建築士

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建築士
Architect.png
製図台で製図する建築士
基本情報
職種 専門職
業種 建築建設デベロッパー都市計画インテリアデザイン土木工学
詳細情報
適性能力 技術的な知識、建築物のデザイン、プランニングと管理の能力
必須試験 建築士試験
就業分野 建築設計事務所ハウスメーカー建設会社不動産会社官公署
関連職業 建築コンサルタントインテリアデザイナー家具デザイナー不動産鑑定士土地家屋調査士都市計画家建築評論家
平均年収 642万円(平成20年賃金構造基本統計調査)
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建築士(けんちくし、英語: Architect)とは、建築物の設計及び監理を行う職業、あるいはその資格を持った者である。

概要[編集]

建築物の設計及び監理は、もともとは大工などの職人がその役割を担うことが多かったが、建築物の大規模化や複雑化が進むことで建築統括者の役割が必要となり、やがてアーキテクト(建築士)と呼ばれる職業が生まれた。

日本では建築士という資格名称で、建築物の質の向上に寄与するため、建築士法昭和25年5月24日法律第202号)に拠って国家資格として定められた。建築士は「一級建築士、二級建築士及び木造建築士をいう」と定義されており、それぞれの建築士は「建築士の名称を用いて、建築物に関し、設計、工事監理その他の業務を行う者をいう」と定義されている。

建築物の設計及び工事監理は公共の安全に重大な影響をもたらすため、高度な教育と経験がなければ建築士となることはできない。世界中のほとんどの地域において、それぞれの言語で建築士を意味する名称(日本語 建築士、中国語 建筑师畫則師スペイン語 Arquitecto、英語 Architect、ドイツ語 Architekt等)は法的に使用が制限され、免許を受けた資格者のみが使うことを許される。

職務[編集]

建築士の職務は大きく3つに分けられる。

設計業務

基本設計、実施設計の2段階で行われ、それぞれについて意匠設計、構造設計、設備設計が含まれる。

工事監理業務

建築主や現場管理者(施工者の置く現場監督)とは違う第三者の立場で、工事が設計図書のとおりに実施されているかを確認し、建築主への報告と施工者等への必要な指示を行う。

手続き等業務

設計前における調査、企画等の業務や、建築工事契約に関する事務、建築工事の指導監督、既存建築物に関する調査、鑑定業務、開発許可、農地転用許可等の手続き業務、各種コンサルティング業務等、建築士の職務は多岐に渡り、それらの一部を専門に行う建築士もいる。

名称[編集]

建築士の英訳として使われる「Architect」(アーキテクト)の語源はギリシャ語のArkhitektonであり、Arkhiは英語でChief(主任)、Tektonは英語でBuilder(建築者)の意であることから、「主任建築者」というのが本来の意味である[1]

日本ではArchitectに対応する語として建築士をあてていたが、昭和25年に資格としての建築士制度により建築士法が制定された。法務省作成の日本法令外国語訳データベースシステムでは、一級建築士の英訳として「first class architect」「class-1 architect」の2種が使われている[2]。しかし、二級建築士と木造建築士については英訳されておらず、どの範囲をArchitectとして扱っているかは定かではない。

また、日本の建築士試験の指定試験機関である公益財団法人建築技術教育普及センターでは、「日本においてアーキテクトに相当する資格は一級建築士です」と表示しており、建築士の英訳としては「Architects and Building Engineers」と表示している[3]。ここでも、一級建築士をアーキテクトとする一方、二級建築士と木造建築士についてはアーキテクトと扱うかどうかは明確にされていない。

しかし、日本の一級建築士の中には責任ある立場で設計等の業務を行っていない者が含まれており、諸外国のアーキテクトとは若干性質が違うことが指摘されている。この問題について、現に一級建築士事務所の開設者かつ管理建築士である者をもってアーキテクトとするのが妥当であるとの考え方がある。この立場では、日本におけるアーキテクトは人口1万人あたり5人程度となり、諸外国のアーキテクト人口比率と同程度の数値となる。

各国の建築士制度[編集]

日本の建築士制度[編集]

建築士
英名 Architect
実施国 日本の旗 日本
資格種類 国家資格
分野 不動産・建築
試験形式 学科、設計製図
認定団体 国土交通省
等級・称号 一級建築士、二級建築士、木造建築士
根拠法令 建築士法
公式サイト http://www.mlit.go.jp/
ウィキプロジェクト ウィキプロジェクト 資格
ウィキポータル ウィキポータル 資格
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年1回行われる建築士試験に合格し、管轄行政庁(国土交通大臣または都道府県知事)から免許を受け、設計・監理などを行う。建築士資格の種類により、設計・監理できる建築物の規模等に違いがある。近年では建築構造と建築設備の各分野においてそれぞれ構造一級建築士、設備一級建築士の制度を発足させている。

ごく小規模なものを除き、建築物の設計又は監理を行うには建築士の免許が必要である。他の多くの資格と違い、この制限は報酬を得なくとも、業としてでなくとも適用され、たとえ本人の住む家であっても例外ではない。これは建築物が多くの人の生活に密接に関わり、場合によっては命を奪う凶器にもなりうることからなされている制限である。医療行為ですら業としてでなければ医師以外の者が行うことを禁止していないことから、建築士の行う設計又は監理は大変重い社会的責任の元にあり、公共的性格の強いものであると言える。

種類及び内容[編集]

建築士には、一級建築士、二級建築士、木造建築士の3種類があり、その資格により設計監理できる建築物に違いがある。尚、一級建築士の上位資格として、構造設計一級建築士と設備設計一級建築士の二つの資格が存在している。

一級建築士[編集]

一級建築士は、国土交通大臣の免許を受け、一級建築士の名称を用いて、設計工事監理等の業務を行うものである(建築士法第2条第2項)。

一級建築士は、次のような複雑・高度な技術を要する建築物を含むすべての施設の設計および工事監理を行うことができる(建築士法第3条)。

  1. 学校病院劇場映画館・公会堂・集会場・百貨店の用途に供する建築物で、延べ面積が500m²を超えるもの
  2. 木造建築物または建築の部分で、高さが13mまたは軒の高さが9mを超えるもの
  3. 鉄筋コンクリート造鉄骨造、石造、れん瓦造コンクリートブロック造もしくは無筋コンクリート造の建築物または建築の部分で、延べ面積が300m²、高さが13m、または軒の高さが9mを超えるもの
  4. 延べ面積が1000m²を超え且つ階数が2階以上のもの
構造設計一級建築士[編集]

一定規模以上の建築物(木造で高さ13m超又は軒高9m超、鉄骨造で階数4以上、RC造又はSRC造で高さ20m超、その他政令で定める建築物)の構造設計については、構造設計一級建築士が自ら設計を行うか、構造設計一級建築士に構造関係規定への適合性の確認を受ける必要がある。構造設計一級建築士は、構造設計事務所に所属又は主宰する例が多くみられる。構造設計一級建築士は、一級建築士として5年以上の構造設計に関わる業務経験を持ち、構造設計一級建築士講習を受講した後、修了考査の合格後に 構造設計一級建築士証の交付を受けたものを言う。

設備設計一級建築士[編集]

一定規模以上の建築物(階数3以上かつ5000m²超の建築物)の設備設計については、設備設計一級建築士が自ら設計を行うか、設備設計一級建築士に設備関係規定への適合性の確認を受ける必要がある。設備設計一級建築士は、設備設計事務所に所属又は主宰する例が多くみられる。設備設計一級建築士は、一級建築士として5年以上の設備設計に関わる業務経験を持ち、設備設計一級建築士講習を受講した後、修了考査の合格後に設備設計一級建築士証の交付を受けたものを言う。 尚、一級建築士に加え建築設備士の資格を有する者は、4年以上の設備設計に関わる業務経験が受講資格となる。

上記の二つの建築士は英語圏ではそれぞれStructual Engineer、Equipment Plannerと呼ばれ、多くの国ではアーキテクトの一形態とされるが、一部の国ではアーキテクトに含まれない職種として区別することがある。

二級建築士[編集]

二級建築士は、都道府県知事の免許を受けて、二級建築士の名称を用いて、設計工事監理等の業務を行うものである(建築士法第2条第3項)。具体的には、一定規模以下の木造の建築物、および鉄筋コンクリート造などの主に日常生活に最低限必要な建築物の設計、工事監理に従事する。

二級建築士が設計・工事監理のできる限度範囲は、以下のとおりである(当然ながら一級建築士も行うことができる)。

  1. 学校病院劇場映画館・公会堂・集会場・百貨店などの公共建築物は延べ面積が500m²未満のもの
  2. 木造建築物または建築の部分で高さが13mまたは軒の高さが9mを超えないもの
  3. 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、れん瓦造、コンクリートブロック造もしくは無筋コンクリート造の建築物または建築の部分で、延べ面積が30m² - 300m²、高さが13mまたは軒の高さが9m以内のもの
  4. 延べ面積が100m²(木造の建築物にあっては、300m²)を超え、又は階数が3以上の建築物(ただし、第3条の2第3項に都道府県の条例により規模を別に定めることもできるとする規定がある)。

つまり、木造の住宅や、小規模な鉄筋コンクリート造などの建物(延べ面積300m²以内のもの)などの設計及び工事監理が可能である。

木造建築士[編集]

木造建築士は、都道府県知事の免許を受け、木造建築士の名称を用いて、木造の建築物に関し、設計、工事監理等の業務を行う者である。

木造の建築物で、延べ面積が100m²を超えるものを新築する場合においては、一級建築士、二級建築士又は木造建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない。 つまり、木造建築士は、木造建築物で延べ面積が300m²以内、かつ2階以下のものを設計・工事監理ができる。

管理建築士[編集]

管理建築士とは、建築士事務所を管理する建築士であり、その建築士事務所の業務に係る技術的事項を総括する者とされる。専任性が求められるため、複数の建築士事務所の管理建築士を兼ねることはできない。

現行法では、管理建築士は建築士事務所の開設者、経営者である必要はない。このため、無資格者であっても、建築士を管理建築士として雇用することで、建築士事務所を開設し経営することができてしまう。これにより、建築士としての職業倫理や技術的な判断力を持たない者が雇用主となり、会社経営を優先した指示を出してしまう恐れがあるとして、建築主の利益と公共の利益を重視すべき建築士の職務遂行に支障をきたす可能性が指摘されている。

2008年の建築士法改正により、建築士として3年以上の実務経験を経た後、管理建築士講習を受け修了考査に合格した者だけが管理建築士となることができる。

その他[編集]

一級建築士、二級建築士、木造建築士が設計するもの以外の小規模な建物は建築士の資格がない者でも設計できるが、建築確認申請は必要であり、添付する設計図書等の作成を代理できるのは建築士と行政書士に限られる。

  • 木造建築物で延べ面積が100m²以内、かつ2階以下のもの
  • 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、れん瓦造、コンクリートブロック造もしくは無筋コンクリート造の建築物または建築の部分で、延べ面積が30m²以下、2階以下で、高さが13mまたは軒の高さが9m以内のもの

なお、防火地域及び準防火地域外における10m²以内の増築については、建築確認申請も不要となるが、建築基準関係規定への適合は必要であり、違反建築物には取り壊し命令が出される場合もある。

関連業務[編集]

技術者等として従事できる場合[編集]

設計監理としての色が強い建築士だが、他の法律で定める技術者等として従事することもできる。

  • 建設業法(業種は多岐にわたるため記載省略)
    • 一級建築士、二級建築士、木造建築士は、一般建設業における「専任技術者」となることができる。
    • 一級建築士は、特定建設業における「専任技術者」となることができる。
    • 一級建築士、二級建築士、木造建築士は、小規模工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる「主任技術者」となることができる。
    • 一級建築士は、監理技術者講習を受講することで、大規模工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどる「監理技術者」となることができる。
  • 消防法
    • 一級建築士は、防火管理について1年以上の実務経験を有することで、防火管理上必要な業務を行う「防火管理者」となることができる。
    • 一級建築士は、登録検定機関が行う特殊消防用設備等の性能に関する評価を行うことができる。
    • 一級建築士、二級建築士は、設計、工事監理、指導監督について5年以上の実務経験を有し、かつ講習を修了することで、「防火対象物点検資格者」となることができる。
    • 一級建築士、二級建築士は、講習の課程を修了することで、「消防設備点検資格者」となることができる。
  • 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)
    • 一級建築士は、解体工事の技術上の管理をつかさどる「技術管理者」となることができる。
  • 建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)
    • 一級建築士は、講習会の課程を修了することで、特定建築物の維持管理が環境衛生上適正に行なわれるように監督する「建築物環境衛生管理技術者」となることができる。
  • 都市計画法
    • 一級建築士は、開発許可申請における「設計者」となることができる。
  • 建築基準法
    • 一級建築士、二級建築士は、特殊建築物等の「調査者」となることができる。
  • 官公庁施設の建設等に関する法律
    • 一級建築士、二級建築士は、国家機関の建築物の「点検者」となることができる。
  • 労働安全衛生法
    • 一級建築士は、労働災害の防止を図るための「計画作成者」となることができる。
  • エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)
    • 一級建築士は、登録建物調査機関の行う建築物調査の「調査員」となることができる。
  • マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)
    • 一級建築士は、マンション管理士又は管理業務主任者の登録実務講習における「マンションの建物及び付属設備の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整に関する科目」の「講師」となることができる。
  • 住宅の品質確保の促進等に関する法律
    • 一級建築士、二級建築士、木造建築士は、講習を修了することで、登録住宅性能評価機関の「評価員」となることができる。
    • 一級建築士は、評価員として3年以上の実務経験を有することで、登録住宅性能評価機関の評価員となるために必要な講習における「住宅性能評価に関する実務に関する科目」の「講師」となることができる。
    • 一級建築士は、評価員として5年以上の実務経験を有することで、登録住宅型式性能認定等機関の「認定員」となることができる。
  • 地震対策推進条例
    • 一級建築士、二級建築士、木造建築士は、養成講習を受講することにより、大地震により被災した建築物を調査する「応急危険度判定士」となることができる。
行政手続き等[編集]

建築士は一定規模以上の「設計」及び「監理」ができるとともに、建築士法第21条によって「建築に関する法令若しくは条例の規定に基づく手続の代理その他の業務」が定められており、建築士は「建築に関する」ものである限り広範な業務を行うことができる。主な行政先例は下記の通り。

  • 開発許可制度
    • 都市計画法に基づく開発行為において、一ヘクタール以上の開発行為の場合は、設計者の資格を都市計画法施行規則第19条で一級建築士等に定めているが、一ヘクタール未満の開発行為に係る許可申請書は一級建築士、二級建築士及び行政書士が作成できる。(昭和53年2月13日 自治省行政課決定)なお、この決定以降に木造建築士が創設され、木造建築士も作成できる。
  • 農地転用
    • 建築士は関連業務として、農地転用許可申請ができる。(平成5年3月17日 茨城県土木部都市局建築指導課照会 建設省住宅局建築指導課回答)
  • 住宅金融公庫
    • 住宅金融公庫法に基づく住宅融資申請手続及び現場審査申請等一連の手続は、建築士法第21条に規定する建築に関する手続の代理その他の業務に該当する。(昭和57年7月13日建指発9号 青森県土木部長宛 建設省住宅局建築指導課長回答)
  • 工作物
    • 建築士法上、工作物(建築基準法第2条第1号に規定する建築物に該当する工作物を除く)に係る確認申請については、建築士法第21条の建築に関する手続きの代理その他の業務に該当する。(昭和53年4月7日建第20号 静岡県行政書士会会長宛 静岡県都市住宅部建築課長回答)
  • 位置指定道路
    • 業として道路位置の指定の申請代理人になることは、建築士法第23条による建築士事務所の登録を受けた者並びに行政書士法第6条の登録を受けた者にそれぞれ認められています。なお、現在、県の基準として関係各土木事務所に配布している「道路位置の指定の取扱い要領」では、申請代理人及び図面作成者は原則として建築士法第23条の登録を受けた者としています。これは、道路位置の指定が一種の開発行為であり、都市計画法に基づく宅地開発、建築基準法に基づく道路位置指定に関する諸基準並びに関係法令の内容に精通していることが望ましいことを考慮したものです。要件を満した適正な図面が作成されるのであれば、申請代理人が建築士でないことを理由に申請書の受理を拒否することはありません。(昭和57年5月28日広第172号 県政モニター(行政書士)安田康一宛 茨城県企画部長回答)

建築士試験[編集]

試験は年1回行われ、「学科の試験」と「設計製図の試験」に分かれている。「設計製図の試験」は「学科の試験」に合格しなければ受験することができず、前年度又は前々年度に「学科の試験」に合格した者は当該年度の「学科の試験」が免除される。

一級建築士試験では、複雑高度な技術を要する建築物の設計及び工事監理や、二級建築士、木造建築士の指導に携わるのに必要な知識、技術、職業倫理が問われる。

二級建築士試験、木造建築士試験では、個人住宅など日常生活に必要な建築物の設計及び工事監理に必要な知識、技術、職業倫理が問われる。

出題される問題は、建築技術教育普及センターから委任を受けた大学教授らの有識者グループが作成する。作成者には資格の有無は問われない[4]

建築士受験に際しての資格取得予備校なども存在する。予備校#建築関連資格を参照。

受験資格[編集]

建築の専門教育を受けていない者の場合、二級建築士又は木造建築士の受験資格を得るには7年以上の実務経験が必要である。更に一級建築士の受験資格を得るには、二級建築士になった後4年以上の実務経験が必要である。このため、一級建築士試験の受験資格を得るためには合計11年もの実務経験が必要ということになる。実際には、二級建築士試験の受験申込から合格し免許が与えられるまでの期間もあるため、二級建築士試験に一発で合格したとしても、最短で12年の期間がなければ実務経験のみで受験資格を得ることはできない。それを避けるため、一級建築士になろうとする者の多くは、大学専門学校などで専門的な建築学の教育を受け、その程度に応じた実務経験期間の短縮を利用する。しかし最大限に短縮されたとしても、必要な教育及び実務経験の合計が6年を下回ることはない。

2008年11月28日改正の建築士法以前は、所定の学校職業訓練施設の課程を修めて卒業後、所定の実務経験を積むことで建築士試験の受験資格が得られる方式であった。しかしこの建築士法の改正に伴い、2009年度入学の学生からは、同じ学校の同じ学科や職業訓練施設の課程を卒業したとしても、単位の取得状況によりそれぞれ必要な建築実務の経験年数が異なることとなった。このため、四年制大学防衛大学校職業能力開発総合大学校長期課程又は職業能力開発総合大学校東京校応用課程の卒業者、高等専門学校本科専攻科)、職業能力開発大学校(応用課程の卒業者)で、短期大学(修業年限が3年であるもの)で、さらに短期大学、高等専門学校(本科)、職業能力開発総合大学校東京校(専門課程のみの卒業者)、職業能力開発大学校(専門課程のみの卒業者)、職業能力開発短期大学校で、また2級は高等学校中等教育学校で、それぞれ取得に応じた実務経験年数が定められている。

また、これまでは認定された大学・学科側で建築士法に掲げられた内容の科目を設置して講義を開講し、都道府県の担当者が受験資格要件を満たす学科であるかどうか審査し認証していたが、今後は、審査については建築技術教育普及センターの建築士試験指定科目確認審査委員会により、科目審査に当たる。これとともに、大学側については、学生の単位取得状況をひとりひとり確認し、建築士試験の指定科目修得単位証明書を発行するというシステムに変更された。

さらに、建築士試験受験資格における実務経験としてこれまで認められていた大学院課程については、今回の改正によって、在学期間中に一定の実務実習(インターン)を積むことを条件とすることとなった。これを受けて、建築実務の各方面において大学院生に実務実習の機会を与える必要が生じている。

職業訓練については、建築関係の認定職業訓練施設一覧を参照。

合格率[編集]

おおむね一級建築士試験は10%程度、二級建築士試験は20%程度、木造建築士試験は40%程度となっている。なお、受験資格が厳しく設定されているため、単純に合格率から難易度を判断することはできない。例えば一級建築士試験は二級建築士試験の約2倍難しいという判断とはならず、一級建築士試験の受験者が既に二級建築士試験合格者のレベルにあることを考慮する必要がある。

建築士試験合格率
年度 一級建築士 二級建築士 木造建築士
学科 製図 総合 学科 製図 総合 学科 製図 総合
2013年(平成25年) 19.0% 40.8% 12.7% 28.3% 53.0% 19.5% 47.5% 58.6% 28.7%
2012年(平成24年) 18.2% 41.7% 12.4% 33.0% 52.5% 23.1% 47.3% 68.8% 33.2%
2011年(平成23年) 15.7% 40.7% 11.7% 38.2% 52.6% 24.8% 52.7% 63.8% 35.1%
2010年(平成22年) 15.1% 41.8% 10.3% 39.4% 52.1% 24.3% 61.6% 62.3% 37.0%
2009年(平成21年) 19.6% 41.2% 11.0% 32.9% 53.0% 22.8% 55.1% 62.9% 33.7%
2008年(平成20年) 15.1% 41.7% 8.1% 37.5% 52.0% 22.4% 60.9% 68.1% 40.3%
2007年(平成19年) 11.3% 49.4% 8.0% 31.9% 50.9% 19.7% 56.4% 78.9% 44.6%
2006年(平成18年) 10.0% 31.4% 7.4% 37.3% 55.8% 25.4% 75.6% 49.0% 32.6%
2005年(平成17年) 25.0% 30.3% 11.1% 33.2% 54.5% 23.3% 74.5% 74.4% 53.6%
2004年(平成16年) 25.2% 33.5% 10.5% 43.9% 55.9% 27.6% 69.9% 76.6% 52.6%
2003年(平成15年) 14.5% 40.3% 8.1% 42.2% 55.5% 26.5% 71.7% 66.6% 46.2%
2002年(平成14年) 10.6% 36.6% 6.4% 32.0% 56.1% 23.2% 58.1% 79.3% 44.4%
2001年(平成13年) 12.7% 33.0% 6.9% 37.0% 54.5% 24.7% 53.3% 58.0% 30.2%
2000年(平成12年) 18.3% 44.3% 11.4% 36.4% 55.5% 24.1% 55.7% 68.7% 38.0%
1999年(平成11年) 18.1% 45.6% 11.7% 35.1% 56.6% 24.3% 70.3% 67.9% 45.3%
1998年(平成10年) 18.6% 46.3% 11.6% 35.9% 56.9% 24.7% 70.4% 64.0% 40.2%
1997年(平成9年) 18.0% 47.6% 11.7% 35.7% 57.1% 24.7% 70.3% 71.5% 48.0%
1996年(平成8年) 17.8% 47.0% 11.9% 35.8% 54.8% 23.7% 69.9% 73.3% 47.2%
1995年(平成7年) 19.0% 47.0% 11.9% 35.3% 53.6% 22.9%
1994年(平成6年) 17.9% 49.9% 12.1% 35.4% 53.9% 22.9%
1993年(平成5年) 17.5% 48.8% 12.0% 36.0% 54.9% 23.7%
1992年(平成4年) 19.1% 47.3% 12.4% 36.1% 52.6% 22.9%
1991年(平成3年) 19.2% 47.5% 12.4%
1990年(平成2年) 18.6% 47.7% 12.2%
1989年(平成元年) 18.1% 48.0% 11.8%
1988年(昭和63年) 18.5% 48.5% 12.3%
1987年(昭和62年) 18.3% 49.1% 12.3%
1986年(昭和61年) 17.4% 49.7% 12.1%

資格試験での免除[編集]

その他[編集]

  • 建築士に関する逸話として、しばしば「(一級)建築士第1号は田中角栄(元首相)だ」といわれることがある[誰によって?]が、これは誤りである。田中が、「建築士法を議員立法として引き受け成立させた功で一級建築士資格をもらった」との邪推からくる誤解といっていい。確かに田中は、彼自身最初の議員立法として同法の提案者となり、法制定後、「(自分も)一級建築士にしておいてくれ」と秘書を通じて語ったとされる。しかしながら、田中の実務経験は土木が中心だったため、当時の建設省担当者たちが苦心して建築の経験を拾い上げて資格を授与させた、というのが正しい。それでも、選考の途中では田中を第1号とする方向で進められたこともあったらしいが、最終的には極めて事務的に決められ(当時の選考担当者[誰?]の証言)、山形県在住者の渋江菊蔵が第1号となった(田中は第16,989号)。ただし、同法の成立を実質的に牽引した、時の建設省建築指導課長・内藤亮一すら、のちに「田中角栄が一級建築士第1号」と語っており、そのせいで誤解が定着してしまった可能性がある。
  • 丹下健三など戦前より活躍した著名な設計者が一級建築士資格を持たなかったといわれることもある[誰によって?]が、これもおおよそ誤りで、丹下のように法制定時すでに建築に関する実務経験を有していた者たちは、たいてい試験を経ることなく選考によって資格を得ている(丹下の登録番号は15,182)。
  • 「法制定当時は級別でなく単一資格だった」との誤解もあるようだが[誰によって?]、これも誤りで、法の構想当初より、日本の場合には西洋とは異なり一般住宅の設計・監理に資格認定された技術者の関与が必要という考えから、何らかの級別の資格とする前提で構想が着手され、法制定時にも一級建築士・二級建築士という名称で定められている。

中国の建築士制度[編集]

注冊建築師条例によって定められ、全国注冊建築師管理委員会の行う一級注冊建築師試験に合格することで一級注冊建築師になることができる。1995年に改正された比較的新しい制度となっており、試験は8科目で構成され、4日間かけて行われる。下位資格として二級注冊建築師がある。

台湾の建築士制度[編集]

建築師法によって定められ、考選部の実施する建築師高等考試に合格し内政部から免許の交付を受けることで建築師となる。建築師資格取得後、2年以上の実務経験を積み建築師開業証明書を取得することで、開業建築師となることができる。2000年に法改正がされており、最も新しい部類の制度となっている。

韓国の建築士制度[編集]

韓国の建築士制度は、国土海洋部が主管する「建築士法」に基づいている。過去には一級建築士と二級建築士に分かれていた時代があったが、1977年以降は「建築士」のみとなっている。建築士となるためには建築士資格試験に合格する必要があり、その前提として建築士予備試験に合格する等の方法で建築士補となる必要がある。また、建築士の加盟する組織として建築士法に基づいて大韓建築士会が設立されている。

インドネシアの建築士制度[編集]

インドネシアでは、建設サービス法により建築士資格が定められている。Arsitek(建築士)となるには、まず建築分野の学位を取得し最低2年の実務経験及びその他の条件を満たすことで初級建築士の資格を得る。次に、専門性向上のため最低2種のコースを受講するとともに最低5年の実務経験及びその他の条件を満たすことで準建築士の資格を得る。更に、専門性向上のため最低4種のコースを受講するとともに最低12年の実務経験及びその他の条件を満たすことで建築士(Arsitek)の資格を得ることができる。

イギリスの建築士制度[編集]

1931年に制定され1997年に改正されたArchitects Act(建築士法)によりArchitects Registration Board(建築士登録委員会)が定められ、ARBに登録することで法律上の資格者となり、Architect(建築士)の名称を使用することができる。しかし業務の独占は定められていないため、Architect以外の者でも設計、監理等の業務を行うことができる。また、建築士の所属する組織として王立英国建築士会(Royal Institute of British Architects、RIBA)があるが、日本の建築士会と同様に加入義務はない。

フランスの建築士制度[編集]

1977年の建築法で名称の独占と業務の独占が定められている。国立建築学校等の学位を得ることで、法律上の資格者となりArchitecte(建築士)を名乗ることができるが、建築設計業務を行うためには建築士会の地方評議会に登録する必要がある。

イタリアの建築士制度[編集]

イタリアでは、5年間の建築専門教育を修了することで建築学博士となることができる。Architetto(建築士)となって設計等の業務を行うためには、国家試験に合格するとともに、イタリア建築士会(ALA-Assoarchitetti)に加入しなければならないが、実務経験は要求されない。

ドイツの建築士制度[編集]

製図台で製図するドイツの建築士

ドイツ連邦共和国は、連邦法によってではなく各州ごとの建築士法によってArchitekt(建築士)の登録制度を定めているが、全ての州に共通して、法律上の資格者以外がArchitektを名乗ることは禁止されている。各州には建築士法に基づいて建築士会(Architektenkammer)が設立され、各州の建築士会を統括する組織として連邦建築士会(Bundesarchitektenkammer、BAK)が設立されている。

アメリカの建築士制度[編集]

アメリカ合衆国は連邦共和制の国であり、Architect(建築士)についての法律も各州毎に規定されている。しかし各州で共通する部分も多く、法律上の資格者以外がArchitectを名乗ったり、設計や工事監理等の建築業務を行うことは禁止されている。法律上の資格者となるには、全米建築士登録委員会協議会(National Council of Architectural Registration Boards、NCARB)の実施する建築士試験に合格し登録を受ける必要があり、受験資格として基本的には専門教育と実務経験が要求されるが、専門教育を受けずとも8年間程度の実務経験を経ることで受験できる州もある。また、建築士の加盟する組織としてアメリカ建築士会(American Institute of Architects、AIA)があるが、日本の建築士会と同様に加入義務はない。

社会的責任[編集]

建築物の設計及び工事監理は公共の安全に重大な影響をもたらすため、建築士の社会的責任は大きい。

日本においては2005年に発覚した建造物の構造計算書を偽造する事件が、建築士の社会的信用を傷つける事件であった。事件後の調査において、他の構造偽装例は僅かであったが、下請設計者において本来一級建築士のみ可能な規模の建築物の構造設計を二級建築士が行っていたり、建築設備の設計を設計資格者ではない建築設備士技術士等が建築士事務所登録を受けずに下請けとして請負っていた事が判明した。これら無資格者への設計委託を厳格に禁止する為、「再委託規制」「重要事項説明義務」「構造設計一級建築士」「設備設計一級建築士」が新たに設けられ、不用意な資格者以外への設計業務委託が行われないよう厳しく管理することが建築士に義務付けられた。この問題に関しては、そもそも建築確認検査業務を民間に開放したのが間違いとして、国の責任を問う意見も多かった。詳細は構造計算書偽造問題参照。

2007年には大手ハウスメーカーが事業主で横浜市西区に建築計画していた9階建マンションの構造計算書が、マンション設計を担当した建築設計事務所から受注した構造設計事務所から下請けとして担当した一級建築士に偽造されていたことが横浜市の調査などで発覚。他の共同住宅や公共建築にも関与していた疑いがもたれた。

2008年にはハウスメーカーに所属していた同社社員が静岡県浜松市内の戸建住宅やアパートなど10棟について市長印付の公文書書類を偽造して確認申請書に添付、このうち3棟については建築確認もなしに着工、このため有印公文書偽造・同行使容疑で逮捕され、国土交通省は2009年4月9日付で同社の管理建築士に建築士としての業務停止と、工事監理者に業務停止3月の懲戒処分を下している。 このように、建築士法第23条の二(登録の申請)において、建築士事務所の登録をする際、開設者と管理建築士を届け出るが、管理建築士・設計者・工事監理者といった建築士資格者が厳格に処罰される一方、建築士事務所の開設者・経営者が無資格者である場合は、実質的な主導者であっても責任が曖昧にされることが多い。

建築に関する賞[編集]

下記の3賞が世界的に最も良く知られている。

  • プリツカー賞
    • ハイアット財団(The Hyatt Foundation)から贈られる。1979年に始まった比較的新しい賞ではあるものの、建築界のノーベル賞に例えられることもある。
  • RIBAゴールドメダル(通称)正式名称はロイヤル・ゴールド・メダル
    • 王立英国建築士会(Royal Institute of British Architects)から贈られる。1848年に始まり150年を超える歴史を持つ。
  • AIAゴールドメダル
    • アメリカ建築士会(American Institute of Architects)から贈られる。1907年に始まり100年を超える歴史を持つ。

日本においては、日本建築学会から贈られる日本建築学会賞と、吉岡文庫育英会から贈られる新建築賞が知られている。

建築に関する団体[編集]

著名な建築士[編集]

日本の著名な建築士[編集]

丹下健三
安藤忠雄

日本以外の著名な建築士[編集]

アントニ・ガウディ
フランク・ロイド・ライト

建築士が登場する作品[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Douglas Harper『Online Etymology Dictionary』(etymonline.com)
  2. ^ 法務省『日本法令外国語訳データベースシステム』(www.japaneselawtranslation.go.jp)
  3. ^ 公益財団法人建築技術教育普及センター(www.jaeic.or.jp)
  4. ^ 森博嗣著 森博嗣の浮遊研究室  ISBN 978-4840107501

関連項目[編集]

外部リンク[編集]