家庭内労働者

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暖炉を掃除する黒人メイド

家庭内労働者(かていないろうどうしゃ)とは、雇用主の家庭で働く労働者のこと。家庭内使用人、または単に「使用人」と一般には呼ばれている。一方、「使用者」は雇い主のことを指す。

大きな家庭において、多くの家庭内労働者が、しばしば複雑な社会階層の一部として、それぞれ役割の異なった仕事を担当している。この種の社会的な取り決めが先進諸国でほとんど時代遅れなのに対して、低開発国では収入を得るために役立つ社会的役割を果たしている。このような複雑な階層構造が、階級制度、カースト制度のなかから発生した場合、階層の境界線が恒久化され社会的機動性が制限されていく。

執事(バトラー)は上位の家庭内使用人で、伝統的に家庭のワインの管理と他の使用人の管理をおこなう。女性の使用人は、女中またはメイドと呼ばれる。男性の場合ハウスボーイと呼ばれることもある。

家庭内労働者は、料理、アイロンがけ、洗濯、掃除、食料雑貨の買い物、飼い犬の散歩、子供たちの世話、乳母といった典型的な家庭内の雑用をおこなう。いくつかの国では、メイドは、看護婦のかわりとして高齢者や身体の不自由な人の世話をしている。メイドは、1日に少なくとも15時間は働くことがしばしばある。

こうした、世界的に劣悪な労働条件を余儀なくされている家庭内労働者の権利の救済のために国際労働機関は2011年6月に『家事労働者のディーセント・ワークに関する条約』(家事労働者条約、第189号)を採択した。[1]

各国の家庭内労働[編集]

ヨーロッパ・北米[編集]

家事使用人の雇用は、イギリスエドワード朝ヴィクトリア朝と、アメリカの「金ぴか時代」で全盛だった。これは総力戦であった第一次世界大戦時、戦場に行った男性の代わりにそれまで使用人を務めていた女性が工場などで労働者となる経験を経たことによって、衰退してゆくことになる。

20世紀後期になって、中流階級の女性が社会進出をするようになると、家庭内の家事労働者が奪われることになり、結果として清掃婦と子守りの急激な雇用需要の増加を引き起こすことになった。ヒスパニック移民などがこの需要を満たしている。

アジア[編集]

多くの国々で、エージェントやブローカーを通して国外から労働者を輸入している。それらの国々では、低賃金かつ大変な家事労働に従事しようとする国内の働き手が少ない。主な輸入国は、中東諸国と香港シンガポールマレーシア台湾であるこれら外国人労働者はそれぞれの国ごとに何十万人単位の規模で存在している。

これらアジアの国々に労働者を提供している主な国は、フィリピン、タイインドネシアスリランカエチオピアである。台湾では、ベトナムモンゴルからの労働者が多い。

日本では1950年代中期から1960年代中期(=昭和30年代)に、非常に裕福な家庭で「お手伝いさん」が雇われていた[2]。以前は貧しい家庭が口減らしのために子供を他の裕福な家庭や店に奉公人として出していた。この点で、家庭内労働者は欧米の使用人の形態を表しており、日本などでは、使用人・奉公人の労働場所は家庭に限定されたものではなかった。現在では一部の宮家で勤務していることが確認されているのみ[3]

シンガポールでは、1980年代から外国人家庭内労働者の雇用を奨励してきた結果、2010年代には5世帯に1世帯までに雇用が拡大した。シンガポールの家庭内労働者は、安い賃金で雇用できるインドネシアフィリピン出身者が多く、約21万人に上る[4]

中東[編集]

サウジアラビア労働省の2008年末の資料によると登録されている家庭内労働者は120万人、そのうち女性48万人がメイド(アラビア語:خادمة)として登録されている。 家庭内労働者を送っている国はインドネシア、インド、フィリピン、スリランカが主である。

その他の地域[編集]

ラテンアメリカとアフリカでは、家庭内労働者は、働く場所と同じ国の出身であることが多い。給料の一部として食事と部屋をもらう、「住み込み」で働く場合が多いが、食事と部屋だけで給料が支払われないケースもある。

仕送り[編集]

貧しい国から豊かな国へ、貧しい地域から豊かな国への家事労働者の輸出は、故郷への仕送りという形で多大の金銭を貧しい国などにもたらしている。フィリピンなどではこうした仕送りが国の収入の大きな割合を占めるほどである。

ユニフォーム[編集]

家庭内労働者は多くの場合、雇い主に制服(御仕着せ)を着ることを要求される。しかし、台湾、シンガポール、香港のような、小さな中流家族が通常1人の労働者だけを雇う場合はこの限りではない。

脚注[編集]

  1. ^ 家事労働者条約(第189号)
  2. ^ 阿川弘之『犬と麻ちゃん』
  3. ^ 「高円宮家が侍女募集」昭和女子大の求人票がネットで話題に ジェイ・キャスト
  4. ^ “外国人メイド介護の限界 シンガポールの高齢化”. 産経新聞. (2014年6月7日). http://sankei.jp.msn.com/world/news/140607/asi14060707000001-n1.htm 2014年6月7日閲覧。 

関連項目[編集]