帰ってきたドラえもん
![]() |
帰ってきたドラえもん | |
---|---|
監督 | 渡辺歩 |
脚本 | 城山昇 |
原作 | 藤子・F・不二雄 |
出演者 |
大山のぶ代 小原乃梨子 野村道子 たてかべ和也 肝付兼太 千々松幸子 中庸助 |
音楽 | 菊池俊輔 |
主題歌 | 山野さと子「青い空はポケットさ」 |
撮影 | 熊谷正弘 |
編集 | 岡安肇 |
制作会社 | シンエイ動画 |
製作会社 |
シンエイ動画 テレビ朝日 小学館 |
配給 | 東宝 |
公開 |
![]() |
製作国 |
![]() |
言語 | 日本語 |
次作 | のび太の結婚前夜 |
『帰ってきたドラえもん』(かえってきたドラえもん)は、1998年3月7日に『ドラえもん のび太の南海大冒険』と同時上映公開された、ドラえもんの映画作品。感動中編シリーズの第1作目でもある。
概要[編集]
2編の原作を繋げて、1本の作品にしている。
- 「さようならドラえもん」:てんとう虫コミックス『ドラえもん』6巻最終話。雑誌『小学三年生』1974年3月号に掲載
- 「帰ってきたドラえもん」:てんとう虫コミックス『ドラえもん』7巻第1話。『小学四年生』1974年4月号に掲載
本作では、原作では登場しなかったしずかやドラミ、のび太の祖母(のび太の回想シーンのみ)の登場など大幅な追加が行われた。また、ジャイアンが夢遊病という設定はなくなっている他、ドラえもんが密かに未来へ帰るシーンがある等一部演出も原作と異なっている(詳しくは後述)。一方で、ドラえもんが未来に帰らなければならなくなった理由については原作では不明だったが、こちらは映画版でも明らかにされていない。
予告映像では原作「さようならドラえもん」のラストシーンが使われており、原作ではのび太がドラえもんがいなくなった寂しさを噛みしめながらも乗り越えることを誓っているのに対し、本作ではドラえもんが帰ってくることを願っており、ドラえもんの声を聴いて、喜びを見せている。
本作から2002年の『ぼくの生まれた日』までの5作の併映作品は、原作者である藤子・F・不二雄の没後、その心を受け継ごうとする者たちが、原作漫画の中から選んだ作品を映画化したもので、「ドラえもん感動シリーズ」と呼ばれる[1]。この5作で監督を務めた渡辺歩は、後年に『のび太の恐竜2006』の監督も務めた[1]。
物語のあらすじ[編集]
いつものようにジャイアンにいじめられ、ドラえもんに泣きつくのび太。しかし、ドラえもんは憂鬱そうな感じを見せる。実はドラえもんは未来の世界へ帰らなければならなくなったのだ。のび太は必死に止めるがパパの言葉と亡き祖母との思い出のダルマを経て、「ダルマと同じように転んでも起き上がる」ことを思い出し、ドラえもんとの別れを受け入れることにする。
お別れパーティーを終えた後、寝付けないことから夜の町を散歩する2人。ドラえもんが離れている間、のび太は同じように夜の散歩をしていたジャイアンと遭遇。昼間の件から殴ろうとするジャイアンに対し、のび太はドラえもんから心配を払拭させるべく、無謀を承知で単身ジャイアンに挑む。いなくなってしまったのび太を探すドラえもんの目に映ったのは何度殴られてもジャイアンに立ち向かったのび太がジャイアンを根負けさせた光景だった。ボロボロの身ながらも自分だけの力でジャイアンに勝ったことを誇らしげに語るのび太に涙するドラえもんはのび太を連れ帰り、眠ったのを見届けた後、未来の世界に帰還する。
のび太はドラえもんがいない寂しさを噛みしめながら、ドラえもんはのび太との最後の思い出の場所である公園跡地に毎日のように足を運びながら、日々を過ごす。それでも2人はしずかやドラミたちの気遣いもあり、前を向こうとしていた。
そんなある日、のび太はジャイアンから「ドラえもんを見かけた」と教えられる。どら焼きを買い、ドラえもんを探し回るのび太だが、そのドラえもんはスネ夫が化けた偽物であり、全てはジャイアンがエイプリルフールにかこつけて、先日のケンカの仕返しに行ったことだった。悔しさと怒りのあまり、自分を心配して様子を見に来たしずかを意に介さず、落としたどら焼きも置いて逃げ帰ったのび太はドラえもんが残した道具・ウソ800を使い、言ったことを嘘にすることでジャイアンとスネ夫に仕返しするが急に空しくなり、2人を許す。
帰宅したのび太はママに「ドラちゃんには会えたの?」と問われて「ドラえもんは帰ってこない」と返答する。自室に戻ったのび太の目に映ったのは本物のドラえもんであった。ウソ800の効力が残っていた為、ドラえもんは帰ってこないことが嘘になったのだ。のび太が落としたどら焼きを手に野比家に足を運んだしずかとジャイアンとスネ夫もドラえもんと再会を果たし、皆、和解するのだった。
キャスト[編集]
- ドラえもん - 大山のぶ代
- のび太 - 小原乃梨子
- しずか - 野村道子
- ジャイアン - たてかべ和也
- スネ夫 - 肝付兼太
- ママ - 千々松幸子
- パパ - 中庸助
- ドラミ - よこざわけい子
- ジャイアンの母 - 青木和代
- 店員 - 巴菁子
- 子供 - 佐藤ゆうこ
スタッフ[編集]
- 原作 - 藤子・F・不二雄
- 監督・作画監督 - 渡辺歩
- 脚本 - 城山昇
- 美術監督 - 明石聖子
- 撮影監督 - 熊谷正弘
- 録音監督 - 大熊昭
- 音楽 - 菊池俊輔
- 編集 - 岡安肇
- 動画チェック - 原佳寿美
- 色彩設計 - 照屋美和子
- 原画 - 尾鷲英俊、加来哲郎、石井智美、石黒育、福本勝、本多哲、佐々木よし子
- 彩色 - スタジオキリー、ベガエンタテイメント
- 特殊効果 - 前川孝
- リスマスク - マキ・プロ
- アニメーション協力 - 松土隆二、武井健
- 背景 - 土師勝弘、古賀徹、岡部真由美、天水勝、松本吉勝、本多美紀、新井由華、伊藤朱美
- 撮影 - 角原幸枝、山田廣明、倉田佳美、木次美則、鈴木浩司、金子仁
- 編集 - 小島俊彦、中葉由美子、村井秀明、川崎晃洋、三宅圭貴
- 効果 - 横山正和
- 録音スタジオ - APUスタジオ
- ミキサー - 内山敬章
- アシスタントミキサー - 田口信孝
- 音響制作 - オーディオプランニングユー
- 音響制作デスク - 小澤恵
- 音楽協力 - 立原一
- 技術協力 - 森幹生
- タイトル - 道川昭
- 現像 - 東京現像所
- プロデューサー - 増子相二郎、木村純一、梶淳
- 制作協力 - 藤子プロ、ASATSU
- 制作 - シンエイ動画、小学館、テレビ朝日
原作との変更点[編集]
- 原作には登場しなかった、ドラミ、しずか、のび太の祖母(回想のみ)が登場する。
- のび太が押し入れの中で泣くシーンがある。また、原作では「何とかして」と泣きつくのび太にのび助が「男らしくあきらめろ」と厳しく言うシーンがあるが、映画では押し入れで泣いているのび太を慰めている。この時、のび助は、のび太の祖母が亡くなった時にものび太が似た行動を取っていた事を語っており、のび太は押し入れにあった祖母との思い出のダルマ(原作単行本第18巻)を見て、祖母との約束「何度転んでも起き上がるよ」を思い出す。また、エンディングのラストカットで書かれる雲もダルマの形をしたものになっている。
- 野比家がドラえもんとのお別れパーティーを開くシーンで、原作ではのび太は暗い顔をしていたが、映画では祖母との約束を思い出して立ち直った為、笑顔でドラえもんとどら焼きで乾杯していた。
- 「ねむらなくてもつかれないくすり」が登場しない。
- ドラえもんとのび太が夜の散歩で一休みする場所が空き地ではなく、公園に変更。それにより、のび太とジャイアンの決闘場所も公園に変更。また、テレビアニメ第2作第1期の同話でも場所が公園になっている。
- 涙を見せまいと途中でのび太と別れた時のドラえもんの台詞が、原作では「その辺を散歩して来る」だが、映画では「ちょっとトイレに…」となっている。この時のび太が「(ドラえもんはロボットだから)トイレなんか行かないくせに」と言っているが、過去のエピソードでドラえもんがトイレに行くシーンがあった。
- ジャイアンが夢遊病になっておらず、ドラえもんとのび太のように夜の街を散歩中にのび太と遭遇したが、散歩していた理由は明らかになっていない。
- のび太とジャイアンの一騎討ちのシーンで、途中から雨が降っている。
- 原作では、のび太が目を覚ました頃にはドラえもんは、もういなくなっていたという演出になっているが、映画ではドラえもんがのび太にそっと別れを告げながら未来へ帰って行くシーンが描かれている。また、のび太が寝言でドラえもんの名前を二度呟いている。
- 22世紀に帰還したドラえもんが満開の桜の下でドラミと談笑する描写が追加。原作漫画では22世紀帰還後については読者の想像に任せており、一切触れていない。なお、ドラえもんとドラミがいる場所は、ドラえもんとのび太が夜に立ち寄った公園の跡地である。それを示すかのように、現代で桜の木の後ろにある高架を走っていた電車はリニアモーターカーのような車両に替わっている。
- ドラえもんが最後に置いていった、ドラえもんを象った箱の存在をのび太が初めて知るタイミングが異なる。原作ではドラえもんと別れる前に既に箱を渡されていたが、映画ではドラえもんが未来へ帰った後、タイムマシンの入り口だった机の引き出しから初めて箱を見つけている。また、箱の仕様も「一度だけ必要な道具が出てくる」設定となっている(原作では回数制限については特に触れられていない)。
- ウソ800の効力が75分となっている。また、液体が「真っ赤なウソ」に因み、赤色になっている。
- のび太が外出するキッカケが異なる。原作ではスネ夫に呼び出されるが、映画では自ら進んで買い物に出かけ、帰宅途中、しずかに会う。それに伴い、のび太がスネ夫のウソで犬に追いかけられるシーンがカット。
- のび太がジャイアンの嘘に気付くシーンが異なる。原作ではドラ焼きを買いに行く途中、道端でジャイアンとスネ夫の話を聞いて気付くが、映画ではドラ焼きを買った後、ドラえもんに変装したスネ夫を見つけ、追いかけ続け、先日の公園まで行き着いた矢先、嘘であることやジャイアンが「決闘の時の仕返し」であることを明かした。
- ウソをつかれたのび太が「後ろにお化けがいるぞ」と咄嗟にウソを返すシーンがない。その後、しずかが泣き崩れるのび太を慰めるシーンがあり、ジャイアンとスネ夫のウソに薄々感付いていたしずかは「こんなことだと思ったわ…」ともの悲しげに述べている。
- ドラえもんの箱の中に説明書が同梱されておらず、代わりにドラえもんの声で説明が入る。また、のび太は箱を開けることに初めは葛藤していたが、ジャイアンとスネ夫への強い悔しさを思い出し、開けることにした。
- のび太が「ウソ800」を飲む際、原作では途中で残していたが、映画では飲み干していた。
- のび太の決め台詞として「ドラえもんの最後の力だ!!」とジャイアン、スネ夫に言い放つカットが追加。
- のび太がジャイアンに仕返しするシーンで、原作では「君はママに褒められる。嫌というほど」と言っていたが、映画では「君はママに叱られない。ちっとも」と言っている。
- 原作ではジャイアンは母ちゃんに連れて行かれるが、映画では、その場でお仕置きされる。
- 原作では、のび太は痛い目に遭っているジャイアンとスネ夫を嘲笑うだけだったが、映画では「今のは全部、本当」と言うことで2人を解放した。
- のび太が「ドラえもんは帰ってこない、二度と会えない」と言うタイミングが異なる。映画ではジャイアンとスネ夫に仕返しをした直後の独り言で「さようならドラえもん」呟き、さらに「桜ももう終わりだね」と言った直後に散り始めで葉桜混じりの桜が満開となる旧作アニメにも存在しなかった映画オリジナル場面が挿入された。また、桜の場面は、前述の22世紀のドラえもんとのリンクともなっている。
- 原作において、現代に帰還したドラえもんは最初は自分にも、その理由が分からずにいたが、ウソ800を見て、理由に気づいたが、本作では、のび太と再会する前に気づいていた。
- 原作では、ドラえもんとのび太の再会で幕引きとなったが、本作では、再会後の話が追加されており、野比夫妻が1階から2人の再会を知り、玉子はドラえもん用にハンバーグを追加。のび太が落としたどら焼きを持って、のび太に「ドラえもんが帰ってきた」というウソをついた事を野比家まで謝りに来たジャイアンとスネ夫、のび太を心配しに来たしずかが、のび太と共にドラえもんが帰ってきたことを喜ぶシーンもあり、ジャイアンは泣きながら謝罪している。そしてエンディングでは空き地で草野球をしているドラえもんとのび太、ジャイアン、スネ夫とそこにやってくるしずかと今までの日常に戻った様子が描かれている。
主題歌[編集]
受賞歴[編集]
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ a b 大山のぶ代『ぼく、ドラえもんでした。 涙と笑いの26年うちあけ話』小学館、2006年6月、169頁。ISBN 978-4-09-387654-4。
- ^ “過去のゴールデングロス賞 - 全国興行生活衛生同業組合連合会”. Japan Association of TheaterOwners. 2020年10月17日閲覧。
関連項目[編集]
|