エイプリルフール

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大阪毎日新聞・1932年3月31日付のエイプリルフール(四月馬鹿)の紹介記事。

エイプリルフール (April Fools' Day) とは、毎年4月1日にはをついても良いという風習のことである[1]

エイプリルフールは、日本語では直訳で「四月馬鹿[1]漢語的表現では「万愚節」、中国語では「愚人節」、フランス語では「プワソン・ダヴリル」(Poisson d'avril, 四月の魚)と呼ばれる。

エープリールフールと表記されることがある。

起源

BBCは「ビッグベンデジタル化」と嘘の報道をした

エイプリルフールの起源は全く不明である。すなわち、いつ、どこでエイプリルフールの習慣が始まったかはわかっていない。有力とされる起源説を以下に挙げるが、いずれも確証がないことから、仮説の域を出ていない。以下に挙げるのは、その例である。

その昔、ヨーロッパでは3月25日を新年とし、4月1日まで春の祭りを開催していたが1564年にフランスのシャルル9世1月1日を新年とする暦を採用した。これに反発した人々が、4月1日を「嘘の新年」とし、馬鹿騒ぎをはじめた[2]

インドで悟りの修行は、春分から3月末まで行われていたが、すぐに迷いが生じることから、4月1日を「揶揄節」と呼んでからかったことによるとする説もある[2][3]。この説によれば、インドの「揶揄節」が西洋に伝わったものがエイプリルフール、中国に伝わったものが「万愚節」になったという[3]

イングランド王政復古の記念祭であるオークアップルデー(en:Oak Apple Day)に由来を求める説がある。

フランスではエイプリルフールを Poisson d’avril(4月の魚)といい、子供達が紙に書いた魚の絵を人の背中にこっそり張り付けるいたずらをする。この『4月の魚』とはサバのことを指すと言われ、ちょうどこの頃にサバがよく釣れるためこう呼ばれるとされる。

日本には大正時代に欧米のエイプリルフールが伝わったが、前述の中国の「万愚節」が江戸時代の日本に伝わり「不義理の日」と呼ばれていたという説もある[3]

エイプリルフールとメディア

東京新聞は「東京タワーが傾く。原因は足元の“おなら”」と嘘報道した(2006年)
多摩地区だけはやたらと詳しい3D地球儀ソフト」の偽記事も登場した(2005年)[4]

4月1日には、世界中で新聞の内容のニュース記事を掲載したり、報道番組でジョークニュースを報道したりといったことが広く行われている。インターネットが普及してからは、実用性のない冗談RFC鳥類キャリアによるIPなど)が公開されたり、ウェブサイトではジョークコンテンツを公開するといったことも行われる。

ジョークの規模についても、簡易なものから大きな労力をつぎ込んだものまで存在し、公式サイトにおいては、個人発から大手企業発まである。時に、閲覧者から嘘の情報の内容についての問い合わせが来ることもある(BBCの「ビッグ・ベンデジタル化、およびそれによる時計針のプレゼント」(1980年、2008年)「ペンギンが空を飛ぶ」(2008年)[5]など)。

なお、かつては新聞社や通信社が掲載または配信した嘘の記事を、別のメディアが情報元を真に受けてしまい、本当のニュースとして報道したことがあった。1995年には「ドイツの哲学者ユルゲン・ハーバーマスが初の小説『山々の彼方に』を出版する」という記事が日本朝日新聞にニュースとして掲載された[6]。しかし、出典元のフランクフルター・アルゲマイネの記事がエイプリルフールの冗談であったとして、後に記事を撤回した[7]。1999年に朝日新聞が掲載した「(当時の)小渕恵三内閣が閣僚に外国人の登用を検討している」との記事を外国メディアが速報として報じたり[注 1][8]、2005年に東京新聞が掲載した「スマトラ沖地震の余波で沖縄南端に新島が出現」という記事を[9]韓国京郷新聞がニュースとして掲載するなどの事例がある。

東京新聞の「こちら特報部」は、2001年平成13年)から4月1日に、エイプリルフールの記事を紙面に掲載していると共に、エイプリルフール連動広告を組んでいる[10]

情報として公開するインパクトが強い日でもあるため、本当の記事や発表も紛れ込ませ、後の日に本当であることを公表し印象付けるケースもある。

中華人民共和国では、新華社2016年4月1日に『エイプリルフール』について「中国の特色ある文化や社会主義の核心的価値に合わない。便乗して参加せず「嘘をつかない、嘘を伝え広げない、嘘に惑わされない」様に新浪微博で呼びかけたが、中国のインターネットユーザーは「国営メディアは毎日が嘘情報」「中国人民は67年間も嘘を付かれ続けてきた」「西洋諸国にとって、エイプリルフールは4月1日が過ぎれば終わりだが、中国では年中エイプリルフールだからな」「冗談も言えないような民族は悲しいものだよ」とブラックジョークとして皮肉り、イギリスガーディアンアメリカ合衆国ニューヨーク・タイムズも「2016年のベストジョーク」として報道した[11][12]

2016年アメリカ合衆国大統領選挙で、いわゆる偽ニュース(フェイクニュース)が社会問題化すると、北欧メディアなどでは2017年から伝統となっていたエイプリルフール記事を自粛するようになった[13]

エイプリルフールを題材にした作品

脚注

注釈

  1. ^ なお、小渕は「今日は4月1日だろ」と受け流した上で、「日本人(の政治家)でも十分な仕事ができると思う」「(外国人を登用するなら)もっと若い人にお願いしたい」と語ったという。
  2. ^ 2004年に稼働し、2005年にこの曲が解禁された。

出典

  1. ^ a b 岩波書店『広辞苑 第六版』
  2. ^ a b PHP研究所 『[四訂版]今日は何の日 話のネタ365日』、p.67
  3. ^ a b c ひろさちや『やじうま歳時記』文藝春秋、1994年、44-45頁。ISBN 4-16-348350-0
  4. ^ 多摩地区だけはやたらと詳しい3D地球儀ソフト「TAMA World Wind」”. 窓の社. インプレス (2005年4月1日). 2016年9月1日閲覧。
  5. ^ Penguins - BBC - YouTube
  6. ^ 「海外文化 ハーバーマスの初の小説を出版」『朝日新聞』1995年5月18日付東京夕刊、9頁。
  7. ^ 「おわび」『朝日新聞』1995年6月14日付東京夕刊、5頁。
  8. ^ 「日本初の外国人総理大臣」虚構新聞が話題 ソースは20年前の朝日新聞?→調べてみると記事実在!”. J-CASTニュース (2020年11月9日). 2020年11月21日閲覧。
  9. ^ 沖縄に『幻の新島』 地震頻発で再浮上”. 東京新聞 (2005年4月1日). 2005年4月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月21日閲覧。
  10. ^ DIRECT2013東京新聞 (PDF)
  11. ^ 佐渡道代 (2016年4月5日). “エイプリルフールの傑作に新華社のコメント”. 大紀元. http://www.epochtimes.jp/2016/04/25488.html 2016年4月10日閲覧。 
  12. ^ 北田 (2016年4月1日). “中国官製メディアがエイプリルフールを批判、中国ネットは怒り「これこそがジョーク」「自分たちは毎日がエイプリルフールのくせに」”. レコードチャイナ. http://www.recordchina.co.jp/a132399.html 2016年4月10日閲覧。 
  13. ^ 「偽ニュース」騒動余波、北欧メディアがエープリルフールを自粛”. AFP. 2017年4月1日閲覧。

参考文献

関連項目