弾倉

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STANAG マガジンの絵。横に寝かせ上から見た図。手前側(絵の右下部分)を銃に差し込む

弾倉(だんそう、: Magazine)は、火器弾薬をあらかじめ装填しておき、発射の際に次弾を供給するための、銃の部品のひとつである。英語の発音をそのまま借りてマガジンとも言う。

外付けのもの(脱着式)と、に内蔵されているもの(固定式)がある。前者は半自動式拳銃(セミ・オートマチック・ピストル)や自動小銃軽機関銃に、後者はボルトアクション方式など手動小銃や回転式拳銃(リボルバー)でよく見られる。改造品や模造品、また、正規品であったとしても"仕様"として極稀にオートマチック式で固定式の物もあれば、回転式で脱着できるものもあるため、一概には言えない。

概要

FN ブローニング・ハイパワー用ダブルカラム式弾倉と、その分解状況

銃砲に弾薬を最初に装填する時や、火器が一発の弾薬を発射し終えたあと、弾倉の中の弾薬が自動または手動で薬室に送り込まれる。弾薬は送り板(フォロアー)を底面としてばねの力で押し上げられており、開口部には勝手に飛び出さないように留め金が付けられているか、開口部側面が曲げ加工されている(この「曲げ」をマガジンリップと言う)。いくつかの種類の弾倉は、クリップで簡単に装填することができる。クリップと弾倉は混同されやすく、英語のスラングでも弾倉をクリップと形容する場合があるが、両者は厳密には別物である[注 1]

弾倉にはいくつかの種類があるが、最も一般的なものは脱着式であり、箱形のものが多い。弾は先細りの形状をしているため、20発程度までのものは直線的な形状をしているが、30発以上装填できるものは湾曲していることが多い。これは、バナナの形になぞらえて、「バナナ型弾倉」と呼ばれる。

初期の箱形弾倉は、縦に一列に装填していくものだったが、多くても7ないし10発しか装填できないものが多かった。そこで、弾倉の幅を拡げ、互い違いに装填していくことで装填数を増やす工夫がなされた。前者を「単列式」または「シングルカラム式」、後者を「複列式」または「ダブルカラム式」という。しかし、日本陸上自衛隊が新型拳銃を導入する際、ダブルカラム式拳銃の銃把日本人の手には大きすぎるという理由から、装弾数を犠牲にしてシングルカラム式のSIG SAUER P220が採用されている。しかし、SAT(特殊急襲部隊)やSIT(特殊捜査班)、SST(海上保安庁特殊警備隊)、SBU(海上自衛隊特別警備隊)などはダブルカラム式の拳銃も採用している。なお、近年は日本人の体格も昔に比べ、一段と良くなっているため、ダブルカラム式の自動式拳銃を問題無く握れる人は男女問わず多い。

また、シングルカラム式でもデザートイーグルオートマグIIIのように、マグナム弾カービン弾など、全長の長い特殊な弾薬を使用するために握りにくい製品もあれば、ダブルカラム式でもCz75ブローニングHPなど人間工学を利用したり、射手のことを考慮して手の小さな人でも握りやすくした製品もあり、両者の優劣を一概には判断できない。

ダブルカラム式の箱形弾倉には、開口部が一列に絞り込まれて弾薬を一発ずつ抜き出す「シングル・フィード」方式と、絞り込まれないまま二列の弾薬を交互に抜き出す「ダブル・フィード」方式がある。前者は強度において勝り破損の危険性も少ないが、弾倉内で二列の弾薬が一列に絞り込まれる際に目詰まりが起こって給弾不良を起こす危険性がある。一方後者は目詰まりの危険性は低いが、開口部が大きく開いてしまうため内蔵ばねの劣化によって弾薬が飛び出したり抜け落ちたり、強度において劣る開口部が破損変形して給弾不良を起こす危険性がある。

さらに、箱型弾倉には、スオミ KP/-31短機関銃スペクトラ M4英語版短機関銃のように、4列が並んだ「複々列式」も存在する。

歴史

1878年ウィスコンシン州ミルウォーキーの時計職人兼銃職人ジェームズ・パリス・リーは、5発入りの着脱式箱型弾倉を発明し、特許を取得した。

1879年、老舗銃器メーカーのレミントン社がリーと契約し、新型弾倉を備えた銃の発売を始めたが、当時レミントン社は経営危機にあったこともあり、商業的には失敗に終わった。1886年、リーはレミントンに見切りをつけ、イギリスに渡り、王立小火器工廠と契約した。こうして生まれたリー・エンフィールド銃は大成功を収め、イギリス軍の長寿シリーズとなった。

第二次世界大戦期にかけてのマガジンは、着脱こそできたがあくまで分解清掃の際に邪魔にならないようにという配慮からで、予備弾倉を携行して弾切れ時に交換する考え方はなかった(SMLEやSVT-40など)。

バリエーション

ボックスマガジン

もっとも一般的なマガジンの形状で、箱型のケースの中に弾薬が一列、あるいは互い違いに並べられ、普通は底部に設けられたバネにより順次本体に送り込まれる。装弾数が多いものでは、弾薬の形状が先細りのテーパー形状であるために湾曲してバナナ型になることが多い。

一般的には銃の機関部の下側に取り付けられるが、上部[注 2]や側面[注 3]に差し込む方式も存在する。

構造の単純さゆえに安価で信頼性が高いという利点があるが、装弾数を増やし過ぎると弾倉が長すぎるようになり、銃から大きく突出して保持射撃の障害となるため、大容量化には限度がある。

近年では、残弾数が一目でわかるように樹脂製の半透明の物も存在する。

ドラムマガジン

多くの弾丸を収納し、ゼンマイ動力で送り出す円筒形の弾倉(トンプソン・サブマシンガンPPSh-41など)。近年のものには、後方が透明のプラスチック製で残弾が容易に確認できるものもある。

構造が複雑で目詰まりしやすい上にコストが高く、特に第二次世界大戦後は用としては少数派である。この他、軽機関銃用として弾帯を丸めて収納しただけで、中身にゼンマイなどの機構を備えないタイプのドラムマガジンもある[注 4]。また、それから派生した単なる布袋の弾倉もある。

パンマガジン

DP28軽機関銃のパンマガジン

「パン」とは平たい鍋のことであるが、日本語では円盤型、形とも呼ばれる弾倉。ドラムマガジンの一種とみなされる場合もある。ルイス軽機関銃用のパンマガジンは下面が開放されていた。

銃弾は内部の円盤型保弾板上に先端を円の中心に向けてぐるりと配置され、やはりゼンマイ動力で送り出す。使用する弾薬が旧式で、薬莢がリム付き(.22LR弾7.62x54mmR弾.303ブリティッシュ弾など)であることが多い。ルイス軽機関銃の様に射撃時に弾倉自体が回転する物もあった。ほとんどの物[注 5]は、薬室上部に水平に設置されるが、シャテルロー(Chatellerault) M1931のように側面に垂直に設置されるものもある[1]

装弾数は多いが大型で重く、物によっては破損しやすいなど問題もあり、現代ではこの形式を採用している銃はごく少ない。

ヘリカルマガジン

細長い円筒形または多角柱で、内部の螺旋状の溝に多くの弾丸を収納し、銃の前方下部や後方上部に銃身と並行に取り付けられる。スパイラルマガジンとも呼ばれる。

採用例はキャリコM100PP-19 ビゾンなど。比較的新しい形式で、採用している銃はごく少ない。

多数の弾薬をコンパクトな空間に収められるという利点があるが、構造が複雑な上、前後に細長い形状のため残弾が減少するにつれて弾倉の、そして銃全体の重心位置が変わってバランスが崩れる。更に大型で重く、装着時に作動用発条のテンション調整に手間が掛かるという欠点がある。

チューブマガジン

細長い形の管状弾倉。脱着式の場合もあるが、その長さから来る取り扱いにくさから固定式である場合が圧倒的に多い。歴史的にはウィンチェスターライフル他のレバーアクションライフルが採用しており、現代では散弾銃用として使用されている。多くの場合、銃身下へ並行して取り付けられるが、スペンサー銃の様に銃床へ内蔵された物も存在する。

実包は一列に並べられるのでセンターファイア弾では尖頭弾が雷管に干渉するため、暴発防止用に平頭弾しか使えないとされている。またヘリカルマガジン同様、発射に伴って重心位置が移動してしまうなどの欠点がある。

回転輪胴

リボルバーの回転輪胴(シリンダー[2]を弾倉として利用するもの。回転軸を抜き、撃ち終えた輪胴を本体から外して装填済みの予備と交換することで再装填の手間を省く。

主にソリッドフレームだったパーカッションロック時代の速射テクニックだが、金属薬莢時代になっても、安物でソリッドフレームが多いサタデーナイトスペシャルでは、未だに有効な再装填方法であると言える。

現代の採用例としては、2015年頃からインターネット上で存在が確認されているCrye Precision製の散弾銃「SIX-12」が挙げられる[3]

その他

この他、上部に寝かせて設置され、装填直前に実包が90度回転する機構をもつ特殊な細長いボックスマガジン[注 6]や、複数本のチューブを束ね、手動で回転させることでチューブを素早く切り替えることができる手動回転式チューブマガジン[注 7]、ロータリーマガジン[注 8]がある。

内蔵型では、ボックスマガジンと同じ原理だが実包を手動で一発ずつ、ないしストリッパー・クリップを用いて一括で装填するボックス型[注 9]、脱着式の挿弾子を実包ごと押し込み装填するエンブロック・クリップ[注 10]、ロータリー型[注 11]、垂直に立てた円盤へ360°放射状に実包を全周配置するターレット型[注 12]、チューブ型[注 13]の他、前述の手動回転式チューブマガジン[注 14]が存在する。リボルバーシリンダーもこの範疇といえる。

さらに、20-40mmクラスの対空機関砲などには、何発かまとめたクリップを次々と上から載せていく方式の固定式弾倉(ホッパー式)がある。日本十一年式軽機関銃も、小火器としては珍しくこの方式で、5発ずつクリップにまとまった実包を重ね装填していくが、ホッパー弾倉自体は容易に取り外して交換可能である。

脱着式と固定式

脱着式と固定式では、固定式の方が再装填に時間がかかることから、法規制の厳しい狩猟用やホビー用などに限られる傾向があり、軍事用途や警察・法執行機関用途では圧倒的に脱着式のものが多く採用されている。

脱着式の弾倉は、により形状と大きさが明白に異なることが多い。たとえばM16系とAK系の弾倉は、特徴を掴めば一目で見分けることができる。しかし、同じ弾薬を用いる場合、たとえばルガー・ミニ14AR-15の弾倉、M16と89式5.56mm小銃の弾倉を一目で見分けるのは難しいが、共用できるよう最初から規格が合わせてある場合が多い。逆に、外見が良く似ているAK-47/AKM系とAK-74では使用弾薬が異なるため、暗所でも手触りで区別できるように弾倉に識別用の刻みを入れたり、銃側にも銃床の中央に溝を入れるなど、工夫がなされている。ポーチなどから引き抜きやすくするため、指をかける穴がついたゴム製ストラップも販売されており、マグプルの製品が有名であるためマグプルと通称される。

脚注

注釈

  1. ^ ただし、M1ガーランドなどのエンブロック式クリップは一種の弾倉と考えることができる。
  2. ^ ZB26軽機関銃ブレン軽機関銃九九式軽機関銃など、主にライフル弾を使用する軽機関銃で採用される。短機関銃での事例としてはオーウェン・マシンカービンやF1サブマシンガンがある。
  3. ^ MP18ステン短機関銃スターリング短機関銃一〇〇式機関短銃など、主に拳銃弾を使用する短機関銃で採用される。
  4. ^ MG34RPDなど。
  5. ^ アメリカン180DP28、ルイス軽機関銃など。
  6. ^ FN P90など。H&K G11も上部に実包が設置されるが、こちらは薬室が縦に90度回転する。
  7. ^ SRMアームズ M1216英語版など。
  8. ^ シュタイヤーSSG69英語版狙撃銃ブレイク・ライフル英語版など。
  9. ^ Kar98kM1903マンリヒャーM1901英語版自動拳銃モーゼルC96など。
  10. ^ M1ガーランドなど。
  11. ^ サヴェージ モデル99英語版など。なお、モデル99は後に着脱式ボックスマガジンに変更されている。
  12. ^ プロテクター・パームピストル英語版など。
  13. ^ ポンプアクションショットガンの多くやレバーアクション英語版小銃、一部のセミオートマチックショットガン。
  14. ^ IWI タボールTS-12など。

出典

関連項目