アジーリア・バンクス

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アジーリア・バンクス
Azealia Banks
NMEアワーズでパフォーマンスするバンクス(2012年)
基本情報
出生名 アゼリア・アマンダ・バンクス
別名 ミス・バンクス
生誕 (1991-05-31) 1991年5月31日(32歳)
出身地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国·ニューヨーク州ニューヨーク市マンハッタン
ジャンル ヒップ・ハウス
職業 ラッパーシンガーソングライター
活動期間 2008年 - 現在
レーベル アジーリア・バンクス、プロスペクト・パークポリドールインタースコープXLレコーディングス
共同作業者 エイラブミュージックマシーンドラム、リル・インターネット、ロン
公式サイト  www.azealiabanks.com

アゼリア・アマンダ・バンクスAzealia Amanda Banks[əˈzliə]1991年5月31日 - )はアメリカ合衆国女性ラッパーシンガーソングライター

ニューヨーク市ハーレムで育った彼女は2008年に、MySpaceを通じて音楽活動を開始した。そして、17歳の時にXLレコーディングス契約を結んだ[1]デビューシングル『212』で商業的な成功を収めた後、インタースコープポリドール・レコードと契約。2012年に最初のEP『1991』を発表し、マイナーなチャートで成功。2014年に、デビュー・スタジオ・アルバム『ブローク・ウィズ・エクスペンシヴ・テイスト』を発表した[2]。歯に衣着せぬ発言で知られており、度々メディアで論争を巻き起こしている[3]

音楽性[編集]

バンクスはアメリカのレコーディング・アーティスト、ビヨンセアリーヤが「全ての女王」だと称賛している。「彼女は最も偉大なパフォーマーであり、ミュージシャンだが、これは私の謙虚な意見だが、今現在、他の誰よりも優れていると思う。」[4]。バンクスはバルバドスの歌手リアーナとクリスタル・ウォーターズに影響を受けた。また、映画パリは燃えている』の音楽を始めとする黒人のゲイ文化に触発された[5]

オールミュージックはバンクスを、「ハードコアヒップホップインディー・ポップダンスミュージックを組み合わせたスタイリッシュなボーカリスト」と評価している[6]。一方、ガーディアンのジョン・ロビンソンはバンクスのスタイルを「ミッシー・エリオットとダンスポップの魅力的な融合」と評価した[7]。バンクスの音楽性の特徴として、彼女の歌の歌詞の多くに卑語、特に「カント(Cunt女性器の意)」という言葉が登場することが指摘されている[8][9][10]。デビュー・シングル『212』では10回以上使用されている他、『フィアス』においては彼女は自分自身を「カント女王」と称している[11][12]。彼女はこれをハーレムでの育成の影響だと考えている[4]。彼女はしばしばペースが速いラップ、またはフロウで知られている[10]

『212』を書いて以来、バンクスは「ヤング・ラプンシェル」という名義も使っている。この別人格は、10代の頃、スターバックスで働いていた時に着けていた長いヘアーエクステンションラプンツェルのそれを重ね合わせたところから誕生した[4]

私生活[編集]

バンクスは両性愛者である[4]。彼女がセクシャリティについて報道機関とのインタビューで話した数少ない例の中で、性的指向に基づく社会の他人へのラベル付けに不満を表明している。ニューヨーク・タイムズとのインタビューで、「私は両性愛者やレズビアンのラッパーのようにしようとしているわけではない。私は他人の言葉では生きていない」と発言している[13]

アフリカ系アメリカ人の市民権問題について公で語っている[5][14]2014年12月には、アメリカ合衆国の奴隷制度議論に対する賠償英語版ホロコーストユダヤ人生存者に対するドイツの賠償を前例として引用し、祖先の奴隷化のための財政賠償としてアフリカ系アメリカ人に100兆ドル以上を要請した[14][15]。彼女はTwitterを使って、若いアフリカ系アメリカ人にこのような問題に関心を持ち、「現代の資本主義という名前亡命した人々の子どもであり、そのパイの部分に値する」と付け加えた[14][15]。更に彼女は賠償金は黒人のアメリカ人の教育支援の為に使用できると付け加えた[14]

バンクスはドナルド・トランプ2016年大統領選キャンペーン英語版を支持し、「私はアメリカへの希望はない。アメリカが悪いのと同じように、ドナルド・トランプも邪悪だと思う。政治家は本質的に悪い。私は最も率直な人を信じている」と述べた[16]2016年10月には、Facebookに「私はカツラを支持する大きな間違いを犯した。女性の権利は重要で、私たちはそれを守る必要がある」と投稿し、トランプ支持を撤回した[17]。トランプが大統領に当選した後、「彼は今私の主人公だ。私はとても喜んでいる」とコメントした[18]

2016年7月、肌を明るく見せていることを認め、肌の漂白英語版を擁護した[19]。同年12月流産したと告白[20]

論争[編集]

バンクスは、ソーシャルメディア、特にTwitterの公的な人物との論争で評判を挙げている。雑誌「コンプレックス」は、「彼女は彼女の音楽よりも公的な争いにより注目を集めている」と指摘している[3]

ビル・コスビーの性的暴行に関する主張英語版に応えて、彼女は「それらの売女はいくつかのプディング・ポップ英語版を手に入れる為に彼らの前で嘘をついている!!!!」とつぶやいた。ジャド・アパトーは彼女の反応を強く批判した[21]。アパトーは後にバルチャーとのインタビューで、「もはや、私たちを彼女の行動を笑ってしまうことはできない」と発言している[22]

その月の後半に、バンクは著名な奴隷取引人の子孫が「家を失い、財産を奪われたはずだ」と呟いた[23]。また、18世紀政治家で奴隷所有者のジェームズ・デウルフ英語版の子孫ジェームズ・デウルフ・ペリーに対して彼の財産についての詳細情報を要求して、「私は白人男性が精神病棟に閉じ込められなければならないと思う…世界で白人男性が犯した残虐行為を考えると。」[24]「誰かがあなたのお尻を蹴り上げ、あなたの愚かな笑いのクラッカーの顔にパンチする必要がある」[23]と書いた。

2015年9月22日、飛行機内で騒ぎを起こした。バンクスがロサンゼルスに到着したばかりのデルタ航空便から素早く降りようとしていたところ、フランス人カップルが荷物を取り出そうとして道を塞いでいた。無理やり押しのけて道を通ろうとしたところ、そのカップルの男性が手を出したことからバンクスは激怒し、唾を吐き、顔を殴り、シャツを爪で引っかいた。その後、乗務員が割って入りバンクスを宥めたが、バンクスは「ファックファゴット英語版」と乗務員を罵った[25]。バンクスはInstagramのフィードに、「有名人/エンターテイメント業界の一員になって以来、白人じゃないことの痛みを自分のこととして感じたことは1度もない」と投稿した。バンクスは音楽業界における人種差別について公で語ってきただけにこの投稿は大きな議論を巻き起こした。あるユーザーが彼女の言葉が若いゲイのファンに与える影響について考慮すべきだとコメントすると激怒し、「ゲイの男性が私をビッチやクソ、売春婦と呼ぶ度に、その顔面めがけて催眠スプレーを吹きかけるのを想像してみなさい」と反応した。彼女は後にコメントを削除し、謝罪した。雑誌バルチャーは彼女の芸術的及び商業的な挫折を指摘し、「キャリアが酷くなっていることを認識しているアーティストのやけくその行動…彼女は急速に落ちぶれていて、もはや彼女の光景は面白くない。」とコメントした[22]

2015年11月10日、ロサンゼルスのクラブで警備員と喧嘩したとしてロサンゼルス市警察の取り調べを受けていたことが報道された[26] 。その半年後、ニューヨークのクラブで女性警備員を暴行し、逮捕された[27]

2016年3月サラ・ペイリンは、彼女の一連の攻撃的なツイートに対して訴訟を起こすことを検討していると明らかにした。ペイリンはバンクスが自分を攻撃したのは、自身が「ネグロは奴隷でいることをとても気に入っていた」と発言したという嘘のニュースを鵜呑みにしたことがきっかけで、それを根拠に彼女は、「電車を走らせる(乱交の意味を持つスラング)」ために「最も裕福な黒人ネグロ」を探してきて、その様子を「動画で撮影して、Worldstarに投稿する」と発言したと主張。バンクスは後に謝罪した[28][29][30]

その2か月後、ゼイン・マリクの「ライク・アイ・ウッド英語版」のミュージック・ビデオは、自身のそれからアイディアを盗用していると主張。彼に対して人種差別な投稿を繰り返し、ブリティッシュ・ヒップ・ヒップ英語版界への軽蔑的なコメントも添えた[31] 。この間、ゼインに対する攻撃を止めるよう促したディズニー出身の女優スカイ・ジャクソン英語版(当時14歳)とオンライン上で論戦となり、彼女に対して「あなたのお尻を成長させて月経を開始させる」[32]と発言。彼女の一連のツイートはアカウント一時停止に繋がった。また、彼女はヘッドライナーを予定されていたロンドンの音楽祭への出演が禁止された。主催者は彼女の発言が彼らの「平等の倫理」に反しているとその理由を説明した[33]

作品[編集]

  • ブローク・ウィズ・エクスペンシヴ・テイスト(2014年)

出演[編集]

ツアー[編集]

ヘッドライニング

  • ファンタシー・ツアー(2012年)
  • マーメイド・ボール(2012-13年)[35]
  • ブローク・ウィズ・エクスペンシヴ・テイスト・ツアー(2014-15年)[36]

客演

  • ショックウェーブス・NMEアワーズ・ツアー(2012年)

受賞と候補[編集]

部門 対象 結果
2011年 BBC サウンド・オブ・2012[37] 本人 3位
2012年 NMEアワーズ ダンスフロア・アンセム 212 ノミネート
フィリップ・ホール・レーダー・アワード[37] 本人 受賞
ビルボード・ミュージック・アワード 新人賞[38]
O・ミュージック・アワーズ 最優秀ウェブ出身アーティスト[39] ノミネート
アーバン・ミュージック・アワーズ 最優秀シングル[40][41] 212 受賞
最優秀国際アーティスト[40] 本人 ノミネート
年間アーティス賞[40]
MOBOアワーズ 最優秀国際パフォーマンス[42]
2013年 NMEアワーズ 年間悪党賞[43]
BETアワード 最優秀女性ヒップホップ・アーティスト[44]
最優秀新人賞[44]
2015年 最優秀女性ヒップホップ・アーティスト[45]

脚注[編集]

  1. ^ Baron, Zach (2012年8月28日). “The Making of Azealia Banks”. Spin. 2013年1月27日閲覧。
  2. ^ Robehmed, Natalie (2014年2月14日). “Azealia Banks: Hip-Hop Cash Princess”. Forbes. 2017年6月15日閲覧。
  3. ^ a b Diep, Eric (2014年6月19日). “A History of Azealia Banks' Twitter Beefs”. Complex. 2015年3月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月15日閲覧。
  4. ^ a b c d Nika, Colleen. “Q&A: Azealia Banks on Why the C-Word Is 'Feminine'”. Rolling Stone. 2012年11月5日閲覧。
  5. ^ a b Madison Moore (2013年1月8日). “Let's Talk About Azealia Banks”. Splice Today. 2017年6月15日閲覧。
  6. ^ Azealia Banks | Biography”. AllMusic. 2015年2月23日閲覧。
  7. ^ Robinson, John (September 21, 2012).This week's new live music”. 2015年3月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月1日閲覧。 . The Guardian.
  8. ^ Self, Will (2012年3月2日). “Hothouse Flower”. The New York Times. http://www.nytimes.com/2012/03/04/t-magazine/culture/azealia-banks-hothouse-flower.html?_r=0 2012年11月6日閲覧。 
  9. ^ Wolfson, Sam (2012年9月18日). “Samantha Cameron loves rapper Azealia Banks: has she heard the lyrics?”. The Guardian. 2012年11月6日閲覧。
  10. ^ a b Empire, Kitty (2012年3月3日). “Azealia Banks; Sharon Van Etten – review – The Observer”. The Guardian. 2012年11月6日閲覧。
  11. ^ Banks, Azealia. “Azealia Banks – 212 – Lyrics”. Tumblr. 2013年6月27日閲覧。
  12. ^ Banks, Azealia. “Fierce – Lyrics”. Tumblr. 2013年6月27日閲覧。
  13. ^ Ortved, John (2012年2月1日). “Azealia Banks, a Young Rapper Taking Cues From the Street”. The New York Times. 2012年11月17日閲覧。
  14. ^ a b c d Antonio Molloy (2014年12月30日). “Azealia Banks calls for reparations for slavery: 'America owes black people over $100 trillion'”. The Independent. 2017年6月15日閲覧。
  15. ^ a b Dean Van Nguyen (2014年12月29日). “Azealia Banks calls for $100 trillion in slave reparations”. 2017年6月15日閲覧。
  16. ^ Rapper Azealia Banks endorses Donald Trump” (2016年2月1日). 2016年2月17日閲覧。
  17. ^ Aaron Carter and Azealia Banks Withdraw Support for Donald Trump”. Time (2016年10月11日). 2016年10月15日閲覧。
  18. ^ Thorpe, Isha (2016年11月9日). “Azealia Banks Congratulates Donald Trump On His Presidential Win”. I Heart. http://www.iheart.com/news/azealia-banks-congratulates-donald-trump-on-15284066/ 2016年11月10日閲覧。 
  19. ^ Azealia Banks Defends Skin Bleaching, Says It Doesn't Negate Her Past Comments About 'Blackness in America'”. Billboard (2016年7月6日). 2016年7月8日閲覧。
  20. ^ Havens, Lyndsey (2016年12月20日). “Azealia Banks Reveals She Had A Miscarriage, Disses Nicki Minaj On Facebook”. Billboard. http://www.billboard.com/articles/columns/hip-hop/7632291/azealia-banks-facebook-miscarriage-nicki-minaj-feud 2016年12月21日閲覧。 
  21. ^ Banks, Azealia (2014年12月4日). “Azealia Banks on Twitter”. Twitter. 2015年11月13日閲覧。
  22. ^ a b Charlton, Lauretta (2015年10月15日). “Has Azealia Banks Trolled Her Way Out of a Career?”. Vulture.com. http://www.vulture.com/2015/09/has-azealia-banks-trolled-her-career-to-death.html 2015年11月13日閲覧。 
  23. ^ a b Dean Van Nguyen (2014年12月29日). “NME News Azealia Banks calls for $100 trillion in slave reparations - NME.COM”. NME.COM. 2015年2月13日閲覧。
  24. ^ Azealia Banks Slave Reparations: GIVE ME MY MONEY! – Gossip Cop”. Gossip Cop (2014年12月26日). 2015年2月13日閲覧。
  25. ^ “Azealia Banks’ airline meltdown, homophobic slur caught on camera”. New York Daily News. (2015年9月22日). http://www.nydailynews.com/entertainment/gossip/azealia-banks-drops-homophobic-slur-airplane-meltdown-article-1.2369767 2015年9月23日閲覧。 
  26. ^ Azealia Banks Under Investigation for Alleged Scuffle With Security Guard”. Billboard. 2015年11月10日閲覧。
  27. ^ Azealia Banks Arrested After Attacking Security Guard: Report”. Billboard. 2015年12月17日閲覧。
  28. ^ Sarah Palin Threatens to Sue Azealia Banks Over Twitter Tirade”. Rolling Stone. 2016年4月8日閲覧。
  29. ^ music, editor (2016年4月6日). “'I never said you should be raped': Azealia Banks apologises to Sarah Palin” (英語). The Guardian. ISSN 0261-3077. https://www.theguardian.com/music/2016/apr/06/azealia-banks-apologises-to-sarah-palin-twitter 2016年4月8日閲覧。 
  30. ^ Palin: "Even The French Understand That Slavery Wasn’t Our Fault, Because The Negroes Liked It"”. Politicops. 2016年4月5日閲覧。
  31. ^ Mic. “After Azealia Banks Called Zayn Malik a "Curry Scented Bitch," Desi Women Clapped Back”. 2016年9月18日閲覧。
  32. ^ Rosa, Christopher (2016年5月11日). “14-Year-Old Sai Jackson Put Azealia Banks in Her Place, and It Was Stupendous”. VH1. http://www.vh1.com/news/263026/skai-jackson-azealia-banks-twitter-fight/ 2016年5月11日閲覧。 
  33. ^ “Azealia Banks axed from UK festival after racist rant at Zayn Malik”. The Guardian. (2016年5月12日). https://www.theguardian.com/music/2016/may/11/azealia-banks-axed-uk-music-festival-zayn-malik-twitter?CMP=fb_gu 2016年5月12日閲覧。 
  34. ^ Coco (2016) – IMDB”. 2015年12月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月15日閲覧。
  35. ^ Maloney, Devon (2012年6月4日). “Azealia Banks' Mermaid Ball, By the Numbers”. Spin. 2013年4月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月15日閲覧。
  36. ^ Azealia Banks postpones UK tour dates”. NME (2014年3月14日). 2014年3月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月15日閲覧。
  37. ^ a b BBC Sound of 2012 – Artist Profile – Azealia Banks”. BBC (2012年1月4日). 2017年6月15日閲覧。
  38. ^ Full List of 2012 Billboard Music Awards Winners”. perezhilton.com. Perez Hilton. 2012年8月20日閲覧。
  39. ^ And the O Music Awards Nominees Are...”. O Music Awards. 2013年6月3日閲覧。
  40. ^ a b c Rita Ora leads nominations for the 10th annual Urban Music Awards 2012”. Urban Music Awards. 2013年6月3日閲覧。
  41. ^ 2012 Urban Music Awards”. MetroLyrics. 2013年5月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月3日閲覧。
  42. ^ MOBO Awards 2012 – Who Might Win?”. Music of Black Origin Awards. 2013年6月3日閲覧。
  43. ^ NME Awards 2013 – as it happened”. NME. 2013年6月3日閲覧。
  44. ^ a b Takeda, Allison (2013年7月1日). “BET Awards 2013: Kendrick Lamar Wins Big, Justin Timberlake Performs With Charlie Wilson”. Us Weekly. 2013年7月1日閲覧。
  45. ^ BET Awards Nominations 2015 — Beyonce, Chris Brown & More”. HollywoodLife (2015年5月18日). 2015年5月18日閲覧。

外部リンク[編集]