「正則性公理」の版間の差分

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'''正則性公理'''(せいそくせいこうり、{{lang-en-short|axiom of regularity}})は、[[別名]]「基礎の公理」(きそのこうり、{{lang-en-short|axiom of foundation}}) とも呼ばれ、[[ツェルメロ・フレンケルの公理系|ZF公理系]]を構成する[[公理]]の一つで、[[1925年]]に[[ジョン・フォン・ノイマン]]によって導入された。[[選択公理]]と同様、様々な[[同値]]な[[命題]]が存在する。
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'''正則性公理'''(せいそくせいこうり、{{lang-en-short|axiom of regularity}})は、[[別名]]「基礎の公理」(きそのこうり、{{lang-en-short|axiom of foundation}}) とも呼ばれ、[[ツェルメロ・フレンケルの公理系|{{Mvar|ZF}}公理系]]を構成する[[公理]]の一つで、[[1925年]]に[[ジョン・フォン・ノイマン]]によって導入された。[[選択公理]]と同様、様々な[[同値]]な[[命題]]が存在する。


==定義==
==定義==
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<math>\forall A(A\neq\varnothing\Rightarrow\exists x\in A\forall t\in A(t\notin x))</math>
<math>\forall A(A\neq\varnothing\Rightarrow\exists x\in A\forall t\in A(t\notin x))</math>


以下の4つの[[主張]]はいずれも[[ツェルメロ・フレンケルの公理系|{{Mvar|ZF}}公理系]]の他の公理の元で[[同値]]であり、どれを'''正則性公理'''として[[採用]]しても差し支えない。
以下の3つの[[主張]]はいずれも[[ツェルメロ・フレンケルの公理系|ZF公理系]]の他の公理の元で[[同値]]であり、どれを'''正則性公理'''として[[採用]]しても差し支えない<ref>{{Harvnb|Kunen|1980|loc=Ⅲ, §4.1|p=101}}</ref>


*[[任意]]の空でない集合{{mvar|x}}に対して、<math> \exists{y}{\in}x,x{\cap}y=0</math>
*[[任意]]の空でない集合{{mvar|x}}に対して、<math> \exists{y}{\in}x,x{\cap}y=0</math>
*<math>\forall x</math>について、{{math|∈}}が{{mvar|x}}上[[整礎関係]]
*<math>\forall x</math>について、{{math|∈}}が{{mvar|x}}上[[整礎関係]]
*<math>\forall x</math>について、[[無限降下法|無限下降列]]である <math>x{\ni }x_1{\ni }x_2{\ni }\cdots</math> は存在しない。
*{{Math|{{Mvar|V}}{{=}}{{Mvar|WF}}}}
*{{Math|{{Mvar|V}}{{=}}{{Mvar|WF}}}}


ここで、{{mvar|V}}は[[集合論]]の[[宇宙 (数学)|宇宙]]を指し、{{mvar|WF}}は[[整礎的集合]]全体の[[クラス (集合論)|クラス]]([[フォン・ノイマン宇宙]])を指す。
ここで、{{mvar|V}}は[[集合論]]の[[宇宙 (数学)|宇宙]]を指し、{{mvar|WF}}は[[整礎的集合]]全体の[[クラス (集合論)|クラス]]([[フォン・ノイマン宇宙]])を指す。


[[ツェルメロ・フレンケルの公理系|{{Mvar|ZF}}公理系]]内に限って話を進める。各[[順序数]]<math>\alpha</math>に対して<math>R(\alpha)</math>を次のように[[定義]]する。
[[ツェルメロ・フレンケルの公理系|ZF公理系]]内に限って話を進める。各[[順序数]]<math>\alpha</math>に対して<math>R(\alpha)</math>を次のように[[定義]]する。


# <math>R(0)=0</math>
# <math>R(0)=0</math>
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[[ZF公理系]]の他の[[公理系]]から得られる種々の[[集合の代数学|集合演算]]([[順序集合|対集合]]、[[和集合]]、[[冪集合]]) の結果としての集合は常に{{Mvar|WF}}内に含まれるため、{{mvar|V{{=}}WF}}の[[仮定]]は全ての集合を{{math|0}}に通常の[[集合演算]]を施すことによって得られるものだけに[[制限]]することを[[主張]]している。したがって、例えば{{math|{{mvar|x}}{{=}} &lbrace;{{mvar|x}}&rbrace;}}のような集合や{{math|{{mvar|x}}∈{{mvar|y}}}}かつ{{math|{{mvar|y}}∈{{mvar|x}}}}なる集合は[[正面性|正則性]]の公理の下では集合にはなり得ない。
[[ZF公理系]]の他の[[公理系]]から得られる種々の[[集合の代数学|集合演算]]([[順序集合|対集合]]、[[和集合]]、[[冪集合]]) の結果としての集合は常に{{Mvar|WF}}内に含まれるため、{{mvar|V{{=}}WF}}の[[仮定]]は全ての集合を{{math|0}}に通常の[[集合演算]]を施すことによって得られるものだけに[[制限]]することを[[主張]]している。したがって、例えば{{math|{{mvar|x}}{{=}} &lbrace;{{mvar|x}}&rbrace;}}のような集合や{{math|{{mvar|x}}∈{{mvar|y}}}}かつ{{math|{{mvar|y}}∈{{mvar|x}}}}なる集合は[[正面性|正則性]]の公理の下では集合にはなり得ない。


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{{mvar|WF}}は通常の[[演算|集合演算]]に関して閉じているため、{{mvar|WF}}公理系から得られる全ての真なる命題が[[ZF公理系|{{Mvar|ZF}}公理系]]においても[[真]]となることが分かる。このため、{{mvar|WF}}公理系内で通常の数学を[[展開]]できることが知られている。実際、{{math|{{mvar|x}}{{=}}<nowiki>{</nowiki>{{mvar|x}}<nowiki>}</nowiki>}}のような集合が存在するか否かは[[ZF公理系|{{Mvar|ZF}}公理系]]の中では導けない独立な[[命題]]だが、通常の数学を展開する場合にはこのような集合が現れることはない。その一方で、正則性の公理は必ずしも{{Mvar|ZF}}公理系を[[拡張]]するために必要なものではないが、ある命題が{{Mvar|ZF}}公理系と[[独立]]であることを[[証明 (数学)|証明]]する際にその[[効果]]を発揮することがある。
{{mvar|WF}}は通常の[[演算|集合演算]]に関して閉じているため、{{mvar|WF}}公理系から得られる全ての真なる命題が[[ZF公理系|{{Mvar|ZF}}公理系]]においても[[真]]となることが分かる。このため、{{mvar|WF}}公理系内で通常の数学を[[展開]]できることが知られている。実際、{{math|{{mvar|x}}{{=}}<nowiki>{</nowiki>{{mvar|x}}<nowiki>}</nowiki>}}のような集合が存在するか否かは[[ZF公理系|{{Mvar|ZF}}公理系]]の中では導けない独立な[[命題]]だが、通常の数学を展開する場合にはこのような集合が現れることはない。その一方で、正則性の公理は必ずしも{{Mvar|ZF}}公理系を[[拡張]]するために必要なものではないが、ある命題が{{Mvar|ZF}}公理系と[[独立]]であることを[[証明 (数学)|証明]]する際にその[[効果]]を発揮することがある。
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== 性質 ==
== 性質 ==
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<math>x\in y</math> ならば <math>x \in R(\alpha) = \{x \in WF : \mathrm{rank}(x)< \alpha\}</math>だから<math>\mathrm{rank}(x)< \alpha.</math>
<math>x\in y</math> ならば <math>x \in R(\alpha) = \{x \in WF : \mathrm{rank}(x)< \alpha\}</math>だから<math>\mathrm{rank}(x)< \alpha.</math>

== 脚注 ==
<references />


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
*正則性の公理 http://www7.plala.or.jp/isaragi/set/pdf/3.pdf#search='%E6%AD%A3%E5%89%87%E6%80%A7%E5%85%AC%E7%90%86'
*{{Citation|last=Halmos|first=Paul R.|author-link=:en:Paul Halmos|date=2015-04-22|title=Naive Set Theory|publisher=Benediction Classics|edition=paperback|isbn=978-1-78139-466-3}}
*{{Citation|last=Halmos|first=Paul R.|author-link=:en:Paul Halmos|date=2015-04-22|title=Naive Set Theory|publisher=Benediction Classics|edition=paperback|isbn=978-1-78139-466-3}}
*{{Cite book|和書|author=ポール・ハルモス|others=[[富川滋]] 訳|date=1975|title=[[素朴集合論]]|publisher=[[ミネルヴァ書房]]|isbn=4-623-00986-6|ref={{Harvid|ハルモス|1975}}}}
*{{Cite book|和書|author=ポール・ハルモス|others=[[富川滋]] 訳|date=1975|title=[[素朴集合論]]|publisher=[[ミネルヴァ書房]]|isbn=4-623-00986-6|ref={{Harvid|ハルモス|1975}}}}
*{{Cite book|title=Set Theory: An Introduction to Independence Proofs|year=1983|publisher=Elsevier|ref=harv|last=Kunen|first=Kenneth|month=12|day=1|isbn=9780444868398}}
== 出典 ==
{{Reflist}}

==関連項目==
==関連項目==
*[[整礎的集合]]
*[[整礎的集合]]

2022年9月8日 (木) 09:25時点における版

正則性公理(せいそくせいこうり、: axiom of regularity)は、別名「基礎の公理」(きそのこうり、: axiom of foundation) とも呼ばれ、ZF公理系を構成する公理の一つで、1925年ジョン・フォン・ノイマンによって導入された。選択公理と同様、様々な同値命題が存在する。

定義

でない集合は必ず自分自身と交わらない要素を持つ。

以下の3つの主張はいずれもZF公理系の他の公理の元で同値であり、どれを正則性公理として採用しても差し支えない[1]

  • 任意の空でない集合xに対して、
  • について、x整礎関係
  • V=WF

ここで、V集合論宇宙を指し、WF整礎的集合全体のクラスフォン・ノイマン宇宙)を指す。

ZF公理系内に限って話を進める。各順序数に対してを次のように定義する。

  1. 極限順序数のとき 

クラスWFはこれらを全て集めたものとして定義される。

ZF公理系の他の公理系から得られる種々の集合演算(対集合和集合冪集合) の結果としての集合は常にWF内に含まれるため、V=WF仮定は全ての集合を0に通常の集合演算を施すことによって得られるものだけに制限することを主張している。したがって、例えばx= {x}のような集合やxyかつyxなる集合は正則性の公理の下では集合にはなり得ない。


性質

  • 任意αON に対して、
  1. 推移的

証明

超限帰納法による。 のときは明らかである。 に対して成り立っていると仮定する。 のとき、仮定より は推移的であり、推移的になる。また、極限順序数のとき、仮定よりに対しては推移的であり推移的集合和集合推移的になることにより

も推移的になる。さらに

同様

WFの定義より、xWFのときを満たす最小の順序数後続順序数になる。実際、極限順序数として及びが成り立っているとすると、

となって矛盾する。

そこで、集合xランクを次のように定義する。

xWFのとき、を満たす最小のを集合xランクといい、で表す。

よって、 ならば

が成り立ち、かつとなる。また、このランクの概念を用いては次のように特徴付けられる。

及び、

ランクを計算するときに次の補題を使う。

のとき、

かつ

とすると

ならば だから

脚注

  1. ^ Kunen 1980, p. 101, Ⅲ, §4.1

参考文献

  • Halmos, Paul R. (2015-04-22), Naive Set Theory (paperback ed.), Benediction Classics, ISBN 978-1-78139-466-3 
  • ポール・ハルモス『素朴集合論富川滋 訳、ミネルヴァ書房、1975年。ISBN 4-623-00986-6 
  • Kunen, Kenneth (1983-12). Set Theory: An Introduction to Independence Proofs. Elsevier. ISBN 9780444868398 

関連項目

外部リンク