夜叉ヶ池 (戯曲)

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夜叉ヶ池』(やしゃがいけ)は、泉鏡花1913年(大正2年)に発表した戯曲。彼が初めて著した戯曲で、『演芸倶楽部』に発表された。これを原作とする演劇・映画等についても併せて記述する。

夜叉ヶ池龍神伝説を題材としている。ゲアハルト・ハウプトマンの『沈鐘』(Die versunkene Glocke)が元ネタといわれている。澁澤龍彦の解説で、岩波文庫天守物語とともに収載されている。

あらすじ

激しい日照りが続いていた大正二年のある夏の日、岐阜県福井県の県境にある三国岳の麓の琴弾谷のある村に一人の男がやって来た。諸国を旅する山沢学円という学者兼・僧侶である。

偶然出会った百合という美しい女性に山沢は語った。一昨年のこと、萩原晃という自分の友人の学者が各地に伝わる不思議な物語の収集に出たまま行方知れずになり、その足跡を辿って諸国を旅しているのだと。

そこへ百合の夫という男が現れる。その男こそ萩原であった。久々の再会を喜ぶ山沢に、萩原は自分がこの地に住み着いたいきさつを語る。

一昨年、この地を訪れた萩原は、村で鐘守を務める老人と出会った。彼によると、昔、よく暴れ回り大水を起こしていた龍神を行力によって、三国岳の山中にある夜叉ヶ池に封じ込め大水を終息させた時、人間との誓いを龍神に思い出させるために、村では昼夜に三度鐘を鳴らさなければならない決まりになっているという。この決まりを現在も一人厳格に守っていたその老人が死んだため、その意志を継ぐべく百合と結婚して村に留まり、鐘を撞いていたのだった。

夜叉ヶ池の龍神・白雪は、剣ヶ峰の恋人のところに行きたくて仕方がないのだが、彼女が動くと大洪水となってしまうためなかなか行く事が出来ず、眷属たちが止めるのと萩原と百合が鐘を撞くのを疎ましく思っていた。

その頃、村では代議士・穴隈鉱蔵や神官・鹿見宅膳が年頃の若い娘を雨乞いのため夜叉ヶ池の龍神への生贄にしようという、恐ろしい提案を行なっていた。そして生贄に選ばれたのは、なんと百合だった。夜叉ヶ池を見に行った萩原と山沢の留守中に、村人たちが百合を強引に連れ出してしまう。

騒ぎに気付いて駆け付けた萩原と村人たちとの押し問答のさなか、百合は悲嘆のあまり自害してしまう。これに怒った萩原は撞木の縄を切り鐘を撞けないようにして、百合の後を追った。かくして、鐘を撞く誓いがついに破られ、白雪は剣ヶ峰の恋人のもとへ飛び立たんと、天翔けていった。その時、夜叉ヶ池の水があふれ出し、大洪水となって村を押し流してしまったのであった。

舞台

1978年以降、演劇集団 円による舞台劇が上演されているのをはじめ、映画版に主演した坂東玉三郎により度々上演される[1]など、数多く舞台化されている。

2003年版

東京グローブ座2003年3月16日 - 4月6日

キャスト

その他、橘義磯村智彦

スタッフ

2004年版

PARCO劇場2004年10月28日三池崇史が初めて舞台演出を手掛けた。DVDも発売されている。

スタッフ
キャスト

その他、遠藤憲一きたろう綱島郷太郎涼平鈴木ユウジ森川涼蛭子直和萩原聖人丹波哲郎

宝塚版

宝塚歌劇団花組による上演。

映画

夜叉ヶ池
監督 篠田正浩
脚本 田村孟
三村晴彦
原作 泉鏡花
製作 杉崎重美
富沢幸男
中川完治
出演者 坂東玉三郎
加藤剛
山崎努
音楽 冨田勲
撮影 小杉正雄
坂本典隆
編集 池田禅
山地早智子
製作会社 松竹
配給 松竹
公開 日本の旗 1979年10月20日
上映時間 124分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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1979年制作。監督は篠田正浩女形坂東玉三郎がヒロインと夜叉ヶ池の主・白雪姫の二役を演じた[2]

しかし、劇場公開後はテレビで1回放送されただけで、それ以降一部の権利者がソフト化を拒否する等、権利関係の調整が難航しているため、DVD発売等の二次利用の見通しは立っていない幻の映画となっている[要出典]封印作品)。

松竹は本作の特撮のために2億円の予算を投じ、東映矢島信男率いる特撮研究所のスタッフを招き松竹大船撮影所の第8ステージに波起こし装置を2基設置して洪水シーンを撮影するなど、大掛かりな特撮が用いられた[3]

ハワイブラジルイグアスの滝など海外でのロケも行われた[3]

スタッフ

キャスト

その他、下馬二五七十貫寺梅軒不破万作坂東守若小田草之助岡本忠幸沖秀一篠原靖夫

オペラ

2013年6月、香月修の作曲、岩田達宗の演出によるオペラ新国立劇場にて上演される予定である[4]

関連項目

脚注

  1. ^ 超自我の幻想:「海神別荘」
  2. ^ 坂東はその後、映画『帝都物語』に泉鏡花役で出演している。
  3. ^ a b 石井博士ほか『日本特撮・幻想映画全集』勁文社、1997年、260頁。ISBN 4766927060 
  4. ^ 夜叉ヶ池 - 新国立劇場

外部リンク