ロシアにおけるLGBTの権利

ロシア連邦におけるLGBTの権利
	レインボーフラッグの色のロシア国土
同性間の; 性交渉	1993年より非犯罪化
性自認/性表現	違法
同性間の; 関係性の承認	なし
同性カップルによる; 養子縁組の引受	なし
同性愛者を; 公表しての; 軍隊勤務	許可
差別保護	なし

この項目ではロシアにおけるLGBT（レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー）について扱う。

ロシアでは同性での性行為は合法であるが^[1]、2023年、ロシアの最高裁判所はLGBTの権利運動を「過激」とみなし活動を違法とした^[2]^[3]^[4]。

歴史[編集]

詳細は「ロシアにおけるLGBTの歴史（英語版、ロシア語版）」を参照

ロシア帝国時代[編集]

1716年、ピョートル大帝は軍隊における男性の同性愛を禁止した。ソドミーの禁止は、ロシアの近代化を目的とした大規模な改革運動の一部であった^[5]。

1832年、第995条により、ムジェロジストヴォ（ロシア語でソドミーの意）を違法化し、もし行為を行った場合、5年ほどシベリアへ流刑された^[6]^[7]。

ソビエト連邦時代[編集]

十月革命の後、ボリシェヴィキ政権は同性愛を合法化した^[8]が、 1933年のスターリン政権下では法令で同性愛を再び犯罪とした。1961年、刑法第121条により男性の同性愛のみを明示的に禁止し、最長5年の重労働を科すことが明記された。女性同士の性行為に関する刑法はなかった^[9]。

ロシア連邦時代[編集]

ソ連崩壊後の1993年 4月、ロシア大統領ボリス・エリツィンは、ロシアの法律を欧州評議会に合わせる一環として、男性の同性愛を再び合法化した^[10]。

1999年に同性愛はロシアの精神障害リストから削除された。しかし、ロシア政府は2023年 7月1日、同性愛を精神障害として分類することを事実上復活させるための新しい法律を導入した^[11]。

2006年、ロシアにおいて最初にして2024年3月現在唯一のLGBT権利団体であるロシアLGBTネットワーク（英語版、ロシア語版）が設立された^[12]^[13]。

2009年5月8日、ロシア下院は、ロシアにおける同性愛者の「プロパガンダ」を犯罪とする法案を否決した(賛成票は90票で、必要な226票には届いていない)^[14]。

2013年 6月30日、ロシアにおける同性愛宣伝禁止法が成立し、「非伝統的な性的関係」を未成年に宣伝することが禁じられた^[15]。2022年に改定され、対象を未成年から成人にも拡大した^[16]^[17]。

2014年ソチオリンピックでは、2012年3月に当時有志によって大会会場であるソチでの設置が計画されていたプライドハウス（英語版）が禁止された^[18]ことからLGBT権利抗議活動がロシア国内にとどまらず世界中で発生した^[19]^[20]。

2019年、LGBTの立ち入りを禁止する看板を店の入り口に掲げたパン屋が罰金を科された^[21]。

2022年にロシアのウクライナ侵攻が起こってから性的少数者に対する風向きがさらに強まり、2023年7月、プーチン大統領は性別適合手術を禁止する法案に署名し、同法案が両院で全会一致で可決された^[22]。同年11月、ロシアの裁判所はLGBT市民運動を「過激派組織」に指定し、ロシア全土での活動を禁止した^[4]。

世論[編集]

ロシアは同性愛に反対している人が多く、2022年の調査では、ロシア人の74%が同性愛を社会に受け入れられるべきではないと答えた（これは2002年の60%から増加している）のに対し、同性愛は社会に受け入れられるべきだと答えたのはわずか14%であった^[23]。

2013年、調査対象となったロシア人の16%が同性愛者を社会から隔離すべきだと答え、22%が治療を強制すべきだと答え、5%が同性愛者を排除すべきだと答えた^[24]。

ロシア世論財団(FOM)が実施した2019年の世論調査によると、ロシア人の7%がロシアで同性婚を認めるべきだと賛成し、87%が反対した^[25]。

ヘイトクライム[編集]

ロシアでは性的少数者に対するヘイトクライムが増加傾向にある。2013年から2018年の間に、性的少数者に対するヘイトクライムの件数は3倍に増えた。このような犯罪は2013年以前から存在していたが、同性愛宣伝禁止法の導入後、暴力のレベルは大幅に増加した^[26]。2010年から2020年の間に、853人に対して1056件の憎悪犯罪が発生し、365人が死亡したと報告されている^[27]。

チェチェン[編集]

詳細は「チェチェンにおけるLGBTの権利（英語版、ロシア語版）」および「チェチェンにおける同性愛者粛清」を参照

ロシア連邦内の共和国であるチェチェン共和国では、当局による同性愛者を標的とする強制失踪（拉致、投獄、拷問）と超法規的殺人が行われているとされる^[28]。ロシア語野党新聞であるノーヴァヤ・ガゼータで最初に報告され、2017年2月以降、100人以上の男性が拘留され、拷問され、少なくとも3人が超法規的殺人で死亡したと報じられた^[29]。

2021年3月、欧州連合はチェチェンでLGBTの人々を迫害したとして告発されたチェチェン当局者2人に経済制裁を科した^[30]。

脚注[編集]

^ “UNHCR | Refworld | Russia: Update to RUS13194 of 16 February 1993 on the treatment of homosexuals”. web.archive.org (2012年10月8日). 2024年3月9日閲覧。
^ Hansford, Amelia (2023年11月30日). “Russia high court declares 'LGBTQ+ activism 'extremist'” (英語). PinkNews | Latest lesbian, gay, bi and trans news | LGBTQ+ news. 2024年3月9日閲覧。
^ “Russian Supreme Court bans the whole LGBTQ movement and brands activists 'extremists'” (英語). Sky News. 2024年3月9日閲覧。
^ ^a ^b “Russian court bans 'LGBT movement'” (英語). (2023年11月30日) 2024年3月9日閲覧。
^ ロシアの「LGBT」——性的少数者の過去と現在
^ “Where is it illegal to be gay?” (英語). BBC News. (2014年2月5日) 2024年3月9日閲覧。
^ “A History of Homophobia | The St. Petersburg Times | The leading English-language newspaper in St. Petersburg”. web.archive.org (2014年3月11日). 2024年3月9日閲覧。
^ “1917 Russian Revolution: The gay community's brief window of freedom” (英語). (2017年11月10日) 2024年3月9日閲覧。
^ “Criminal Code of the Russian Soviet Federative Socialist Republic (1960) - Wikisource, the free online library” (英語). en.wikisource.org. 2024年3月9日閲覧。
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^ “No Support: Russia’s “Gay Propaganda” Law Imperils LGBT Youth | HRW”. web.archive.org (2024年1月6日). 2024年3月9日閲覧。
^ “Russian LGBT Network | different people shared values ” (英語). ЛГБТ-сеть. 2024年3月9日閲覧。
^ 「アングル：失われるＬＧＢＴ＋の生命線、関連サイトに弾圧」『Reuters』、2021年9月6日。2024年3月9日閲覧。
^ “GAYRUSSIA - Равные права без компромиссов”. web.archive.org (2011年7月28日). 2024年3月9日閲覧。
^ “Федеральный закон от 29.06.2013 г. № 135-ФЗ” (ロシア語). Президент России. 2024年3月9日閲覧。
^ Times, The Moscow (2022年10月27日). “Russian Lawmakers Vote in Favor of 'LGBT Propaganda' Expansion” (英語). The Moscow Times. 2024年3月9日閲覧。
^ “Russia to ban sharing LGBT 'propaganda' with adults as well as children” (英語). (2022年10月27日) 2024年3月9日閲覧。
^ “プライドハウスの歴史 | プライドハウス東京”. プライドハウス東京 - PRIDE HOUSE TOKYO JAPAN 2020 -. 2024年3月9日閲覧。
^ Herszenhorn, David M. (2013年8月12日). “Gays in Russia Find No Haven, Despite Support From the West” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331 2024年3月9日閲覧。
^ Johnson, Ted (2013年7月24日). “Russia’s Anti-Gay Laws Present Challenge for NBC’s Olympics Coverage” (英語). Variety. 2024年3月9日閲覧。
^ Smith, Lydia (2019年8月27日). “A bakery in Russia – yes, Russia – has been fined for hanging ‘no gays’ sign outside” (英語). PinkNews | Latest lesbian, gay, bi and trans news | LGBTQ+ news. 2024年3月9日閲覧。
^ “Vladimir Putin signs law banning gender changes in Russia | Russia | The Guardian”. web.archive.org (2023年7月25日). 2024年3月9日閲覧。
^ Center, Pew Research (2013年6月4日). “The Global Divide on Homosexuality” (英語). Pew Research Center's Global Attitudes Project. 2024年3月9日閲覧。
^ “87% of Russians Oppose Gay Parades | News | The Moscow Times”. web.archive.org (2013年10月30日). 2024年3月9日閲覧。
^ “Отношение к сексменьшинствам / ФОМ” (ロシア語). fom.ru. 2024年3月9日閲覧。
^ Kondakov, Alexander (2021-11). “The influence of the ‘gay-propaganda’ law on violence against LGBTIQ people in Russia: Evidence from criminal court rulings” (英語). European Journal of Criminology 18 (6): 940–959. doi:10.1177/1477370819887511. ISSN 1477-3708.
^ Katsuba, Sergey (2023-02-06). “The Decade of Violence: A Comprehensive Analysis of Hate Crimes Against LGBTQ in Russia in the Era of the “Gay Propaganda Law” (2010–2020)” (英語). Victims & Offenders: 1–24. doi:10.1080/15564886.2023.2167142. ISSN 1556-4886.
^ INC, SANKEI DIGITAL (2017年6月18日). “露チェチェンで同性愛者大量迫害支援団体幹部「すべて事実」断言（1/2ページ）”. 産経ニュース. 2024年3月9日閲覧。
^ “Убийство чести. Как амбиции известного ЛГБТ-активиста разбудили в Чечне страшный древний обычай” (ロシア語). Новая газета (2003年9月3日). 2024年3月9日閲覧。
^ 「EU、チェチェンの人権侵害をめぐりロシア人に制裁」『ロイター通信』、2021年3月23日。