ワット

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ワット
watt
記号 W
国際単位系 (SI)
種類 組立単位
仕事率工率電力放射束
組立 J/s
定義 1秒間に1ジュールの仕事率
語源 ジェームズ・ワット
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ワットwatt,記号:W)とは仕事率電力工率放射束、をあらわすSI単位SI組立単位)である[1][2]

概要

ワットという名称は、蒸気機関の発展に大いに貢献したジェームズ・ワットにちなんで名づけられた。1889年の英国学術協会第2回総会で採用された。 ワットは固有の名称を持つ単位の一つで、1ワットは毎1ジュールに等しいエネルギーを生じさせる仕事率と定義され、SI組み立て単位で表すとジュール毎秒(J/s)である[1]。すなわち、1秒あたりに変換・使用・消費されているエネルギー仕事)を表す。ジュールがL2MT-2の次元なので、ワットはL2MT-3の次元となる。SI基本単位のみによって表すと、ジュールはm2·kg·s-2なので、ワットはm2·kg·s-3になる[1]。 他の仕事率の単位との換算は、以下のようになる。

仕事率の単位
W kgf·m/s PS kcal/h HP(BHP)
1 ワット(W) = 1 = 0.102 = 0.00136 ≈ 0.860 ≈ 0.00134
1 重量キログラムメートル毎秒(kgf·m/s) = 9.80665 = 1 ≈ 0.01333 ≈ 8.4322 ≈ 0.01315
1 仏馬力(PS) = 735.49875 = 75 = 1 ≈ 632.415 ≈ 0.9863
1 キロカロリー毎時(kcal/h) = 1.163 ≈ 0.1186 ≈ 0.00158 = 1 ≈ 0.00155
1 英馬力(HP(BHP)) = 745 ≈ 76.040 = 1.013 = 641 = 1

逆に、仕事率や電力の単位に時間の単位をかけたものは、エネルギーを表す単位となる。つまり、

1 J = 1 W × 1 s

である。 例えば、1キロワット(kW)の装置が1時間(3600秒)に消費するエネルギーは1キロワット時(kWh)[3]となり、それは3.6メガジュール(MJ)に等しい。1メガワット日(MWd)は86.4ギガジュール(GJ)となる。これらの単位は電力関係で電力消費量(電力量)の単位として用いられる。 また、1 W = 1000 mWである。 SI単位系における表記規則に従い、記号の表記としては、大文字の「W」を用いる。小文字の「w」を用いるのは誤りである。

電力としてのワット

電気工学の分野では、仕事率である電力は、以下の式で表される。

電力(ワット)=電圧ボルト)×電流アンペア

であるから、単位としては

W=V·A

と等価である。

例えば、100Vの電圧がかかり、1Aの電流が流れている回路は、100Wの電力を消費する。式に表すと以下のようになる。

100W = 100V × 1 A

電気器具のワット

日本の多くの家庭で使われているのは100Vの交流電源である。そして多くの電気器具は消費電力(有効電力)をワットの単位で表示している。これらから電流を出すためには、ジュールの法則から得られる

電流 = 電力 / 電圧

の式を使えばよい。たとえば、200W(ワット)を消費するテレビに流れる電流は、それを100V(ボルト)で割ることで、2A(アンペア)の電流が流れるとわかる。ただし、上記は力率=100%と仮定した場合であり、力率を考慮すると以下の式になる。しかし、電気器具には力率や電流の表示がないものがほとんどである。

電流 = 消費電力 / (電圧 × 力率)

電気器具の中ではkW(キロワット)の単位で表示されているものがある。1kW = 1,000Wなので、換算して出せばよい。たとえば1.5kWのホットプレートに流れる電流は15Aである。 台所で、ホットプレート炊飯器電子レンジを同時に使うとアンペアブレーカーが落ちることがあるが、これはブレーカーに定められた電流量を超えたためである。

コンセントやテーブルタップなどは、安全の観点から使用できる電流量が定められている。たとえば15Aまでと決まっている製品には、15A以上の電流を流してはならない。そのため、接続の前に各機器のワット数を調べ、それらが使う電流を合計して容量以下であることを確かめなければならない。ただし、力率が100%でない場合は皮相電力は消費電力より大きいため電流は大きくなる。

電流 = 皮相電力 / 電圧

皮相電力の単位はボルトアンペア、無効電力の単位はバールである。

ワットが光や熱の単位のように扱われることがある。 「1kWの高熱調理」 「(無駄に明るい人を)便所の100W」 など。 これは家庭電気器具において、電力に注目されるのは光熱機器の場合が大半であることに起因すると思われる。 電球や電熱器を購入する場合、消費電力で光量や熱量の目安を付けることが多かった。

冷凍能力

冷凍機などの冷凍能力も、「単位時間あたりに取り去れる熱量」であるので、ジュール毎秒、すなわちワットの単位で表せる。この冷凍能力は、冷凍機自体のエネルギー消費率とは必ずしも一致せず、同じ単位である両者の比を取って成績係数(COP)という形で、省エネルギーの指標として用いられる。

出典

  1. ^ a b c 国際単位系(SI) 日本語版 国際文書第8版(2006)
  2. ^ JIS Z 8203:2000 国際単位系 (SI) 及びその使い方
  3. ^ 1kWh=3600kWs

関連項目

国際単位系(SI)の電磁気の単位
名称 記号 次元 組立 物理量
アンペアSI基本単位 A I A 電流
クーロン C T I A·s 電荷(電気量)
ボルト V L2 T−3 M I−1 J/C = kg·m2·s−3·A−1 電圧電位
オーム Ω L2 T−3 M I−2 V/A = kg·m2·s−3·A−2 電気抵抗インピーダンスリアクタンス
オーム・メートル Ω·m L3 T−3 M I−2 kg·m3·s−3·A−2 電気抵抗率
ワット W L2 T−3 M V·A = kg·m2·s−3 電力放射束
ファラド F L−2 T4 M−1 I2 C/V = kg−1·m−2·A2·s4 静電容量
ファラド毎メートル F/m L−3 T4 I2 M−1 kg−1·m−3·A2·s4 誘電率
毎ファラド(ダラフ) F−1 L2 T−4 M I−2 V/C = kg1·m2·A−2·s−4 エラスタンス
ボルト毎メートル V/m L T−3 M I−1 kg·m·s−3·A−1 電場(電界)の強さ
クーロン毎平方メートル C/m2 L−2 T I C/m2= m−2·A·s 電束密度
ジーメンス S L−2 T3 M−1 I2 Ω−1 = kg−1·m−2·s3·A2 コンダクタンスアドミタンスサセプタンス
ジーメンス毎メートル S/m L−3 T3 M−1 I2 kg−1·m−3·s3·A2 電気伝導率(電気伝導度・導電率)
ウェーバ Wb L2 T−2 M I−1 V·s = J/A = kg·m2·s−2·A−1 磁束
テスラ T T−2 M I−1 Wb/m2 = kg·s−2·A−1 磁束密度
アンペア回数 A I A 起磁力
アンペア毎メートル A/m L−1 I m−1·A 磁場(磁界)の強さ
アンペアウェーバ A/Wb L−2 T2 M−1 I2 kg−1·m−2·s2·A2 磁気抵抗(リラクタンス、: reluctance
ヘンリー H L2 T−2 M I−2 Wb/A = V·s/A = kg·m2·s−2·A−2 インダクタンスパーミアンス
ヘンリー毎メートル H/m L T−2 M I−2 kg·m·s−2·A−2 透磁率