ベトナム伝説

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ベトナム伝説
遠藤ミチロウスタジオ・アルバム
リリース
ジャンル ロック
パンク・ロック
時間
レーベル JICC出版
プロデュース 遠藤ミチロウ
加藤正文
遠藤ミチロウ アルバム 年表
ベトナム伝説
1984年
THE END
1985年
遠藤ミチロウ関連のアルバム 年表

1983年
ベトナム伝説
(1984年)
Fish Inn
(1984年)
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ベトナム伝説』(ベトナムでんせつ、VIETNAM-LEGEND)は、日本のミュージシャンである遠藤ミチロウの単行本および初のソロアルバム。

1984年4月10日JICC出版よりカセットブックの形態でリリースされた。その後、カセットテープに収録されていた音楽部分のみがLPCD化されて再リリースされている。

当時ザ・スターリンとしての活動を一時休止していた時期にリリースされた。初版では本とカセットテープが一体となったカセットブックの形態であった。付属の冊子には写真家の石垣章による写真や、漫画家蛭子能収による漫画、コピーライターとして知られる糸井重里との対談などが掲載されている。また、カセットテープの方は遠藤によるカバーソング集となっているが、一部遠藤が作曲したオリジナル曲も含まれている。ゲストミュージシャンには当時ザ・スターリンに在籍していたJUN-BLEEDや乾純、更にはP-MODEL平沢進などが参加している。

背景[編集]

ザ・スターリンのアルバム『』(1983年)リリース後、『虫』を引っ提げたツアー中の4月29日に木更津ヤンズで行われたライブ後に、荒木経惟監督のビデオマガジンの収録として、ライブ映像の他に遠藤がグルーピーの女性と性行為を行うシーンが撮影された[1]。また当時は過激なライブパフォーマンスや観客の暴動などが問題となり、東京ではライブ会場が確保できなくなっていた[2]。しかし、5月2日には後楽園ホールでのライブを敢行し2000人を動員した[3]。当日は観客の暴動を恐れた主催者側からの要望により、会場の電気がすべて点灯されたまま行われた[4]。さらに、当日は警備員が70人も配備され厳重な警戒がされていた[2]

6月には初めて音楽誌『ロッキング・オン』にてザ・スターリンが特集される事となり、遠藤は渋谷陽一によるインタビューを受ける事となった[5]。渋谷はアルバム『虫』を高く評価し、両者とも吉本隆明の影響を感じさせるインタビュー記事となった[6]。しかし、6月11日の明治学院大学での公演を最後にザ・スターリンとしての活動は休止し、音楽誌『ヤングセンス』においても〈現在、スターリンは解散状態になっているらしい。ミチロウ以外のメンバーが全員、チェンジするようだ。ということで、ここしばらくスターリンの活動はお休み〉という記事が掲載された[7]。活動休止の理由について遠藤は「動脈硬化」と表現し、スターリンはバンド名ではなく遠藤の活動そのものの事であると発言、自身が納得できる状況でなくなったためであると述べた[8]

8月には遠藤が責任編集という形でソノシート付きマガジン『ING'O!』を創刊。ソノシートにはTHE WILLARDの音源が収録された[4]。同年に情報誌『宝島』の10月号において、遠藤と糸井重里の対談が掲載された[9]。遠藤は坂本龍一がラジオ番組でゲストのデヴィッド・ボウイに対してザ・スターリンを中傷する発言を行った事、あるいは村上龍との対談の際に「なぜ吉本隆明がミチロウを評価するのか?」などと発言した事で坂本に対して嫌悪感を抱いていた[10]。そして糸井がYMO一派であると思い込んでいた遠藤は、当初対談には抵抗があったと述べている[9]。しかし、両者とも吉本の影響を受けている事もあって対談は充実したものになり、遠藤は糸井に好印象を持つ事となった[11]

音楽性[編集]

本作の収録曲の内、「仰げば尊し」に関して遠藤は「いつかやろうと思ってた曲」と述べ、コーラスはパンク少女を集めて合唱させたものであるという[12]

「ワイルドで行こう」はヒッピー文化に対する敬意ではなく「田舎と百姓バンザイの歌」として取り上げたと語っている[13]

「おまえの犬になる」に関しては本来ザ・ストゥージズの「I Wanna Be Your Dog」をカバーする予定であったが最終的にオリジナルソングとなった[13]。この曲のテーマはエロティシズムであり、遠藤は「エロの本質は差別と悪意であり、人間の開放や健康的なものとは結びつかない。人間と人間のセックスなんかちっともエロチックじゃない。動物同士っていうのもつまんない。片方が人間だったら、片方は人間じゃない、という方が人間に対して悪意に満ちてエロティックだ」と発言している[13]

ずっと家族崩壊をしている様を歌ってる。それが古くならない理由かもしれない。
遠藤ミチロウ,
遠藤ミチロウ全歌詞集完全版「お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました。」1980 - 2006より[14]

「お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました」について遠藤はボブ・ディランに捧げた曲であると言い、当初は日本語ラップを試みたがディスコビートには合わないため、ファンクではない演奏に切り替え、あえて福島弁の語り口調で演奏する事になった[15]。また歌詞中にある「パンツのはけない留置場」という表現は遠藤が1981年にライブ中に全裸になった事で公然わいせつ罪で逮捕された時の事を描写したものであり、ライブで全裸になる際はパンツを穿かずにステージに上がっていたが、逮捕時にパンツを穿いていない事を警察から不審がられ、遠藤は「普段から穿いてません」と言い通したという[14]。その後ファンから下着類が差し入れされたが、警察側から「お前穿かないんだよな?」と言われ出所時にようやく渡された[14]。また、本曲の歌詞はほとんどが体験談などではなく創作であると遠藤は語っているが、「タマネギのみそ汁」や「ブタ肉だらけのすき焼き」などは実際に遠藤の実家で出された食事であると語り、また「おとうさんは公務員」であり、さらに父親が「家族は運命共同体だ」と発言した事もあるという[14]。歌詞が「おかあさん」で始まり「お元気ですか?」で終わる構成に関しては、日本テレビ系テレビドラマ『前略おふくろ様』(1975年 - 1977年)から引用されたものであると語っている[16]。また、この曲に限らず多くの曲で遠藤は家族崩壊をテーマにしていたと語っている[16]

ハロー・アイ・ラヴ・ユー」に関しては「外国の曲は意味なんてどうでもいい。イメージだけだな」と語り、本曲を「かつてに向かって放たれていった精子が、いまや行き場所を失って街に飛び散っている。そんなイメージの歌」と遠藤は述べている[15]

「カノン」に関してはバンド結成前のソロ時代に製作されたフォークソング「ビンの中から」が原作であり、後に喫茶店で流れたヨハン・パッヘルベルの「カノン」(1680年)が全く同じコード進行であった事からこのタイトルに変更された[15]

リリース[編集]

もう都会からは何も出てこない。オーバーヒートしてるどころか、単にすりきれてしまってるだけだ
―リリース時コメント
遠藤ミチロウ,
宝島』1984年4月号、JICC出版

1984年4月10日JICC出版より、カセットブックの形態でリリースされた。

カセットテープ収録の音源は、1986年1月15日LPにてキャプテンレコード再リリースされ、その際にジャケットが遠藤の近影に変更され、ボーナストラックとして「仰げば尊し [Instrumental]」が追加された。1989年4月21日にはキャプテンレコードよりCDにて再リリースされ、ジャケットはLP盤と同じものでボーナストラックは削除された。

2002年6月17日にはさらにジャケットが遠藤が象に乗っているものに変更され、さらにボーナストラックとして「仰げば尊し -TOUCH-ME Version 2002-」、「仰げば尊し -Karaoke-」の2曲が収録されて北極バクテリアより再リリースされた。

影響[編集]

収録内容[編集]

単行本(目次)[編集]

  1. カラー写真
  2. 漫画「ベトナム伝説」(蛭子能収
  3. 歌詞
  4. アザラシによる因数分解
  5. 対談 糸井重里 VS 遠藤みちろう(月刊「宝島」1983年10月号より)
  6. VIETNAM NOTE

カセットテープ(収録曲)[編集]

A面
#タイトル作詞作曲オリジナル・アーティスト時間
1.仰げば尊し(Aogeba Totoshi)   
2.ワイルドで行こう(Born To Be Wild)遠藤ミチロウM・ボンファイア英語版ステッペンウルフ
3.好きさ・好きさ・好きさ(I Love You)漣健児C・ホワイト英語版ザ・カーナビーツ
4.おまえの犬になる(I Wanna Be Your Dog)遠藤ミチロウ遠藤ミチロウ 
5.割れた鏡の中から(From The Clashed Mirror)早川義夫早川義夫ジャックス
合計時間:
B面
#タイトル作詞作曲オリジナル・アーティスト時間
6.お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました。(Mother, I Can Never Remember Your Face)遠藤ミチロウ遠藤ミチロウ 
7. ハロー・アイ・ラヴ・ユー(Hello, I Love You)遠藤ミチロウJ・モリソンR・マンザレクJ・デンズモアドアーズ
8.カノン(Kanon)遠藤ミチロウパッフェルベル/補作曲:遠藤ミチロウヨハン・パッフェルベル
9.渚の天婦羅ロック(Tenpura Rock On The Beach)遠藤ミチロウ遠藤ミチロウ 
合計時間:

曲解説[編集]

A面[編集]

  1. 仰げば尊し Aogeba Totoshi
    卒業式などで歌われる日本の唱歌を、パンク・ロック調にアレンジしたもの。冒頭の合唱はパンク少女を集めて行われている。遠藤は2番の歌詞である「身を立て、名を上げ、やよはげめよ」というフレーズを気に入っている[12]
  2. ワイルドで行こう - Born To Be Wild
    ステッペン・ウルフのカバー曲。
  3. 好きさ・好きさ・好きさ - I Love You
    ザ・カーナビーツのカバー曲。
  4. おまえの犬になる - I Wanna Be Your Dog
    元々はザ・ストゥージズの「I Wanna Be Your Dog」のカバーの予定だったのだが、レコーディング中にオリジナル曲として変更して作曲された。テーマはエロチシズム[13]
  5. 割れた鏡の中から - From The Clashed Mirror
    ジャックスのカバー曲。

B面[編集]

  1. お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました。 - Mother, I Can Never Remember Your Face
    日本語ラップの曲を目指していたが、ディスコ・ビートに上手く載らないため、演奏はロック調、ボーカルは福島弁でぶっきらぼうに話す形式に変更した。また、遠藤は「ボブ・ディランに捧げる曲」と発言している[15]。映画『莫逆家族-バクギャクファミーリア-』(2012年)では、監督の熊切和嘉からの要望により挿入歌に使用された。
  2. ハロー・アイ・ラヴ・ユー - Hello, I Love You
    ドアーズのカバー曲。
  3. カノン - Kanon
    ヨハン・パッヘルベルの楽曲に歌詞をつけた作品。原題は「ビンの中から」。遠藤がロックバンドを結成する前、フォークソングスタイルだった頃に制作された曲であり、後にパッフェルベルのカノンを聴いた際に、全く同じコード進行であった事からタイトルを「カノン」に変更し、作曲をパッフェルベルとした[15]。当時P-MODELに所属していた平沢進がキーボードとギターで参加している。
  4. 渚の天婦羅ロック - Tenpura Rock On The Beach
    当時ザ・スターリンに復帰していた乾純がドラムスで参加している。

ボーナストラック(1986年版)[編集]

  1. 仰げば尊し [Instrumental]
    「仰げば尊し」のインストゥルメンタルバージョン。1989年のCD版では収録されなかった。

ボーナストラック(2002年版)[編集]

  1. 仰げば尊し -TOUCH-ME Version 2002-
    ザ・スターリンに一時期在籍していた事もある中村達也がドラムスで参加している。
  2. 仰げば尊し -Karaoke-
    「仰げば尊し [Instrumental]」の再収録。

スタッフ・クレジット[編集]

単行本[編集]

  • 遠藤みちろう - 文、イラストレーション
  • 石垣章 - 写真
  • 安江水伊那 - 写真、スタイリスト
  • 高田和夫 - 写真
  • 蛭子能収 - 漫画
  • 糸井重里 - 協力

カセットテープ(参加ミュージシャン)[編集]

スタッフ[編集]

オリジナル版
  • 神崎夢現 - デザイン
  • 関川誠 - 編集
  • 牧野英司 - レコーディング・エンジニア
  • 加藤正文 - プロデューサー、マネージメント
  • 遠藤ミチロウ - プロデューサー
2002年版
  • 伊東玲育 - アート・ディレクション、写真撮影
  • 井上博之 - アーティスト・マネージメント
  • 伊東哲男 - プロデューサー
  • 遠藤ミチロウ - プロデューサー

リリース履歴[編集]

No. 日付 レーベル 規格 規格品番 最高順位 備考
1 1984年4月10日 JICC出版 CT TKR-001 - カセットブックとしてリリース
2 1986年1月15日 キャプテンレコード LP CAP-0015-L - ジャケット変更、曲タイトルがアルファベット表記、ボーナストラック1曲収録
3 1989年4月21日 キャプテンレコード CD CAP-1018CD - 上記LP盤のCD化、ボーナストラック未収録
4 2002年6月17日 北極バクテリア CD NB-1007 - ジャケット変更、ボーナストラック2曲収録

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ 遠藤ミチロウ 2004, p. 124- 「第二期【1982年1月 - 1983年6月】掲載誌のキャッチ ★21・ロックもファックも超ハード」より
  2. ^ a b 遠藤ミチロウ 2004, p. 127- 「第二期【1982年1月 - 1983年6月】掲載誌のキャッチ ★21・ロックもファックも超ハード」より
  3. ^ ザ・スターリンの未公開ライヴ音源がCD化!”. CDジャーナル. 音楽出版 (2005年11月4日). 2019年6月24日閲覧。
  4. ^ a b 遠藤ミチロウ 2007, p. 322- 「MICHIRO's History」より
  5. ^ 遠藤ミチロウ 2004, p. 132- 「第二期【1982年1月 - 1983年6月】掲載誌のキャッチ ★22・理解よりも、誤解を求めようと思ってやってます」より
  6. ^ 遠藤ミチロウ 2004, p. 134- 「第二期【1982年1月 - 1983年6月】掲載誌のキャッチ ★22・理解よりも、誤解を求めようと思ってやってます」より
  7. ^ 遠藤ミチロウ 2004, p. 153- 「第三期【1983年7月 - 1985年1月】掲載誌のキャッチ ★23・日本列島のあちらこちらに、スターリンの嵐が起こった!!」より
  8. ^ 遠藤ミチロウ 2004, p. 164- 「第三期【1983年7月 - 1985年1月】掲載誌のキャッチ ★25・遠藤みちろう[スターリン]新計画発表」より
  9. ^ a b 遠藤ミチロウ 2004, p. 157- 「第三期【1983年7月 - 1985年1月】掲載誌のキャッチ ★24・糸井重里・遠藤みちろう[ロック、欲望、そして哲学]」より
  10. ^ 遠藤ミチロウ 2004, pp. 157 - 158- 「第三期【1983年7月 - 1985年1月】掲載誌のキャッチ ★24・糸井重里・遠藤みちろう[ロック、欲望、そして哲学]」より
  11. ^ 遠藤ミチロウ 2004, p. 158- 「第三期【1983年7月 - 1985年1月】掲載誌のキャッチ ★24・糸井重里・遠藤みちろう[ロック、欲望、そして哲学]」より
  12. ^ a b 遠藤ミチロウ 2004, p. 166- 「第三期【1983年7月 - 1985年1月】掲載誌のキャッチ ★26・カセットブック『ベトナム伝説』を語る」より
  13. ^ a b c d 遠藤ミチロウ 2004, p. 167- 「第三期【1983年7月 - 1985年1月】掲載誌のキャッチ ★26・カセットブック『ベトナム伝説』を語る」より
  14. ^ a b c d 遠藤ミチロウ 2007, p. 308- 「あとがき」より
  15. ^ a b c d e f 遠藤ミチロウ 2004, p. 168- 「第三期【1983年7月 - 1985年1月】掲載誌のキャッチ ★26・カセットブック『ベトナム伝説』を語る」より
  16. ^ a b 遠藤ミチロウ 2007, p. 309- 「あとがき」より
  17. ^ 大槻ケンヂ (2019年6月7日). “遠藤ミチロウさんから教えてもらったこと(寄稿:大槻ケンヂ)”. 音楽ナタリー. ナターシャ. 2019年6月24日閲覧。

参考文献[編集]

  • 遠藤ミチロウ『ザ・スターリン伝説』マガジン・ファイブ、2004年11月9日、124 - 168頁。ISBN 9784434047909
  • 遠藤ミチロウ『遠藤ミチロウ全歌詞集完全版「お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました。」1980 - 2006』マガジン・ファイブ、2007年3月6日、308- 322頁。ISBN 9784434102165

外部リンク[編集]