ウィリアム・セシル・キャンベル
| ウィリアム・セシル・キャンベル William Cecil Campbell | |
|---|---|
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| 生誕 |
1930年6月28日（93歳） アイルランド自由国ドニゴール県Ramelton |
| 国籍 |
アイルランド アメリカ合衆国 |
| 研究分野 | 寄生虫病 |
| 研究機関 |
メルク・アンド・カンパニー ドルー神学校 |
| 出身校 |
トリニティ・カレッジ・ダブリン ウィスコンシン大学マディソン校 |
| 主な業績 | アベルメクチンとイベルメクチンの開発 |
| 主な受賞歴 | ノーベル生理学・医学賞（2015年） |
| プロジェクト:人物伝 | |
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ウィリアム・セシル・キャンベル（William Cecil Campbell、1930年6月28日 - ）は、アイルランド出身でアメリカ合衆国の生化学者、生物学者、寄生虫学者[1]。メルク社のチームを率いてアベルメクチンとその化合物イベルメクチンを開発し、その薬は熱帯地方の寄生虫感染症の治療薬として、現在も多くの人を熱帯病による失明から救っている[2][3][4]。2015年、ノーベル生理学・医学賞の半分が、アベルメクチンの発見を含む寄生虫感染症治療法の開発を評してキャンベルと大村智に共同で贈られ、残る半分はアルテミシニン発見を含むマラリアの治療法に関する発見をした屠呦呦に贈られた[2][5]。
1957年から1990年まで、製薬会社メルク・アンド・カンパニーの研究所に所属し、現在はドルー神学校の名誉フェローである[6][7]。
2019年 - 新型コロナウイルス感染症（COVID-19）の流行時、キャンベルがCOVID-19治療薬としてイベルメクチンを推奨しているという捏造された引用文が顔写真と共にTwitterで拡散された[8][9]。キャンベルは、「ソーシャルメディア上で私に起因する発言を完全に軽蔑し、否定する」と述べ、「私の専門分野はウイルス学ではないので、そのような方法でコメントすることは決してない」と付け加えた[8][9]。
略歴[編集]
- 1930年 - アイルランドのドニゴール州ラメルトンで、農場を経営するR. J. Campbellの三男として生まれた[10]。
- 1952年 - トリニティ・カレッジ（ダブリン大学）の動物学を第一級優等学位で卒業[11]。
- 1957年 - フルブライト奨学金を得て進学したウィスコンシン大学マディソン校で、羊に寄生する肝蛭に関する研究で博士号（Ph.D.）を取得[7]。
- 1957年 - 1990年 - メルク研究所に勤務し、1984年 - 1990年まではアッセイ研究開発の上級科学者兼ディレクターを務めた[12]。1964年にアメリカ国籍を取得[1]。メルク在籍時の発見の一つは殺菌剤チアベンダゾールで、ジャガイモ疫病の治療や[7][13]、人間の旋毛虫症の治療に使用されている[14]。
- 1975年 - 大村の研究グループから送られた放線菌が産生する物質が、マウスに寄生した寄生性線虫に対して有効であることを発見した[15]。1979年、培養物から化合物を単離し、「アベルメクチン」と名づけ、1979年に報告した[16][17]。そしてアベルメクチンの改良型を合成し「イベルメクチン」と名付けた[16][18]。イベルメクチンは、1981年に動物用抗寄生虫薬として販売され[16][18]、1987年にヒトへの使用が承認され、翌年にはオンコセルカ症の撲滅に必要なイベルメクチンの無償提供が始まった[19]。1998年にはリンパ系フィラリア症の治療に使用されるイベルメクチンにも無償提供が拡大された[19][20]。
- 1990年 - 2010年、ニュージャージー州マディソンのドリュー大学で研究員を務め、学部生の研究を指導し、寄生虫学のコースを教えていた[21]。 彼は、スコットの不運なテラノヴァ探検隊における外科医エドワード・L・アトキンソンの仕事など、南極探検における寄生虫学の歴史について論文を書いている[12][22]。
受賞と栄誉[編集]
- 1987年 - 米国寄生虫学会会長[12]。
- 2002年 - 米国科学アカデミーに選出される[12][23]。
- 2008年 - 米国寄生虫学会からASP特別功労賞を受賞[12]。
- 2015年 - ノーベル生理学・医学賞を大村智、屠呦呦と共同受賞[24][25][11]。
- 2016年 - トリニティ・カレッジ・ダブリンの名誉フェローに就任[26]。
- 2020年 - 王立協会フェローに選出される[27]。
- 2021年 - アイルランド科学財団セント・パトリックス・デイ・サイエンス・メダルを受賞[28]。
私生活[編集]
メアリー・マスチン・キャンベルと結婚している[12]。 彼は詩人であり画家でもある[29]。 卓球とカヤックを趣味としている[11]。
関連項目[編集]
- メルク・アンド・カンパニー (Merck & Co)
- アベルメクチン - イベルメクチン - イベルメクチン#誤った情報と混乱
- 大村智
- 顧みられない熱帯病 - オンコセルカ症
- チアベンダゾール
脚注[編集]
- ^ a b “Prof. William Campbell, of NJ, wins Nobel Prize in medicine”. News 12 New Jersey. Associated Press. (2015年10月5日) 2015年10月6日閲覧。
- ^ a b “The Nobel Prize in Physiology or Medicine 2015 Press Release”. THE NOBEL PRIZE (2015年10月5日). 2022年2月12日閲覧。
- ^ “History of avermectin and ivermectin, with notes on the history of other macrocyclic lactone antiparasitic agents”. Curr Pharm Biotechnol 13 (6): 853–65. (May 2012). doi:10.2174/138920112800399095. PMID 22039784.
- ^ “Ivermectin: a potent new antiparasitic agent”. Science 221 (4613): 823–28. (August 1983). Bibcode: 1983Sci...221..823C. doi:10.1126/science.6308762. PMID 6308762.
- ^ “William C Campbell, Satoshi Ōmura and Youyou Tu win Nobel prize in medicine”. The Guardian. (2015年10月7日) 2015年10月5日閲覧。
- ^ Molin, Anna (2015年10月5日). “Nobel Prize in Physiology or Medicine Awarded to William C. Campbell, Satoshi Omura, Youyou Tu”. The Wall Street Journal 2015年10月5日閲覧。
- ^ a b c “William C. Campbell (Sc.D.)”. Ramelton Tidy Towns. 2015年12月9日閲覧。
- ^ a b “Drew University Nobel Prize Winner Refutes Ivermectin Meme”. Drew University (2021年9月). 2022年2月14日閲覧。
- ^ a b “False meme: Nobel laureate did not say ivermectin 'cures' covid-19”. Washington Post. (2021年9月8日)
- ^ “William C. Campbell – Facts”. Nobel Prize. 2016年9月24日閲覧。
- ^ a b c Murphy, Darragh (2015年10月9日). “Meet Ireland's new Nobel Laureate, William C Campbell”. The Irish Times 2015年10月13日閲覧。
- ^ a b c d e f Overstreet, Robin M. (2008). “Presentation of the 2008 ASP Distinguished Service Award to William C. Campbell”. Journal of Parasitology 94 (6): 1209. doi:10.1645/GE-1852.1. PMID 18844434 2015年12月9日閲覧。.
- ^ Annual Report on Research and Technical Work of the Department of Agriculture for Northern Ireland. Great Britain: The Department of Agriculture for Northern Ireland. (1975). p. 149
- ^ Jelliffe, E. F. Patrice; Jelliffe, Derrick B. (1982). Adverse Effects of Foods. Boston, MA: Springer US. p. 277. ISBN 978-1-4613-3361-6 2015年12月9日閲覧。
- ^ “History of avermectin and ivermectin, with notes on the history of other macrocyclic lactone antiparasitic agents”. Curr Pharm Biotechnol 13 (6): 853–65. (May 2012). doi:10.2174/138920112800399095. PMID 22039784.
- ^ a b c “Ivermectin – Old Drug, New Tricks?”. Trends in Parasitology 33 (6): 463–72. (June 2017). doi:10.1016/j.pt.2017.02.004. PMC 5446326. PMID 28285851.
- ^ Burg, R. W.; Miller, B. M.; Baker, E. E.; Birnbaum, J.; Currie, S. A.; Hartman, R.; Kong, Y.-L.; Monaghan, R. L. et al. (1979). “Avermectins, New Family of Potent Anthelmintic Agents: Producing Organism and Fermentation”. Antimicrobial Agents and Chemotherapy 15 (3): 361–7. doi:10.1128/AAC.15.3.361. PMC 352666. PMID 464561.
- ^ a b “The life and times of ivermectin - a success story”. Nature Reviews. Microbiology 2 (12): 984–9. (December 2004). doi:10.1038/nrmicro1048. PMID 15550944.
- ^ a b “Reflections on the Nobel Prize for Medicine 2015--The Public Health Legacy and Impact of Avermectin and Artemisinin”. Trends in Parasitology 31 (12): 605–607. (December 2015). doi:10.1016/j.pt.2015.10.008. PMID 26552892.
- ^ “Reflections on the Nobel Prize for Medicine 2015--The Public Health Legacy and Impact of Avermectin and Artemisinin”. PubMed (2015年11月6日). 2022年2月12日閲覧。
- ^ Avril, Tom (2015年10月6日). “Former Merck scientist shares Nobel in medicine”. Philadelphia Inquirer 2015年12月8日閲覧。
- ^ Campbell, William C.; Overstreet, Robin M. (1994). “Historical Basis of Binomials Assigned to Helminths Collected on Scott's Last Antarctic Expedition”. Journal of the Helminthological Society of Washington 61 (1): 1–11 2015年12月9日閲覧。.
- ^ “Member Directory | William Campbell”. National Academy of Sciences. 2015年10月7日閲覧。
- ^ “The 2015 Nobel Prize in Physiology or Medicine – Press Release: William C. Campbell, Satoshi Ōmura, Youyou Tu”. Nobel Foundation. 2015年12月8日閲覧。
- ^ “Irish scientist wins Nobel Prize for Medicine”. RTÉ News. (2015年10月5日) 2015年10月5日閲覧。
- ^ “TRINITY MONDAY 2016- FELLOWS AND SCHOLARS”. www.tcd.ie. Trinity College Dublin (2016年4月11日). 2022年1月27日閲覧。
- ^ “William C. Campbell”. Royal Society. 2020年9月19日閲覧。
- ^ “William Campbell and Vincent Roche win St Patrick's Day Science Medals” (2021年3月16日). 2022年10月21日閲覧。
- ^ “Dr. William Campbell: Nobel Laureate, Painter, Actor, Writer”. Drew University. 2022年10月21日閲覧。
外部リンク[編集]
- ドリュー大学名誉科学者研究所（RISE）
- ノーベル生理学・医学賞2015 ノーベル賞（英語）
- William C. Campbell - Nobel Lecture: Ivermectin: A Refection on Simplicity ノーベル賞（英語）
 ノーベル生理学・医学賞受賞者 (2001年-2025年) | |
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