トリビュートバンド
トリビュートバンド(tribute band)は、著名なミュージシャン、バンドなどの業績を讃えるために楽曲演奏やパフォーマンスをするバンドのこと。
トリビュートバンドを含め、同様の活動をするソロのミュージシャンやグループのことを、総称してトリビュートアクト(tribute act)という。
定義
和製英語の「コピーバンド」または、英語の「カバーバンド」(cover band)と基本的に類義語である。しかし、日本では、コピーバンドを超越した存在として期待する報道もある[1]など必ずしも同一とは考えられていない。また、英語圏においても、cover bandとtribute bandは別定義のイディオムとする捉え方もある[2]。
広義の定義づけ
トリビュート(讃辞、リスペクト)の意志があり、本家の楽曲やイメージを尊重して演奏しているコピーバンド、カバーバンドであれば、すべて「トリビュートバンド」の条件を満たすという定義[3]。
解散または活動を休止したバンド、亡くなったミュージシャンの楽曲を演奏するグループ、コピーバンド、カバーバンド、現在活動中のミュージシャン、バンドの楽曲の演奏をするグループ、コピーバンド、カバーバンドのうち、トリビュートバンドを標榜するもの、そして、トリビュートアルバム、トリビュートコンサートのために、トリビュートの対象になるミュージシャンと何らかの関係や交流のあるプロのミュージシャンを中心に編成されたバンドがこれに含まれる。
狭義の定義づけ
楽曲とステージの忠実な再現をめざす「フルコピーバンド」であることが条件とする定義[4]。
楽曲の完全コピーはもちろん、衣裳や使用楽器、ヘアスタイル、アクション、MC、照明、音響の機材、演出手法なども同じものにして、実際のステージを克明に再現するバンドだけが「トリビュートバンド」を標榜できるという厳格な定義づけである。
評価と反応
トリビュートバンドを自認するバンドに対するマスコミ、本家ミュージシャン、バンドやファン、著作権者らの評価や反応は様々である。
ファンから見て演奏の水準などが「トリビュート」にふさわしいもので、楽曲の著作権者からのお墨付きがあっても、マスコミなどからは、そっくりさんとして見られることもある[5]一方で、衣裳、ヘア、メイク、アクションなどすべてコピーするものまね芸人と同様の取り組みであってもトリビュートアクト、トリビュートバンドとして認められることもある[6]。
海外のバンド、ミュージシャン自らが、トリビュートバンドの実力を認め、交流したり、バンドメンバーの代役を務めさせたりすることもある。プログレッシブ・ロックバンドのイエスは、プロのミュージシャンとしてのキャリアと共にイエスのトリビュートバンドに参加していたベノワ・ディヴィッドとジョン・デイヴィソンを正式メンバーとして加入させている。
一例として、プロとしての活動歴のあるメンバーから編成された、レッド・ツェッペリンのトリビュートバンド「レズ・ツェッペリン」は、2004年の結成以来、高い演奏技術とパフォーマンスを備えたバンドとして、各メディアから大絶賛されており、完全コピーというだけでなく、固有のカラーを打ち出し、CDが2008年に発売された[7]。
日本を拠点として活動していたクイーンのトリビュートバンド「KWEEN」は、クイーンのギタリスト、ブライアン・メイから謝意を表された[8]。
2001年に結成され、ビートルズの曲を独自の味付けでカバーするバンド「ビータリカ」(BEATALLICA)に対しては、ビートルズの版権を持つ会社が、ビートルズの著作権侵害を理由に、ウェブサイトの閉鎖に追い込むなど、権利上のトラブルが起きている。しかし、ビータリカのファンがサイト閉鎖の撤回を求めて、サイトが復活。2007年7月にファースト・アルバムがリリースされた[9]。
プロミュージシャンによる編成
日本では、トリビュートアルバムの制作、トリビュートコンサートの開催の際に、プロミュージシャンによるバンド結成が多く行われている。一例として、2009年に、プロのミュージシャンによるトリビュートバンド「忌野清志郎 スペシャル・メッセージ・オーケストラ NICE MIDDLE with New Blue Day Horns」が結成されたことが挙げられる。メンバーは、仲井戸“CHABO”麗市、Leyona、CHARA、甲本ヒロト、真島昌利、トータス松本、UA、Char、WILKO JOHNSON & NORMAN WATT-ROY、BOOKER T.、泉谷しげる。このバンドは、フジロックフェスティバルで2009年7月25日に演奏した[10]。
脚注
- ^ 熱気は本物以上!?洋楽トリビュートバンドの楽しみ方2007年4月4日 ORICON STYLEニュース
- ^ ゼブラヘッドのアルバム「フェニックス」(2008年)の日本盤ボーナストラックに収録されている楽曲「Not A Cover Band, We're a Tribute Band」(仮訳「俺たちはカバーバンドなんかじゃなく、トリビュートバンドなんだぜ」)のタイトルからも両者のニュアンスに違いがあることがうかがわれる。
- ^ 前掲英語版 Tribute actを参照。
- ^ 「トリビュートバンドの厳しさとリスペクト」2009年7月28日 柏環樹(音響デザイナー)ブログ JUNK STAGE
- ^ ビートルズが再びやって来た!? 40年ぶり?「そっくりさんバンド」笑顔 ZAKZAK 2006年6月29日
- ^ “アバ”再誕?「モノマネ」超えたトリビュートショー ZAKZAK 2007年3月20日
- ^ バイオグラフィ レズ・ツェッペリン日本公式サイト
- ^ プロフィール 「KWEEN」公式サイト
- ^ ビータリカ情報ページ ソニーミュージック公式サイト内
- ^ 忌野清志郎 スペシャル・メッセージ・オーケストラ NICE MIDDLE with New Blue Day Horns、フジロック出演決定 2009年6月17日 ライブドアニュース