ピアノソナタ第1番 (ベートーヴェン)

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ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンピアノソナタ第1番ヘ短調Op.2-1は、1795年に作曲された。ピアノ音楽の新約聖書と呼ばれる[1]、作曲者の32曲からなる番号付きのピアノソナタの中で、記念すべき最初のものである。

ピアノソナタ自体は、13歳のときに書かれたとされる3曲の選帝侯ソナタをはじめ、ボン時代に習作が数曲残されているが、この習熟した作品には遠く及ばない。作品は他の2曲とOp.2としてまとめられ、師事していたフランツ・ヨーゼフ・ハイドンに献呈された。

概要・曲の構成[編集]

自作のピアノソナタを師に献呈し、世に出すという作曲者の若々しい情熱に溢れている。第1作が短調である点、スケルツォ的な第3楽章など、若い意欲と独創性が伺える。
ピアノソナタは本来家庭で演ずべき小規模な作品が多く、楽器の機能も優れたものではない時代であり3楽章の作品が主であった。師も弟子の4楽章ソナタを十分理解していない中、ピアノの能力をオーケストラに並ぶものと捉えていた作曲者の強い意志と創作志向がすでに現れている。
ヘ短調は当時ではバッハに見られるくらいで鍵盤楽器には適用されない調性であった。
全楽章いずれもオーケストレーションが容易で、交響曲を含めたベートーヴェン全作品を理解する上での原点である。

第1楽章 Allegro ヘ短調 2/2拍子
ソナタ形式アルペッジョが駆け上がる第1主題はモーツァルト交響曲第25番の第1楽章第40番の第4楽章、またピアノソナタK.457の第1楽章の主題にも酷似しており、それに影響を受けたのではないかともみられる。第2主題は経過的であるが、その旋律動向が下行的でレガートであることで、第1主題と対比されている。展開部は第1主題に始まり、そのあと第2主題によるものが続き、終わりに第1主題の3連符の動機が使用されている。
第2楽章 Adagio ヘ長調 3/4拍子
展開部を欠くソナタ形式。牧歌的な曲である。田園を思わせる第1主題に続き、ニ短調の推移部を経て、大きな流れを持った第2主題となる。再現部において、各主題は華麗に変奏される。
第3楽章 Menuetto,Allegro ヘ短調 3/4拍子
メヌエットとあるが、音楽は明らかにスケルツォである。メヌエットとしたのは、伝統を意識していた為と思われる。弾むような主部に対し、トリオはヘ長調となり、8分音符のレガートの進行を主にし、右と左の掛け合いが巧妙に使われている。
第4楽章 Prestissimo ヘ短調 2/2拍子
複合三部形式。Prestissimoという発想記号に多少背伸びした若き作曲者の勢いが感じられる。主題は3連符の伴奏の上に強烈に和音が叩きつけられる。それは強弱の対比、その後に続く楽想との対比によって印象付けられ、音楽は嵐のように疾走する。展開部はほとんど新しい主題によって歌われる。変イ長調の中間展開部は雄大で崇高な歌謡風の主題。ここでも左手部は3連符を奏で、統一した主題が息づいている。再現部は形式どおりで最後まで3連符の左手主題が追跡している。
  1. ^ ハンス・フォン・ビューローによる。