キラキラネーム

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キラキラネームは、当て字で間違った読ませ方や、しばしば暴走族が好む発音文字を当てはめたような名前[1][2]。1990年代から増加し、命名は親の責任であるためにその者の親の自己満足・教養の無さが露呈する名付けと言われ、2000年代にはインターネットスラングとしてDQNネームと呼ばれた[2][3][4][5][6][7][8]。以降はDQNネームとインターネット利用者を中心に批判的に呼ばれてきたが、2010年代以降にマスメディアでは批判的な意味を薄めた「キラキラネーム」が新たに造語され、以降のマスメディアではほぼ統一利用されている。現在でも2000年代インターネットを知る者は「DQNネーム」呼称を用いる傾向にある。具体例としては、名付けた親への批判報道や批判世論が占めた悪魔ちゃん命名騒動が代表的である[9][10][11][12][13][14][3]。制度上は、本人が15歳になれば、親の同意がなくても家庭裁判所に改名を申請できることになっている(後述参照)[15]

概要[編集]

そもそも、民法には命名行為について規定がなく、命名に際しては、漢字常用漢字表(2136字)と人名用漢字表(863字)の合計2999字であれば、自由に組み合わせて使える。さらに、戸籍の欄には漢字の読み方が記載されず、出生届に「よみかた」があるだけである。このため、難解な読み方や、キラキラネームを付けることができる[16]。これについて、法務省2021年9月7日、戸籍に「読み仮名」を記載するかどうかの検討を、法制審議会に諮問した[17]

常識的に考えがたい名前や、名乗りにない読みをする名前、カタカナ名に音を当てはめたような当て字の多い名前の一部に対し、2000年代、不良を意味するインターネットスラングであるDQNドキュンの派生語として、DQNの親が名付けるような名前を意味する「DQNネーム」という言葉がインターネット上で流行した[18][19]。『キラキラネームの大研究』著者で文筆家の伊東ひとみによると、「キラキラネーム」と呼ばれる名前が出始めたのは1990年代半ば(1995年)ごろからで、2000年代には急激に増加し、2010年前後に全盛期を迎えた。だが、2010年代後半以降はブームも沈静化して急速に減少したと同時に、キラキラネームを名付ける世代の高年齢化も進んでいる。

2010年代に入ると、DQNネームに代わる類似の用語として「キラキラネーム」が用いられ始めた[20][21]。一説にはベネッセコーポレーション発行の育児雑誌たまごクラブ』『ひよこクラブ』およびその増刊号の『名づけ特集』[22]の影響もあるといわれる[23]

キラキラネームとされる名前には一定の言語的特徴があるとする議論もある[24]一方、京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センターの安岡孝一は、この論文には不備があると述べている[25]。とはいえ、インターネットなどで流布した珍しい名前には、多くの人が想像だけで言っているものも含まれており、すべてが実在するとは限らない[注 1]。一部の命名研究家はDQNドキュンネーム・キラキラネームともに中立的な立場に立った名称ではないとして、「珍奇ネーム」という用語を用いている[28]。「DQNネーム」と同様の表現として、評論家の呉智英が命名した「暴走万葉仮名」も存在する[29]。このほか、人間でなくペットとして飼育するなどに対して、一見しただけでは読みが難しい名前をつけること(「空如亜」と書いて「アショア」と読むなど)が、「キラキラネーム」と呼ばれることもある[30]

東進ハイスクール・東進衛星予備校現代文科講師の林修は、キラキラネームについて「漢字本来の読み方を無視した、読み方の想像ができない名前は固有名詞としての役割を果たしていない」と指摘し、キラキラネームと学力の低さはある程度相関性があると主張している[31]。また、一般的な名前に比べて奇抜な名前が呈示された時、元々の見た目のリーダーシップ性の程度に関わらず、リーダーシップ性は低く評価されたとする実験結果があり、近年のいわゆるキラキラネームは社会性評価において付加価値とならず、外見に関わらず非好意的な印象を生むという指摘がある[32]

日本の歴史から見ると、吉田兼好の随筆『徒然草』第百十六段[33]落語の『寿限無』、本居宣長の随筆『玉勝間』第十四巻[20]に記述されるように、子供に珍しい名前がつけられる現象は鎌倉時代(またはそれ以前)から存在し、名前にかかわる常識・トレンドも時代とともに変化してきた。たとえば21世紀には古風な名前の代表とされる女性名の「◯子」について言えば、小野妹子蘇我馬子など位の高い男性君子や貴族の名前であった時代(飛鳥時代)がある。その後、女性皇族の名前にも、「○子内親王」「○子女王」とするのが平安時代以降に定着した他、皇族でなくても例えば北条政子のように高貴な女性の名前として使われるようになった。ただし庶民に関して言えば、江戸時代宗門人別改帳によれば当時の大多数の百姓・町民女性の名前はひらがな二文字(「たね」「きく」「みえ」「くに」「かつ」「はな」「ふみ」など)であり、漢字名ですらなかった(ただし漢字二文字の珍しい名前も中には存在した)[34]。こうした歴史から分かるように、一般女性の名前としての「○子」は、珍しい新鮮な名前として明治以降に登場し、昭和期までに一般化したものである。ただし、それ以前からも皇族や大名の娘などには普遍的・一般的に用いられていたため、現代のキラキラネームとは事情が全く異なる。また、どんな名前や読みが「キラキラ」なのかは各個人の主観によるため、人によって定義は異なる[28]

なお「DQNドキュン」が侮辱や誹謗中傷に該当すると認めた判例がすでにある。人の名前を「DQNネーム」と呼んで侮辱・誹謗する行為がなされた場合、発信者情報の開示や、民法上の不法行為や刑法上の侮辱罪名誉毀損罪などが問われうる[35][36]

一般的でない名前と法・行政[編集]

この節では「DQNネーム」や「キラキラネーム」とは直接関係なく、一般的でない名前の認可にかかわる法制度・司法判断について述べる。

日本の戸籍法第50条[注 2]、戸籍法施行規則第60条[注 3]の規定に基づき、常用漢字[39]、平仮名、片仮名を用いることができるほか、常用漢字以外で認められる人名用漢字は同規則 別表第二で具体的に定められている[40][41]。ただし、戸籍には氏名の読み方までは登録されないため、使用可能な漢字を用いる限り(名前が漢字である場合)、戸籍上の氏名をどのような読みにするかについての法的制限は基本的にない[注 4]。ただし、出生届が受理されない場合もあり、その点をめぐっての判例がある。たとえば、親と同一の名前を子につけようとしたケースでは、名古屋高等裁判所が「難解、卑猥、使用の著しい不便、特定(識別)の困難などの名は命名することができない」として出生届の不受理を支持した[43]。また、一般的に悪の印象がある名前でいったん受理された出生届法務省が無効にしたケースでは、東京家庭裁判所八王子支部が「社会通念に照らして明白に不適当な名や、一般の常識から著しく逸脱したと思われる名は、戸籍法上使用を許されない場合がある」としたものの、「受理された出生届を抹消することは許されない」と判断した[44]

しかし、珍奇な名前を付けられた子供が社会生活上不利益を被る(笑われる・いじめられる・就職活動の際に不利な扱いを受けるなど)ことがあるのも事実であり、このような場合には最寄りの家庭裁判所に名の変更届を提出し、許可を得ることによって改名をすることができる(名の変更届の項目を参照)。この点については、名古屋高等裁判所も先述の判決において、「親権者がほしいままに個人的な好みを入れて恣意的に命名するのは不当で、子供が成長して誇りに思える名をつけるべき」という見解を示しており[45]、これに違反するような命名をされた子供は家庭裁判所で改名を認められる可能性が高いと言える。2019年3月5日に甲府家庭裁判所で変更を認められた高校生は、15歳になれば親の同意がなくても本人の意思で家庭裁判所に改名を申請できることから、「もし、名前で苦しんでいるのなら、勇気を出して行動してほしいです。改名することで人生が変わるかもしれません」と訴えている[46][47]

日本国外における名前に関する規制の事例としては、メキシコ北部ソノラ州の州法で子供をいじめから守るためとして、「ヒトラー」など侮辱的・差別的で意味が欠如している61個の名前が禁止されている[48][49]ニュージーランドでは「プリンセス」など公的な称号や階級を示唆する名前が禁止され、ほかにも77件却下されている[50][51]ベトナムでは2020年7月16日に国民の名前に関する新たな規定が制定され、銀行口座が作れないほど長すぎたり、国・民族の慣習に合わない名前を事実上禁止された[52]。ベトナムの地元紙によると、「スイス時計」や「同性愛」と読める名前が実在するという[52]スウェーデンでは命名への政府介入を定めた法律があり「スーパーマン」などの名前が不承認とされたこともあったが、命名規制そのものに反対する声もあり、裁判で政府判断が不当だとして命名が認められたケースもある[53]韓国では1997年に発生した「安養小学生拉致殺害事件」の被害者の少女の奇抜な名前が世間の関心を呼んだため[54]、これ以降、ハングル5文字以上の名前や漢字語固有語の混合名は戸籍に登録できなくなっている[55]。米国や英国をはじめ一般的でない名前についての規制をもたない国が大多数であり、日本以外の国でも名前は多様化している[56][57]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 戸籍法10条の2[26]および住民基本台帳法 第12条の3[27]など、他人の法的氏名を閲覧できる条件は非常に制限されており、その条件から外れた者が全くの他人の氏名を直接証明することは不可能となっている。
  2. ^ 戸籍法「第五十条 子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。
    ○2 常用平易な文字の範囲は、法務省令でこれを定める。」[37]
  3. ^ 戸籍法施行規則「第六十条 戸籍法第五十条第二項の常用平易な文字は、次に掲げるものとする。
    一 常用漢字表(平成二十二年内閣告示第二号)に掲げる漢字(括弧書きが添えられているものについては、括弧の外のものに限る。)
    二 別表第二に掲げる漢字
    三 片仮名又は平仮名(変体仮名を除く。)」[38]
  4. ^ なお住民基本台帳は氏名の読みも登録され、パスポートは読み(ローマ字)での表記となり、出生届・転出入届を始めほとんどの公的手続きに氏名の読みを記入することが求められるため、名前の読みは社会生活上実質的に本名と不可分になるが、戸籍上の本名はあくまで読みを問題にしない表記された氏名である。そのため、改名についても、戸籍に変更なく名前の読みだけの変更なら市役所などへの届出で可能であり、戸籍上の名前を変更するには戸籍法第107条に基づき家庭裁判所の許可が必要となる[42]

出典[編集]

  1. ^ 櫛田寿宏「間違った読み方の名前や暴走族の落書きのような名前に対し多くの人が不快や迷惑を感じる。親が知的でないという印象を与えることにもつながり、社会で生きていく上で大きな障害になりかねない。子供の将来を考えて名付けをしてほしい」
  2. ^ a b キラキラネームとDQNネームの境界線 有識者の意見も賛否両論” (日本語). SankeiBiz(サンケイビズ) (2012年8月11日). 2021年3月18日閲覧。
  3. ^ a b 捕まった「ワタナベマホト」の本名は“摩萌峡” 命名研究家は「キラキラネームの因果」” (日本語). デイリー新潮. 2021年10月25日閲覧。 “「悪魔ちゃん」騒動 ひろゆき氏の投稿したツイートの引用を続けよう。《他人が自分の子供を呼ぶために、名前をつけるのですが、一般的に読めない名前をつける親は頭が良くない可能性が高いです》《よって、読めない名前の子供は遺伝により頭が悪い可能性が高いです。と言う話をしてたら、また実例が増えました。》(註:改行を省略) このツイートがきっかけとなり、“キラキラネーム”に再び脚光が集まっているようだ。一般には1990年代の後半から「漢字の当て字がひどく、読めない名前」の存在が注目を集めるようになり、2000年代に入って急激に増えたと言われているようだ。1993年、当時30歳の父親が、東京都・昭島市役所に男児の名前として「悪魔」を記載した出生届を提出したことをご記憶の方も多いだろう。法曹家にとっても「親の命名権」を考える上で重要な資料となっているそうだ。こうしたことから「悪魔ちゃん命名騒動」はキラキラネームの“原点”と言われることもある。”
  4. ^ ひろゆき「キラキラネームをつける親には、子供の将来をもっとよく考えてほしい」 「特別感がほしい」は理由にならない (2ページ目)” (日本語). PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) (2021年10月10日). 2021年10月25日閲覧。 “さらに芸能人でなくても、資産家で子どもが一生働かなくても生きていけるお金を親が残せたり、子どもがズバ抜けて容姿端麗だったりすれば、キラキラネームが背負うハンデを危惧する必要はないわけです。しかし、多くの人はそうはいきません。そう考えると、親がキラキラネームをつけた時点で、その努力やハンデを子どもに強いるのはあまりに厳しい。このデメリットを想像できない親は頭が悪いと言えるでしょう。 冒頭でも述べましたが、名前は、他人が読むためにつけるものです。読めない漢字で名前にすることは名前のつけ方として間違っていますが、バカな親だと親自身の思い入れや、雰囲気がかわいい、特別感を出したい……といった理由で、子どもに変わった名前をつけてしまう。子どもの将来を、もっとよく考えてほしいものです。”
  5. ^ クロスメディア・パブリッシング. “「キラキラネーム」つけられた子どもの声、つけた親の声 ビジネス、今日のひとネタ | 2ページ目 | LIMO | くらしとお金の経済メディア” (日本語). LIMO. 2021年10月25日閲覧。 “14世紀前半ごろに吉田兼好がまとめたといわれる『徒然草』には、当時の「キラキラネーム」の流行をバッサリと切って捨てる、次のような文章が書かれています。「人の名も、目慣れぬ文字を付かんとする、益なき事なり。何事も、珍しき事を求め、異説を好むは、浅才の人の必ずある事なりとぞ」 (人の名前も、見たことのないような漢字を使ってつけようとするのは、何の得にもならないことだ。何事も、珍しさを追求し、変わった見方をよいものだとするのは、教養の浅い人間が必ずやるようなことである)『徒然草』第116段”
  6. ^ 【日本語メモ】個性的な名前とキラキラネーム” (日本語). 産経ニュース. 2021年10月25日閲覧。
  7. ^ 【日本語メモ】個性的な名前とキラキラネーム” (日本語). 産経ニュース. 2021年10月25日閲覧。 “子供にどんな名前を付けるかは親の責任でもあり、子育ての中で一番大切なことだと思う。親が「斬新だ」と思って付けた名前が、実は食べ物を表す言葉だったということもありうる。学校でからかわれたりしたら、本人が気の毒だ。そのようなリスクを避けて名前を考えてほしいものだ。”
  8. ^ キラキラネーム「親の自由」は11%” (日本語). 日本経済新聞 (2013年8月21日). 2021年10月25日閲覧。 “漢字を当て字的に用いた風変わりな名前、いわゆるキラキラネームを子どもにつけることをどう思うか。「親の自由だ」と肯定的に受け止める回答は11.7%しかありませんでした。 名前の読み間違いでの不便は7割の読者が経験していました。「表彰状に漢字だけで書いてあった」。これは管理職ならば多くの人が同感するでしょう。会社の朝礼などで褒めたたえるはずが立ち往生では困ってしまいます。”
  9. ^ 河上正二「43 親の命名権――悪魔ちゃん事件」『民法判例百選Ⅲ 親族・相続法』水野紀子大村敦志編、有斐閣〈別冊ジュリスト 239号〉、2018年3月30日、第2版、88-89頁
  10. ^ 「キラキラネーム」よりも「悪魔ちゃん」の方が良い名前?” (日本語). 國學院大學. 2021年10月25日閲覧。
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  12. ^ 悪魔ちゃん騒動とは?(2019年2月13日)|BIGLOBEニュース” (日本語). BIGLOBEニュース. 2021年10月25日閲覧。
  13. ^ 【日本語メモ】個性的な名前とキラキラネーム” (日本語). 産経ニュース. 2021年10月25日閲覧。
  14. ^ キラキラネーム、カタカナ名称。私たちは「名前」に支配されている?意思決定と名前のヒミツ -- 追手門学院大学のニュース発信サイト「OTEMON VIEW」に掲載 | プレスリリース” (日本語). 沖縄タイムス+プラス. 2021年10月25日閲覧。
  15. ^ キラキラネームでいじめ被害に 改名したいが親に反対される高校生の苦悩” (日本語). ライブドアニュース. 2021年10月25日閲覧。
  16. ^ キラキラネームはなぜ付けられる~「命名の自由」はどこまで許されるのか”. Yahoo!ニュース (2019年9月18日). 2021年5月18日閲覧。
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  18. ^ 考えはどこに 「面白いかどうかで決めるだけ」気分が選挙を制する!産経新聞社、2010年1月4日15時30分。(インターネットアーカイブのキャッシュ)
  19. ^ 牧野 2012, p. 20.
  20. ^ a b 日本の難読ネームは伝統だった!? - Web R25、2012年3月13日 (cache)
  21. ^ 牧野 2012, p. 21.
  22. ^ 赤ちゃんの幸せ名前事典(cache)を参照
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  24. ^ 山西良典、大泉順平、西原陽子、福本淳一『人名の言語的特徴の分析に基づくキラキラネーム判定』日本感性工学会論文誌 第15巻第1号 31-37頁 2016年2月26日
  25. ^ https://srad.jp/~yasuoka/journal/600756/
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引用文献
  • 牧野恭仁雄『子供の名前が危ない』ベストセラーズ、2012年。ISBN 4-584-12357-8

関連項目[編集]

外部リンク[編集]