Z世代
英: Generation Z)とは、明確な定義は存在しないが、1990年代中期から2010年代初期に生まれた[1][2]世代を指す。生まれた時点でインターネットが利用可能であった最初の世代である。
(ゼットせだい)、ジェネレーションZ(名称の由来[編集]
名称は1950年代、ハンガリーの写真家、ロバート・キャパにより出版された、第二次世界大戦後生まれの青年を撮影した写真集『Generation X』より出拠する。 現代の社会的文脈においては1991年、ダグラス・クープランドにより上梓された著書『ジェネレーションX -加速された文化のための物語たち』が国際的にベストセラーとなったことより称されている。クープランドによる著書においては、当時青年期であった、およそ西暦1965年~1979年出生者を「ジェネーションX」と標榜した。英語の「X」には、SFテレビドラマの「X-ファイル」や、発見された当時に得体の知れぬ物体であったことから「X」と称された名残を持つ「X線」など、ギリシャ語の「Xei」から転じられた「未知」を表しており、「前世代のベビーブーマーよりもつかみどころのない、未知なる世代」であるとして、欧米にて人口に膾炙した[3]。日本におけるジェネレーションXは、概ねバブル世代~ロスジェネ世代にあたる[4]。
アメリカでのジェネレーションXの次世代となる西暦1980年~1996年頃出生したポストX世代を、アルファベットでXに次ぐ世代として「ジェネレーションY」(ミレニアル[注 1]世代とも呼ばれる。日本ではロスジェネ世代末期~プレッシャー世代~ゆとり世代にあたる)となぞらえた[3]。
アメリカでの、ジェネレーションYのポスト世代(概ね1997年~2010年生まれ)を、Yの次にあたる「ジェネレーションZ」と称される運びとなる[3]。日本ではさとり世代後半〜コロナ世代あたる。若者研究の第一人者[5]として知られる原田曜平によって、スマホ第一世代を「Z世代」と紹介される[6]。徐々にマスメディア、マーケティング業界を中心に呼称が浸透し、2021年には、ユーキャン新語・流行語大賞トップ10に選出された。
歴史[編集]
1990年代中期から2010年代初期に生まれた世代であるが、カナダ統計局の場合には1993年生まれ以降を[7]、アメリカ心理学会の場合には1997年生まれ以降を指すなど[8]、定義は厳密に決められているわけではない[9]。
日本においては概ね、1999年(平成11年)から2011年(平成23年)までに生まれた世代に相当している。 大半が1970年代から1980年代生まれの子供世代に当たる。
生まれた時点でインターネットが利用可能であったという意味でのデジタルネイティブ世代としては最初の世代となる[10][11]。デジタル機器やインターネットが生まれた時から当たり前のように存在し[10][11]、ウェブを日常風景の一部として感じ取り、利用している世代である。
また、パソコンよりもスマートフォンを日常的に使いこなし、生活の一部となっている「スマホ世代 (iGen)」でもある[12]。さらに、「baby boomer」を揶揄する「Boomer」になぞらえ「Zoomers(ズーマーズ)」とも呼ばれる[13]。成長期にWeb 2.0を当たり前のように享受し、情報発信力に長けているため、当該世代からは数多くのインフルエンサーが登場している。
この他、Z世代と同時期に生まれた若者は、英: Generation C)[14][15][16][注 2]、あるいはニュー・サイレント・ジェネレーション(英: the new silent generation)[注 3]と呼ばれることもある。
(シーせだい)、ジェネレーションC(特徴[編集]
ミレニアル世代(Y世代)よりもさらに周囲のIT環境が進展しており、幼少期から“デジタルデバイス(機器)やインターネット、SNS含むソーシャルメディアの存在を前提とした生活”をしているデジタルネイティブ(ネットネイティブ、あるいはソーシャルネイティブ)世代である[17]。生まれた時からインターネットに接続するための基本的な端末であるパソコンや携帯電話が既に存在しており、インターネットを利用し始めた頃にはADSLやCATVなどブロードバンドによる常時接続環境、SNS含むWeb 2.0、さらにスマートフォンが普及し、個人の情報発信が身近となっていた[10][11]。
2020年に始まった新型コロナウイルス (COVID-19) のパンデミックの影響で、義務教育と高等教育の両方で、全社会的に実施された遠隔教育(オンライン授業)を受ける最初の世代となった[18]。
2020年時点で世界人口の約3分の1を占めており[19] 日本では Z世代の約5割が「子どもがほしくない」と回答しており少子化傾向が続くとみられる[20]。
Z世代の多くは、幼少期からリーマンショックやコロナ禍による不況を経験している。そのため、企業に対する期待感が低い傾向にある。企業への期待感がないため、ひとつの企業に対する執着がない傾向がある。そのため他世代と比べ、短期間で離職する傾向があったり、副業への抵抗感が薄いといえる。[21]
ジェネレーション・レフト[編集]
欧米ではミレニアル世代と合わせてジェネレーション・レフト(左派世代)と呼ばれる経済格差や気候変動、ジェンダー問題、ポリティカル・コレクトネス、ブラック・ライヴズ・マター、ヴィーガンなど左派的活動を行う者が目立つ[22]。旧ソ連型の体制を知らないミレニアムやZの若い世代は社会主義に負のイメージがなく、資本主義体制に失望するほど左派に傾倒。世論調査会社ユーガブの19年の調査によると「社会主義の候補者に投票するか」との問いにZ世代の64%、ミレニアム世代の70%が「投票の可能性が高い」と答えた。16年の大統領選の民主党候補者選びでは民主社会主義者バーニー・サンダース旋風に一役買った。2022年現在の日本では同世代(ミレニアル世代・Z世代)が左派的活動をしていることは少ないが、左派系知識人やマスメディアを中心に「Z世代」という言葉を日本にも広めて欧米のジェネレーションレフトを賞賛し、同じように日本の同世代が「目覚める」ことを期待して日本でのジェネレーションレフトを増やそうとする意図が存在する[23][24][25][26]。
日本におけるコロナ世代及びロックダウン世代[編集]
2019年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって人生の転換期に何らかの影響を受けている子供や若者を『コロナ世代』という[27]。2001年から2014年生まれが該当するとされ、一部はZ世代にも該当する[28]。この世代は全員が21世紀生まれである。
また、教育や就職の機会を失ったことで、その後の労働市場において不利益を受ける可能性がある世代を『ロックダウン世代』という[29]。
2020年3月 - 5月に実施された学校の一斉休校により教育格差が深刻な問題になったとされており、オンライン授業や休校の解除時期の全国不統一により学習進度に差が出ていることも指摘されている[27]。過去に高校1年(15歳)が受けたテスト『OECD生徒の学習到達度調査』(PISA2018)で学力が過去最低だったこともあり、長期に渡る休校により学業への影響のほか、運動不足や食育への影響なども指摘されている[30]。さらに学習機会の喪失により、生涯賃金に影響が出るとの指摘がある[31]。
リクルート進学総研が全国の高校生を対象に意識調査を行い、自分たちの世代の名前を自由に記述してもらったところ、「コロナ世代」とまとめられる回答が10・7%で最も多かった[32]。
「Z世代」という表現に対する否定的意見[編集]
- 『デジタルネイティブでジェネレーションレフトである』などといったような、マスメディアにより伝言ゲーム式に伝聞されるステレオタイプのZ世代像が、次第に当事者のリアルから乖離した虚像を創造し、実際のZ世代を戸惑わせることや、矛盾した調査結果をもたらす事がある[33][34]。これまでに世間のイメージを反証した事例には、以下のようなものがある。
『Z世代はタイパ主義である』…原田曜平による2022年の調査では、Z世代当事者達が新型コロナウイルスにより疎遠となった友人との親睦をじっくりと再構築しようとする例が見られている[35]。
『Z世代はSDGsなど、環境意識が高い』…ニッセイ基礎研究所による20~74歳の約2500人への調査では、「サステナビリティーを意識して生活している消費者」に該当する27.7%の全世代のうち、最も環境意識が高かったのは50歳代であり、20歳代では2割弱であった[36]。
『Z世代は読書離れしている』…ライターの飯田一史による調査では、小中学生の「1ヶ月の平均読書数」は1990年代後半に過去最低に落ち込み、不読率は過去最高を記録したが、2000年代にはいずれもV次回復へと覆り、2022年の小中学生の平均読書冊数は過去最多を記録している。また、高校生も1960年代よりほぼ横ばいであり、少なくとも『読書離れ』とは言い難い結果であった[37]。
- お笑いタレントのカズレーザーは「Z世代」という言葉は年配者が作った言葉であり、Z世代という表現そのものが今時の価値観ではないと提唱している[34]。自分自身をZ世代と称する2000年代生まれの人物より相談があり「老害が多すぎて嫌になる」という相談に対し、「Z世代とかY世代って上の(世代の)人(たち)が勝手に作った枠組みなんですよ……今の価値観にアップデートしたいんだったらこういう言葉は使わないほうがいいですよ、古臭く見られます……絶対“Z世代”なんてダサい言葉使わないでください。昭和だと思われます」と発言し、多くの称賛の声が挙がった[34]。
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世界の人口ピラミッド(2018年)
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日本の人口ピラミッド(2019年)
Z世代に関するできごと[編集]
- 2022年のアメリカ合衆国選挙(中間選挙)ではフロリダ州10区より25歳のマックスウェル・フロストが当選[38]。連邦議会の出馬資格の最低年齢である25歳での当選となり、アメリカ史上初のZ世代議員が誕生した[38]。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ ミレニアル=千年紀
- ^ computer コンピューター、 connected(接続)、community(共同体)などの頭文字から取られたデジタルネイティブ世代にも通じる概念で、Z世代などのように生まれた年で区切る厳密な定義はないが、一般的には1980年代に生まれたミレニアル世代(Y世代)も含まれるケースが多い[14]。
- ^ ウィリアム・シュトラウスとニール・ハウの共著『世代』 (1991) において、1990年代以降に生まれる世代の名称として提案された。同著ではアメリカにおける世代の周期性から、この頃に「サイレント世代」が復活すると予測している。なお、かつてのサイレント・ジェネレーション(英: Silent Generation)は、ベビーブーマーやX世代の親世代に当たる1928年〜1945年頃に生まれた世代で、後の騒々しいブーマー世代との対比により「サイレント・ジェネレーション」(沈黙の世代)と呼ばれた。
出典[編集]
- ^ Michael Dimock (2019年1月17日). “Defining generations: Where Millennials end and Generation Z begins”. ピュー研究所. 2023年5月2日閲覧。
- ^ “第1話/SNSで集う才能、デザインする「YOSE」”. 産経ニュース (2022年1月4日). 2023年5月2日閲覧。
- ^ a b c “Z世代という言葉を聞いたことがあるでしょうか”. 廣瀨涼(株式会社ニッセイ基礎研究所研究部研究員) (2021年7月1日). 2023年5月11日閲覧。
- ^ “ミレニアル世代とは 1981~96年生まれ、多様性を重視”. 日本経済新聞社 (2019年7月6日). 2023年5月11日閲覧。
- ^ “若者研究の第一人者・原田曜平さんに聞く、Z世代を読み解く2021年最新キーワード(前編)”. 電通プロモーションプラス (2021年4月22日). 2023年5月11日閲覧。
- ^ “Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?”. 光文社. 2023年4月28日閲覧。
- ^ Shelley White (2015年10月22日). “The Generation Z effect” (英語). グローブ・アンド・メール
- ^ “Stress in America: Generation Z” (英語) (PDF). American Psychological Association. (2018年10月) 2023年5月2日閲覧。
- ^ Neil Howe and Bill Strauss (July–August 2007). “The Next 20 Years: How Customer and Workforce Attitudes Will Evolve” (英語). Harvard University 2015年12月10日閲覧。
- ^ a b c “ミレニアル世代 vs Z世代:押さえておくべき4つの違いと特徴”. Criteo. (2018年8月14日)
- ^ a b c “スマホは銃より強し 背後に迫るZ世代 ミレニアルの憂鬱(5)”. 日本経済新聞. (2019年5月6日)
- ^ “米国に「iGen(スマホ世代)」が登場 1995~2012年生まれ、精神的不健康が特徴”. J-CASTニュース. (2017年9月22日)
- ^ 「北米ティーンの英語スラング&トレンドワード64選 S~Z編【2023年最新版】」『English Journal Online』ALC PRESS INC.、2023年3月15日。
- ^ a b “「C世代」と拓く新世界”. 日本経済新聞. (2012年1月8日)
- ^ “YouTubeの成長を牽引する、“ジェネレーションC”の行動スタイル”. AdverTimes〈アドタイ〉宣伝会議編集部. (2013年4月5日)
- ^ “ニールセンのイベントで、 ソーシャルメディア時代に最も影響力の高い『C世代 (ジェネレーション C)』を定義”. All Digital Music. (2010年10月30日)
- ^ “「コロナ以降」社会、経済はこうなる! 「白い戦争」WHITE WARSとTrans-COVID/Post-COVID”. JBpress(日本ビジネスプレス) (2020年4月9日). 2020年4月12日閲覧。
- ^ Abram Brown (2020年9月27日). “世界人口の3分の1、「Z世代」について知っておくべき事柄”. Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン). 2023年5月2日閲覧。
- ^ “Z世代の5割「子どもをほしくない」 お金以外の理由の1位は?”. ITmedia ビジネスオンライン. 2023年5月6日閲覧。
- ^ “Z世代とは?共通する特徴や他世代との違い、仕事に対する考え方について解説”. izul.co.jp. 2023年5月19日閲覧。
- ^ Azumi Hasegawa (2022年2月5日). “ジェネレーション・レフトはなぜ生まれたのか。【コトバから考える社会とこれから】”. VOGUE JAPAN
- ^ “「ジェネレーション・レフト」 アメリカで、日本で、若い私たちが政治を変える”. 東京新聞. (2022年2月11日)
- ^ “斎藤幸平氏インタビュー・後編 海外で広がるジェネレーション・レフト―日本での可能性は”. 全国保険医新聞. (2021年12月5日)
- ^ “時に「対立」辞さず行動 ジェネレーション・レフト、強まる胎動”. 毎日新聞. (2022年7月2日)
- ^ “欧米と逆行? なぜ日本の若者は選挙に行かず「左傾化」もしないのか”. 集英社. (2022年7月7日)日
- ^ a b 今後コロナ世代はどんな影響を受けるのか? 特徴も含めて解説します(マーキャリメディア 2020年5月11日)
- ^ https://www.dodadsj.com/content/0329_generation-z/
- ^ http://hr-recruit.jp/newglossary/dtl/id:1201
- ^ 【医師監修】「コロナ世代」と呼ばれる子供たち。将来の健康二次被害は!?(みやま市工藤内科ブログ 2020年4月30日)
- ^ コロナ世代の子供たちが負う「2カ月休校で生涯賃金300万円減」の枷(PRESIDENT Online, 2020年4月22日)
- ^ “自分たちは「コロナ世代」 弱みは対面の会話 高校生意識調査:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2022年12月7日). 2023年3月6日閲覧。
- ^ 荒川和久 (2022年5月28日). “世代論を唱えるのは常におっさん。小さな全体主義の罠に気を付けよう。”. 日経COMEMO. 2023年5月2日閲覧。
- ^ a b c “カズレーザー、2000年代生まれZ世代からの「老害が多すぎて嫌」相談に神回答 「秀逸」「さすが」の声”. スポニチ Sponichi Annex (2022年9月12日). 2022年9月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年9月17日閲覧。
- ^ “「若者がタイパ主義とは思えない」Z世代研究の第一人者・原田曜平氏が断言の訳”. 濱口翔太郎(ダイヤモンド社) (2023年2月10日). 2023年7月15日閲覧。
- ^ “誤解はなぜ生まれた?「地球にやさしい」では買わない? Z世代の環境意識と消費行動にギャップ”. アイティメディア株式会社 (2023年1月19日). 2023年7月15日閲覧。
- ^ 世古紘子 (2023年7月15日). “若者は本を読んでます”. 中日新聞(朝刊): p. 14頁
- ^ a b 「【米中間選挙】 Z世代の連邦下院議員が誕生、女性やLGBT候補者も相次ぎ初当選」『BBCニュース』英国放送協会、2022年11月9日。2023年5月2日閲覧。
関連項目[編集]
- デジタルネイティブ
- 脱ゆとり世代(Z世代と同世代とされることがある。ただし、脱ゆとり教育をすべての学年で受けた年代は移行措置を含めても2002年度生まれ以降となる)
- 谷間世代
- バブル世代 - 団塊ジュニア (Z世代の親世代)
- ON THE PLANET - ニューヨーク 在住の女性ジャーナリストのシェリーめぐみが「NY Future Lab ミレニアル・Z世代研究所」というコーナーで「これからの時代の主役となる『Z世代』と『ミレニアル世代』にフォーカスする」と「Z世代評論家 シェリーめぐみ」としてインタビュー形式でニューヨーク在住の都市部の若年富裕リベラル層(ジェネレーションレフト)の主張や状況を伝えていた。
- AKIRA-1980年代の作品だが、舞台がZ世代である。主人公をはじめとする不良少年たちの生い立ちや行動様式は現実のZ世代(特にトー横キッズ)にはZ世代である。
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