スーツアクター
スーツアクター(和製英語:Suit Actor)とは、着ぐるみを着用し、演技をこなす俳優のこと。
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[編集] 概要
ヒーローや怪獣・怪人、マスコット、イメージキャラクターのように、人間とは外見の異なるものを着ぐるみを用いて表現する。 特撮映画・テレビ番組の撮影では、下に述べるような専門の技術を有するスタントマンやスタントウーマンの役割である。狭義には「スーツアクター」とは彼らのことのみを指す。
また、マスコットやイメージキャラクターの場合には、アルバイトのように専門職でない者が演じることが多い。例えば、北海道テレビ放送が制作した『水曜どうでしょう』では、仕方なく俳優に局マスコットの着ぐるみを着せたところ、素人ながらそのまま専属スーツアクターのようなものなってしまったという前例もある。
スーツアクターという言葉は、特撮映画・テレビ番組によってこの役割が日本で発展した事による和製英語であり、あくまでもスタントマンの役割であることからハリウッドなどの国外では用いられない。ただし、まれに「スーツパフォーマー」と呼ばれることもある。具体例として、『ターミネーター4』にてT-600を演じたクリーチャー俳優のブライアン・スティールはエンドロールにて「T-600 Suit Performer」と表記されている。
この用語が使用されるようになった時期については正確には不明だが、1992年発売の破李拳竜著『ゴジラ怪獣超クイズ』の118ページにて、「スーツメイション・アクター」という言葉がすでに使用されている。
また、これとは別に着ぐるみ人形による子供向けの舞台劇を行う劇団も存在する。この舞台劇に用いられる着ぐるみの中の役者もスーツアクターの一種である。
スーツアクターは90年代までは主に男性が中心だった。神尾直子・村上利恵などの女性アクトレスもいたが、機敏なアクションに対応できる人材は少なかった。しかし、2000年以降は小野友紀・人見早苗などの女性(スーツアクトレス)の活躍が目立ってきている。
なお、俳優たち自身からは「スーツ(着ぐるみ)を着てしか芝居ができないわけではない」と、この呼称は必ずしも好意的に受け取られるとは限らないという側面もある[1]。その一方で、永らくいわば「日陰の身」「忍者みたいなもの」だったスーツアクターが、『仮面ライダー電王』などの作品が成功した影響で注目されるようになり[2]、スーパー戦隊シリーズや平成仮面ライダーシリーズで主役ヒーローを数多く演じてきた高岩成二は、2009年頃からテレビ番組などで自分たちの仕事が取り上げられるようになったことを「時代が変わった」と前向きに語っている[3]。
[編集] スーツアクターに求められる技術
スーツアクターは通気性の良くない、作品によっては重い着ぐるみで全身を覆われるため、内部に熱がこもりやすく体力的にタフでなければならない。さらに作品や着ぐるみによっては、視界や関節に大きな制限がかかった状況で殺陣やアクション、さらにはスタントを行わなければならない場合があることから、生身のスタントマンよりも高度な技術が必要とされる。
また、通常は表情を用いた演技ができないため、全身を使った高い演技力、パントマイムの技量が求められる。かつては、特に子供向け特撮ドラマ作品では、表情のないハンディを演出上補うために大げさなぐらいのパフォーマンスによって表現されることが多かったが、1990年代後半からの特撮ドラマ作品では、演出上、作品全体に比較的リアリティが求められるようになったため、より自然に見える表現が求められている。
特に「変身」という過程を伴う作品では、変身後の超人のみを演じる場合が大半である(変身前の人物を演じる俳優のスタントを行う場合もある)が、これはあくまでも「変身」という過程により、ある人物の外見が変わったり特殊な能力が付加されたりした状態である。つまり同一人物を「変身」という過程の前後で別々の俳優が演じるということであり、俳優としての技量もより一層問われる。更に怪獣など異生物(クリーチャー)を演じる際には、俳優として人間ではない演技を求められる。一例として「昭和ゴジラシリーズ」のゴジラを一貫して演じた中島春雄が、動物の動きを研究するために動物園に通い、熊などの動作を身につけたという話が知られる。
その一方で後述のように素顔を見せることが殆どないため、その演技が年齢や外見に左右されないメリットもあり、一つの作品で複数の人物を演じることが可能である。またスーツアクターの体力と技量次第では、新堀和男のように20年近くわたってヒーローの中身を演じ続けられるだけでなく、蜂須賀祐一・蜂須賀昭二らのように小柄な男性スーツアクターが女性キャラクターの中身を演じたりすることも可能である。だが、変身前の俳優と体格や背丈が違うスーツアクターは、視聴者に違和感を与えてしまうというデメリットもある。
「動き」と「声」の違いこそあれど、素顔を見せないメリットは声優のそれと共通すると言える。
[編集] スーツアクターの属するプロダクション
スーツアクターは同時にスタントマン/スタントウーマンでもあることから、多くの場合これらやアクション俳優を専門とする芸能事務所に属している。
- Eプロダクション(ディズニーリゾート)
- 大野剣友会
- ジャパンアクションエンタープライズ(JAE:旧名ジャパンアクションクラブ(JAC))
- レッドアクションクラブ
- 円谷プロダクション
など。
「特撮関連人名一覧」も参照
他方、スーツアクターが着用した着ぐるみ人形による、童話などを題材とした子供向け舞台の興行を専門的に行っている企業・劇団としては、劇団飛行船が存在する。
[編集] スーツアクターの養成
アクション俳優専門の芸能事務所では、スーツアクター専門というわけではないが、アクション俳優の養成のための部門を設けているところがある。例えばジャパンアクションエンタープライズ(JAE)では「養成部」として、1年間にわたって各種の殺陣や武術、スタントの基礎などをトレーニングする[4]。他にアクション俳優を養成する専門学校もある。
だがこうした過程を経ても実際にスーツアクターとして演技できる者は少ない。NHK教育テレビジョン『あしたをつかめ 平成若者仕事図鑑』で当時JAE所属の伊藤教人を取り上げた回によると、彼の同期生21人の内、3年経って残っているのは6名に過ぎないという。養成部を終えた2年目からは先輩俳優の着替えの補助業務などを手伝いながら撮影現場の雰囲気に慣れていき、まずは戦闘員、さらに怪人の役とステップアップしてゆく。主役ヒーローを演じるのは高岩など40歳前後のベテランである[5]が、岡元次郎が22歳の時に『仮面ライダーBLACK』で主役ライダー役に抜擢されたようなケースもある[6]。さらに年齢を重ねると一般の俳優としての活動を主にしたり、殺陣師・アクション監督などといったスタッフに、あるいは養成部での講師など指導する立場に廻る。JAE社長でアクション監督の金田治も、『仮面ライダー』でのトランポリンアクションからスタートして、『人造人間キカイダー』や『ロボット刑事』などでスーツアクターとして演じている[7]。
[編集] スーツアクターとクレジットタイトル
スーツアクターは「裏方」でこそないが、かといって映像作品で表に現れるような役割でもない。例えば東映の特撮テレビ番組でのキャストクレジットでは、彼らは役名無しで名前をひとまとめに表示されて、その下に「(ジャパンアクションエンタープライズ)」「(ジャパンアクションクラブ)」等と付されるのが通例である。ただしJAE以外に属する者もひとまとめにされる。これはスーツアクターの存在を小さな子供達に認識させないことで、彼らの夢を壊さないための配慮とされている。スーツアクターの名前が演じたヒーローの名前を冠してクレジットに表記されるのは、映画版などに限られる。 超星神シリーズやレスキューファイアーではOPで「変身後の役名:スーツアクター」と紹介される。ウルトラシリーズでもかつては「ヒーロー名:スーツアクター」「怪獣:スーツアクター」と記載されていたが、ウルトラマンティガの途中から「特技アクション:スーツアクター」という風に役名が外された。ただ、ゴジラシリーズでは一貫して「怪獣:スーツアクター」の表記が続いている。
ただしスーツアクターも、例えば怪人に襲われる脇役のようにやられる側にもスタントの技量が必要な役を演じるときには素顔で姿を現す。
[編集] 変身前の俳優によるスーツアクション
自身もアクション俳優である藤岡弘、は『仮面ライダー』のごく初期の回で自らライダーの衣装を着て演じていたことがあった。こうしたケース以外の変身前の人物を演じる俳優も、マスクを取った表現や変身途中のシーンやマスクが壊れたシーンを撮影する場合には自ら着ぐるみの中に入って演技を行う必要がある。このシチュエーションは過去の作品では『快傑ズバット』や『鳥人戦隊ジェットマン』や『忍風戦隊ハリケンジャー』など、近年の作品では『仮面ライダー響鬼』(頭部のみ変身解除するシーンが頻繁にあるため)や『炎神戦隊ゴーオンジャー』で頻繁に用いられている。『救急戦隊ゴーゴーファイブ』ではバイザー部分が透明なマスクを付けたまま俳優がアクション行うことがあった。また東映のスーパー戦隊シリーズでは、『科学戦隊ダイナマン』以降、最終回や最終回付近では変身前の俳優自らがスーツアクターとしてアクションを行い、その他の回では普段のスーツアクターが素顔でゲスト出演するのが恒例になっている。
[編集] 関連項目
- 伝染るんです。 - 吉田戦車の漫画作品。「中の人」の由来、語源とされる。
- 逆転イッパツマン - 当初は戦うのは主人公自身ではなく、本人の脳波によって遠隔操作される戦闘用アンドロイドだった。
- ヌイグルメン! - 唐沢なをきの漫画作品。スーツアクターを主人公に据え、特撮番組製作の裏側を描いた作品。
[編集] 脚注
- ^ 鈴木美潮、「仮面ライダー電王「アクション俳優」のテク」、『読売ウイークリー』、2007.8.19 26 夏の合併号、読売新聞東京本社、p.104
- ^ JAE・おーち・多根[2010]、p.147-148。インタビュー対象となった6名は『電王』で味方怪人を好演して、怪人達が人気を集める中で注目された。彼ら自身も独自にトークイベントなどを行って、なおかつ多くのファンを集めている。
- ^ JAE・おーち・多根[2010]、p.136。
- ^ 「養成部|株式会社ジャパンアクションエンタープライズ」、2010年3月28日閲覧。
- ^ NHK「あしたをつかめ No.197 アクション俳優」、2010年3月28日閲覧。
- ^ JAE・おーち・多根[2010]、pp.21-23。
- ^ JAE・おーち・多根[2010]、pp.142-143。
[編集] 参考文献
- ジャパンアクションエンタープライズ・おーちようこ(著)・多根清史(著)『JAE NAKED HERO』太田出版、2010年。ISBN 978-4-7783-1210-7。