アントン・シンドラー

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アントン・シントラー

アントン・フェーリ(ッ)クス・シンドラー(シントラー)Anton Felix Schindler, 1795年6月13日 モラヴィア・メードル Meed(e)l(オロモウツ郡メドロフ Medlov) - 1864年1月16日 ボッケンハイム Bockenheim)は、モラヴィア出身のドイツ音楽家であり、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン伝記を記したことで知られている。

法律家を目指してウィーンにやってきたシントラーは1823年頃からベートーヴェンの秘書を務めるようになった。当初はあまり信用されていなかったようであるが(弟のヨハンや甥のカールに宛てた手紙には「あの軽蔑すべき男」、「彼の悪い、狡智に長けた性格」と記している)、病苦に苛まれ、身寄りのいなかったベートーヴェンの身の回りの世話を一手に引き受けていた。

彼の著作『ベートーヴェンの生涯』は1840年に出版、さらに1860年に増補され、後のベートーヴェン解釈において多大な影響を及ぼした。しかし、後の研究によって、多くの記録がねつ造されたものであり、また生前のベートーヴェンとの関係も誇張されていることが明らかになった。また、聴覚を晩年に完全に失ったベートーベンはそれ以後は筆談を使っていたのだが、この十年ほどの期間に及ぶベートーヴェンの筆談を記したノート(数百冊ともいわれる)という貴重な資料の半数以上を、自らのねつ造した伝記に折り合いをつけるために廃棄処分にし、自分に都合よく改ざんしたことが明らかになった。現在ではベートーベンの研究における最大の汚点としてその悪名をとどろかせている。

たとえば、現代のベートーヴェン研究家、バリー・クーパーは著書『ベートーヴェン概論』において、「(シントラーの)不正確で虚偽の内容を記す性癖は甚だしく、他に史料が見つからなければ、彼の記したものは一切信頼できない。」とまで述べている。またメイナード・ソロモンは自身の著作において、シントラーの問題点が明らかになる以前では多くの学者はシントラーの記述を根拠にベートーヴェンの解釈を行っていたことを指摘した上で、「(シントラーの伝記から)事実とフィクションを分別するのは容易ではないだろう」と述べており、ソロモンによる伝記の1998年版では、シントラーの著述のみを根拠とした解釈を排除することが、初版よりもさらに徹底されている。

参考文献[編集]

  • Barry Cooper, gen. ed., The Beethoven Compendium, Ann Arbor, MI: Borders Press, 1991, ISBN 0-681-07558-9.
  • Maynard Solomon, Beethoven, 2nd rev. ed., NY: Schirmer, 1998, ISBN 0-8256-7268-6.
  • 青木やよひ 『ベートーヴェンの生涯』 平凡社新書 2009年