闇金融

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闇金融(やみきんゆう)は、日本において、ヤミ金融ヤミ金闇金などとも書き、国(財務局)や都道府県貸金業としての登録を行っていない貸金業者、または、その業務を指す。さらに、正規に貸金業の登録をしていながら出資法に違反する高金利を取る業者、または、その業務も広義の闇金融に含める。

貸金業を営む場合は、本来、国や都道府県に貸金業としての登録が必要である。闇金融には、こうした登録を行わず、出資法の制限を超える金利を課して、人権を無視した取り立て(キリトリ、債権回収業務)を行うもの、または登録しながらも同様の犯罪を起こすものがある。

闇金融は、例えば2万円を貸して10日ごとに1万2000円を利息として支払わせるというような手口が知られている(年利に直すと2,190%)。ダイレクトメール携帯電話などを用いて勧誘したり、スポーツ新聞などに広告を掲載、または電柱公衆電話などに広告を貼り付ける違法広告も知られている。官報などを見て自己破産者などを対象にダイレクトメールを送り付ける場合がある。

当初は非常に低利な融資条件を提示するが、実際に貸す段になると上記のような超高金利を求める、というパターンが多く、保証金などの名目でお金を騙し取り融資をしない融資詐欺(貸します詐欺)もある。

主に電機メーカー、自動車メーカー、都市銀行などの大手企業や上場企業に酷似した商号やロゴを使用し、あたかもグループ会社であるかのように詐称し、「○○のグループ会社なら安心」と誤認させ、営業することが多い(これらの企業とは全く無関係)。ヤミ金の本拠地は東京、名古屋、大阪といった大都市圏にあることが多い。最も、HP上に住所、代表者の氏名、貸金業登録の許可番号が明記されていない (あっても偽の番号)ので一般的には見分けがつきやすいが、注意を要する。

実態

厳密な定義はなされていないが、下記のいずれかひとつでも該当すれば闇金融に当たるとされている。

  • 無登録の業者全て(金利の高低は無関係であるが、年率20.0%の金利や、取り立ての制限を守っている業者は皆無とみてよい)。
  • 登録しているものの、出資法の制限を超える金利を課す業者(トイチ参照)。高金利により登録を取り消された業者の中には日本貸金業協会の会員もあった。
  • 登録番号を非表示、あるいは偽証する業者(090金融は全て非表示。仮に固定電話の番号を表示していても、登録番号を偽証する業者も多い)。
  • 電話番号が「携帯電話のみ」または「固定・携帯電話の番号を併記」している業者(いわゆる090金融)で、固定電話の番号を表示しない業者(登録および広告では「固定電話の番号のみ」で表示しなければならない。飛ばし携帯の番号ではほとんど足がつかず、摘発が極めて困難なため、「携帯電話の番号のみ」や、「固定電話の番号と併記」する形の登録も認められない)。
  • 「あなたの信用状態では貸せない、しかし○○社なら貸してもらえるかもしれない」などと、別の貸金業者や闇金融を紹介するというものもある。紹介された先で金が借りられたら「それは当社が紹介したから」などと言って紹介料を騙し取るタイプのもの。いわゆる「紹介屋」。
  • 無保証・無担保で多額の金額(数百万~一千万)を、極端な低金利(年利数パーセント)で貸し出すといった、一般的にはありえない条件の誇大広告をしている業者。
実在する大手の信販クレジットカード会社ならびに銀行証券会社消費者金融生命保険会社といった金融業や、一般企業(富士通パナソニック東日本旅客鉄道など)の社名(グループ会社)であることを騙り、または同社のロゴ(商標)を無断で使用したダイレクトメールで広告を送付してくる事例も各社の公式サイトやプレスリリース上で告知されている(融資詐欺サラ金カード#広告などの注意点アプラスフィナンシャル#模倣チラシを参照)。
後者の一般企業群は個人事業主へ一方的に送付した事業者金融の印刷物で使われているが、かつての三洋電機クレジットのような事業者金融も手がける電機メーカーの子会社も存在するため、見分けがつきにくい。
これらは実際には闇金融として融資するのではなく「融資するために金の振込が必要」と騙り、金銭を詐取する融資詐欺に該当するケースも多い。

業者が登録貸金業であり、設定金利も出資法上限を超えない場合には一般的には「闇金融」との認識は無いが、下に列挙する貸金業法違反行為を犯し、あるいは違反すれすれの行為により取立てを図る業者もある。

  • 夜間の取立て、日中の執拗な取立て
    • 取立てにおける不退去、住居侵入、監禁、軟禁など
  • 借り手に生命保険や自動車保険を掛け自殺した場合に保険金より取り立てる
    • 加えて借り手の自殺誘導[1]や交通事故偽装による保険金詐欺
  • 特定公正証書(強制執行認諾付公正証書)作成のための委任状を取得する、利息制限法を越える契約についての特定公正証書作成の嘱託を受ける等
    • よって公正証書により債務名義を取得し、借り手財産に合法的に強制執行を行う
  • 過剰貸付[2]
  • グレーゾーン金利での貸付[3]
  • みなし弁済による抗弁[4]

その他の手口として、

  • 意図的に借り手またはその同居家族(借り手等)に対して訴訟を起こし、訴状送達(真正訴訟であるから訴状も真正である)して借り手等の対応を見る。動揺を誘い取立てしやすくしたり[5]、あるいは借り手等の怠慢により受領した訴状を徒に放置する事を誘う。訴状を放置したり、または勘違いして受領を拒否したとしても、差置送達[6]、出会送達[7]、補充送達[8]、付郵便送達、公示送達により法律的には訴状送達完了となる。すると訴訟は被告(借り手)の関与しないまま欠席裁判により原告(闇金融)主張がそのまま判決、債務名義となり、被告の財産に対する強制執行の段階で初めて気づくと言う事態も起こりうる[9]
    • なお訴状は特別送達により送付されるため、相当な怠慢等が無い限り見過ごす事は無いであろうが、高齢者のみの世帯や独居老人[10]など、若干でも認知力が低下している場合や、逆に頑迷であるために勘違いして受領を拒否する虞れがある場合には、厳重な注意が必要である。
    • 民事訴訟を起こすのには資格制限、犯歴制限などははない[11]

闇金融の実例

ファイル:Yami1.jpg
無登録業者からの勧誘ダイレクトメールの例(アプラスの社名、ならびにロゴが書かれてあるが、アプラスとは直接関係がない[12]

※財務局などから無登録業者として公表、あるいは経営者が摘発されたものの一例。当然ながら社名にある大手企業とは(資本・人材を含めて)一切無関係である。中には前述のように、大手企業のロゴやイメージカラーを無断で使用し、あたかもグループ会社であるように詐称したものもある。

  • ゼロックス
  • 救心
  • ワコール
  • エーベックス
  • 富士通ファイナンス
  • 三菱第一信用
  • ヤンマークレヂット
  • イオンクレジットホールディングス・|イオンバンク・イオンコミュニティ[13]
  • イオン調査事務所・サティ[14]
  • みずほホールディングス[15]
  • みずほトラディショナル
  • みずほ銀行インターネットカード事業部[16]
  • みずほ信用(保証)[17]
  • みずほ総合信販
  • みずほキャッシング(センター)
  • みずほダイレクト
  • みずほファイナンス
  • 日本信販ファイナンス
  • 三菱重機レンタル
  • アリコクレジット
  • JOMOファイナンス・JOMOクレジット・JAPAN ENERGY/ジャパンエナジー/JAPANエナジー[18]
  • ホールディングジョモ
  • JR東日本信販・ビュー総合クレジット[19]
  • サンケイ信販
  • 三井住友ファイナンス[20]
  • 日興コーディアルファンド
  • JAL信用信販
  • ニッセンクレジット
  • 東芝クレジット[21]

また、最近見かけるケースでは、一見、大手消費者金融と全く同じ名称の広告DMに見える郵便物(官製はがきで印刷されることが多い)を使い、書かれているフリーダイヤルに電話をかけると実際は闇金融で違法な取立てに苦しんでいるという事件も多発している。

これらはその金融会社の住所が全く記載されていないか、記載先の住所と消印の郵便局の所在地が明らかに掛け離れている(本社が東京都豊島区と書いてあるのに、消印が広島市内や横浜市内の郵便局であるなど)のと、官製はがきに大手消費者金融の広告をそのまま市販のスキャナーで取り込み、電話番号を書き換えた上でカラープリンターでカラーコピー印刷をしただけの粗悪なものがほとんどなので区別は可能であるが、大手の消費者金融の広告と勘違いしてしまうケースが多い。大手・準大手の消費者金融のほとんどはダイレクトメールでの融資の勧誘を一切行っていないので、これらを名乗るダイレクトメールは偽物と考えてよい。 信用保証株式会社というヤミ金業者のように、HP上に法定外利息と記載し堂々とヤミ金であることを明記した上で営業を行っている場合もある。

対策

具体的な対策法はまず、怪しいと感じたら各都道府県の消費者センターやヤミ金ホットラインに相談することである。いずれにせよ少しでも怪しいと感じたら絶対に借りないことが第一である。

刑事取締り

無登録貸金業の場合には貸金業法違反、出資法の上限金利(2010年6月8日の改正では年20.0%)を超える金利を設定した場合には出資法違反、に該当し司法捜査[22]を受ける。その他の違法行為(前述#実態)によっても司法捜査や、登録貸金業者であれば行政処分の対象となる。貸金業登録の有無にかかわらず、組織犯罪処罰法に抵触すれば加重処罰される。

闇金融の動向

最高裁判所判例
事件名 損害賠償請求事件
事件番号 平成19(受)569
2008年(平成20年)6月10日
判例集 第62巻6号1488頁
裁判要旨

1 社会の倫理,道徳に反する醜悪な行為に該当する不法行為の被害者が,これによって損害を被るとともに,当該醜悪な行為に係る給付を受けて利益を得た場合には,同利益については,加害者からの不当利得返還請求が許されないだけでなく,被害者からの不法行為に基づく損害賠償請求において損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として被害者の損害額から控除することも,民法708条の趣旨に反するものとして許されない。

2 いわゆるヤミ金融の組織に属する業者が,借主から元利金等の名目で違法に金員を取得して多大の利益を得る手段として,年利数百%~数千%の著しく高利の貸付けという形をとって借主に金員を交付し,これにより,当該借主が,弁済として交付した金員に相当する損害を被るとともに,上記貸付けとしての金員の交付によって利益を得たという事情の下では,当該借主から上記組織の統括者に対する不法行為に基づく損害賠償請求において同利益を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として当該借主の損害額から控除することは,民法708条の趣旨に反するものとして許されない。

(1,2につき意見がある。)
第三小法廷
裁判長 那須弘平
陪席裁判官 藤田宙靖堀籠幸男田原睦夫近藤崇晴
意見
多数意見 全員一致
意見 田原睦夫
反対意見 なし
参照法条
(1,2につき)民法708条,民法709条 (2につき)出資の受入れ,預り金及び金利等の取締りに関する法律(平成15年法律第136号による改正前のもの)5条2項
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グレーゾーン金利の撤廃により、消費者金融の審査が厳しくなり、消費者金融で融資を断られた者が闇金融に手を出すことが懸念されている。ただ、これまで多重債務者が消費者金融への利払いのために闇金融に手を出したり、消費者金融を利用できない自己破産者が闇金融に手を出すというケースがほとんどだったので、上限金利引下げにより一時的には闇金融が増えても、中長期的には多重債務者や自己破産者の減少により、闇金融は減少するという説もある。

2005年(平成17年)1月27日の福岡高裁判決(平成16年(ネ)第752号事件)を初めとする下級審判例にて、ヤミ金の貸付契約は公序良俗に反して無効とされた。さらに、平成20年6月10日最高裁判例(平成19(受)569号事件)により、ヤミ金による貸付金は民法708条の不法原因給付であり、被害者からヤミ金への損害賠償請求では、貸付金を利益相殺しないことが確定した[23]

この二つの判例により実質的に、下記の事項が訴訟上認められた。

  • 闇金融から借りた金は、元金も含めて返還する必要がない
  • 加えて、借りた後に闇金融に対して支払った金員は、その全額を返還請求できる(ただし元々が犯罪性のある狡猾な組織であるから、回収に実効性があるかは議論の余地がある)

2007年1月20日より改正貸金業法により闇金の刑事罰が従前の「5年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金又はその併科」から「10年以下の懲役又は3000万円以下の罰金又はその併科」(貸金3条1項,同47条1項)に引き上げられ、恐喝の罪と同等以上となった。また、各都道府県警察の悪質金融事犯取締本部[24]の取締強化で、2007年の検挙件数は484件(前年比50%増)となり、闇金は成り立たなくなってきているという意見もある。利用口座の凍結が行われていることもあり、2012年には被害額が統計開始以来最少の109億円まで落ち込んでいる[25]

闇金融業者は自らが違法行為を行っている認識はあるため、取立ての電話があった場合、会話を録音した上で、逆に事務所の所在地や代表者の名前等を尋ねたり、警察への通報を匂わせると、それ以後の取立てはとまる場合が多いとする人もいる。なぜならば、それ以上の取立てや自己の所在地等が判明することは闇金業者自体に警察からの捜査が及びかねないこと、闇金業者の貸付が2、3万円程度の場合は、ある種の貸し倒れに対する「リスクヘッジ」ができているからであるという。もっとも、闇金融業者は暴力団の構成員や暴力団周辺者(準構成員)、フロント企業、あるいは半グレ等の準暴力団、これらの関係者、縁故者である場合もあり、その場合は程度によっては拉致、軟禁、監禁、暴行、傷害や殺害を含む執拗な攻撃を加えてくる虞れもある。

2008年7月14日放映のNHKスペシャルでは、生活苦(自己破産したり、病気で仕事ができないなど)のためにやむを得ず闇金融に手を出す人々がいつの時代にも必ず一定数おり、闇金融側からすると「いい餌食」となっている現状や、客と業者ではなく、個人から個人への融資の形をとって貸し付けるために摘発しにくく、文字通りの「闇」金融になっているケースを紹介し、こうした事態を打開しようと活動を始めている自治体が実際にはまだ岩手県と鹿児島県の2県しかなく、闇金融完全撲滅の前途が厳しいことが描かれていた。

2013年には、法的にも利息制限法を超える109.5%の利息が認められている質屋として名目上許可を得るという「偽装質屋」が問題となる[25]など、新たな手口も登場している。

脚注

  1. ^ 自殺関与・同意殺人罪に問われない程度の行為)
  2. ^ 借り手1人に対し(貸金業1社で50万円、又は他社と合わせて100万円となる貸付を行う場合には借り手から源泉徴収票の提示を受けて)年収等の3分の1を超える貸付は原則禁止。ただし貸金業法施行規則第10条の21第1項及び同規則第10条の23第1項に該当する場合はこの限りではない
  3. ^ 2010年6月8日以前については年29.2%、以降については年20.0%を超えない金利であって、利息制限法に定める上限金利を超えるもの。2010年6月8日以降のグレーゾーン金利による貸付は、貸金業者への行政処分対象となっている。
  4. ^ グレーゾーン金利利息制限法#みなし弁済を参照
  5. ^ 真正和解に持ち込むなど
  6. ^ (民訴106条3項)
  7. ^ (民訴105)
  8. ^ 就業場所や事務所等において雇用主や法人代表者等、使用人その他の従業者又は同居者など。民事訴訟法第106条第1項前段、民事訴訟法第106条第2項
  9. ^ 強制執行段階で抗弁や再審請求をしても、特に訴状の放置や受取拒否の事実があれば、ほぼ認められない
  10. ^ 或いは法律知識を欠く青少年、無業者のみの世帯。なお、これらの者については実際の居所にかかわらず、住民票の住所を実家など、法律知識のある親族が居る場所に定めておく事が望ましい。
  11. ^ ただし少額訴訟制度については回数に制限がある
  12. ^ アプラスの公式サイトでも「当社と一切関係ないので注意するように」と呼びかけている。
  13. ^ 「イオンコミュニティ(株)」を名乗る不審な広告にご注意ください - イオンクレジットサービス株式会社 2012年10月1日閲覧
  14. ^ 「(株)イオン調査事務所」や「(株)サティ」を名乗る不審な電子メールにご注意ください - イオン銀行お知らせ 2011年9月23日閲覧 またサティはあくまでも店舗ブランド名であり、株式会社サティは存在しない。(サティの運営はマイカルが行っている。)2011年3月にサティの店舗ブランドは廃止(ジャスコポスフールとともにイオンに統合)され現存しない。
  15. ^ 実在するみずほフィナンシャルグループ、ならびにその前身の「 みずほホールディングス」を騙っているが、当然関係ない。
  16. ^ 実在するみずほ銀行ではこの事業部は存在しない。
  17. ^ 実在するみずほ信用保証は「みずほ信用保証(株)」であるが、偽会社は「(株)みずほ信用保証」と株式会社の名義が前に入る。
  18. ^ これらはJXホールディングスの前身のひとつ「ジャパンエナジー」と同名、またはそれに類似して語った名称であるが、当然かつて存在したジャパンエナジーとは一切関係がない。
  19. ^ 当社名称および当社の類似名称を名乗る団体について - 株式会社ビューカード 2011年8月20日閲覧
  20. ^ このほか三井住友フィナンシャルグループの名前を無断使用した会社もあった。
  21. ^ 東芝ファイナンスの旧商号を利用したものである。
  22. ^ (警察から刑事捜査など)
  23. ^ 最高裁判所第三小法廷判決 2008年6月10日 、平成19(受)569、『損害賠償請求事件』。
  24. ^ 名称は都道府県により異なる
  25. ^ a b 偽装質屋:被害急増、ヤミ金業者が高齢者ら狙う”. 毎日新聞社 (2013年5月23日). 2013年5月25日閲覧。

関連項目

対策組織

外部リンク