正則性公理

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正則性公理(せいそくせいこうり、: axiom of regularity)は、別名「基礎の公理」(きそのこうり、: axiom of foundation) とも呼ばれ、ZF公理系を構成する公理の一つで、1925年ジョン・フォン・ノイマンによって導入された。選択公理と同様、様々な同値命題が存在する。

定義

でない集合は必ず自分自身と交わらない要素を持つ。

以下の3つの主張はいずれもZF公理系の他の公理の元で同値であり、どれを正則性公理として採用しても差し支えない[1]

  • 任意の空でない集合xに対して、
  • について、x整礎関係
  • V=WF

ここで、V集合論宇宙を指し、WF整礎的集合全体のクラスフォン・ノイマン宇宙)を指す。

ZF公理系内に限って話を進める。各順序数に対してを次のように定義する。

  1. 極限順序数のとき 

クラスWFはこれらを全て集めたものとして定義される。

ZF公理系の他の公理系から得られる種々の集合演算(対集合和集合冪集合) の結果としての集合は常にWF内に含まれるため、V=WF仮定は全ての集合を0に通常の集合演算を施すことによって得られるものだけに制限することを主張している。したがって、例えばx= {x}のような集合やxyかつyxなる集合は正則性の公理の下では集合にはなり得ない。


性質

  • 任意αON に対して、
  1. 推移的

証明

超限帰納法による。 のときは明らかである。 に対して成り立っていると仮定する。 のとき、仮定より は推移的であり、推移的になる。また、極限順序数のとき、仮定よりに対しては推移的であり推移的集合和集合推移的になることにより

も推移的になる。さらに

同様

WFの定義より、xWFのときを満たす最小の順序数後続順序数になる。実際、極限順序数として及びが成り立っているとすると、

となって矛盾する。

そこで、集合xランクを次のように定義する。

xWFのとき、を満たす最小のを集合xランクといい、で表す。

よって、 ならば

が成り立ち、かつとなる。また、このランクの概念を用いては次のように特徴付けられる。

及び、

ランクを計算するときに次の補題を使う。

のとき、

かつ

とすると

ならば だから

脚注

  1. ^ Kunen 1980, p. 101, Ⅲ, §4.1

参考文献

  • Halmos, Paul R. (2015-04-22), Naive Set Theory (paperback ed.), Benediction Classics, ISBN 978-1-78139-466-3 
  • ポール・ハルモス『素朴集合論富川滋 訳、ミネルヴァ書房、1975年。ISBN 4-623-00986-6 
  • Kunen, Kenneth (1980). Set Theory: An Introduction to Independence Proofs. Elsevier. ISBN 9780444868398 

関連項目

外部リンク