非常事態宣言
非常事態宣言(ひじょうじたいせんげん)とは、国家等の運営の危機に対し緊急事態のための特別法を発動することである。
概説
対象には武力攻撃、内乱、暴動、テロ、大規模な災害などのほか、鳥インフルエンザやAIDSなど疫病もある。措置には警察・軍隊など公務員の動員、公共財の徴発、法律に優位する政令の発布、令状によらない逮捕・家宅捜索などを許す事の他、報道や集会の自由など自由権の制限である。
日本では第二次世界大戦後の占領期の1948年4月に起こった阪神教育事件に際しGHQが発令した例がある。また1954年までは、旧警察法に基づいて、国家非常事態宣言を出す権限が内閣総理大臣に与えられていた。しかし、2014年現在、根拠法令はない。また地方自治体が「交通死亡事故多発非常事態宣言」や「ごみ非常事態宣言」などを宣言することがあるが、これらは特別法を発動するものではない。2010年5月18日、口蹄疫の流行に対し、東国原英夫宮崎県知事が「非常事態宣言」をした。
なお、現在の日本では、非常事態宣言に類似する制度として、災害対策基本法に基づく災害緊急事態の布告と、警察法に基づく緊急事態の布告とがあり、いずれも内閣総理大臣が発する。
アメリカでは州知事・首長に災害にともなう地域内非常事態を宣言する職権がある。
発動例
- 1941年12月8日 - 太平洋戦争開戦(大日本帝国)
- 1948年4月24日 - 阪神教育事件(日本)
- 1992年4月30日 - ロス暴動(アメリカ)
- 1996年9月26日 - KBブリッジの崩壊(パラオ共和国)
- 2001年9月11日 - アメリカ同時多発テロ事件(アメリカ)
- 2001年12月19日 - アルゼンチン暴動でデ・ラ・ルア大統領が発令(アルゼンチン)
- 2001年11月26日 - ネパール王族殺害事件後の内乱(ネパール王国)
- 2004年12月26日 - スマトラ島沖地震(スリランカ)(モルディブ)
- 2005年11月8日 - 2005年パリ郊外暴動事件(フランス)
- 2005年7月7日 - ロンドン同時爆破事件(イギリス)
- 2005年8月28日 - ハリケーン・カトリーナ(アメリカ・ルイジアナ州)
- 2006年2月24日のフィリピンでの国軍によるクーデターの企て - アロヨ大統領が発令
- 2006年のタイ軍事クーデター - タクシン首相が発令するが、軍部は無効として戒厳令を発布
- 2007年のアメリカバージニア州バージニア工科大学銃乱射事件 - 訪日中のバージニア州知事が東京で発令
- 2007年ギリシャ山林火災
- 2007年のグルジアでの野党デモ
- 2009年のアメリカでの新型インフルエンザ感染拡大 - オバマ大統領が発令
- 2010年のスペインでの航空管制官ストライキ
- 2011年のニュージーランドでのカンタベリー地震の発生によりキー首相が宣言
- 2011年の福島第一原子力発電所事故 - 原子力災害対策特別措置法による原子力緊急事態宣言が発令された
- 2011年のグアテマラにおける隣国(メキシコ)からの麻薬カルテル組織の侵入
- 2013年のエジプト・サッカー暴動の裁判結果に対する暴動 - 大統領が発令
- 2013年のチェリャビンスク州の隕石落下
- 2014年の西アフリカエボラ出血熱の流行 - シエラレオネ、リベリア、ナイジェリア、ギニアが発令[1][2][3][4]
- 2015年11月のパリ同時多発テロ事件 - フランス[5]
脚注
- ^ Rod Mac Johnson (2014年8月1日). “シエラレオネ、エボラ拡大で非常事態宣言”. AFP. AFPBB News. オリジナルの2014年8月10日時点におけるアーカイブ。 2014年10月11日閲覧。
- ^ “エボラ出血熱、リベリアが非常事態宣言”. AFP. AFPBB News. (2014年8月7日). オリジナルの2014年8月7日時点におけるアーカイブ。 2014年10月11日閲覧。
- ^ “ナイジェリアも非常事態宣言 エボラ出血熱流行で3カ国目”. 共同通信. 47NEWS. (2014年8月9日). オリジナルの2014年10月10日時点におけるアーカイブ。 2014年10月11日閲覧。
- ^ “ギニア、エボラ熱拡大で非常事態宣言”. AFP. AFPBB News. (2014年8月14日). オリジナルの2014年8月14日時点におけるアーカイブ。 2014年10月11日閲覧。
- ^ “パリ同時多発テロ:自爆テロや銃乱射120人死亡”. 毎日新聞 (2015年11月14日). 2015年11月14日閲覧。
関連項目