・ダグラス戦以来34年2ヶ月ぶりに実現し、同じく東京ドームで日本人のプロボクサーがメインイベントを務めるのは史上初となった。

試合までの経緯[編集]

両者の世界戦及びネリの指名挑戦権獲得まで[編集]

2020年9月26日、コネチカット州のモヒガン・サン・カジノで、ネリがWBC世界スーパーバンタム級王座決定戦でWBC世界スーパーバンタム級6位のアーロン・アラメダと対戦し、12回3-0(115-113、116-111、118-110)の判定勝ちを収め王座獲得及び世界2階級制覇を達成した[6]

2021年5月15日、カリフォルニア州カーソン ディグニティ・ヘルス・スポーツ・パーク・テニスコートで、ネリがWBA世界スーパーバンタム級レギュラー王者ブランドン・フィゲロアと王座統一戦を行い、7回2分18秒KO負けとなりプロ初黒星を喫しWBA王座獲得とWBC王座は初防衛に失敗、王座から陥落した[7]

2023年2月18日、カリフォルニア州ポモナのフォックス・シアター・ポモナで、ネリがWBCスーパーバンタム級3位のアザト・ホバニシャンとWBC世界同級挑戦者決定戦を行い、11回1分51秒TKO勝ちを収め、WBC王座を保持するスティーブン・フルトンへの挑戦権を獲得した[8]。この試合でネリは8万ドル(約1000万円)、ホバニシャンは12万5千ドル(約1600万円)のファイトマネーを稼いだ[9]

2023年7月25日、有明アリーナで井上がWBC・WBO世界スーパーバンタム級統一王者スティーブン・フルトンと対戦し、8回1分14秒TKO勝ちを収め2団体王座の獲得及び世界4階級制覇を達成した[10]

2023年11月15日、WBCは井上とネリによる指名試合を命じた[11]

2023年12月26日、有明アリーナで井上がWBA・IBF世界スーパーバンタム級統一王者マーロン・タパレスと対戦し、10回1分2秒KO勝ちを収め、WBC・WBO王座の初防衛及びWBA・IBFの2団体王座を獲得し、バンタム級に続き史上2人目となる2階級4団体王座統一に成功した[12]

井上が勝者となった直後、ネリは「日本でお会いしましょう。メキシコVS日本」とつづり、優勝カップのスタップを4つ並べ、自身のSNSにて井上に向けて対戦表明を明らかにした[13]。また大橋ジムの関係者は、井上の次戦を「ゴールデンウイークあたりになる」と明言し、2024年5月上旬に東京ドームを仮予約していることが明らかになった[14]

2024年1月8日、井上とネリが5月に東京で対戦することで合意したとアメリカのスポーツ専門局ESPNが報じたが、大橋ボクシングジム大橋秀行会長は9日、東京都内で「交渉中」と話した[15]

2024年2月26日、JBCは日本における活動停止処分となっていたネリに対し、ライセンス申請資格回復を認めることを発表した[16]

対戦決定後の概要から試合まで[編集]

2024年3月6日、東京ドームホテルで記者会見が開かれ、2024年5月6日に東京ドームで井上とネリによるタイトルマッチが行われることが発表された[17]。またアンダーカードで、井上の弟でWBA世界バンタム級王者井上拓真とWBA世界バンタム1位石田匠のタイトルマッチ、WBA世界フライ級王者ユーリ阿久井政悟とWBA世界フライ級3位桑原拓のタイトルマッチ、WBO世界バンタム級王者ジェイソン・モロニーとWBO世界バンタム級10位武居由樹のタイトルマッチが行われ、国内の1つの興行で4つの世界戦が行われるのは史上初となった[18]。記者会見の冒頭の挨拶でネリは「再び日本の地を踏むことが出来て大変うれしく思います。また、皆さまには謝りたいと思っています。日本のボクシングコミッションの皆さま、ボクサーの皆さま、帝拳プロモーションの皆さまに謝罪を申し上げます。2度、皆さまを裏切ってしまいましたが、今回はきちんと節制し、調整をしています。偉大な、グレートな試合をみせたいと思います。チャンスをくださった井上選手、帝拳プロモーション本田会長、チームのみんな、ありがとうございます」と謝罪の言葉を並べた[19]。これについて、井上は後日「どういうモードで来るのか正直気になっていました。いろいろ想定していたけど、反省モードで来た!って。映像で見たら、自分の方がたち悪そうって。すごい行儀よく来たので戸惑いましたね」と回想した[20]

2024年3月11日、大橋ボクシングジムの大橋秀行会長が、2024年5月6日に行われる4大世界戦の試合順を発表。第1試合がWBA世界フライ級王者ユーリ阿久井政悟vsWBA世界フライ級3位桑原拓、第2試合がWBA世界バンタム級王者井上拓真vsWBA世界バンタム級1位石田匠、第3試合となるセミファイナルでWBO世界バンタム級王者ジェイソン・モロニーvsWBO世界バンタム級10位武居由樹、第4試合のメインカードで井上尚弥vsルイス・ネリとの試合順となった[21]。試合順について大橋秀行は、「兄弟で続いちゃうと、真吾トレーナーが大変だから」と兄弟での連戦を避け、父親の井上真吾トレーナーが万全の状態で2試合に臨めるようにしたことを明かした[22]

2024年3月25日、井上が横浜市の大橋ジムで、WBA世界スーパーバンタム級11位ケビン・ゴンサレスを相手に8ラウンドのスパーリングを行った[23]。井上はジムを通じて、「一昨年のバトラー戦からからラウンド数は多くしている。その延長線上として継続している。もともとの腰痛などの故障も少なくなったので長いラウンドをやっている。感覚的にペースをどちらがどう握っているかが分かりやすくなる。2人で8ラウンドを消化する時はスタミナと集中力を意識するのが目的。1人で8ラウンドを消化する時は、各ラウンドで相手とのバランス、組み立て方、同じように疲労をためた中での駆け引きを意識するのが目的になる」とコメント。3月17日からIBFフェザー級7位ジョナサン・ロペスも来日し交代でスパーリングパートナーを務めており、「2人ともネリには似ていない。ただタイプの違う2選手に対して、自分のボクシングの幅を広げていけば、絶対にネリに当てはめることができる」と語り、現時点の不安を問われると「ないですね。調子良く仕上がっています。万全と言える」と、決戦に自信を示した[24]

2024年4月3日、ネリが自身のSNSに英語で「さぁ行こう」と綴り、熱心に自身の首や顎周りを強化する筋力トレーニングに励む練習動画を公開した[25]

2024年4月6日、試合1ヶ月前となり井上がメディアに向けてショートインタビューを公開し、「今は凄く良い仕上がりです。ネリ選手が相手、東京ドームでやれること、それが自分の中でプラスに働いている」とコメントし、今後の調整は「追い込みながら1つ1つ確認しながら、ズレをなくしていくことが必要になる。体重調整も必要で、いろいろなことが入り交じっていく時期だから、自分としてもすごく楽しい時期になる。そのような感覚で1カ月間過ごしていきたい」と語った[26]。同日、大橋ボクシングジムの大橋秀行会長が自身のインスタグラムで、井上がWBCから義務付けられている1ヶ月前計量をパスしたことを報告した[27]

2024年4月9日、ネリがアメリカ専門メディア「ボクシングシーン」のインタビューに応じ、井上について「彼の試合を見てきたが、過大評価されている。普通の平凡なファイターだ。少なくとも私にはそう見える。KOしに行く」と挑発ともとれる言葉を口にし、「私は典型的なメキシカンスタイル。前進してどんどんパンチを打っていく。12ラウンドまで行く準備はできている。でも、12ラウンドまで行かないことを願っています。早く終わってほしいね」と判定までもつれることも考慮しながら、早期決着への自信も見せた。そして、「みなさんはコンディションを整えた、強く、速く、そして賢く、ハードな打撃を繰り出すネリの姿が見られるだろう」と言葉を続け、井上については「私が見る限りスピードがあって、賢い。パワーもある。だが、パンチを打つときに隙ができる。そのときこそ私の出番だ」と警戒しながらも、井上のスーパーバンタム級での過去2戦については「タパレスはB級ファイターだ。私にとって彼はうまくなく、10ラウンドも続いて状況を困難にさせた。フルトンは井上のキャリアの中で最高の勝利だろうが、フルトンはそれほど多くのパンチを打たなかった。彼は怖がった」と分析。かつてJBCから活動停止処分を科されたことについても「全く気にしていない」とし、2月にJBCが資格回復を認めたことに「私が井上と戦うことでもうかるからじゃないか」と語り、自身への批判が渦巻く敵地で闘うことについて「私にとっては、何よりもその方が穏やかだ。私は王者ではないし、無敗ではない。勝っても負けても問題はない」とした上で「彼(井上)にはリスクがある…再戦条項はない。それは彼が自信過剰だからだ。彼は楽勝と思っているが、意外な出来事が起きることになる。彼がこの戦いを受け入れたのは間違いだろう。後悔するだろう」とコメントした[28][29]。またネリは自らの最終的な現役生活のプランを口にし、「すべてが計画通り進めば、ムロジョン・アフマダリエフとの試合が行われる可能性がある。それが私の最後の試合になるだろう。私なら引退する」と明かした[30]

2024年4月10日、井上が横浜市内のジムで公開練習を行った。公開練習は試合10日ほど前が通例だが、今回は31歳の誕生日当日になった。公開練習ではシャドー2回、サンドバッグ2回をこなし、キレのある動きを披露。誕生日を祝われると「ありがとうございます。(心境は)変わらずですね。年は関係なくパフォーマンスは成長している。いいキャリアを積めていると改めて思います」とコメントし、「いつも通り順調です。スパーはまだ重ねていきます。いま87ラウンドくらい。100回は超えるかなと。計画通りです。ここからは感覚のずれを修正していく。減量にも入るので、しっかりと整えていくことが大事。何ラウンドかわからないけど、どのパンチでも倒せるように準備している。そうなるべく仕上げてます」とKO決着へ意欲。ネリの印象は「意外と攻撃に目が行きがちですが、打たれ強さもある。荒々しいボクシングの中で防御の細かいうまさもある。対峙した時の空間の使い方も上手いと思う」と表現した[31]。一方で、アメリカメディアのインタビューで大口を叩いたネリについては「そっちのネリが本物ですよね。この間のは何だったのか」と呆れ、ネリが井上、アフマダリエフに勝てば引退だと語っていたことについて問われると「それだったら志が低いですね」とコメントした[32][33]。また会見内で大橋ボクシングジムの大橋秀行会長は、体重超過など不測の事態に備え、メインイベントのリザーブカードを用意し元IBF世界スーパーバンタム級王者テレンス・ジョン・ドヘニーの参戦を発表。興行内でスーパーバンタム級8回戦でブリル・バヨゴスと対戦する準備を進め、万が一メインイベントに欠場者が出れば、もう片方の選手と対戦することとなった[34]。またこの日にネリがWBCから義務付けられている1ヶ月前計量を58.7kgでパスしたことも明らかになった[35]

2024年4月11日、WBCはメインイベントの勝者にWBCダイヤモンド王座のベルトを贈呈することを発表した[36]。井上が勝利した場合、日本人プロボクサーとしては初のダイヤモンド王座獲得王者となる。同日、ネリはメキシコメディア『Izquierdazo』のインタビューで、「イノウエはパウンド・フォー・パウンドで、多くの人からNo.1と考えられている。(勝てば)最大の功績になる。俺は賢くなるつもりだ。打たなきゃいけない時に打って、逃げなければいけない時には逃げる。そして、ボクシングしないといけない時はボクシングするつもりだ。正直に言うと、日本で勝つにはどうすればいいかを考えている。日本だから(井上を)KOしなければ、試合を盗まれてしまうんだ。イノウエは慎重に試合へ臨むだろう。だからどんな試合になろうと全力を尽くすつもりだ。試合は衝撃的なものになるさ」と断言し、「俺はしっかりとボクシングをして、自分の素晴らしいスタイルを見せながら、いい試合をしたいと考えている。だが、この試合は血にまみれたもので、激しく、強く、暴力的なKOに値する展開になると思う。少なくとも俺はKOしに行く」とコメントした[37]

2024年4月18日、大橋ジムは井上が招聘していたメキシコ人とのスパーリングを打ち上げたことを発表した[38]。翌日井上は自身のSNSにて、上述のネリのインタビューに対し「ネリが4年半前の片目で戦っていた試合を参考にしているのなら大きな間違いだな。。。」と投稿した[39]

2024年4月19日、ネリがテキサス州エルパソで行われたWBCの試合14日前の体重チェックで、規定を下回る57.87kgでクリアしたことが明らかになった[40]

2024年4月21日、ネリが羽田空港着の便で来日。試合2週間前の来日は「時差を取り、気候になれるため」とし、ウエートも問題なしを強調し、「私はパワフルだ。5ヶ月練習してきた」と好調をアピールした。空港に集まったメディアに対するインタビューにおいて、ネリは「尚弥はいいボクサー。スピードがあり、パワフルで才能がある。ただ、パウンド・フォー・パウンドランキングで1位だとは思わない」と語り、「プレスが彼を1位にランキングするならそれはうれしい。なぜなら私は1位の選手と対戦できるからだ。私は彼をリスペクトしているが、彼を恐れてはいない。彼をノックアウトする」とKO宣言した[41]。こうした発言に対して、井上はその日のうちに自身のSNSにて「そのくらいの意気込みがなきゃね。ワクワクしてきた、、、」と投稿した[42]

2024年4月24日、帝拳ジムでネリがメディアの取材を受けた。ネリは井上について「グレートなボクサーだと思う」と敬意を忘れなかったが、「過大評価されていると思う。根拠の一つとしてタパレスと10ラウンドまで戦った」と語り、「とても厳しい試合になると思うが、それは私にとっても井上にとってもだ。ともに勝つ可能性があるが、私はメキシカン、すべてをリングで出し、リングで死ぬ覚悟がある」と必勝を宣言した。練習でネリはシャドーボクシングとミット打ちを1ラウンドずつ披露し、練習を視察した井上真吾トレーナーは「ワイルドな打ち方は想定内。リスペクトしながら自分の気持ちも伝えていた。普通ですよね」とコメントした[43]

対戦カード[編集]

階級 契約 vs. 結果 ラウンド 時間 Notes
スーパーバンタム級 122 lbs. 日本の旗 井上尚弥 (C) vs. メキシコの旗 ルイス・ネリ - - - Note 1
バンタム級 118 lbs. オーストラリアの旗 ジェイソン・モロニー (C) vs. 日本の旗 武居由樹 - - - Note 2
バンタム級 118 lbs. 日本の旗 井上拓真 (C) vs. 日本の旗 石田匠 - - - Note 3
フライ級 112 lbs. 日本の旗 ユーリ阿久井政悟 (C) vs. 日本の旗 桑原拓 - - - Note 4
スーパーバンタム級 122 lbs. アイルランドの旗 テレンス・ジョン・ドヘニー vs. フィリピンの旗 ブリル・バヨゴス - - - Note 5

^Note 1 WBAWBCIBFWBOリングマガジン世界スーパーバンタム級タイトルマッチ、WBC世界スーパーバンタム級ダイヤモンド王座決定戦
^Note 2 WBO世界バンタム級タイトルマッチ
^Note 3 WBA世界バンタム級タイトルマッチ
^Note 4 WBA世界フライ級タイトルマッチ
^Note 5 スーパーバンタム級8回戦

試合の詳細[編集]

5回の体重測定とドーピングテストを義務化[編集]

過去に日本国内で山中慎介と2度世界戦を行ったネリは、2017年8月15日に行った1度目の対戦でドーピング検査においてネリの検体からクレンブテロールに非常に酷似した禁止薬物のジルパテロールに対する反応が陽性[44]2018年3月1日に行われた2度目の対戦では、ネリが体重超過で王座を剝奪された経緯があり[45]、WBCは試合開始前までに計5回の体重測定を行うことを公表した[46]。JBCはWBCと協力し徹底したドーピングテストも実施することになり、2024年3月5日にネリはVADA(ボランティア反ドーピング機構)による抜き打ち検査を受け[47]、3月20日に陰性であったことを公表した[48]。またWBCの60日前計量でネリは60.7kgでクリア[49]。大橋ボクシングジムの大橋秀行会長は「1ポンドでも計量オーバーしたら試合はやりません。ファイトマネーも支払いません。公言しておきます」と宣言した[50]

WBC規定の事前計量は、試合30日前がリミット55.3kgの10%(60.83kg)、15日前が5%(58.065kg)、7日前が3%(56.959kg)を上限に設定[51]

山中慎介とネリの因縁[編集]

2024年3月6日に東京ドームホテルで行われた記者会見に、元WBC世界バンタム級王者の山中慎介が評論家の仕事で来場しており[52]、会見終了後に山中がネリに挨拶に向かうとネリは「私の間違いで山中さんのキャリアを終わらせてしまったことは申し訳ないです」と謝罪した。山中は「今は私の方が体重は重い」と冗談を飛ばしつつ、「今は(体重が)約60kgなんでしょ?すごく節制しているんですね」とネリに調整ぶりを質問すると、ネリは「60kgちょうどです。すごく神経をつかっている。もう2カ月間、体重管理をしている」と答え、山中は「東京ドームにふさわしい、良い試合を期待しています」とエールを送ると、笑顔で握手して和解した[53]

山中とネリとの因縁について井上は「もちろん過去に因縁があるのも分かっている」とした上で、「今回に関しては自分対ネリの戦いになる。ネリが挨拶で反省していると言っていたし、過去の因縁は自分の中で持ち込まないように戦いたい」と話し、会見後には自ら手を差し出し握手を求めるなど大人の対応を見せた[54]。また山中自身も後のインタビューにおいて、「井上は僕とネリとの因縁は意識していなくて、"ひとつの試合"として捉えていると思います。僕自身もそう思っておいてもらいたい」と、井上には自身とネリの因縁と関係なく戦ってもらいたい意向を語った[55]

ネリの減量苦[編集]

ネリは2024年1月にメキシコのポッドキャスト番組『Un Round Mas』に出演した際に、自身の調整方法の一端を明かし、「俺はいつも食生活に問題を抱えている。一日に3、4パックのオレオを食べて、チョコレートミルクも飲んでしまう。あと、クッキーやシリアルなんかも好きな時に食べてしまうんだよ。とにかくたくさん食べてしまうんだ」と自身の偏食ぶりを語り、2021年5月15日に行われたブランドン・フィゲロア戦でも減量苦であったことを告白。「俺はサンディエゴ(試合の舞台)に行く15日前の時点で減量をしていなかったんだ。テカテにある牧場で、キャンプをしながらピザを食べたりしていたんだ。そしたら父親に怒られたんだ。『そんなクソみたいなことはすぐにやめろ』ってね」と語り、父親から「自信過剰になるな。お前は試合で何もできないぞ」と雷を落とされたが、当時試合直前にもかかわらず、体重は28ポンド(約12.7kg)もリミットを超過。そこからの猛減量で15ポンド(約6.8kg)もダウンしたものの、前日計量の4日前となってもリミットには至らず、最終的に下剤を使用し、何とか間に合わせたが、「俺は勝てないな」と悟って迎えた試合は7回2分18秒KO負けを喫した。しかし番組内でネリは井上に対して、「俺はあいつに勝つ。簡単にね。俺にとって厳しい戦いだっていうのは分かってるし、イノウエは強い。でも勝つのは俺だ」と豪語した[56]

後にネリは山中戦で犯した大幅体重超過について言及し、「それまでは体調管理は自分でしていた。栄養士に頼ったことは一度もなかった。今までは問題なかった。山中戦2戦目の時にプロモーターが私に『栄養士を付ける。体重オーバーを避けるためだ』と言ってきた。私は『OK』と言った。栄養士に任せたが、結局失敗した。彼を信じてしまった私の責任もある。栄養士を信じて一度も試したことのない方法でやってしまった」と告白した[57]

チケット[編集]

  • 2024年3月9日より第1次予約受付抽選が開始[58]。2024年4月13日からリセール・一般販売先着受付が開始[59]
    • SRS席:22万円
    • RS席:16万5000円
    • SS席:13万7500円
    • 指定S席:11万円
    • 指定A席:9万9000円
    • 指定B席:7万7000円
    • スタンド内野指定下段:3万3000円
    • 内野指定上段:2万2000円
    • 2階指定席:1万1000円

放送[編集]

国/地域 地上波放送 ケーブル・衛星放送 PPV ネット配信
日本の旗 日本 (開催地) N/A Amazon Prime Video
アメリカ合衆国の旗 アメリカ N/A ESPN+
イギリスの旗 イギリス N/A Sky Sports N/A

脚注[編集]

  1. ^ 井上尚弥5・6東京ドーム防衛戦、4試合ぶりにAmazonプライム・ビデオで生配信 日刊スポーツ 2024年3月6日
  2. ^ 人生を一変させる井上尚弥からの“恩恵” 元バンタム級王者が告白「イノウエのおかげで住宅ローンは1円も借りずにいる」 COCO KARA NEXT 2024年4月7日
  3. ^ 井上尚弥とネリの東京D決戦を電撃生中継! 英国内で高まる“怪物”への期待「イノウエは最も過小評価されている男」 COCO KARA NEXT 2024年3月14日
  4. ^ 【ボクシング】井上尚弥VSネリなど4大世界戦の番組出演者発表 解説は長谷川穂積氏、山中慎介氏 サンケイスポーツ 2024年4月26日
  5. ^ 5.6東京ドーム 解説は長谷川穂積&山中慎介、くりぃいむしちゅー上田晋也さんMC Boxing News(ボクシングニュース)2024年4月26日
  6. ^ ネリ判定勝ち WBC・S・バンタム級王座獲得 前2冠王者ローマンがネリへの挑戦権ゲット Boxing News(ボクシングニュース) 2020年9月27日
  7. ^ ネリついに初黒星 フィゲロア7回KO勝ちで9月に統一戦 Boxing News(ボクシングニュース) 2021年5月16日
  8. ^ ネリ激闘制してWBC・S・バンタム級挑戦権獲得 フルトンと井上尚弥に宣戦布告 Boxing News(ボクシングニュース) 2023年2月19日
  9. ^ Per CSAC, for Sat's GB/DAZN card purses: Luis Nery $80k,Azat Hovhannisyan $125k”. ダン・ラファエル (2023年2月18日). 2023年4月4日閲覧。
  10. ^ 井上尚弥がS・バンタム級2団体王者に 王者フルトンを8回に沈める 年内の4団体統一へ前進 Boxing News(ボクシングニュース) 2023年7月25日
  11. ^ 井上尚弥vsタパレス勝者にWBCが悪童ネリと対戦指令! イーファイト 2023年11月16日
  12. ^ 井上尚弥が10回KO勝ち 2階級で4団体統一の偉業達成 奮闘のタパレスにも拍手 Boxing News(ボクシングニュース) 2023年12月26日
  13. ^ 井上尚弥挑戦者候補ネリ「日本でお会いしましょう」アフマダリエフ「素晴らしい戦いに」宣戦布告 日刊スポーツ 2023年12月27日
  14. ^ 井上尚弥の次戦は5月、タイソン戦以来34年ぶり東京ドーム有力 対戦相手に「悪童」ネリ浮上 日刊スポーツ 2023年12月27日
  15. ^ 井上尚弥、5月ネリ戦合意と米報道 大橋会長「交渉中」 日本経済新聞 2024年1月9日
  16. ^ JBCがネリの出場資格認める S・バンタム級4団体統一王者 井上尚弥戦に前進 Boxing News(ボクシングニュース) 2024年2月26日
  17. ^ 井上尚弥 5.6東京ドームでネリと防衛戦 「因縁持ち込まない」 ネリ「日本はやりやすい」 Boxing News(ボクシングニュース) 2024年3月6日
  18. ^ 5.6東京ドーム 井上拓真が石田匠とV2戦、ユーリ阿久井は桑原拓と、武居由樹は世界初挑戦 Boxing News(ボクシングニュース) 2024年3月6日
  19. ^ 「皆さまに謝りたい」悪童ネリが”全方面”に謝罪 井上戦までの厳しいドーピング、計量チェックに陣営は「彼も頑張っている」 COCO KARA NEXT 2024年3月6日
  20. ^ 井上尚弥 ネリの反省モード「戸惑った」も「きっとあんないいヤツではない」 デイリースポーツ 2024年3月10日
  21. ^ 5・6ボクシング4大世界戦 試合順はユーリ阿久井政悟―桑原拓から井上拓真、武居由樹、メインは井上尚弥―ルイス・ネリ スポーツ報知 2024年3月11日
  22. ^ 井上尚弥 vs ネリ激突の5・6東京ドーム セミに元K-1王者・武居由樹〝浮上〟の理由 東スポWEB 2024年3月12日
  23. ^ 井上尚弥「不安はまったくない」 5.6東京ドームのネリ戦に向けメキシカンとスパー Boxing News(ボクシングニュース) 2024年3月25日
  24. ^ 井上尚弥が5・6東京ドーム決戦へ向けWBA11位とスパー「自分のボクシングの幅を広げていく」 中日スポーツ 2024年3月25日
  25. ^ “モンスター対策”で顎を強化!? 井上尚弥戦が迫るネリの練習風景に反響相次ぐ「謙虚な態度」「イノウエには及ばない」 COCO KARA NEXT 2024年4月4日
  26. ^ 井上尚弥 4.6“モンスター”初世界王座獲得から10年 東京ドーム防衛戦まで1ヶ月 Boxing News(ボクシングニュース) 2024年4月6日
  27. ^ 井上尚弥が1か月前計量パス 大橋秀行会長がインスタで報告 スポーツ報知 2024年4月6日
  28. ^ 殊勝な態度は演技?ルイス・ネリが井上尚弥を「過大評価、過信、平凡」と言いたい放題 スポーツ報知 2024年4月10日
  29. ^ 井上尚弥と激突の悪童ネリが「彼は自信過剰だ」と挑発〝完全アウェー〟も大歓迎 東スポWEB 2024年4月10日
  30. ^ ネリ「井上尚弥は過大評価されている。普通のファイター」と痛烈批判 米メディア報道 日刊スポーツ 2024年4月10日
  31. ^ 井上尚弥が31歳に 5.6東京ドーム4団体防衛戦に向け集中「ネリは細かいうまさがある」 Boxing News(ボクシングニュース) 2024年4月10日
  32. ^ 井上尚弥、ネリKOへ意欲「どのパンチでも倒せるように」 31歳バースデーに練習公開、誕生日会は「やらないです」 THE ANSWER 2024年4月10日
  33. ^ 井上尚弥、ネリの“悪童回帰”にチクリ「志が低いですね」 対面時は優等生も「そっちが本物」 THE ANSWER 2024年4月10日
  34. ^ 元世界王者 TJ・ドヘニーが5.6東京ドーム参戦 ネリの万が一に備えリザーブに Boxing News(ボクシングニュース) 2024年4月10日
  35. ^ 井上尚弥VSネリに異例の“控え”選手用意 突然の中止対策、元世界王者ドヘニーが東京D興行参戦 THE ANSWER 2024年4月10日
  36. ^ 井上尚弥VSネリの勝者にWBCがダイヤモンドベルト授与へ スポーツ報知 2024年4月11日
  37. ^ 「KOしなければ試合を盗まれる」ネリが母国メディアに語った“井上贔屓”への懸念「日本で勝つにはどうすればいいか」 COCO KARA NEXT 2024年4月13日
  38. ^ 井上尚弥が海外パートナーとのスパー打ち上げ 5.6東京ドームに向け手ごたえ十分 Boxing News(ボクシングニュース) 2024年4月18日
  39. ^ 井上尚弥「ネリが4年半前の片目で戦っていた試合を参考にしているのなら大きな間違い」 スポーツ報知 2024年4月19日
  40. ^ 【ボクシング】ルイス・ネリ、14日前計量パスを報告!「ごまかしはない」」 イーファイト 2024年20日
  41. ^ 5.6 井上尚弥と東京ドーム決戦のネリ来日「ナオヤがPFP1位だとは思わない」 Boxing News(ボクシングニュース) 2024年4月21日
  42. ^ 井上尚弥「そのくらいの意気込みがなきゃね。ワクワクしてきた」来日したネリの挑発にXで反応 スポーツ報知 2024年4月21日
  43. ^ 井上尚弥に挑戦のネリ「井上はマイケル・ジョーダンではない」5.6東京ドーム 番狂わせに自信 Boxing News(ボクシングニュース) 2024年4月23日
  44. ^ 山中慎介を破ったネリ、ドーピング検査陽性反応 Boxing News(ボクシングニュース) 2017年8月24日
  45. ^ ネリ計量失格で王座はく奪、山中は勝てば王者に Boxing News(ボクシングニュース) 2018年2月28日
  46. ^ 井上尚弥vsネリ 5・6ドーム決戦まで5回の体重測定を義務化=WBC発表 東スポWEB 2024年3月6日
  47. ^ ネリ、5日に抜き打ちドーピング検査受けていた…6年ぶり来日で山中慎介氏に直接謝罪 スポーツ報知 2024年3月7日
  48. ^ 井上尚弥と5月6日対戦の「悪童」ネリがドーピング検査で陰性 ビバプロモーションがXで発信 スポーツ報知 2024年3月21日
  49. ^ 大橋会長、ネリが体重超過なら”試合拒否!”改心ネリは60日前計量パス「節制している、最強を証明する」 イーファイト 2024年3月7日
  50. ^ 大橋秀行会長宣言「1ポンドでも計量オーバーしたら試合はやりません」早くもネリを厳重チェック 日刊スポーツ 2024年3月6日
  51. ^ ネリ、減量は残り2.3kgで順調 試合13日前でもう体重超過時と同じ「今は57.60kg。Max状態だ」 THE ANSWER 2024年4月23日
  52. ^ 元WBCバンタム級王者山中慎介氏が「因縁」ルイス・ネリから直接謝罪「私の間違いで…」 日刊スポーツ 2024年3月6日
  53. ^ 【ボクシング】ネリが山中慎介氏に直接謝罪「私の間違いでキャリアを終わらせてしまったことは申し訳ない」 山中氏は笑顔で握手して歴史的和解 サンスポ 2024年3月6日
  54. ^ 井上尚弥 ネリ戦は「過去の因縁持ち込まない」 相手が体重超過なら「絶対やりません」大橋会長断言 スポニチアネックス 2024年3月6日
  55. ^ 山中慎介が語る井上尚弥vsネリ「敵討ちではなく『ひとつの試合』と思ってほしい」 フェザー級転向も「問題ない」 Web Sportiva 2024年3月12日
  56. ^ フィゲロア戦は直前に12.7キロも超過! ネリが漏らした減量苦への本音 父親から「自信過剰になるな」と憤怒された日 COCO KARA NEXT 2024年3月29日
  57. ^ 悪童ネリが山中慎介戦で体重超過の〝真相〟を告白「栄養士に任せたが結局失敗した」 東スポWEB 2024年4月24日
  58. ^ 5.6東京ドーム 4大世界タイトルマッチ チケットは9日抽選受付開始 Boxing News(ボクシングニュース) 2024年3月7日
  59. ^ 5.6東京ドーム世界戦チケット リセール&一般販売先着受付あす13日開始 Boxing News(ボクシングニュース) 2024年4月12日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

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マーロン・タパレス戦
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2024年5月6日
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