原子単位系

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原子単位系(げんしたんいけい)は、素粒子物理学原子物理学量子化学において、数式の表現を簡潔にするために採用される自然単位系[1]

長さボーア半径、a0)、質量電子静止質量、me)、作用(プランク定数\hbar)、電荷電気素量、e)、エネルギーのうち4つを基本単位として選び、その他の物理量は組立単位とする。したがって、原子単位系では時間は組立単位 \hbar/Eh で表現される[2]

原子単位系には、エネルギーの基本単位としてハートリー(hartree または Eh)を用いるハートリー原子単位系の他、リュードベリ (rydberg または Ry)を用いるリュードベリ原子単位系[3]などが存在しこちらもしばしば用いられる。

単位を表す記号として、a0・me\hbar・e・Eh の代わりに、すべて atomic unit の省略形である a.u. で表すことがある。この場合、「1 a.u.(長さ)」のように、括弧書きで物理量を明らかにする必要がある。

ハートリー原子単位系[編集]

ハートリー原子単位系では、エネルギーの基本単位としてハートリー (hartree, Eh) を用いる。1ハートリーは、ボーア半径の距離を隔てた2つの電荷素量が持つポテンシャルエネルギーで定義される[4]。すなわち、クーロンの法則より次のように表現できる。

E_\mathrm{h} = -\frac{m_ee^4}{4\epsilon_0^2h^2} = {\hbar^2 \over {m_e a^2_0}} = m_ec^2\alpha^2 = {\hbar c \alpha \over {a_0}}

リュードベリ原子単位系[編集]

リュードベリ原子単位系では、エネルギーの基本単位としてリュードベリ (rydberg, Ry) を用いる。1リュードベリは、水素原子ボーアの原子模型において、基底状態電子軌道がもつ固有エネルギーに等しい[4]。すなわち、

\mbox{Ry} = -\frac{m_ee^4}{8\epsilon_0^2h^2}

したがって、1 hatree = 2 rydberg である。

SI単位との換算表[編集]

原子単位系の主な単位[5]
物理量 基準 記号 SI単位
質量 電子静止質量 \!m_e 9.109 3826(16)×10-31 kg
長さ ボーア半径 \!a_0 5.291 772 108(18)×10-11 m
電荷 電気素量 \!e 1.602 176 53(14)×10-19 C
作用 プランク定数 \hbar = h/(2 \pi) 1.054 571 68(18)×10-34 J s
エネルギー ハートリー \!E_h 4.359 744 17(75)×10-18 J
時間 組立単位  \hbar / E_\mathrm{h} 2.418 884 326 505(16)×10-17 s

脚注[編集]

  1. ^ IUPAC Gold Book - atomic units
  2. ^ (独)産業技術総合研究所 計量標準総合センター訳・監修, "国際文書第8版 (2006) 国際単位系(SI)日本語版", BIPM原文
  3. ^ H. SHULL & G. G. HALL, "Atomic Units", Nature 184, 1559 - 1560 (1959). doi:10.1038/1841559a0
  4. ^ a b http://www.theophys.kth.se/~rar/files/lic.pdf
  5. ^ http://www.bipm.org/en/si/si_brochure/chapter4/table7.html

関連項目[編集]