カミラ・ワリエワ
カミラ・ワリエワ Kamila VALIEVA |
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セルゲイ・デュダコフ
ダニイル・グレイヘンガウス
スタニスラフ・コバリョフ
大会成績 |
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獲得メダル |
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カミラ・ワレリエヴナ・ワリエワ(タタール語: Камилә Вәлиева, Kamilä Välieva、露: Ками́ла Вале́рьевна Вали́ева、英: Kamila Valeryevna Valieva、2006年4月26日 - )は、ロシア、カザン出身のフィギュアスケート選手(女子シングル)。
概要[編集]
2022年欧州選手権優勝、2019年ジュニアグランプリファイナル優勝、2020年世界ジュニアフィギュアスケート選手権優勝といった実績を持つ。あまりにも強すぎるため他の選手が「絶対に勝てない」と意気消沈するのではないかという推測から、日本のファンからは「絶望」と異名を付けられている[2]。
経歴[編集]
ワリエワは2006年4月26日にロシア、カザンで生まれた。テュルク系民族(ヴォルガ・タタール人)である。
ジュニア以前[編集]
2009年にスケートを始めた。2012年に両親の転職でモスクワに移り、2014/15シーズンよりマリーナ・クドリャフツェワをコーチにした。2015/16シーズンよりスタニスラフ・コバリョフをコーチにした。2017年ロシアノービス選手権年少で優勝。2018/19シーズンよりエテリ・トゥトベリーゼをコーチにした。2019年ロシアノービス選手権年長で優勝した。
ジュニア[編集]
2019/2020シーズンからジュニアに上がりISUジュニアグランプリシリーズに参戦した。シーズン初戦となったクールシュヴェル杯では、ショートではトリプルルッツを転倒し62.31点の3位発進となったが翌日のフリーでは4回転トウループを決め138.40点と大きく挽回し、総合得点200.71点で優勝を果たした。
2020/2021シーズンは、新型コロナウイルスの影響により、ISUジュニアグランプリシリーズはすべて中止となった。2020年12月に行われたロシア国内選手権では、4回転トウループ2本を成功させて、アンナ・シェルバコワに次ぐ銀メダルとなった。
シニア[編集]
2021/2022シーズンからシニアとなった。2021 CS フィンランディアトロフィーでは、ショートプログラムではトリプルアクセルの転倒もあり3位発進となった。フリーでは2種類3回の4回転ジャンプを成功させて、フリー、総合得点ともに世界最高得点を記録した(SP 74.93点、フリー 174.31点、総合 249.24点)。
GPカナダ大会では、ショート・フリーともに大きなミスはなく、フリー、総合得点ともに自身の世界最高点を超える得点を記録した(SP 84.19,フリー 180.89,総合 265.08)。
2022年北京オリンピックでは金メダルの最有力候補と言われ、2月7日に行われた団体戦の女子フリーでは、珍しくジャンプで1度転倒するミスがありながらも他の選手に大差をつける演技で金メダルの獲得に貢献したかに思われた。しかし、自身に後述のドーピング疑惑の目が向けられ、団体戦の成績もこの問題が解決するまで暫定的なものとして扱われることとなったため、メダル授与式も延期となった。
ドーピング疑惑[編集]
2022年2月11日、2021年12月に行われたドーピング検査で陽性であることが、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)により検査法が国際基準に従っていないとして2019年8月まで資格停止処分にあったストックホルムにある検査機関[3]より判明し、心臓の治療などに使用される「トリメタジジン」が見つかった。本人は、祖父の使用している薬が混入したと主張したが、フィギュアスケート団体の金メダルを授与する式典は延期され、IOCは成績を暫定的なものとして扱い、審議が検討された。 ロシア反ドーピング機関(RUSADA)はワリエワを一時的な資格停止処分としたものの、16歳未満は「要保護者」に当たり、15歳のワリエワには証拠の基準や制裁が低く定められていることや、検査の結果がオリンピック期間中に出たことはワリエワの責任ではないなどとして、出場停止にすることはワリエワに著しい損害を与える可能性があるとし、2022年2月14日、スポーツ仲裁裁判所(CAS)はIOC、WADA、ISUの控訴を却下し、ワリエワが2022年のオリンピックに出場することを許可した。
なお、IOCは「12月の検査での陽性判定を受けて、北京大会への暫定的な資格停止処分を行うかどうかの裁定であり、ワリエワ選手がドーピングの規則に違反したかどうかを問うものではないことは明らかだ。まだ結論は出ていない」との見解を示した。その上でIOCの理事会は、関係する各国のオリンピック委員会と協議した上で、フィギュアスケート団体のメダル授与式は問題が解決するまでは行わないこと、15日から行われる女子シングルでワリエワが上位3位に入った場合もメダルの授与式は行わないことを決めたと発表した。
上記出場許可を受けて女子シングルに出場したワリエワは、ショートプログラムで1位となるものの、フリースケーティングでは4回転ジャンプで2度の転倒があったうえ、トリプルアクセルの着氷の際にも手をつくミスを犯すなど本来の彼女の姿とはほど遠く、5位に終わった。結果、総合4位(暫定)に終わり、個人のメダルはドーピング問題の解決を待たずして獲得できないことが確定した。
2022年9月17日にはRUSADAの調査が終了し、秋に開催される聴聞会で結果が公表される見込みと報じられた[4]ものの、10月21日になってRUSADAは当時のワリエワが15歳という保護対象者にあたることを理由にドーピング検査結果を公表しないと声明。11月14日、WADAがワリエワの4年間の競技出場停止と北京五輪での団体金メダルの剥奪を要求したことがCASによって発表された。最終的な裁定はCASが下すこととなっている[5]。2023年1月13日、RUSADAがワリエワについて資格停止処分を科さない判断をしたことをWADAが発表した[6]。WADAは2月21日、この判断を不服としてCASに提訴したと発表した[7]。
技術・演技[編集]
アクセルを含む全6種類の3回転ジャンプを跳ぶことができる。北京五輪の団体戦SPでは冒頭で3回転アクセルを成功させ、オリンピックで3回転アクセルを成功させた史上4人目の女子選手(ロシア初)となった。
4回転ジャンプはサルコウとトウループの2種類を試合で成功させており、4回転トウループ-3回転トウループや4回転トウループ-1回転オイラー-3回転サルコウなど難しいコンビネーションを組み合わせて跳ぶことができる。
全てのジャンプにおいて両手を上げて跳ぶ(リッポンジャンプ)のが最大の特徴である。着氷後のフリーレッグの高さも特徴的であり、種類によってはつま先が両肩より高く上がることがある。高さ・幅があり、着氷後の流れも滑らかであるため、成功したジャンプは非常に高いGOE(出来栄え点)を獲得することができる。
柔軟性を生かしたスピンには定評があり、常に+3~+5ほどの高いGOEを獲得することができる。レイバックスピンにおいてはソチ五輪団体金メダリストのユリア・リプニツカヤが得意としていたキャンドルスピンを取り入れている。
私生活[編集]
2019年にファンから贈られたリョーバ(Лёва)という名前のポメラニアンを1匹飼っている[8][9]。趣味はダンス。
主な戦績[編集]
国際大会 | |||
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大会/年 | 2019-20 | 20-21 | 21-22 |
冬季オリンピック | 4(暫定) | ||
欧州選手権 | 1 | ||
GPファイナル | 中止 | ||
GP スケートカナダ | 1 | ||
GP ロステレコム杯 | 1 | ||
CS フィンランディア杯 | 1 | ||
世界Jr.選手権 | 1 | ||
JGPファイナル | 1 | ||
JGPチェリャビンスク | 1 | ||
JGPクールシュヴェル | 1 |
詳細[編集]
2021-2022 シーズン | ||||
開催日 | 大会名 | SP | FS | 結果 |
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2022年3月25日-27日 | チャンネルワントロフィー(サランスク) | 1 83.63 |
2 173.88 |
2 257.51 |
2022年2月4日-20日 | 冬季オリンピック(北京) | 1 82.16 |
5 141.93 |
4 224.09 |
2022年2月4日-7日 | 冬季オリンピック 団体戦(北京) | 1 90.18 |
1 178.92 |
1 団体 |
2022年1月12日-16日 | 欧州選手権(タリン) | 1 90.45 |
1 168.61 |
1 259.06 |
2021年11月26日-28日 | ISUグランプリシリーズ ロステレコム杯(ソチ) | 1 87.42 |
1 185.29 |
1 272.71 |
2021年10月29日-31日 | ISUグランプリシリーズ スケートカナダ(バンクーバー) | 1 84.19 |
1 180.89 |
1 265.08 |
2021年10月7日-10日 | ISUチャレンジャーシリーズ フィンランディア杯(エスポー) | 3 74.93 |
1 174.31 |
1 249.24 |
2019-2020 シーズン | ||||
開催日 | 大会名 | SP | FS | 結果 |
---|---|---|---|---|
2020年3月2日-8日 | 2020年世界ジュニアフィギュアスケート選手権(タリン) | 1 74.92 |
1 152.38 |
1 227.30 |
2019年12月5日-8日 | 2019/2020 ISUジュニアグランプリファイナル(トリノ) | 4 69.02 |
1 138.45 |
1 207.47 |
2019年9月11日-14日 | 2019年ジュニアグランプリシリーズ ロシア杯(チェリャビンスク) | 1 73.56 |
1 148.39 |
1 221.95 |
2019年8月21日-24日 | 2019年ジュニアグランプリシリーズ フランス杯(クールシュヴェル) | 3 62.31 |
1 138.40 |
1 200.71 |
2018-2019 シーズン | ||||
開催日 | 大会名 | SP | FS | 結果 |
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2019年3月14日-18日 | ロシアノービス選手権年長(トヴェリ) | 1 72.76 |
1 143.15 |
1 273.51[10] |
2016-2017 シーズン | ||||
開催日 | 大会名 | SP | FS | 結果 |
---|---|---|---|---|
2017年3月3日-7日 | ロシアノービス選手権年少(サランスク) | 3 48.50 |
1 92.05 |
1 188.15[11] |
2015-2016 シーズン | ||||
開催日 | 大会名 | SP | FS | 結果 |
---|---|---|---|---|
2016年3月3日-7日 | ロシアノービス選手権年少(スタールイ・オスコル) | 5 43.06 |
7 77.57 |
11 143.03[12] |
プログラム使用曲[編集]
シーズン | SP | FS | EX |
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2021-2022 | In Memoriam
作曲:Kirill Richter |
ボレロ
作曲:モーリス・ラヴェル |
Shutting Down Grace's Lab
(映画「アバター」より) |
2020-2021 | Storm
作曲: エリック・ラドフォード |
ボレロ
作曲: モーリス・ラヴェル |
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2019-2020 | 鏡の中の鏡 作曲:アルヴォ・ペルト * アラデール・ホール ( 映画『クリムゾン・ピークより』) 作曲:フェルナンド・ベラスケス |
エクソジェネシス (脱出創世記) :交響曲第3部(あがない) 曲:ミューズ |
スパルタクスとフリーギアのアダージョ 曲:アラム・ハチャトゥリアン |
2018-2019 | 鏡の中の鏡 作曲:アルヴォ・ペルト * アラデール・ホール ( 映画『クリムゾン・ピークより』) 作曲:フェルナンド・ベラスケス |
スパルタクスとフリーギアのアダージョ 曲:アラム・ハチャトゥリアン |
鏡の中の鏡 作曲:アルヴォ・ペルト * アラデール・ホール ( 映画『クリムゾン・ピークより』) 作曲:フェルナンド・ベラスケス |
2017-2018 | Ya Illahi 作曲:Саида Мухаметзянова Mosane 作曲:E.S.ポスチュマス |
Vocea 曲:シルク・ドゥ・ソレイユ |
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2016-2017 | Ya Illahi 作曲:Саида Мухаметзянова Mosane 作曲:E.S.ポスチュマス Vocea 曲:シルク・ドゥ・ソレイユ |
The Witch Song 曲:Aurea |
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2015-2016 | 前奏曲作品32No.12嬰ト短調アレグロ 作曲:セルゲイ・ラフマニノフ |
だったん人の踊り 曲:アレクサンドル・ボロディン |
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2014-2015 | 動物の謝肉祭第13曲白鳥 作曲:カミーユ・サン=サーンス |
脚注[編集]
- ^ 国際スケート連盟によるカミラ・ワリエワのバイオグラフィー
- ^ “「絶望」は日本ファン発祥? 「意図せぬ使われ方」困惑―ワリエワ選手、地元では「カミ」〔五輪〕”. 2022年5月29日閲覧。
- ^ “スウェーデン検査所の処分解除 WADA”. 産経新聞 (2019年8月6日). 2022年2月19日閲覧。
- ^ “‘THEY MUST HAVE FOUND SUFFICIENT EVIDENCE’ – RUSSIA’S ANTI-DOPING AGENCY COMPLETES INVESTIGATION INTO KAMILA VALIEVA”. ユーロスポーツ. (2022年9月17日) 2022年9月17日閲覧。
- ^ “WADAがワリエワに「4年間の出場停止」「金メダルはく奪」を要求!露当局は重過ぎる処罰に激怒「最も残酷な罰だ」”. THE DIGEST. (2022年11月15日) 2022年11月15日閲覧。
- ^ “ワリエワに資格停止なし ロが判断、WADAは懸念”. 朝日新聞. (2023年1月14日) 2023年1月14日閲覧。
- ^ “ワリエワの資格停止求める ロシア判断「誤り」、CASに提訴―WADA”. 時事ドットコム. (2023年2月22日) 2023年2月22日閲覧。
- ^ “Archived copy”. 2020年3月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年12月26日閲覧。
- ^ “Archived copy”. 2020年3月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年12月26日閲覧。
- ^ Первенство России (мл. вз.) 2019 (Тверь)ロシアフィギュアスケート連盟
- ^ Первенство России (мл. вз.) 2017 (Саранск)ロシアフィギュアスケート連盟
- ^ Первенство России (мл. вз.) 2016 (Старый Оскол)ロシアフィギュアスケート連盟
参考文献[編集]
- 国際スケート連盟によるカミラ・ワリエワのバイオグラフィー(英語)
- FSKATE.RUによるカミラ・ワリエワのプロフィール (ロシア語)
- サンボ70 フルスタリヌイ 選手紹介 (ロシア語)