行政書士
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行政書士(ぎょうせいしょし)とは、行政書士法に基づき行政機関に提出する許認可申請書類等や契約書・遺言書等の「権利義務、事実証明に関する書類」の作成・代理などの法律事務を業とする。またはその資格制度を言う。
バッジ等に用いられているシンボルマークはコスモスの花弁の中に篆書体の「行」の字をデザインしたものである。
目次 |
概要
行政書士の資格は国家資格であり行政書士法にその根拠を持つ。監督官庁は総務省(旧自治省)である。マンガ『カバチタレ!』(原作・田島隆/作画・東風孝広)が週刊モーニングで連載されたことや、同作品が連続ドラマ化されたことによる爆発的人気を背景に、受験生が増加した。なお、2006年秋の試験より試験内容が大幅に変更された。
法定の除外事由がないのに、行政書士でない者が官公署に提出したり、権利義務に関する法律書類を作成することや、行政書士と類似の名称を使用することは、以下のとおり行政書士法により原則として禁じられている(非行政書士行為)。
- 行政書士登録を行っていないものが、法定の除外事由なく行政書士の独占業務(第1条の2)を行うこと(第19条)
→違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる(第21条) - 行政書士登録を行っていないものが行政書士と称すること(第19条の2)
→違反した者は、30万円以下の罰金に処せられる(第22条の4)
英語表記
行政書士会が公式に用いている「行政書士」の英語表記は、「Gyoseishoshi Lawyer」であり、行政書士会連合会が商標として登録している。
平成18年に、Lawyer名称は法曹の有資格者であると誤解されるおそれがあるとの理由で、日弁連からLawyerの名称の使用を取りやめるよう申し入れがされたが、日本行政書士会連合会は有識者会議において検討し、Lawyerが必ずしも法曹に限るとは言えないとして日弁連の申し入れを断った。
従来、行政書士は行政代書人という資格であったため、「Administrative Scrivener」と直訳されることがあったが、これは和訳すると「管理代書人」になってしまい、英語圏では理解されないため、近年では用いられていない。
例えば、平成19年に公表された内閣官房による「出入国管理難民認定法省令」の翻訳によると、行政書士は「certified administrative procedures specialist」(公認行政手続士)と訳されている。
また、在留許可を求める外国人からは、一般的に「Immigration Lawyer」(移民弁護士)が通称となっている。これは、在留許可手続の業務を古くから行ってきたためである。なお、弁護士は平成17年8月より在留許可手続が行えることとなっており、それまでは行政書士のみが資格者としてこの業務を行えた。
行政書士試験
- 受験資格に制限はない。
- 試験は11月第2日曜日に、都道府県知事が財団法人行政書士試験研究センターに委託して全国47都道府県で行われる。
- 試験科目は、業務に関する法令として憲法、民法、行政法、商法、基礎法学があり、業務に関する一般知識として政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解がある。また平成17年度まで試験科目であった行政書士法、戸籍法、住民基本台帳法、労働法、税法等も一般知識として出題されうる、としている。試験問題は、毎年度4月1日現在施行の法律に準拠して出題される。
- 出題形式は、5つの選択肢から1つを選び、マークシートにマークする択一式と、40字程度の記述式(法令科目のみ)の組合せである。
- 合格基準は、全体で60%以上の得点をしつつ、法令科目で50%、一般知識で40%の得点をしていることである。但し、問題の難易度により、補正的措置が採られることがある。
難易度
かつて都道府県資格の時代は、他の法律資格と比較して難易度が低く、長年法律系公的資格の「登竜門」として扱われてきた。しかしながら、国家資格への格上げ、「高卒以上」など学歴等による制限の撤廃や、漫画『カバチタレ!』による知名度の普及、近年の資格人気による受験者急増、法科大学院生の受験、また行政書士法改正により職域が拡大されたことなどによる状況変化で、ここ数年で試験内容は著しく難化している。新試験制度に移行した平成18年度では、難易度では依然として隔差があるものの、論理的思考を問う司法試験の短答式試験(択一試験)に類似した形式で出題された。
平成19年度では、択一問題の司法試験化がさらに増した。最高裁判例本文の引用問題(判例要旨ではない)や、対立する学説の理解を問う学説問題、最新の最高裁判例本文を引用した穴埋め問題(多肢選択)などが出題された。従前の出題傾向は、幅広い法分野の基本を問う問題が出題されたが、ここ数年は幅広いだけでなく、より深い法律知識や法的思考力が要求される問題に移行している。
平成15年度以降の合格率は2.9%、平成16年度5.3%、平成17年度2.6%、平成18年度4.8%、平成19年度は8.6%と極めて合格率の低い試験となっている。試験合格までの期間は、法律の純粋未習者で3年から4年、司法試験受験者で1年以内といったところである。
なお、平成13年の10.96%と平成14年度の合格率19.23%は、試験センター側の出題ミス等の没問により、一般教養(現在の一般知識)の足切り点において救済措置がとられたためである。
一定の要件の下に無試験で登録を認めるいわゆる特認制度については、国家試験制度の根本に関わる問題であり、能力の担保が不十分であることや、不公平という批判が相次ぎ、司法制度改革が進む中、業務拡大を望んでいる行政書士としては、能力の担保を設定するためにも特認制度の廃止(もしくは科目免除制への移行)を求める声も少なくない。
- 申込者数の変化
- 平成11年度まで4万人程度で安定していたが、『カバチタレ!』の影響で受験者は9万人程度まで増えた。週刊モーニングに「カバチタレ!」が連載開始されたのは平成11年5月であり、翌年に申込者数が1万人程度増えている。ドラマ版「カバチタレ!」が放送されたのは平成13年1月~3月であり、同年に申込者数が2万人程度増えている。以上のことから「カバチタレ!」の影響の大きさが伺い知れる。
| 年度 | 申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|---|
| 平成元年度 | ? | 21,167人 | 2,672人 | 12.62% |
| 平成02年度 | ? | 22,406人 | 2,480人 | 11.07% |
| 平成03年度 | ? | 26,228人 | 3,092人 | 11.79% |
| 平成04年度 | ? | 30,446人 | 2,861人 | 9.40% |
| 平成05年度 | ? | 35,581人 | 3,434人 | 9.65% |
| 平成06年度 | ? | 39,781人 | 1,806人 | 4.54% |
| 平成07年度 | ? | 39,438人 | 3,681人 | 9.33% |
| 平成08年度 | 43,267人 | 36,655人 | 2,240人 | 6.11% |
| 平成09年度 | 39,746人 | 33,957人 | 2,902人 | 8.55% |
| 平成10年度 | 39,291人 | 33,408人 | 1,956人 | 5.85% |
| 平成11年度 | 40,208人 | 34,742人 | 1,489人 | 4.29% |
| 平成12年度 | 51,919人 | 44,446人 | 3,558人 | 8.01% |
| 平成13年度 | 71,366人 | 61,065人 | 6,691人 | 10.96% |
| 平成14年度 | 78,826人 | 67,040人 | 12,894人 | 19.23% |
| 平成15年度 | 96,042人 | 81,242人 | 2,345人 | 2.89% |
| 平成16年度 | 93,923人 | 78,683人 | 4,196人 | 5.33% |
| 平成17年度 | 89,276人 | 74,762人 | 1,961人 | 2.62% |
| 平成18年度 | 88,163人 | 70,713人 | 3,385人 | 4.79% |
| 平成19年度 | 81,710人 | 65,157人 | 5,631人 | 8.64% |
行政書士の業務
法定業務
行政書士の法定業務は第1条の2に規定する独占業務(書類作成業務)と、第1条の3の非独占業務(代理人として作成、提出代理、書類の作成相談)である。
独占業務
第1条の2 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
- 第1条の2で、行政書士の独占業務とされているのは書類の作成である。行政書士または行政書士法人でない者が業として報酬を得て、これらの書類の作成を行うと、1年以下の懲役または50万円以下の罰金の適用がある。
- 行政書士試験に合格しただけの者や弁護士・弁理士・公認会計士・税理士は、それだけでは行政書士とはいえず、行政書士の独占業務が行えるわけではない。行政書士名簿に登録してはじめて行政書士となることができ、独占業務(書類の作成)を行うことができる。なお、行政書士が独占業務を行う場合だけでなく、第1条の3の非独占業務を行う際にも、行政書士法上の業務規定が適用される。
- 「業として・・・書類作成を行う」の意味は、反復継続の意思で書類を作成することである。よって、反復継続性の意思のある書類作成行為は、たとえ1度でも行政書士法違反となる。
- 「官公署」とは、国又は地方公共団体の諸機関の事務所を意味し、形式上は行政機関のみならず広く立法機関及び司法機関のすべてを含む(「詳解行政書士法」地方自治制度研究会編、ぎょうせい)。但し、他の法律(弁護士法、弁理士法、司法書士法、税理士法、社会保険労務士法等)においてその業務を行うことが制限されている事項については業務を行えない。なお、公益法人や特殊法人や保険会社等を含まず(衆議院法制局見解)、住宅金融公庫も同様に含まれない(昭和52年7月12日自治省行政課長回答)。但し、権利義務に関する書類として独占業務の対象となるので注意を要する。また次号の規定により契約その他に関する書類を代理人として作成することも可能である。
- 警察署に提出する告訴状・告発状、検察審査会に提出する不起訴処分に対する審査申立書は行政書士の業務範囲とする先例(昭和53年2月3日自治省行政課決)がある一方、検察審査会に提出する書類(審査申立書、取下書、証人申出書等)の作成業務は司法書士法第2条(現3条)の業務に準ずる(昭和36年10月14日民事甲第2600号回答・民月16巻11号157頁)とする先例もあり、検察審査会に提出する書類については司法書士との競業状態といえる。なお、検察庁に提出する告訴状・告発状は司法書士の業務である(司法書士法3条1項4号)。
- 法務局に提出する書類は、司法書士の業務であるが(司法書士法3条1項2号)、帰化許可申請については提出先(あて先)が官公署たる法務大臣であり、法務局は経由窓口にすぎないため、行政書士の本来業務として作成することができる。
非独占業務
1条の3に規定する業務にあっては、行政書士または行政書士法人でない者も業として行うことができる。但し、これに付随して、1条の2に規定する書類の作成を業として行った場合は、処罰対象となる。
第1条の3 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
1.前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続及び当該官公署に提出する書類に係る許認可等(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第三号に規定する許認可等及び当該書類の受理をいう。)に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為(弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く。)について代理すること。
- 誤解している者が多いところであるが、第一号の当該非独占業務は官公署に提出する書類を作成することではなく、提出を代理することである。
- よって、警察署に提出する告訴状・告発状、不起訴処分に対しての検察審査会への不服申立、建設業許可、風俗営業許可、車庫証明申請、自動車登録申請、農地転用許可、開発許可、会社その他の法人設立手続(登記を除く)、経理帳簿の記帳、国籍帰化申請、交通事故における保険金請求などの「作成」は独占業務となる。が、これらの提出手続きを代理するにとどまる場合は非独占業務となる。
2.前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
本号は、委任契約の締結により代理人として民間対民間の契約そのものを代理し、かつ契約書類等の作成の代理を認める趣旨である。
ここには借金の繰り延べの書類や債務支払い期日の延長など契約に付随する行為も含まれる。「代理人として契約書類等を作成する」のであり、書類の作成を代理するのではない(監督官庁である総務省見解)。
- 官公署に提出する書類にはその性質上代理になじまないとされるものがあるが、これについては代理人としての作成をすることができないが、従来とおり本人名義での代書によって書類を作成し、前号によって提出の代理を行うことは可能である。
- 「将来訴訟となる蓋然性が客観的に認められるような契約」の締結代理まではできない。
3.前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。
- 相談業務とは、以上のような行政書士法1条の2で規定されている書類の作成に当たり、依頼の趣旨に沿って、どのような種類の書類を作成するべきか、または文書の内容にどのような事項を記述するべきかなどの質疑応答・指導・意見表明・法令、法制度、判例等の先例説明・手続の説明などの行為をいう。
- 法律相談という名称は弁護士が独占しており(いわゆる「法律相談」の名称使用独占)それ以外の者(行政書士や司法書士など)は「法律相談」の名称は使えない。但し、一般的に弁護士法72条の取締の対象となるには報酬を得る目的があることが要件となる。従って、無料奉仕するような場合は、この制限を受けないことになる。
法定外業務
条文に記されていない業務であり、法解釈上の業務、及び私人の地位において受任する業務。行政書士法の規定の適用は無く、民法その他の規定が適用される。
- 行政不服審査法による審査請求
業務の制限
「官公署」や「権利義務関係文書」は抽象的な概念であることから、官公署提出書類及び権利義務関係文書は形式的には広範なものになる。しかし行政書士法第1条の2第2項の行政書士業務制限規定があることから、他の法律(弁護士法、司法書士法等)においてその業務を行うことが制限されている事項については業務を行うことができない。結果として、行政書士が業として作成できる官公署提出書類及び権利義務関係文書の範囲は一定範囲に限定される。債務整理・交通事故・離婚等の法律事件や、会社設立や不動産についての相続等の登記関連業務、派遣労働者の許認可申請、ほぼ全ての税務申告等を行うことは法律違反となる。にもかかわらず、紛らわしい表現・宣伝(特にインターネット上において)をする行政書士会員が多数存在し、これを認識した日本行政書士会連合会は「会員ホームページ作成に際しての留意事項」として、「法令違反となる表現、または他士業法に抵触する恐れや誤解を招く表現などは避ける」との情報を会員に対して出すなど、その信頼向上に努めている。
業務の競合
弁護士法72条の解釈と弁護士との職域関係
司法制度改革以前から「弁護士がやらない業務を行政書士や司法書士がやる」として、司法書士や行政書士が紛争性のある法律事務を取り扱うケースが一般的にあった。この点、弁護士法72条の解釈と行政書士法に基づく行政書士業務との関係で問題が指摘されているところである。
- 弁護士法72条の解釈については、弁護士法72条が禁止している弁護士業務を①「事件性のある法律事務」と解する事件性必要説と、②「事件性のない法律事務」と解する事件性不要説がある。
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止) 第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
-
- 事件必要説(通説・行政実務・立法関与者福原忠男など)
- 弁護士法が禁止しているのは、紛争性のある法律事務である。弁護士でない者が紛争性のない法律事務を扱っても、弁護士法に違反しない。
- (理由)
- 弁護士法72条は、明文で「法律事件に関して」と定めており、弁護士の職務を定める第3条の「法律事務に関して」という文言と明らかに区別している。これを無視することは罪刑法定主義に反する。
- およそ現実社会では、権利と義務の対立・調整という法律的な事務は普遍的に存在するのであり、紛争性のない法律事務までをも弁護士の独占業務と解するのは、商取引における契約交渉なども弁護士の独占業務と考えることになり現実的でない。
- すべての法律事務が弁護士の独占業務だとすると、同法違反による処罰範囲が広くなりすぎる。
- 不要説の立場に立つと、一定の法律事務に携わることを認められている隣接法律職との関係の説明が困難。
- 弁護士法制定時の立法者意図には、紛争性のある法律事務が念頭におかれていた。
- (批判)
- 事件性(=紛争性)の定義があいまいで、むしろ必要説のほうが罪刑法定主義の精神に反する。
- (展開)
- 必要説からは、事件性の程度(=紛争の成熟性)が論点となるが、これは単に権利が対立するだけでは足らず、訴訟など弁護士法72条に列挙される事項と同程度に紛争が成熟している必要があるとする。
- 当初紛争性を帯びていなかった事案でも、事務処理の過程において紛争性を帯びることがあるため、その予見性が問題とされる。この点については、弁護士法が過失犯を処罰する規定を設けていないことからも、紛争性は潜在的なもの(抽象的な予見可能性)では足りず、具体的な蓋然性が必要とする。
- ex.事故責任を自認する(=紛争未成熟)加害者と、非弁護士である被害者の代理人が過失割合の認定や、賠償額の交渉を行う(=いまだ紛争性は具体化せず、潜在しているにとどまる)事例。
- (※加害者が事故責任を否認した場合→ 紛争性成熟/賠償交渉において加害者が途中賠償交渉を拒絶し、訴訟や調停等で争う意思を表示した場合→ 紛争が具体的に蓋然化)
- 事件性不要説(日弁連など)
- 弁護士法が禁止しているのは、紛争性の有無にかかわらずすべての法律事務である。紛争性がなくても弁護士でない者が法律事務を扱うことは、弁護士法に違反する。
- (理由)
- 必要説の理解では紛争性の定義があいまいで、罪刑法定主義の精神に反する。
- 法律事務は国民の権利義務にかかわるもので、それに業として携わる者には特に高度の法的能力が要求される。
- (批判)
- 上のとおり、実社会において権利と義務が対立し、またはその調整が必要なすべての場合において、弁護士を介在させる必要があると考えることは非現実的である。
- 弁護士法72条が「法律事件」と明文で規定していることを無視するものであり、この点で罪刑法定主義に反する。
- 自己の権利義務については、当事者である一般の国民が自ら関与・処理することが許されているのだから、当事者が自らの意思で非弁護士に自己の権利義務にかかる処理を委ねる以上、弁護士にのみ法律事務に関与させるべきと考える必要はない。
- 弁護士法72条違反は刑罰規定であるのに、不要説に立つと処罰範囲が広くなりすぎる。
- 隣接法律職の業務規定との整合性の説明が難しい。
- 司法改革、規制緩和の要請に反する。
- 事件必要説(通説・行政実務・立法関与者福原忠男など)
- 日弁連は不要説を支持しているが、法務省、検察庁、総務省等の行政実務においては必要説をとっている(現に、平成17年6月8日衆議院厚生労働委員会において法務省大臣官房司法法制部長が必要説の立場で答弁している)。
- 法務省、総務省(それぞれ弁護士法、司法書士法、行政書士法の所管官庁)はその出版物における記述より必要説の立場をとるものと思われる。検察庁がこの点に関する立場を明言したことはないが、起訴基準を見る限り必要説をとるものとも思われる。学説においては必要説が通説とされているが、下級審での裁判例はそれぞれ必要説と不要説を支持するものがみられる。
- 必要説によれば、弁護士以外の者が、「相当程度に紛争性を帯びる具体的蓋然性のない事件」、又は紛争性を帯びる場合でも 「訴訟等と同程度に紛争が成熟していない法律事件」 を取り扱う場合には、直ちには弁護士法違反にならないことになる。その限りで他の資格者による紛争性の成熟していない法律事務の取扱い、その代理行為も合法となる。前者の例として、行政書士、司法書士等が成年後見に関する相談を受けて手続きを行い報酬を得る場合、後者の例として、貸金請求において、相手方が弁済しない意思を明示していない場合に、行政書士が内容証明郵便や口頭で貸金返済請求を行う場合などが考えられる。
- 漫画「カバチタレ!」は通説である必要説の立場で作られたもののようであるが、不要説の立場から、当該漫画で描かれている行政書士の業務内容には「非弁行為が含まれている」という指摘がある。
法律事務所と類似の名称
「法律事務所」という表現を用いることは弁護士法により、弁護士の事務所に限られているため、隣接法律職が法律事務所という名称を用いることは許されていない。しかしながら、この点について日弁連の見解では「法律事務所に類似する名称は、同法による規制の対象外である」(条解弁護士法/日弁連著)ため、隣接法律職が法務事務所、司法事務所等の類似名称を用いることは弁護士法に違反しない。
司法書士との競合
登記申請の際の定款の作成業務
登記申請の際に必要な定款の作成業務については、判断材料としては次の事実が確認されており、司法書士に扱えると主張する者と、司法書士には扱えないと主張する者がある。
1.行政書士に対しても、司法書士に対しても、定款作成が業務として扱えないとする司法判断はなされていない。
2.定款作成は司法書士の業務範囲外であると、司法書士法を所管する法務省が通達を出している。
- 「司法書士の業務範囲と弁護士法の関係について司法書士の業務範囲に関する照会の件」(照会)(昭和二十八年十月二十六日 法務事務次官宛 日本弁護士連合会会長照会)
- 会社設立に必要な書類のうち、登記所に提出するためのもの(例えば、会社設立登記申請書、登記申請委任状)の作成は、司法書士の業務範囲に含まれるが、しからざるもの(例えば、定款、株式申込証)の作成は、含まれない。なお、後者の場合において、書類の作成で法律的判断を必要としないものについては、弁護士法第七十二条の違反の問題を生じないが、しからざるものについては、その問題を生ずる。
3.司法書士による定款作成は、弁護士法違反になる場合もあると、法務省が通達を出している(前掲通達の「なお」以下)。また、日弁連ホームページにおいても警告が掲載されている。
- 弁護士と司法書士との職域限界に関する声明 http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/statement/1953_1.html
4.定款作成は行政書士法第1条の2に規定する行政書士の独占業務であり、非行政書士が業務として行うことは禁じられている。ただし、弁護士法により弁護士は法律事務を業務とする資格者であると規定されているため、適法に定款作成を業とすることができる。
5.無償での定款作成は、弁護士法においても、行政書士法においても、違法とはならない。当然のことながら、司法書士の職業にある者が、業務外の行為として無償で行う場合も適法である。
6.日本司法書士会連合会が発行する月報司法書士2005年8月号68ページ末尾から69ページの冒頭部分において、次の通り記載されている。
- 定款作成代理権を司法書士にも付与されるべきであるとの要望が挙げられた。これに対し執行部は、昭和二九年通達により、現在も司法書士に定款作成代理の権限はないものと扱われているが、現在法務省に対しこの先例の廃止の申し入れをしている旨答弁した。また、電子定款の認証について一部公証役場では司法書士による扱いを認めていないところがあり、このような扱いについて日司連として抗議をしている旨報告した。
登記以外の業務競合
その他法務局に提出する書類の作成のうち国籍帰化申請については提出先が法務大臣であり、法務局は提出窓口でしかないため、司法書士との競合業務とされる(行政先例)。また検察審査会や執行官への競売申立も検察庁、裁判所ではなく、それぞれ独立行政庁である検察審査会、執行官あてにすることから司法書士との競合業務であるとの考えがある(行政書士業務必携/青山登志朗著)。なお、検察審査会に提出する不起訴処分に対する審査申立書は行政書士の業務範囲とする先例(昭和53年2月3日自治省行政課決)、検察審査会に提出する書類(審査申立書、取下書、証人申出書等)の作成業務は司法書士法第2条(現3条)の業務に準ずる(昭和36年10月14日民事甲第2600号回答・民月16巻11号157頁)とする先例がある。
社会保険労務士との競合
歴史的に社会保険労務士は行政書士から分離したという事情があるため、社会保険労務士制度が誕生した1968年以前より行政書士であった者は社会保険労務士の資格を付与されている。また昭和55年9月1日までに登録した行政書士は、行政書士のままで社会保険労務士の独占業務に関わる申請書等の作成(社会保険労務士法第2条第1項第1号)および帳簿書類の作成(同第2号)を為すことが許される。
ただし、提出代行、及び事務代理は許されておらず、使者として行政機関に提出することができるのみである。当然、あっせん代理も出来ない。
税理士との競合
不動産取得税や事業所税に関する申告などの一部税理士業務を行うことができる(税理士法第51条の2、同施行令第14条の2)他、印紙税などの税理士業務とされていない税務手続(税理士法第2条、同施行令第1条)を行うことができる。
弁理士との競合
産業財産権に関する諸手続きは、従前は弁理士の独占業務であったが、近年の弁理士法改正によって、その手続きの一部が行政書士との共管業務となった。
弁理士法75条により「特許・実用新案・意匠・商標等に関する手続・異議申立・裁定に関する手続の代理(弁理士法施行令6条で定めるものを除く)、鑑定、政令(弁理士法施行令7条)で定める書類・電磁的記録の作成」が弁理士の独占業務とされている。逆にいえば上記に該当しない産業財産権に関する書面作成は行政書士と弁理士の独占競合業務、手続きについては非独占競合業務となる。
海事代理士との競合
内航海運業法及び船員職業安定法に基づく諸手続は、従前は行政書士の独占業務であったが、近年の海事代理士法改正によって、海事代理士業務へと変更された。(但し、経過措置により当面は行政書士との共管業務。)
また、総トン数20トン未満の小型船舶についての手続き書類の作成は、以前は一部が海事代理士の独占業務であったが、近年の小型船舶登録法の創設によって、行政書士の独占業務となった(総務省・国土交通省照会回答)
登録
行政書士になるには、「行政書士となるための資格」を有する者が、日本行政書士会連合会の行政書士名簿に登録を受けなければならない。なお登録の際には、登録料や会費として30万円前後が必要になる。その後も会費として毎年6万円前後が必要である。これらの金額は都道府県によって多少の差がある。この登録を行わないと、行政書士としての業務を行ってはいけないのはもちろんのうえ、行政書士として名乗ることも出来ない。
行政書士となるための資格
- 行政書士試験に合格した者(行政書士法第2条第1号)。
- 弁護士、公認会計士、税理士、弁理士となる資格を有する者(行政書士法第2条第2~5号)。単に、司法試験合格した者は、該当しないので注意を要する。(免除要件に該当する者を除き、司法修習を修了して弁護士となる資格を有することとなる。)
- 20年(高等学校を卒業した者は17年)以上公務員(又は特定独立行政法人、特定地方独立行政法人)として「行政事務」に相当する事務に従事した者(第2条第6号)。ここにいう「行政事務」とは、行政機関の権限に属する事務のみならず、立法ないし司法機関の権限に属する事務も含まれるが、単なる労務、純粋の技術、単なる事務の補助等に関する事務は含まれず、文書の立案作成、審査等に関連する事務であること及びある程度、その者の責任において事務を処理していることが必要とされる(旧自治省行政課長通知)。
行政書士の義務
- 帳簿の備付及び保存(行政書士法第9条)。
- 帳簿には、事件の名称、年月日、受けた報酬の額、依頼者の住所氏名、その他都道府県知事の定める事項を記載する(第9条1項)。
- 帳簿は、閉鎖(余白ページがなくなり使用終了)の時から2年間保存する(第9条2項)。
- この規定に違反した者は、30万円以下の罰金に処せられる(第23条)。
- 使用人その他の従業者も同様の義務がある(第19条の3)
- 違反したものは、1年以下の懲役または100万円以下の罰金であるが、告訴がなければ公訴されない(第22条)。
- 依頼を正当な理由なく拒むことが出来ず(第11条)、拒むときは事由を説明しなければならない(規則8条前段)。この規定に違反した者は、30万円以下の罰金に処せられる(第23条)。
- 補助者を置いたときは、行政書士会に届け出る(規則5条2項)。
- 法令または依頼の趣旨に反する書類を作成してはならず、作成した書類には記名し職印を押さなければならない(規則第9条)。
行政書士法人
行政書士法人とは、業務を組織的に行うことを目的として行政書士が共同して設立した法人をいう。
- 行政書士法人の社員は行政書士でなければならない。(行政書士法第13条の5)
- 行政書士法人は、政令で定めるところにより、登記しなければならない。(第13条の7)
- 行政書士法人は、その事務所に、当該事務所の所在地の属する都道府県の区域に設立されている行政書士会の会員である社員を常駐させなければならない。(第13条の14)
行政書士会
- 会則を定め都道府県知事の認可を受けなければならない(行政書士法第16条の2)
- 組合等登記令により登記しなければならない(第16条の3)、登記を怠ったときは、代表者が30万円以下の過料に処せられる(第25条)。
- 毎年1回、会員の事務所の所在地等を都道府県知事に報告しなければならない(第17条1項)
- 行政書士として登録を受けたとき、その行政書士会の会員となる。(第16条の5)
- 会員に対して会員証を交付しなければならない(規則第13条)
日本行政書士会連合会
都道府県単位に設立された行政書士会の上部組織。
- 登録
- 行政書士となる資格を有する者が、行政書士になるには行政書士名簿への登録を受ければならない(行政書士法第6条)。
- 資格を有しない者が虚偽の申請をし登録させた場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる(第21条)
- 登録の取消し(第6条の5)
- 行政書士会の指導および連絡事務をおこなう(第18条2項)
- 資格審査会(第18条の4)
- 委員の任期は、2年である(6項)
詳しくは日本行政書士会連合会を参照。
監督
- 行政書士に対する懲戒は、都道府県知事が行う(行政書士法第14条)。
- 都道府県知事は、行政書士会につき、報告を求め、または勧告することが出来る(第18条の6)
参考文献
- 地方自治制度研究会『詳解 行政書士法』(ぎょうせい)
- 兼子仁『行政書士法コンメンタール』(北樹出版)
- 阿部泰隆『行政書士の未来像』(信山社)
- 田島隆/東風孝広「カバチタレ!(現・特上カバチ!!)」(講談社)
関連団体
- 有限会社全行団
- 日本行政書士政治連盟

