レヴィアタン

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ギュスターヴ・ドレ製作の彫刻画

レヴィアタンヘブライ語: לִוְיָתָןliwjatan, ラテン語: Leviathan, 英語発音: [liˈvaiəθən] リヴァイアサン, 日本語慣用表記: レビヤタン[1])は、旧約聖書に登場する怪物怪獣)。悪魔と見られることもある。

「ねじれた」「を巻いた」という意味のヘブライ語語源。原義から転じて、単に大きな怪物や生き物を意味する言葉でもある。また、未加工の羊毛を洗う装置のことも意味する[1]

旧約聖書[編集]

旧約聖書(『ヨブ記』『詩編』『イザヤ書』など)で、海中に住む巨大な怪物として記述されている。

天地創造の5日目に造りだした存在で、同じく神に造られたベヒモスと二頭一対(ジズも含めれば三頭一対)を成すとされている(レヴィアタンが海、ベヒモスが、ジズがを意味する)。ベヒモスが最高の生物と記されるに対し、レヴィアタンは最強の生物と記され、その硬い鱗と巨大さから、いかなる武器も通用しないとされる(詳しくは後述)。世界の終末には、ベヒモス(およびジズ)と共に、食べ物として供されることになっている。

『ヨブ記』によれば、レヴィアタンはその巨大さゆえ海を泳ぐときには波が逆巻くほどで、口から炎を、鼻から煙を吹く。口には鋭く巨大な歯が生えている。体には全体に強固な鎧をおもわせる鱗があり、この鱗であらゆる武器を跳ね返してしまう。その性質は凶暴そのもので冷酷無情。この海の怪物はぎらぎらと光る目で獲物を探しながら海面を泳いでいるらしい。本来はつがいで存在していたが、あまりにも危険なために繁殖せぬよう、雄は殺されてしまい雌だけしかいない。その代わり、残った雌は不死身にされている。また、ベヒモスを雄とし、対に当たるレヴィアタンを雌とする考えもある。

図像[編集]

その姿は、伝統的には巨大な魚(クジラ)やワニなどの水陸両生の爬虫類で描かれるが、後世には海蛇や(それに近い形での)などといった形でも描かれている。

他の怪物との同一視[編集]

イザヤ書』に登場する海の怪物ラハブと同一視されることもあり、この場合、カナン伝説と同じ起源を持つ(七つの頭をもつ海の怪物リタン)。同時にバビロニア神話に登場するティアマトとの類似性が挙げられる。ここから後世、後述のレヴィアタンを悪魔とする見識も登場した。

また、ユダヤ教の伝説では、アダムを女の姿で、イブを男の姿で誘惑した両性具有のドラゴンだと考えられていた。

悪魔としてのレヴィアタン[編集]

中世以降はサタンなどと同じ悪魔と見られるのが一般化した。

基本的には、本来のものと同じく、海または水を司る者で外観も怪物とする。その一方で、一般的に想起されるような悪魔の外観を持つ場合もある。元のレヴィアタンが何物の攻撃も通さない様に、悪魔としてのレヴィアタンは、どんな悪魔祓いも通用しないとされている。レヴィアタンは大嘘つきで、人にとりつくこともでき、それを追い払うのは非常に難しいとされた。 特に女性にとりつこうとする。

悪魔学では、水から生まれた悪魔とされる。コラン・ド・プランシーの『地獄の辞典』に拠れば地獄の海軍大提督を務めており、また、悪魔の9階級においてはサタン、ベルゼブブに次ぐ第3位の地位を持つ強大な魔神とされる。

キリスト教の七つの大罪では、嫉妬を司る悪魔とされている。また、嫉妬は動物で表された場合はとなり、レヴィアタンが海蛇として描かれる場合の外観と一致する。

大航海時代[編集]

大航海時代ヨーロッパの船乗りにとっては、レヴィアタンは船の周りをぐるぐる泳いで渦巻きをつくり、船を一飲みにしてしまうクジラのような巨大な海の怪物だった。桶を投じることでレヴィアタンを避けることが出来ると信じられた。

象徴・命名[編集]

近代以降は、もっぱら海または水中の怪物や、それを想起させるような物(例えば戦艦潜水艦)の名称や代名詞的な存在として、小説やゲームなどの創作物に登場するようになる。現実の例としても、イギリス海軍の艦名に用いられている。ただし、同じ海の怪物であるクラーケンが単に怪物や敵に留まるのに対して、レヴィアタン(リヴァイアサン)の場合には主人公側に配置されたり、神聖や正義が伴う特徴があることが挙げられる。

特殊な例としては、トマス・ホッブズの『リヴァイアサン』がある。ホッブズはこの著作の中で、社会契約によって形成された国家コモンウェルス)のことを「大怪物」としてのレヴィアタン(リヴァイアサン)になぞらえており、同時に、それは怪物というよりも、「人間に平和と防衛を保障する「地上の神」と言うべきだろう」とも述べている[2]

2010年、南米ペルーで見つかった1300万年前に生息していたとみられる新種のマッコウクジラの仲間には、レヴィアタンにちなんで「リヴィアタン・メルビレイLivyatan melvillei)」という学名が付けられた(メルビレイの部分は『白鯨』の作者ハーマン・メルヴィルから採られている)。

脚注・出典[編集]

関連項目[編集]