ピアノソナタ第26番 (ベートーヴェン)

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ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンピアノソナタ第26番変ホ長調作品81a《告別》は、彼のパトロンでもあり弟子でもあり友人でもあったルドルフ大公が、ナポレオン軍の侵攻を避けてウィーンを逃れ、翌年戻ってきたという出来事を織り込んで作曲したピアノソナタである。ベートーヴェンが自分自身で標題を命名したピアノソナタは、この《告別》と《悲愴》しかない。彼の標題つきのピアノソナタの中でも、俗にいわれる三大ピアノソナタに次いで人気が高い。

1810年に完成、翌1811年に出版された。

曲の構成[編集]

第1楽章 "Das Lebewohl" Adagio - Allegro
変ホ長調。ソナタ形式。《告別》の副題がつけられている。序奏の最初の3つの音符には"Lebewohl"(さようなら)と歌詞がつけてある。
第2楽章 "Die Abwesenheit" Andante espressivo
ハ短調。ハ短調とト長調、2つの主題が繰り返される単純な二部形式の、序奏的性格を持つ楽章。《不在》の副題がつけられている。ただちに第3楽章へと続く。
第3楽章 "Das Wiedersehen" Vivacissimamente
変ホ長調。豪華絢爛な雰囲気でソナタ形式。《再会》の副題がつけられている。第2楽章から続き、華麗なアルペジオによる序奏を置いて、軽やかな第1主題が現れ、大規模に発展して再会の喜びを表す。演奏技巧はベートーヴェンの協奏曲を思わせるような斬新なものであり、華麗なテクニックがちりばめられているが、演奏技巧的にはテンポも非常に速いので難易度は楽章中、最も高め。最後にゆるやかなテンポの部分が回想され、しゃれているが、最後の最後の分散オクターブの技巧的なパッセージのところで再び明るく喜ばしい歓声を表す。

解説[編集]

ベートーヴェンの中期以降の作品にしては、非常に素直な急―緩―急の形式のソナタであり、別離、不在、再会というストーリーがわかりやすく表現されている。親交の深かったルドルフ大公のために作曲されたこのピアノソナタの標題には、ベートーヴェン自身もこだわりがあったらしく、この曲を出版したブライトコプフ・ウント・ヘルテル社がフランス語で“Les Adieux ”と標題をつけたことに対して、「Lebewohlはles adieuxとは全く違うものである、前者は心から愛する人にだけ使う言葉であり、後者は集まった聴衆全体に対して述べる言葉だからである」と手紙で抗議している。