はくおう

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はくおう
はくおうIMGP1452.JPG
基本情報
船種 RO-RO/PASSENGER SHIP
船籍 日本の旗 日本
所有者 新日本海フェリー
高速マリン・トランスポート
運用者 新日本海フェリー
建造所 石川島播磨重工業東京第1工場
母港 東京
姉妹船 すいせん (フェリー・初代)
信号符字 JD2726
IMO番号 9116266
MMSI番号 431861000
改名 すずらん1996 - 2012年
経歴
進水 1995年7月12日[1]
竣工 1996年5月
就航 1996年6月11日
運航終了 2012年6月19日(定期船として)
要目
総トン数 17,345 トン
載貨重量 5,440 トン
全長 199.5m
25.0m
全幅 25.0 m
深さ 14.8 m
喫水 7.23 m
デッキ数 6
機関方式 ディーゼル
主機関 過給機付4サイクル18気筒V型ディーゼル(410 rpm)
推進器 可変ピッチプロペラ 2軸
出力 47,660 kW(64,800 PS)
航海速力 29.4ノット
車両搭載数 トラック122台、乗用車80台
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はくおうは、新日本海フェリーが保有し、防衛省チャーターする貨客船。民間船を自衛隊在日米軍の輸送にチャーターしたものである。

はくおう[編集]

防衛省にチャーターされる前のすずらん(初代)(2004年7月)

「はくおう」は、新日本海フェリーにてすずらん(初代)として運用されていた船をチャーターし運用開始したものである。同社での新造船(2代目すずらん)投入による定期運用終了により係船となっていた。

この名前を持つ自衛隊が使用する船としては2代目。初代は、 ちよづる型掃海船(旧・海軍駆潜特務艇)の「はくおう」(MS-11、旧・海軍第90号駆潜特務艇)である。

船名の「はくおう」は新日本海フェリーのロゴにもある白いカモメ(白鴎)にちなんでいる。

同型船に「すいせん」がある(2012年に同名の新造船と入れ替えに伴い定期運用終了)。

特徴[編集]

自衛隊が傭船した民間フェリーについては、2011年の東日本大震災に際して、良好な高速性能を持つ「ナッチャンWorld」が注目され、被災地を含めた自衛隊の車両輸送にしばしば活用された。しかし同船は双胴船トラックの輸送能力が低く、専用岸壁を必要とするなど運用上の制約も高かった(のちに改修される。当該項目参照)。

本船は通常の船形を持ち、また全長200mにわずかに満たない全長のため巨大船の規制も受けにくく、トラック122台乗用車80台と車両の積載能力も高い。既存の海上自衛隊輸送艦では、おおすみ型輸送艦がトラック65台を積載可能であるが、災害派遣などの経験から、より輸送力の高い輸送艦が求められていた[2]

本船は、民間船時代には、敦賀舞鶴など遠隔地から24時間以内で北海道内に往復可能な性能が求められ、近年の旅客フェリーとしては破格の高速性能を付与されていた。なお後継のすずらん(2代目)では、燃費等の問題から、わずかに航海速力は抑えられている。

諸元[編集]

全長199.5m、幅25.0m、航海速力29.4ノット。

外観は定期船時代と大きな変化はないが、塗色は黒白のツートーンに変更され、煙突にあった新日本海フェリーのファンネルマークも削除され灰色に塗られている。

また、2層の車両甲板の間に定期船時代にはなかったスロープが設置された。

定期船時代の船歴[編集]

石川島播磨重工(東京)にて1995年3月竣工、1996年6月11日に「すずらん」(初代)として就航する。就航当時は日本最速のフェリーであり、30時間近く要していた小樽~敦賀を20時間で結ぶなど、北海道航路の大幅なスピードアップに貢献した。

しかしながら、巨大船としての規制を避けるために200m以内に全長を抑えた一方、高速性の確保のために船体幅の船長に対する比率を小さくした結果、在来船より船体幅が若干細くなり、加えて高速走行のために旅客の側面デッキ立ち入りを制限したことで、居住性に劣るなどの問題点があった。このため、2004年に登場したはまなすあかしあでは巨大船規制の対象となる200mを越す船長へと規模を拡大することで船体幅も拡張、またプライベートテラスを増設した客室を大幅に増やすことで居住性の向上を目指している。また、両船では最新型のポッド推進器を採用したことで、「すずらん」や僚船の「すいせん」を上回る高速性を確保することとなった。

就航から15年以上が経過したこともあり、内装の老朽化も進行した。そのため、この技術を反映し、はまなす・あかしあと同等の船体を有すると共に、更なる走行コスト削減と有害物質の排出量削減を目指した2代目すずらん・2代目すいせんが2012年に相次いで就航。これにより同船は2代目すずらんと入れ替わる形で2012年6月19日に運用を終了した。

防衛省チャーター後の運用[編集]

  • 2012年12月に防衛省チャーターにより北朝鮮弾道弾発射に備えた部隊輸送のため石垣島へ運航。ただし当輸送では船名は旧名の「すずらん」であった。
  • 2013年9月27日に在日米軍による東富士演習場での訓練に際し、沖縄県からアメリカ軍の装備品を積載し横浜港瑞穂埠頭に入港した。
  • 2014年8月から9月にかけて、在日米軍海兵隊の矢臼別演習場への訓練移転のため、那覇港根室港で1往復運航された。往路と復路の間に一旦相生に帰港している。
  • 2014年11月25日に東京港において内閣府主催の「民間船舶を活用した医療機能の実証訓練」に参加した。
  • 2015年9月に在日米軍による東富士演習場での訓練に際し、那覇港横浜港で一往復運航された。往路と復路の間に一旦相生に帰港している。
  • 2015年10月から11月にかけて、平成27年度北部方面隊協同転地演習のため、往路鹿児島港~奄美大島名瀬港那覇港、復路那覇港名瀬港大分港苫小牧港で運航された。往路と復路の間に一旦相生に帰港している。
  • 2016年2月7日の北朝鮮によるミサイル発射実験の際に、はくおうを使用し石垣・宮古両島への増援部隊の輸送を予定していたが、船員組合の反対で中止となり定期船での輸送となった[3]。2月10日に予定された復路輸送についても交渉が決裂し2月15日に新日本海フェリー側は運航を断念[4]、他社定期船での輸送が行われた。
  • 2016年4月20日、熊本地震の被災地支援のため陸上自衛隊員らを乗せて神戸港から八代港(熊本県八代市)に向け出港した。4月22日に八代港に到着し、支援車両や人員、物資を積み下ろした[5]
  • 2016年4月23日、熊本地震の被災地支援のため八代港(熊本県八代市)にてホテルシップとしての運営を開始した[6]。1泊2日の宿泊と食事・入浴のサービスを無償で提供し[7]、5月29日まで停泊し延べ約2600人が利用した[8][7]

病院船計画[編集]

元来自衛隊には、独自の病院船を保有する計画があり、政府内でも検討が進められていた。米国では「マーシー」など多数の病院船が運用されている。

しかし新造では建造費用が350億円かかる、維持費も高価であることから専用船の新造や中古船改造は断念され、大規模自然災害や武力紛争など有事の際は、既存民間輸送船に野外手術システムを積む予定であり、今後試験運用が行われる予定とされる[9]

今後の予定[編集]

自衛隊では2014年度から「はくおう」「ナッチャンWorld」の試験運用を開始し、2015年より民間資金により設立され両船を保有する特別目的会社と20年間の使用契約を締結し、PFI方式による運用を行う方針であると発表した。

島嶼防衛など有事の際の運用に際して、民間企業の船員を使用すると、紛争地域への立ち入り制限を受けるなど制約が生じることが考えられる。このため、船員は主に予備自衛官を活用し、「はくおう」については、通常の訓練および整備は従来通り新日本海フェリーに委託して行う方針である[10]

2016年4月1日付で、新日本海フェリーから高速マリン・トランスポートへ20億円で売却された[11]

その後2016年3月にはPFI法に基づいて設立された特別目的会社「高速マリン・トランスポート」が保有する形で防衛省と2025年12月末まで10年間の輸送使用契約を結んだことが明らかとなった[12]

脚注[編集]

  1. ^ 世界の艦船(1995年10月,p166)
  2. ^ 日本経済新聞 2014年3月23日付
  3. ^ 自衛隊輸送 契約船使えず - 讀賣新聞2016年9月6日付
  4. ^ 防衛大臣が自衛隊に「破壊措置命令」を発動船員しんぶん 2月25日付
  5. ^ 「被災地を救え! 熊本地震救援に出動した艦船と航空機」『世界の艦船』第838集(2016年6月号) 海人社
  6. ^ 被災された方の休養施設としての船舶の活用について (PDF)”. 国土交通省 海事局内航課九州運輸局海事振興部 (2016年4月27日). 2016年5月10日閲覧。
  7. ^ a b 八代港に停泊中のフェリー「はくおう」への乗船について - 防衛省・自衛隊(Internet Archive)
  8. ^ 【防衛最前線(107)】自衛隊で第二の人生 北海道と本州をつないだフェリーの「はくおう」「ナッチャンWorld」”. 産経ニュース (2017年2月1日). 2017年2月25日閲覧。
  9. ^ 災害時多目的船(病院船)に関する調査・検討(内閣府)
  10. ^ 日本経済新聞 2014年3月23日付
  11. ^ 新日本海フェリー株式会社 (2016-06-29). 有価証券報告書 第49期(平成27年4月1日 - 平成28年3月31日) (Report). 金融庁. https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/E01EW/BLMainController.jsp?uji.verb=W00Z1010initialize&uji.bean=ek.bean.EKW00Z1010Bean&TID=W00Z1010&PID=W1E63011&SESSIONKEY=1467623193946&lgKbn=2&pkbn=0&skbn=1&dskb=&askb=&dflg=0&iflg=0&preId=1&mul=%E6%96%B0%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%B5%B7%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%83%BC&fls=on&cal=1&era=H&yer=&mon=&pfs=4&row=100&idx=0&str=&kbn=1&flg=&syoruiKanriNo=S1007UGT&s=S1007UGT 2016年7月4日閲覧。. 
  12. ^ 「ナッチャン」防衛輸送船に - Web東奥(Yahooニュース archive.is)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]