飢餓海峡

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飢餓海峡』(きがかいきょう)は、水上勉原作の推理小説

1962年1月から1962年12月まで週刊朝日に連載されたものの完結にはならず、その後加筆し1963年朝日新聞社に刊行した。その後文庫版では新潮文庫に刊行している。2005年には単行本として河出書房新社に刊行、上編・下編に構成している。

1965年に映画、また1968年1978年1988年にテレビドラマ、1972年1990年2007年に舞台が制作された。

あらすじ


注意:以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。免責事項もお読みください。


戦後まだ間もない頃。北海道地方を襲った猛烈な台風により、青函連絡船が転覆して多数の死傷者が出る。現場で遺体収容に従事した函館警察は、身元不明の遺体を2体発見する。それらの遺体は、連絡船の乗船名簿と該当しなかった。同日、北海道岩幌町の質店強盗が押し入って大金を強奪したうえ、一家を惨殺し証拠隠滅に火を放つ。火は市街に延焼し、結果的に街の大半を焼き尽くす大火となった。(このあたりは現実に起きた洞爺丸事故や、北海道の岩内大火を題材にして執筆されている)。

函館署の弓坂刑事は、身元不明の2遺体が質店襲撃犯3人のうちの2人であり、強奪した金をめぐる仲間割れで殺されたと推測する。同じ頃、青森県大湊(現むつ市)の娼婦・杉戸八重は、一夜を共にした犬飼と名乗る見知らぬ客から、思いがけない大金を渡される。現在の悲惨な境涯から抜け出したいと願っていながら、現実に押しつぶされかけていた八重に、その大金は希望を与えてくれるものだった。その後、犬飼を追跡する弓坂刑事が大湊に現れて八重を尋問するが、八重は犬飼をかばって何も話さなかった。八重は借金を清算して足を洗い東京に出るが、犬飼の恩を忘れることはなく、金を包んであった新聞と自分が切ってやった犬飼の爪を肌身はなさず持っていた。

10年後、八重はふと目にした新聞の紙面に驚愕する。舞鶴で食品会社を経営する事業家・樽見京一郎なる人物が、刑余者の更生事業資金に3000万円を寄贈したという。記事に添えられた樽見の写真には、行方の知れない恩人・犬飼の面影があった。八重は舞鶴に赴くが、樽見と会った翌朝、彼女は海岸に浮かぶ死体となって発見された。当初は自殺と思われたが、東舞鶴署の捜査官・味村刑事は八重の懐中から樽見に関する新聞の切り抜きを発見し、彼女の死は偽装殺人であると看破する。

彼の執拗な捜査によって、10年前の台風の夜に津軽海峡の海上で起きた殺人事件の姿が浮かびあがってくるのだった。

なお、青函連絡船の職員であった坂本幸四郎は、この小説のトリックは現実的にはほぼ不可能だと著書で述べている。

映像化

1965年(映画)

クレジットにはないが、当時東映東京撮影所所長だった岡田茂が「内田吐夢さんに現代劇を撮らせたい」と出した企画[1][2][3]。岡田がすぐに京都撮影所所長に転任したためクレジットされていない。

ロケは東京下北半島北海道舞鶴の各地で行われた。

183分の完成版を、興行上の理由から東映が内田監督に無断で167分にカットして公開し(初公開時、完全版を上映したのはごく一部の劇場のみ)[4]、その後、このことが原因となって内田監督は東映を退社した。なお、現在ソフト化されているのは完全版の方である。

スタッフ
出演

ほか

1968年(テレビドラマ)

  • 放送日:1968年8月21日~1968年9月18日(全5話)
スタッフ
出演

ほか

1972年(舞台)

1972年、文学座により公演。

スタッフ
出演

1978年(テレビドラマ)

  • 放送日:1978年9月2日~1978年10月21日(全8話)
スタッフ
出演

ほか

1988年(テレビドラマ)

第15回放送文化基金賞を受賞。

  • 放送日:1988年10月7日
スタッフ
出演

ほか

1990年(舞台)

1990年、地人会により公演。

出演

2006年(舞台)

2006年、地人会により公演。

スタッフ
  • 演出:木村光一
出演

脚注

  1. ^ 『クロニクル東映 1947-1991』1、岡田茂発行、東映、1992年、p200-201
  2. ^ 鈴木尚之『私説内田吐夢伝』、岩波書店、p1997年、320-366
  3. ^ 岡田茂『悔いなきわが映画人生』、財界研究所、p144、145
  4. ^ 1965年の映画『飢餓海峡』のスタッフ・キャスト一覧(jmdb)※初公開時の完全版、およびカット版の上映状況についても記されている。

外部リンク