中小企業診断士
中小企業診断士(ちゅうしょうきぎょうしんだんし)とは、中小企業支援法(昭和38年法律第147号)第11条第1項の規定に基づき、経済産業大臣により「中小企業の経営診断の業務に従事する者」として登録された者を指す。 経営・業務コンサルティングの専門家として数少ない国家資格である。
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[編集] 中小企業診断士の業務等
[編集] 業務概要
根拠法である中小企業支援法、及び中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則には所謂、独占名称(資格者以外が名称を使用してはならないという規定)とする規定はなく独占名称資格ではない、また、法律で規定された独占業務はない。しかし、法律には明記されていないが、実際には中小企業基盤整備機構、商工会議所、都道府県等の中小企業に対する専門家派遣や経営相談室などの経営支援業務や産業廃棄物処理業診断(産業廃棄物処理業者の許可申請に必要となる財務診断)などが公的に保証された業務となっている。 また、国、地方自治体の中小企業支援機関のプロジェクトマネージャーなど公職につく場合もある。この場合、3年から5年の任期で、月10日前後から週5日丸々勤務など形態は様々となっている。 資格の位置づけとしては、国や地方自治体、商工会議所の実施する中小企業への経営支援を担う専門家としての側面と民間のコンサルタントとしての2つの側面を持つが、公的な仕事を中心とする診断士と民間業務を中心とする診断士に2極化する傾向があり、公的業務の割合が高い診断士4割程度、民間業務の割合が高い診断士が5割程度、両者半々等が1割程度となっている。[1]
なお、社団法人中小企業診断協会が平成17年9月に行った調査によると、中小企業診断士の業務内容の日数は、「経営指導」が27.5%、「講演・教育訓練業務」が21.94%、「診断業務」が19.69%、「調査・研究業務」が12.84%、「執筆業務」が11.56%となっている。
因みにコンサルティング業務そのものは中小企業診断士の資格がなくとも行うことができる。ただし、国家資格の取得に伴い、国や都道府県等が設置する中小企業支援機関に専門家として登録できることにより前述の公的な経営支援業務に加わることができること、経営コンサルタントとしての信用力が向上すること、中小企業診断士のネットワークを活用できることなど、有資格者ならではのメリットは多い。
[編集] 独立開業者の割合
中小企業診断士として独立している者の割合は27.6%(平成17年12月時点)、有資格者のうちの7割以上は独立開業を行わず、企業内にとどまる「企業内診断士」となっており、弁護士、税理士、不動産鑑定士などの他の士業と比較して独立開業する者の割合が低いのが現状である。また、定年退職まで企業内で勤務し、退職後に独立する「年金診断士」と呼ばれる者もいる。
これらの理由としては、中小企業診断士の試験内容が経営やマーケティング全般におよび、ビジネスパーソンとしての資質向上に直結するため、自己啓発を目的とした資格取得者が多いこと、また業務の性質上、独立に際しては、相応の実践的スキルが必要になることなどが考えられる。前述した社団法人中小企業診断協会の調査でも、中小企業診断士の資格を取得した動機のトップは「経営全般の勉強等自己啓発、スキルアップを図ることができるから」となっており、また、「企業内診断士」が独立開業を行わない(独立開業を予定していない)理由の上位には経済的不安とともに、現在の能力不足が上げられている。 また、経済不安や能力不足に続く理由として現在の職場に満足していることや、現在に比べて年収が低下することがあげられている。これは、中小企業診断士有資格者は大企業勤務者も多く、独立した場合に年収が下がるケースが多いことも理由の一つである。
[編集] 中小企業診断士の収入
前述の中小企業診断協会が行った調査によると、コンサルタント業務の稼働日数が100日以上の独立診断士の年収のボリュームゾーンは「501~800万円以内」(全体の19.6%)となっている。なお、「3,001万円以上」をのぞいた平均は739.3万円である。(コンサルティング関連業務のみの年収で他士業兼業者の書類作成・提出代行業務等は含まれない。)なお、前述の定年後に独立する「年金診断士」と呼ばれる人たちの収入は年金をもらいながら片手間に業務を行うケースもあり、そのため収入も平均以下の場合が多く、この層が診断士の平均年収を下げているものと推察される。
[編集] 沿革
- 昭和27年(1952年) 通商産業省により中小企業診断員登録制度が創設される。
- 昭和38年(1963年) 中小企業指導法(現行の中小企業支援法)が制定され、国や都道府県が行う中小企業指導事業に協力する者として中小企業診断員の位置付けを法定化(第6条)。ただし、法律上はあくまでも通商産業大臣が登録を行うことのみを定めており、具体的な資格は「中小企業指導事業の実施に関する基準を定める省令(指導法基準省令)」(昭和38年通商産業省令第123号)第4条に、試験についてはさらに通商産業省告示で定める登録規則に根拠を置いていた。
- 昭和44年(1969年) 中小企業診断員を中小企業診断士に改称。
- 昭和61年(1986年) 従来、商業と工鉱業の二つであった登録部門に「情報」を追加。
- 平成12年(2000年) 中小企業指導法の大幅改正(このとき、表題を「中小企業支援法」に変更)により、以下のとおり大きな制度改革を実施。
- 中小企業診断士の位置付けを「国や都道府県が行う中小企業指導事業に協力する者」から「中小企業の経営診断の業務に従事する者」に変更
- 登録の根拠条文の独立化(第11条)
- 試験の根拠規定の創設(第12条)
- あわせて、指導法基準省令の大幅改正(現行表題は、「中小企業支援事業の実施に関する基準を定める省令(支援法基準省令)」)と、新たな試験について「中小企業診断士の登録等及び試験に関する規則(登録等規則)」(平成12年通商産業省令第192号)を制定。登録部門の区分はなくなり、一本化された。
- 第1次試験を選択式(マークシート)とし、第2次試験を筆記試験(事例問題)及び口述試験として、第3次試験(実習)を試験合格後の実務補習に移行
- 平成13年(2001年) 制度改正後初の中小企業診断士試験を実施。
- 平成17年(2005年) 新試験制度5年経過にあわせて見直しを実施するため支援法基準省令及び登録等規則の改正が行われた。
- 第1次試験に科目合格制(3年間有効)、一部科目の第2次試験への移行及び合格基準の弾力化措置を導入
- 従来中小企業大学校のみに設置されていた中小企業診断士養成課程を民間の登録養成機関にも開放するとともに、養成課程受講資格に第1次試験合格を必須化(いわゆる「第1次試験の共通一次化」)
- 更新要件のうち実務の従事要件の強化及び登録休止・再登録制度を導入
- 平成18年(2006年) 見直し後初の中小企業診断士試験を実施。
[編集] 登録要件
中小企業診断士として登録を受けるには、以下のいずれかの登録要件を満たす必要がある。
- 中小企業診断士第2次試験に合格した後3年以内に、実務従事要件を満たすか、登録実務補習機関における実務補習(15日間)を受講し修了すること。
- 中小企業診断士第1次試験に合格した年度及びその翌年度に、独立行政法人中小企業基盤整備機構中小企業大学校又は登録養成機関が開講する中小企業診断士養成課程の受講を開始し、修了すること。
- 中小企業大学校における平成22年度の養成課程の開講は、東京校(東京都東大和市)に限られる。平成19年度に関西校(兵庫県福崎町)においても開講する予定であったが、未だ調整中(延期見込)。
- 平成22年3月現在の登録養成機関は、以下の通り。
- 法政大学専門職大学院イノベーション・マネジメント研究科(東京都千代田区)
- 中京大学大学院ビジネス・イノベーション研究科(愛知県名古屋市)
- 財団法人日本生産性本部(東京都渋谷区)
- 株式会社日本マンパワー(東京都千代田区)
- 名古屋商科大学大学院マネジメント研究科(愛知県名古屋市・東京都千代田区・大阪府大阪市)
- 社団法人中部産業連盟(愛知県名古屋市)
- 東海学園大学大学院経営学研究科(愛知県みよし市・名古屋市)
- 東洋大学大学院経営学研究科(東京都文京区。平成22年4月から開講)
- 千葉商科大学大学院商学・経済学・政策情報学研究科合同コース(千葉県市川市。平成22年3月から開講)
- 兵庫県立大学専門職大学院経営研究科(神戸市西区。平成22年3月から開講)
[編集] 更新要件
登録の有効期間は5年間であり、以下の更新要件をいずれも満たした上で登録の更新が必要となる。
- 新しい知識の補充に関する要件(5年間で5回。理論政策更新研修、論文審査等による。)
- 実務の従事要件(5年間で30日以上。)
なお、更新要件を満たすことができない場合には、登録の休止を行い、15年以内に一定の要件を満たすことにより再登録が可能である。 (休止期間中であっても業務再開申請可能期間中(15年間)であれば、中小企業診断士としての経営診断の業務を休止している旨を伝えることを条件に、中小企業診断士を名乗ることができる。)
[編集] 中小企業診断士試験
中小企業診断士試験は、中小企業支援法第12条の規定に基づき国(経済産業省)が実施する国家試験であり、試験事務は指定試験機関である社団法人中小企業診断協会が実施している。
試験は第1次試験と第2次試験に分かれ、それぞれ全国の7つの地区(札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡)の会場で実施される。
[編集] 第1次試験
中小企業診断士となるのに必要な学識を判定するもので、多肢選択式で実施されている。平成18年度からは以下の科目編成となり、科目合格制が導入されている。科目合格の有効期間は3年間である。
(1日目)
(生産管理・生産技術・店舗運営・ロジスティックス含む)
(2日目)
- 経営法務:60分
- 経営情報システム:60分
- 中小企業経営・中小企業政策:90分
なお、一部の科目については、他試験合格者に対する免除措置がある。例えば、情報処理技術者試験の一部区分の合格者は、申請により経営情報システムの免除が可能である。
<参考文献>洞口治夫・行本勢基『入門・経営学[1]』(新公認会計士試験・中小企業診断士試験対応)同友館、2008年.
[編集] 第1次試験に関する正解・配点の公表等
中小企業診断士第1次試験では、平成17年度から正解肢と配点が公表されるようになった。正解肢と配点の発表は、社団法人中小企業診断協会のサイト上で試験の翌日もしくは翌々日に行われる(試験実施が土日で、月曜日の午後にアップされる)。
正解肢の公表による試験制度の改善効果としては次のような例がある。平成17年度試験では、「企業経営理論」で問題が成り立っていない、「没問」の存在が明らかとなった。この訂正は、出題の前提となっている社会保険制度の仕組みの認識自体が根本的に誤っており、正解肢発表の時点で同時に没問発表が行われた。 平成18年度試験では「運営管理」で正解肢が2つ存在するという訂正を行った。これは、受験機関であるLEC東京リーガルマインドが抗議を行ったことによって、後日訂正されたものである。
[編集] 第2次試験
第1次試験合格者を対象に、中小企業診断士となるのに必要な応用能力を判定するものであり、筆記試験(事例に関する記述試験)及び口述試験(筆記試験合格者に対する面接試験)の方法で実施される。 筆記試験の内容は「紙上診断」であり、第1次試験で試された基礎知識を実務で生かせるか否かが問われる。 中小企業診断士試験は難易度が高い試験である所以は、この2次試験があるからとも言われている。
筆記試験の受験資格を有するのは前年度と当年度の第1次試験合格者である。すなわち、第1次試験合格から2年以内に第2次試験を合格しなければ、再び第1次試験の受験が必要になる。
平成12年度以前の制度で第1次試験に合格している者(平成13年度以降に第2次試験を受験した者を除く。また、平成13年度以降の第1次試験に合格し、第2次試験を受験した場合も除く。)については、1回に限り第2次試験の受験または中小企業大学校の養成課程もしくは国に登録された登録養成課程の受講が可能。
なお、第2次試験(筆記試験)は4つの事例問題で構成され、その表題および対象は以下のとおりである。
- 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 I (組織(人事を含む)):80分
- 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 II (マーケティング・流通):80分
- 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 III (生産・技術):80分
- 中小企業の診断及び助言に関する実務の事例 IV (財務・会計):80分
※1事例ごとに600字~800字の論述式で、計4事例出題される。事例IV(財務・会計)のみ計算問題+論述式。
[編集] 試験の難易度
[編集] 第1次試験の合格率
| 年度 | 申込者数(人) | 受験者数(人) | 試験合格者(人) | 試験合格率(%) |
|---|---|---|---|---|
| 平成19年度 | 16,845 | 12,776 | 2,418 | 18.9 |
| 平成20年度 | 17,934 | 13,564 | 3,173 | 23.4 |
| 平成21年度 | 20,054 | 15,056 | 3,629 | 24.1 |
| 平成22年度 | 21,309 | 15,922 | 2,533 | 15.9 |
| 平成23年度 | 21,145 | 15,803 | 2,590 | 16.4 |
| 注 試験合格者に科目合格者は含まれない。 | ||||
平成22年度の申込者数21,309人は過去最高である。
[編集] 第2次試験の合格率
| 年度 | 申込者数(人) | 受験者数(人) | 筆記合格者(人) | 試験合格者(人) | 試験合格率(%) |
|---|---|---|---|---|---|
| 平成19年度 | 4,060 | 3,947 | 800 | 799 | 20.2 |
| 平成20年度 | 4,543 | 4,412 | 877 | 875 | 19.8 |
| 平成21年度 | 5,489 | 5,331 | 955 | 951 | 17.8 |
| 平成22年度 | 4,896 | 4,736 | 927 | 925 | 19.5 |
平成22年度の筆記試験合格率は19.6%であった。
[編集] 最終合格率
平均すると、第1次試験が16%から20%、第2次試験が10%から20%の合格率となっており、第1次試験および第2次試験をストレートで突破する者の割合(最終合格率)は、3%から4%である。
[編集] その他
警視庁特別捜査官の選考基準には、3級職(巡査部長)のコンピュータ犯罪捜査官の資格等として「ソフトウェア開発技術者又はこれに相当する資格 」とある。 「これに相当する資格 」とは、各年度の採用選考にある受考資格を見ると、情報セキュリティスペシャリストや応用情報技術者とならび中小企業診断士(情報部門)がある。 明示されていなくとも受考資格の末尾に「などを言う」が表記されていれば、選考の対象ではないという意味ではない。
[編集] 外部リンク
[編集] 脚注
- ^ 平成23年1月の社団法人中小企業診断協会 アンケート調査結果 データでみる中小企業診断士
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