ピアノソナタ第27番 (ベートーヴェン)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの作品、ピアノソナタホ短調Op.90はベートーヴェンの作曲した重要なピアノソナタの1つ。1814年に作られ、モーリッツ・リヒノフスキーに献呈された。この時期、ベートーヴェンは政治の問題に悩んでおり、長期的にスランプに陥っていた。この作品はそのような時代に書かれた曲である。作曲者はこの頃から、政治的な背景もあって、発想の指示にドイツ語を使用するようになり、愛国心の強さを感じることができる。作風としては、作曲者のロマン期・カンタービレ期に属し、中期の重要な技法であった主題労作を離れ、2楽章と小規模ながら、その分深い感情が込められ、1本の旋律が歌われたりする。また、フランツ・シューベルトにも影響を与えた。

 この曲は献呈されたリヒノフスキーの恋愛譚(細君を亡くした後、リヒノフスキーは歌手シュトゥンマーに恋するが、兄の身分差別により結婚は許されなかった。兄の死後ようやく二人は結ばれた)を音化したものだと伝えられている。シンドラーによれば、ベートーヴェンは第一楽章に「頭と心臓との闘い」、第二楽章に「恋人との対話」と書くべきものだと語ったという。[1]


曲の構成[編集]

第1楽章 速く、そしていつも感情と表情をもって Mit Lebhaftigkeit und durchaus mit Empfindung und Ausdruck
ホ短調ソナタ形式。無駄を省いた構成。主和音の強い打撃に始まる。第2主題はロ短調となり、和音連打やアルベルティ・バスの上に情熱的に歌われる。反復は省略され、展開部は提示部の様々な要素が展開される。その終わりは動機が細分化され、切迫する。再現部は定型どおりであるが、コーダは第1主題を扱い、それによって静かに閉じられる。
第2楽章 速すぎないように、そして十分に歌うように Nicht zu geschwind und sehr singbar vorzutragen
ホ長調ロンド形式。それぞれの部分はきわめて旋律的であり、特に中心主題はフランツ・シューベルトのピアノソナタホ短調D.566の第2楽章に酷似しており、おそらくシューベルトはこの曲から影響を受けたものと思われる。一貫して幸福な気分のまま、曲は閉じられる。


脚注[編集]

  1. ^ 山根銀二著『孤独の対話-ベートーヴェンの会話帳-』