ホットコーヒー問題
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| 対応機種 | PC(Windows) |
|---|---|
| 開発元 | Rockstar North |
| 発売元 | パトリック・ウィルデンボルフ(PatrickW) |
| 人数 | 1人 |
| メディア | PC(MOD) |
| 対象年齢 | ESRB:AO |
ホットコーヒー問題(ホットコーヒーもんだい)、または、ホットコーヒー事件(ホットコーヒーじけん)とは、アメリカのテイクツー・インタラクティブ傘下のロックスター・ゲームズ社が開発・発売したクライムアクションゲーム「グランド・セフト・オート・サンアンドレアス(以下、GTASAと表記)」の内容を巡って起こった事件、社会問題である。アメリカでは政治家や各種政治団体を巻き込み、大きな社会問題として取り上げられた。
後日行われた訴訟はホットコーヒー訴訟とも呼ばれる。
目次
概要[編集]
この事件は、2005年6月9日に発売されたGTASAのウィンドウズPC版に関して、Modと呼ばれる改造データによって、性行為を行えるミニゲームが明らかになったことに端を発する。
GTASAには、ガールフレンドとデートできるシステムがあり(詳しくはGTASAの記事を参照)、親密度が一定値を超えると、デートの終了時に相手からコーヒーブレイクに誘われる。これをプレーヤーが了承すると、プレーヤーと相手女性による性行為が行われる。この時、通常では2人がいる建物の外しか見られず、喘ぎ声やベッドが軋む音しか聞こえないなど、性行為自体を直接見ることはできない。しかし、当時38歳のオランダ人Mod製作者パトリック・ウィルデンボルフ(PatrickW)が、「HotCoffee(ホットコーヒー)」というModを公開し、これを導入することで、コーヒーブレイクに誘われると性行為のミニゲームが行えた(それは性行為を直接見られるということでもある)。
実は、この性行為のミニゲームは元々ゲームデータとして始めからセットされていた物で、最終的に実装はされず、通常のプレイではまずできない形で封印されていた物であった。「HotCoffee」はあくまでこの封印を解除するためのものに過ぎなかった。ESRBレイティングでは17歳以上向けの「Mature」であったため(「Mature」は直接的な性描写を含んではいけない)、このModが広がるにつれ、アメリカ全体を巻き込んだ大きな問題へと発展する。
問題が大きくなった際、当初Modを作製したパトリックの責任が問われたが、パトリックは元々ゲームデータは存在し、自分はロックを解除しただけであると責任を否定した。ロックスターは、この事実を否定していたが後に認めた。また、この問題はPC版のみならず、改造ツールなどを使用する方法でPS2版、XBOX版でも使用出来る事が判明している。
ヒラリー・クリントンによる追及[編集]
この問題は、当時アメリカ合衆国上院議員であったヒラリー・クリントンが、連邦取引委員会に調査請求を出すに至り、最終的に彼女を主体とした法案「Family Entertainment Protection Act(FEPA:家庭向けエンターテイメント作品製造法)」が2005年11月に提出された[1]。これは不当な内容のテレビゲームから子供たちを守るという名目で、連邦政府が対象年齢の格付けを行うという物である(ESRBは民間団体)。また、成年向けゲームを未成年者に売った場合の罰則規定なども盛り込まれていた[2]。しかし、違憲判決が出され、法の制定には至らなかった[3]。
後に発売された『グランド・セフト・オートIV』には、自由の女神像をモデルにした幸福の女神像が登場するが、その顔はヒラリーを模したものとなっており、さらにその手にはホットコーヒーが持たされ、体内には棘の生えた鉄の心臓が脈動しているなど、製作サイドの皮肉が込められている。
ロックスターの対応[編集]
この問題を受け、ロックスターは世論のバッシングを受け、複数の民事訴訟や製品のリコール、また先のヒラリーによる政府内での批判などが行われた。
レイティングと製品仕様の変更[編集]
2005年7月20日、ESRBはレイティングを(間接的性描写を含む)「Mature」から(直接的性描写を含む)「Adults Only 18+」へ引き上げた[4]。またロックスターは初期版の製造を中止し、性的ミニゲームのデータが削除された新しいバージョンの生産を発表、2005年第4四半期に該当データを除去したver1.01の発売を開始した[5]。このバージョンは、「Mature」のレイティングを受けた[5]。
OFLC(オーストラリア・ニュージーランド政府の審査機関)は、レイティングを「MA15+(15歳未満禁止)」に判定していた(OFLCで最上位ランク。「成人のみ」は映像作品にしか無かった。)。しかし、この問題を受け、2005年7月29日にOFLCはレイティングを「RC(審査拒否)」に変更し、オーストラリアでの販売を禁止した。その後、2005年9月12日に該当部分を削除した新バージョンを「MA15+」として認可した[6]。
2005年8月10日にロックスターは、この問題のための公式パッチをリリースした[7]。このパッチは多くの仕様問題とバグを修正した。特にこのパッチは、たとえ「ホットコーヒー」を再インストールしたとしても、問題のシーンを無効化した。
一方で、欧州ではこの問題はあまり取り上げられなかった。もともと欧州では、過激描写からSAを「アダルト・オンリー(成人のみ)」に分類していたので、MODによる性描写のあるなしに関わらず、何の対処もされなかった。さらに、アメリカと違い欧州の国々では、テレビゲームに対する規制は強く、未成年者に成人ゲームを販売することは犯罪行為にあたる。例えば、イギリス版は、初期バージョンの時からBBFCによって「18」に指定されていた。
日本では欧州と同様に(日本語版は未発売ということもあり)、公的機関が動くなどの大きな社会問題として取り上げられることは無かった。しかし、このことはハードメーカーの自主規制強化を招き、日本語版独自の大幅な仕様変更や販売の遅れを招いた(#日本語版への影響を参照)。
小売店への対応とver2.0[編集]
レイティング変更を受けて、いくつかの北米のチェーンストアやIEMA小売業者(アメリカの多くの大手販売店とゲーム市場の約85%を占める)は、店頭からPC版およびコンシューマー版を取り除き、新しいレイティングで売るか、販売元のテイクツーに返品した。これを受けてロックスター・ゲームズは、初期バーションの販売を続ける小売業者向けにESRB「Adults Only 18+」のレイティングのステッカーを配布した。
ロックスターは問題の対処のために、性的ミニゲームの削除以外にも、(MODなどによって)ゲームデータが変更されたら、強制的にダウンさせるバージョン2.0の販売を開始した。このため、ユーザーは問題のあるなしに関わらずMODを入れて遊ぶ場合には、旧バージョンを使用する必要に迫られた。
また2006年6月8日、ロックスターとテイクツーは、連邦取引委員会と「その内容が審査機関によるレイティングが不十分であるならば、パッケージに明確に内容を表記し、広告等でもそのことを明らかにする。」ということを取り決め、もしこれに違反した場合には、11,000ドルの罰金を支払うことを決めた[8]。
集団訴訟と和解[編集]
2006年、弁護士達は、テイクツーが故意にゲーム内容を隠し、消費者を欺いたとして、いくつかの集団訴訟を起こした。これは2007年12月に和解に達した[9]。しかし、2008年、この訴訟に関わった弁護士のテッド・フランクは、弁護費用が100万ドルだったのに、原告への総支払い額は2万7000ドル未満だったことから、この和解に異議を唱え提訴した[10][11]。フランクは今回の訴訟が全く無意味なものであったとGamePolitics.com(フリージャナリストによるゲーム業界の政治を扱ったブログ)に述べている[12]。
また、英語初期バージョンの購入者で、2008年5月16日に精神的苦痛を感じて集団訴訟を起こした者たちへは、最高35ドル(最低5ドル)支払うことで和解した[10][11][13]。
その他、和解の一部としては、テイクツーは、アメリカ国内の親や教師による団体やESRBに、計87万3000ドルを支払い和解した[10][11]。2008年6月25日の時点で、2700人未満の原告が和解に応じた(原告側の弁護士は和解に不満を述べた)[14]。フランクは、今回の訴訟が全く意味の無いものだったことが改めて明らかになったと述べた。2009年9月1日、テイクツーは今回の問題で損害を被った証券会社の集団訴訟に、2000万ドル以上支払うことで和解したと公表した[15] (うち1520万ドルは保険会社が支払った[16])。この訴訟を持って大型集団訴訟は全て終わった[16]。
日本語版への影響[編集]
この問題の影響で、日本語版の発売は大きくずれこむことになり、大幅に仕様変更された物が2007年1月25日にカプコンよりPS2日本語版が発売された。
日本語版では問題対処後の北米版と同様に性行為のミニゲームは完全に削除されており、「コーヒーブレイク」における性行為を想起させるシーンも全面的にカットされている。同シリーズ問わず、首や手足の切断といった描写も、従来の日本語版同様修正されている他、暴力行為シーンが全般的に修正の対象となっている。
注釈[編集]
- ^ “Senators Clinton, Lieberman Announce Federal Legislation to Protect Children from Inappropriate Video Games”. 2005年12月18日閲覧。
- ^ GameSpot. “Game-restriction bill submitted to congress”. 2005年12月18日閲覧。
- ^ Govtrack.us. “S. 2126 [109th]: Family Entertainment Protection Act”. 2007年8月31日閲覧。
- ^ “San Andreas rated AO, Take-Two suspends production”. GameSpot. 2006年7月1日閲覧。
- ^ a b “FTC Hot Coffee ruling scalds, but doesn't burn Take-Two”. GameSpot. 2006年7月1日閲覧。
- ^ The Classification Board and Classification Review Board
- ^ “No More Hot Coffee”. Rockstar Games patch website. 2006年6月14日閲覧。
- ^ Adams, David (2006年6月8日). “Rockstar, FTC Settle Over Hot Coffee”. IGN. 2006年6月16日閲覧。
- ^ “GTA Settlement”. 2007年12月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年9月19日閲覧。
- ^ a b c “Did Lawyers Inflate Fees in Hot Coffee Class Action Suit?”. Gamepolitics.com (2008年5月27日). 2010年9月19日閲覧。
- ^ a b c “Grand Theft Auto: Class Action Settlement - $26,505 for the unrepresented class, $1 million fee request”. Overlawyered (2008年5月26日). 2010年9月19日閲覧。
- ^ “Overlawyered Disses Hot Coffee Class Action Settlement”. Gamepolitics.com (2008年4月29日). 2010年9月19日閲覧。
- ^ GTA:ホットコーヒーMOD訴訟の和解金が届いた, Kotaku JAPAN 2010年9月19日閲覧。
- ^ Matt Martin (2008年6月25日). “Lawyers shocked at lack of Hot Coffee claimants”. gamesindustry.biz. 2010年9月19日閲覧。
- ^ “Take-Two Interactive Software, Inc. Announces Settlement of Securities Class Action”. Take-Two Interactive Software, Inc.. (2009年9月1日) 2017年4月13日閲覧。
- ^ a b GTAのホットコーヒー訴訟、和解金は約18.5億円, Kotaku JAPAN 2010年9月19日閲覧。