サウダージ
サウダージ(Saudade、あるいはサウダーデとも)とは、郷愁、憧憬、思慕、切なさ、などの意味合いを持つ、ポルトガル語およびガリシア語の語彙。ポルトガル語、およびそれと極めて近い関係にあるガリシア語に独特の単語とされ、他の言語では一つの単語で言い表しづらい複雑なニュアンスを持つ。ガリシア語ではこの語はあまり使われず、一般に類義語のモリーニャ(morriña)が同様の意味で使われる。
ポルトガル語が公用語となっているポルトガル、ブラジル、アンゴラなどの国々で、特に歌詞などに好んで使われている。単なる郷愁(nostalgie、ノスタルジー)でなく、温かい家庭や両親に守られ、無邪気に楽しい日々を過ごせた過去の自分への郷愁や、大人に成長した事でもう得られない懐かしい感情を意味する言葉と言われる。だが、それ以外にも、追い求めても叶わぬもの、いわゆる『憧れ』といったニュアンスも含んでおり、簡単に説明することはできない。ポルトガルに生まれた民俗歌謡のファド (Fado) に歌われる感情表現の主要なものであるといわれる。
なお、ガリシア語では[sawˈdade](サゥダーデ)となるほか、ポルトガルで話される大陸ポルトガル語では[sawˈdadɨ](サゥダーデゥ)、ブラジルで話されるブラジルポルトガル語では[sawˈdadʒi](サゥダーヂ)または[sawˈdadi](サゥダーディ)のように、方言によって発音が異なる。カタカナでは、ポルトガルのものは「サウダーデ」、ブラジルのものは「サウダーヂ」と表記されることが多い。
なお、ブラジルの大歌手であったエリゼッチ・カルドーゾが歌い、まだ新進気鋭であったジョアン・ジルベルトがバックでヴィオラゥン(ギター)を弾いた Chega de Saudade(シェガ・ヂ・サウダーヂ、日本題:想いあふれて)は、ボサノヴァの第1号として知られるように、サウダージはボサノヴァの重要なキーワードとなっている。
関連項目
- 新田次郎の小説『孤愁:サウダーデ』。1980年の遺作であり未完の作品。モラエスを主人公とする。
- 久保田早紀が1980年に発表したアルバム『サウダーデ』。半数をポルトガルで録音している。デビュー曲『異邦人』の再録もされているがファドの影響が色濃く出たアレンジとなっている。
- 高中正義が1982年に発表したアルバム『Saudade(サダージ)』。
- J-WAVEのブラジル、中南米、カリブのラテン音楽専門番組『サウジサウダージ』(SAUDE! SAUDADE...)(1988年〜)
- 盛田隆二の小説『サウダージ』。1992年三島由紀夫賞候補作品。
- サザンオールスターズの楽曲『SAUDADE 〜真冬の蜃気楼〜』。1998年に発表されたアルバム「さくら」に収録。
- ポルノグラフィティの楽曲『サウダージ』。2000年に発表された4thシングル。
- 垣根涼介の小説『サウダージ』(2004年)。垣根の代表作「ヒートアイランド」シリーズの3作目。
- 稲葉太地作・演出の宝塚歌劇『SAUDADE(サウダージ) -Jにまつわる幾つかの所以-』 - 2009年の作品。
- 富田克也の映画監督作品『サウダーヂ』。2011年の作品。
外部リンク
- 富田克也監督の次回作品、映画『サウダーヂ』