ネオニコチノイド

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

ネオニコチノイド: Neonicotinoid)は、クロロニコチニル系殺虫剤の総称。ニコチン様物質を意味し、イミドクロプリドアセタミプリドジノテフランなどが該当する。急性毒性は低いとされているが、昆虫に選択的に毒性を発揮し、など哺乳類には低濃度で単独使用した場合には比較的毒性が低いとされているが、有機リン系農薬と併用した場合には頭痛や湿疹、ADHD(注意欠陥多動性症候群)に似た症状などが発生する場合がある[1]。一般家庭のガーデニング用から農業用、シロアリ駆除、ペットシラミノミ取り、ゴキブリ駆除、スプレー殺虫剤、新築住宅の化学建材など広範囲に使用されている。現在、農薬として世界100カ国以上で販売されている。

概要[編集]

天然物であるニコチンニコチノイドは古くから殺虫剤として使われているが、人畜に対する毒性が高い。そこでこれらを元に毒性を低減すべく開発された。構造の中にシアノイミン(=N-CN)、ニトロイミン(-C=N-NO2)、クロロピリジル基、クロロチアゾリル基フリル基を持つのが特徴。クロロ(塩素)を持つ構造が代表的なので(クロロを持たないものも含めて)クロロニコチニル系とも呼ばれる。水溶性、無味・無臭である。

ネオニコチノイドはシナプス部分の後膜に存在する神経伝達物質アセチルコリン受容体「ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)」に結合し、神経を興奮させ続けることで昆虫を死に至らしめる。

また、アセチルコリンは、昆虫のみならず、ヒトでも神経伝達物質として自律神経系、神経筋接合部、中枢神経系において作用していることから、ネオニコチノイド系農薬のヒトのへの影響、とりわけ胎児小児など脆弱な発達中の脳への影響を懸念する意見もある[2]

ミツバチ大量死・失踪との関係[編集]

1990年代初めから、世界各地でミツバチの大量死・大量失踪が報告され、すでに2007年春までに北半球から4分の1のハチが消えたとされている[3]。ネオニコチノイドは「蜂群崩壊症候群」(Colony Collapse Disorder,CCD)の主な原因といわれ、フランスでは2006年最高裁判所判決により一部の種類が使用禁止となっている。

ただし、ミツバチに対する毒性は種類により大きく異なる[4][5]ので、ネオニコチノイド全てが関係あるとは言えない。また、ミツバチの大量失踪は農薬によるものではないとの説もある。

各国の対応[編集]

ミツバチ大量死は、2010年現在、カナダアメリカ中国台湾インドウルグアイブラジルオーストラリア、そして日本など、全世界的な広がりをみせている[6]

EU諸国では、ミツバチ大量死事件を受けて、その主要原因物質と考えられるネオニコチノイド系農薬を使用禁止にするなどの対策が講じられている。迅速な対応を行ったのはフランス。EU諸国では、ミツバチの被害拡大を防止するために、原因究明に精力的に取り組む一方、予防原則に基づいて、ミツバチ大量死の主要原因と疑われるネオニコチノイド系農薬について迅速な対応が講じられている[2][7][6]。ネオニコチノイド系農薬3種(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)は2013年12月より2年間暫定的に、EU全域で使用が原則禁止となる[8]

  • フランス

1994年にイミダクロプリドによる種子処理(種子のコーティング)が導入された後、ミツバチ大量死事件が発生していた。そこで、1999年1月、予防措置として、イミダクロプリドによるヒマワリ種子処理を全国的に一時停止し、原因究明調査に着手。2002年、ミツバチ全滅事件発生。2003年、農業省の委託を受けた毒性調査委員会はイミダクロプリドの種子処理によるミツバチへの危険性を警告する報告書をまとめる。これを受けて、2004年に農業省は、イミダクロプリドを活性成分とするネオニコチノイド系殺虫剤ゴーシュの許可を取り消し、イミダクロプリドによるトウモロコシの種子処理も禁止。そして、2006年4月、最高裁の判決を受け、ネオニコチノイド系農薬ゴーシュ(イミダクロプリド)を正式に使用禁止。

  • オランダ

2000年、イミダクロプリドを開放系栽培での使用を禁止。

  • デンマーク

2000年、イミダクロプリドの販売禁止。

  • ドイツ   

2006年にネオニコチノイド系農薬のクロチアニジンが広く市場に出回るようになると、ハチの大量死・大量失踪が初めて報告された。翌2007年から2008年にかけて被害がさらに深刻化、2008年、ドイツ連邦消費者保護・安全局(BVL)は、イミダクロプリドとクロチアニジンの認可を取り消し、ネオニコチノイド系農薬7種類を販売禁止。

  • イタリア

2008年、農水省がイミダクロプリドやクロチアニジンによる種子処理を禁止。   

  • アメリカ

2006年、全米の4分の1以上のハチが忽然と消える[9]農務省の見解では、さまざまなストレスと病原体が組み合わさって蜂群崩壊症候群が起きているとされ、ネオニコチノイド系の農薬については、特に規制を行っていない[10]

  • 日本

主に北海道を中心とする北日本でミツバチ大量死が多発しており、水田でカメムシ対策に使われているネオニコチノイド系殺虫剤が原因との結論を畜産草地研究所が出している[11]が、ネオニコチノイド系の農薬については、特に規制を行っていない。ただし、一部自治体では、ネオニコチノイド系農薬の使用自粛がされている[10]。また、日本では、EUでミツバチに影響があると評価された「ネオニコチノイド系農薬を種子表面に付着させる」という害虫対策は一般的ではない[12]

種類[編集]

参考文献[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ ネオニコチノイド系農薬の空中散布で健康被害
  2. ^ a b 『ネオニコチノイド系農薬の使用中止等を求める緊急提言』(2010年)
  3. ^ ローワン・ジェイコブスン 『なぜハチは大量死したのか』 文芸春秋 2009年 ISBN 9784163710303
  4. ^ 殺虫剤の選択性-ミツバチに対する選択性の不思議-(アグロサイエンス通信)[1]
  5. ^ Mechanism for the differential toxicity of neonicotinoid insecticides in the honey bee[2]
  6. ^ a b 水野玲子 『世界に広がるミツバチ大量死 – 欧米諸国の対応』 ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議 ニュース・レター Vol.62 (2010)
  7. ^ 水野玲子 『ミツバチが生態系異変を警告!ネオニコチノイド系農薬の使用、販売中止を求めよう』 ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議 ニュース・レター Vol.57 (2009)
  8. ^ 時事通信 2013年5月25日
  9. ^ 『米でミツバチが謎の激減 – 養蜂家に打撃。作物受粉にも影響』 2007年4月11日、AFP/時事(ワシントン10日)
  10. ^ a b ミツバチとネオニコチノイド系農薬、「予防原則」で思考停止にならないために…”. 一般社団法人「Food Communication Compass」. 2014年6月7日閲覧。
  11. ^ ミツバチ大量死、原因は害虫用殺虫剤 分析で成分検出 朝日新聞2014年7月19日
  12. ^ 農薬による蜜蜂の危害を防止するための我が国の取組”. 農林水産省. 2014年6月7日閲覧。

外部リンク[編集]