モリアオガエル
モリアオガエル | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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![]() 姫路市立水族館での展示 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Rhacophorus arboreus (Okada et Kawano, 1924) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
モリアオガエル | |||||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Forest Green Tree Frog |
モリアオガエル(森青蛙、Rhacophorus arboreus)は、両生綱無尾目アオガエル科アオガエル属に分類されるカエル。
分布
日本の固有種で、本州と佐渡島に分布する。離島については、伊豆大島に移入種として分布している。四国と九州の分布ははっきりしていない。
形態
体長オス4-7 cm、メス6-8 cmほどで、メスの方が大きい。指先には丸い吸盤があり、木の上での生活に適応している。背中側の地色は緑だが、地方個体群によっては全身に褐色のまだら模様が出る。また、体表にはつやがなく、目の虹彩が赤褐色なのも特徴である。
ニホンアマガエルやシュレーゲルアオガエルと似ているが、モリアオガエルはより大型になる。また、ニホンアマガエルとは目から耳にかけて黒い帯模様がないこと、シュレーゲルアオガエルとは虹彩が赤っぽいことで区別できる。
生態
非繁殖期はおもに森林に生息するが、繁殖期の4月から7月にかけては生息地付近の湖沼に集まる。成体は他のカエルと同様に肉食性で、昆虫類やクモ類などを捕食する。いっぽう、天敵はヤマカガシ、イタチ、アナグマ、タヌキなどである。
モリアオガエルの生活史の特性は、特に産卵生態によって特徴付けられる。カエルは水中に産卵するものがほとんどだが、モリアオガエルは水面上にせり出した木の枝などに粘液を泡立てて作る泡で包まれた卵塊を産みつける。泡の塊の中に産卵する習性は多くのアオガエル科のカエルで共通しているが、モリアオガエルは産卵場所が目立つ樹上であること、日本本土産のアオガエル科のカエルでは他に泡状の卵塊を形成する種が地中産卵性で小型のシュレーゲルアオガエルしかいないこともあって特に目立った存在となっている。
繁殖期になると、まずオスが産卵場所に集まり、鳴きながらメスを待つ。メスが産卵場所にやってくるとオスが背中にしがみつき、産卵行動が始まるが、卵塊の形成が進むに連れて1匹のメスに数匹のオスが群がる場合が多い。
産卵・受精が行われると同時に粘液が分泌されるが、この粘液を集まったオスメスが足でかき回し、受精卵を含んだ白い泡の塊を作る。直径10-15 cmほどの泡の塊の中には黄白色の卵が300-800個ほど産みつけられる。泡の中では複数のオスの精子が雌が産んだ未受精卵をめぐって激しい競争を繰り広げると考えられており、モリアオガエルの精巣の大きさが際立って大きいことの原因と推測されている。泡は表面が乾燥して紙のようなシートとなって黄白色の卵塊となり、孵化するまで卵を守る役割を果たす。
1週間から2週間ほど経って卵が孵化する。孵化したオタマジャクシは泡の塊の中で雨を待ち、雨で溶け崩れる泡の塊とともに下の水面へ次々と落下する。孵化したばかりのオタマジャクシは腹部に卵黄を抱えているため腹が黄色をしているが、やがて卵黄が吸収され、全身が灰褐色となる。オタマジャクシは藻類や動物の死骸などを小さな歯で削りとって食べる。
オタマジャクシは1ヶ月ほどかけて成長するが、この間の天敵はヤゴ、ゲンゴロウ、タイコウチ、アカハライモリなどである。イモリは、幼生が泡巣から落下する時に、その真下で待ちかまえていて、落ちてくる幼生をぱくぱく食べる。前後の足が生えてカエルの姿になった幼体は上陸し、しばらくは水辺で生活するが、やがて森林で生活を始める。
保全状況評価
国際自然保護連合(IUCN)により、軽度懸念の指定を受けている[1]。
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))
日本の以下の都道府県で、レッドリストの指定を受けている[2]。環境省としての、レッドリストの指定はない[3]。
- 絶滅寸前(絶滅危惧種I類) - 奈良県
- 危急種(絶滅危惧II類・VU) - 千葉県、兵庫県
- 準絶滅危惧 - 山形県、新潟県、栃木県、群馬県、長野県、静岡県、愛知県、大阪府、和歌山県、岡山県、島根県、山口県
人間との関係
モリアオガエルは各地で生息数を減らしている。おもな理由は生息地の森林などに人の手が入り、環境が変化したことによる。産卵のためには水面上に木の枝がせり出すような湖沼が必要だが、このような場所も少なくなった。
福島県双葉郡川内村平伏沼(へぶすぬま)の繁殖地[4]、また岩手県八幡平市の大揚沼モリアオガエルおよびその繁殖地[5]が国指定の天然記念物と指定されている他、各自治体レベルでの天然記念物指定は数多い。愛知県新城市の市のカエルの指定を受けている。
関連画像
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池の周囲の木にある卵塊 竜ヶ岳・2002年5月 |
池に生息するオタマジャクシ 夜叉ヶ池・2011年9月 |
4本の足が生えたオタマジャクシ 夜叉ヶ池・2011年9月 |
脚注
- ^ “Rhacophorus arboreus in IUCN Red List of Threatened Species.” (英語). IUCN. 2011年9月30日閲覧。
- ^ “日本のレッドデータ検索システム(モリアオガエル)”. エンビジョン環境保全事務局. 2011年9月30日閲覧。
- ^ “植物絶滅危惧種情報”. 生物多様性情報システム. 2011年9月30日閲覧。
- ^ “地図閲覧サービス・平伏沼モリアオガエル繁殖地(福島県双葉郡川内村)”. 国土地理院. 2011年9月30日閲覧。
- ^ “地図閲覧サービス・大揚沼モリアオガエルおよびその繁殖地(岩手県八幡平市)”. 国土地理院. 2011年9月30日閲覧。
関連書籍
- 金井郁夫『モリアオガエルの生態と観察』ニュー・サイエンス社、2000年。ISBN 4821600919。
- 増田戻樹『モリアオガエル』あかね書房〈科学のアルバム〉、2005年3月。ISBN 4251033604。