ピアノソナタ第31番 (ベートーヴェン)

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ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンピアノソナタ第31番変イ長調作品110は彼の最後期のピアノソナタのひとつで、第30番よりもさらに叙情性を色濃く持つ作品である。とくに、歌曲のような哀切な旋律の『嘆きの歌』と呼ばれる部分と歓喜に満ちたフーガが入れ替わりながら繰り返される斬新な構成の最終楽章がよく知られている。

  • 作曲時期:1821年完成、翌年出版。
  • だれにも献呈されていない。

曲の構成[編集]

第1楽章 Moderato cantabile molto espressivo
変イ長調、4分の3拍子、ソナタ形式。con amabilita(愛をもって)と付記されている。温かく優しい第1主題、躍動的な第2主題を持つ。モデラートの主部を持つこのような甘い第1楽章は、ベートーヴェンのピアノソナタ中唯一のものである。
第2楽章 Allegro molto
ヘ短調、4分の2拍子、スケルツォ三部形式で、軽やかな中にも全体的に不気味な雰囲気を漂わせる。コーダを経て切れ目なく終楽章へ続く。
第3楽章 Adagio, ma non troppo - Fuga. Allegro, ma non troppo
変ロ短調変イ短調、変イ長調、8分の6拍子。複合二部形式と見られる。
序奏の後に『嘆きの歌』と呼ばれる部分が入り、次に第1楽章第1主題による[1]3声のフーガが展開される。盛り上がりが高まったところで再び『嘆きの歌』がト短調による途切れ途切れの旋律で歌われ、フーガ主題の反行による[1]ト長調のフーガから主調に戻り歓喜を大きく表しながら完結する。
作曲者はチェロソナタ第5番にみらるように後期の作品ではフーガの応用に大きく傾いている。この曲の終楽章は、いわゆる「後期三大ソナタ」と呼ばれる第30番、第31番、第32番の中では最も典型的にフーガを用いたものであるが、ハンマークラヴィーアの終楽章のような大規模なものではなく、短く軽やかに扱われている。

脚注[編集]

  1. ^ a b 石桁真礼生『新版 楽式論』、音楽之友社1966年、P.295-296

外部リンク[編集]