長井龍雪

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ながい たつゆき
長井 龍雪
長井 龍雪
本名 長井 龍幸
別名義 超平和バスターズ岡田麿里田中将賀との共有筆名)
生年月日 (1976-01-24) 1976年1月24日(48歳)
出生地 日本の旗 日本新潟県新津市
(現・新潟市秋葉区
職業 アニメーション監督演出家
ジャンル テレビアニメ映画
活動期間 2000年 -
主な作品
テレビアニメ
ハチミツとクローバーII
アイドルマスター XENOGLOSSIA
とらドラ!
とある科学の超電磁砲』シリーズ
あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。
あの夏で待ってる
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
アニメーション映画
心が叫びたがってるんだ。
空の青さを知る人よ
 
受賞
日本アカデミー賞
その他の賞
芸術選奨
文部大臣新人賞
2011年あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。
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長井 龍雪(ながい たつゆき、1976年1月24日 - )は、日本アニメーション監督演出家。本名は長井 龍幸(読みは同じ)[1]

来歴[編集]

新潟県新津市(現・新潟市秋葉区)に生まれる[1]新潟県立新津南高等学校を経て、[要出典]新潟デザイン専門学校広報プランニング科を卒業した[2]

小学生の頃は地元テレビ局の再放送などで日本サンライズのテレビアニメに接してロボットアニメに憧れ、『機動警察パトレイバー』のゆうきまさみが気に入って『究極超人あ〜る』に出てくる「オタク系」部活にも惹かれたが、中学から高校にかけてはアニメから遠ざかっていた[3]

専門学校に入った頃に押井守監督の『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』が公開された際に改めて「アニメ、かっこいいな」と思ったものの、アニメで食えるとは考えなかったという[3]

新潟の印刷会社に入社して数年後に東京へ転勤する[3]。人間関係のストレスもあり、東京に転勤になったのを機に脱サラする。その後はアルバイトを転々とし、バイク便等を経験したが[4]、最終的には『フロム・エー』に載っていた制作進行の求人を見てアニメ業界へと入ることとなる[5]。アニメ業界を選んだのは、上京時に初めて『劇場版新世紀エヴァンゲリオン』を観て、「うわあ、すげえかっこいい!」と思ったことがきっかけだった[3]

その後、小さなグロス会社で制作進行を務めるが、入って間もなく免停処分を受けてしまったため、仕事を辞めるか演出になるかの2択という状況になり、演出を務めるようになった[6][7]

2000年に『HAND MAID メイ』のシリーズ全体の制作担当制作進行を務め、第11話「あきらめません」では演出助手として監督の木村真一郎と共に演出を手がけた。その後も『G-onらいだーす』『こすぷれCOMPLEX』などの木村の監督作品に参加し、同じく木村が監督の『まぶらほ』『まほらば 〜Heartful days』では監督補佐を務めた。また『まぶらほ』は木村が『ぽぽたん』と掛け持ちで監督をしていたため、多忙な木村に代わり27歳の若さで監督業と第1話「きちゃった…」の絵コンテと演出を経験した。

2006年に『ハチミツとクローバーII』で初監督。2007年には、サンライズ創立35周年記念作品というビッグプロジェクトであった『アイドルマスター XENOGLOSSIA』で監督を務めた。2008年に監督した『とらドラ!』で脚光を浴び、2009年には『とある科学の超電磁砲』の監督を務めた。

2011年に自身初となる完全オリジナルアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の監督を務め、芸術選奨新人賞メディア芸術部門を受賞した。この作品では『とらドラ!』で組んだ脚本家の岡田麿里、作画・キャラクターデザインの田中将賀が再びメインスタッフとして集まり(岡田の意向による)、本作以後「超平和バスターズ」の共同名義で複数の作品を手がける[8][9]

業界入りしてから現在に到るまで一貫してフリーランスで活動している。

人物[編集]

アニメスタッフとしての「龍雪」の筆名は、参加作品のテロップで誤植された際に「字面がきれいだから」という理由でそのまま使い続けているという[1]

アニメーター出身ではないが絵が上手く、『とらドラ!』のキャラクターデザイン総作画監督を務めた田中将賀は、「(『とらドラ!』でキャラの表情が豊かなのは)監督のコンテの画のおかげ」「キャラがこういう心情だからこういう表情をする、というのがコンテから分かりやすく伝わってきた」と語っている[10]。また、田中が企画した『とらドラ!』のスタッフ同人誌にイラストを寄稿している[11]。監督作である『心が叫びたがってるんだ。』や『空の青さを知る人よ』では原画としても名前がクレジットされている。

影響を受けたアニメ監督に富野由悠季を挙げており、「作品内で生々しく人間を描く所が、自分の作風の根っこになっている」と語っている[7]

「超平和バスターズ」のメンバーである岡田麿里田中将賀と親交が深く、「『あの花』の合宿と称して旅行に行き、3人で川の字になって寝るくらいの仲」だという。岡田は2017年に刊行した自伝の中で、『心が叫びたがってるんだ。』の制作のときには、「下手に仲良くなっていたせいで最低限の礼儀や遠慮がなくな」り、意見が対立して「暴言が飛び交」ったと記している[12]

同世代のアニメ監督である荒木哲郎は、長井が駆け出しの演出家だった頃にはすでに監督補佐として活躍しており、「同い年なのに常に僕の一歩先を行く存在で、めちゃめちゃ意識している」「監督作品を観るとヘコむので、自分の作品をやっている時は観るのをやめている」と語っている[7]。一方の荒木も「マッド(ハウス)である時期、長井さんが後ろの席にいたんですよ。その頃、俺はギャグものしかやったことないのに、先に長井さんがリアルものの『ちょびっツ』を手がけていたので、同世代で一歩先に行った人という認識があったんですよね。」と語っており、若手時代からお互いに意識しあっている[13]

作品[編集]

テレビアニメ[編集]

1998年
2000年
  • HAND MAID メイ [制作担当 1話制作進行 11話演出助手 (全て長井龍幸名義)]
2001年
2002年
2003年
2004年
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
2017年
2018年
2020年
2021年
2022年

劇場アニメ[編集]

OVA[編集]

Webアニメ[編集]

  • 2022年 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ ウルズハント』[監督]
  • 2022年 『風都探偵』[EDアニメーション画コンテ・演出 (演出は森山博幸と共同)]

出典[編集]

  1. ^ a b c “常に「最高傑作」 目指すアニメ監督・長井龍雪さん”. 読売新聞(新潟版). (2024年1月24日). https://www.yomiuri.co.jp/local/niigata/feature/CO071356/20240123-OYTAT50024/ 2024年1月24日閲覧。 
  2. ^ 新潟デザイン専門学校 卒業生からのメッセージ - ベスト進学ネット
  3. ^ a b c d 東京で初めて劇場版エヴァを観て「うわあ、すげえかっこいい!」って。それがきっかけ
  4. ^ 埼玉新聞 2011年4月24日 「月刊サイタマニア」インタビュー。
  5. ^ 春香とやよいの弥生式らじお』第31回
  6. ^ 月刊アニメージュ 2011年7月号「中村健治×長井龍雪 ノイタミナ対談」
  7. ^ a b c アニメ『あの花』監督・長井龍雪「アニメでやれることは、まだまだ掘り尽くされていない」
  8. ^ “「空の青さを知る人よ」は秩父三部作の集大成――長井龍雪監督が「あの花」「ここさけ」経て新作に込めた想い”. アニメ!アニメ!. (2019年10月11日). https://animeanime.jp/article/2019/10/11/48913.html 2019年10月19日閲覧。 
  9. ^ 「超平和バスターズ鼎談」『あの花/ここさけ/空青 メモリアルブック - 超平和バスターズの軌跡 - 』小学館、2019年、pp.118 - 119
  10. ^ 「季刊S(エス)」2009年 07月号「長井龍雪・田中将賀 インタビュー」
  11. ^ 五十六 (2009年12月9日). “コミケ告知”. 羽合町. 2010年4月3日閲覧。
  12. ^ 岡田麿里『学校に行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』文藝春秋、2017年、p.12
  13. ^ 月刊アニメスタイル 第1号
  14. ^ あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 :作品情報”. アニメハック. 2020年8月4日閲覧。
  15. ^ 『明坂聡美の「明けテレ」』での劇中アニメ
  16. ^ Staff & Cast”. とある科学の超電と磁砲T アニメ公式サイト. 2019年9月28日閲覧。
  17. ^ 『あの花』『ここさけ』チームの集大成 長編アニメ映画『空の青さを知る人よ』10・11公開」『オリコンニュース』、2019年3月21日。2019年3月21日閲覧。
  18. ^ 「あの花」長井龍雪×岡田麿里×田中将賀の新作長編アニメ「ふれる。」2024年秋公開」『コミックナタリー』ナターシャ、2023年12月6日。2023年12月6日閲覧。
  19. ^ 快盗天使ツインエンジェル 下巻 : 作品情報”. アニメハック. 2020年5月8日閲覧。

関連項目[編集]