ナルヴィ

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ナルヴィNarvi

  1. 北欧神話に登場するロキの息子の名。本稿の1で詳述する。
  2. 北欧神話に登場する夜の女神ノート(Nótt)(もしくはノット)の父となる巨人。本稿の2で詳述する。
  3. 1.より名付けられた土星の衛星ナルビ (衛星)
  4. J・R・R・トールキン中つ国の登場人物 ⇒ ナルヴィ

ナルヴィNarvi)は、北欧神話に登場する人物の名である。 次の2名が登場する。

  1. ロキとシギュンの子。
  2. 夜の女神ノートの父。

ロキとシギュンの子[編集]

ナルヴィは悪神ロキと、妻のシギュンとの間の息子とされている。 土星の第31衛星ナルビエポニムである。

古エッダ』と『スノッリのエッダ』では彼の扱いが異なっている。

『古エッダ』の『ロキの口論』において、息子ナリの腸でロキは拘束され、兄弟のナルヴィは狼に変身させられた。狼がナリを殺すといった趣旨の文章はみられない[1]

しかし、『スノッリのエッダ』第一部『ギュルヴィたぶらかし』では、まず33章で夫婦の息子はナリでその別名がナルヴィだとされている。ところが50章では、ナリの他にヴァーリという息子が登場し、これが狼に変身させられてナリを引き裂いてしまう。腸を引きずり出したのは神々とされている[1]

シーグルズル・ノルダルがこの違いを次のように解釈している。 スノッリはナリとナルヴィを同一人物と考え、最初に息子は1人しか紹介しなかった。ところがロキの捕縛の場面を書く際、息子は2人いなければならなかった。スノッリや彼にこの物語を話した誰かは2人目の名前を、おそらくは誤解から、オーディンの息子ヴァーリと同じヴァーリとした。オーディンの息子は、バルドルを殺したホズに復讐するために生まれてきた。ロキの息子ヴァーリも、バルドルの復活を阻んだロキに対して復讐をする[2]

ノートの父[編集]

ナルヴィ(Narfi)もしくはネルヴィ(Nörfi)は、北欧神話に登場する、夜の女神ノートの父である巨人とされている。 『ギュルヴィたぶらかし』第10章での説明によると、彼はヨトゥンヘイムに住んでいる。

尾崎和彦によれば、研究者のN. M. ペターセン(Niels M. Petersen)は彼女の名前の原義を、ドイツ語の「Narbe」(傷痕)から「Fordybning」(窪み)、「Kløft」(裂け目)へと推論して、この「深淵」から「夜」が生まれると解釈しているという[3]

脚注[編集]

  1. ^ a b 『エッダ 古代北欧歌謡集』87、248、274頁。
  2. ^ 『巫女の予言 エッダ詩校訂本』199-201頁。
  3. ^ 『北欧神話 宇宙論の基礎構造』304頁。

関連項目[編集]

参考文献[編集]