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女性の食事を描いたポスター(1900年、フランス、パリ、レオネット・カッピエロ作)

(しょく)は、通常、従属栄養生物生理的熱量を供給し、成長を可能にするために、食物を摂取することである。動物などの従属栄養生物が生きていくためには、食べることは不可欠である。肉食動物は他の動物の肉を、草食動物は植物を食べ、雑食動物は動物の肉と植物の両方を食べ、腐食性生物英語版デトリタスを食べる。菌類は、体内の食物ではなく、体外の有機物を消費する。人間にとって食は、日常生活動作の一つである。しかし、人によっては栄養摂取量を制限することがある。これは、ライフスタイルの選択の結果、飢え飢饉ダイエットの一環や宗教上の断食であったりする。

ヒトの食習慣[編集]

ビスケットを食べている女性(イングランド)
ケーキを食べている女性

多くの家庭では、食べ物や料理の準備のために、広大なキッチンが設けられており、また、食堂カフェテリアなど、食事のために指定された場所があることもある。多くの社会では、外出先や調理する時間がないとき、あるいは社交的な場でも食事かできるように、レストランフードコート、街頭で屋台が食事を提供するストリートフード英語版が存在する。[1]。人びとの最高レベルに洗練された技術により、これらの場所は、「グローバルなコスモポリタニズム神話の劇場型光景」となる。[2]ピクニックありあわせの料理英語版フードフェスティバル英語版など、食事を一番の目的とした社交の場も存在する。多くの社会的なイベントでは、参加者に飲食物が提供される。

人間は一般的に、一日に2、3回の食事をとる[3]。食事と食事のあいだに、軽食を少量摂る場合もある。イギリスの医師は4~6時間の間隔で[4] 、1日3食(1食あたり400〜600kcal)を推奨している[5][6]。バランスのとれた食事(皿の半分を野菜、1/4を肉などのタンパク質、1/4をパスタや米などの炭水化物とする[7])を3度とる場合、合計約1800~2000kcalとなり、これは普通のひとの平均的な必要量にあたる[8]

シャーリア法の適用地域では、ラマダンの昼間に、成人のイスラーム教徒が食事をとることは、ことによると禁止される[9][10][11]


ヒトの発達[編集]

レストランで、フォークを使って食事をする男性
ウズベキスタンの伝統的な食事の仕方

新生児は成人の食べものを口にせず、母乳や調合乳のみで生きていく[12]。 生後2~3ヶ月の幼児には、少量のピューレ状にした食べものを与えることもある。 が、ほとんどの乳児は生後6か月から8か月になるまで大人の食べ物を口にしない。 幼い赤ん坊は、歯が少なく、消化器官も未発達なので、ピューレ状のベビーフードを食べる。 生後8~12ヶ月になってくると、消化機能が発達し、手づかみで食べ始める。しかし、彼らの食事内容はまだ限られている。なぜならこの時期の赤ちゃんは、臼歯犬歯がなく、また、切歯の数も限られていることが多いからである。 生後18か月になると、赤ん坊は、十分な歯と消化機能を持ち合わせ、 大人と同じものを食べられるようになる。 子どもにとって食べることを覚えるのは面倒な作業であり、食事のマナーが身につくのは、5〜6歳になってからという場合が多い。

人間を含めて多くの動物は、初めて見る食べ物に対して恐れの感情を覚えたり、警戒行動を取る傾向が備わっており、こうした本能的な行動や心理を心理学では新奇性恐怖と呼んでいる[13]。また、ある特定の食べ物を食べた後に気分の悪化や嘔吐を経験したり、食べた食品から異臭や味の違和感を感じる経験をした後は、その食品に対して生理的な忌避感が生じて食べられなくなる場合があり、こういった反応は食物嫌悪学習と呼ばれている[13]

ある食品に対する好き嫌いや偏食を克服するために、食感を変えたり鼻を摘んで食べるなどの工夫をする場合があるが、特定の食品に対する好き嫌いの変化は単純接触効果と相関がある。ある食品に対する好き嫌いはその食品に接する回数に依存しており、その食品を特に問題なく食べられた経験が何度も繰り返されると、その食品に対する嗜好性は上昇する[13]

食事の姿勢[編集]

世界の各地域では、食事をする際の姿勢が影響を受ける文化によって違ってくる。例えば、中東などの地域だと、床に座って食事をとるのは当然のことであり、それは、テーブルを使うよりも、より健康的と言われているからである[14] [15]

古代ギリシャ人は、シンポジウムという祝いの場にて、座った状態での食事を好んだ。そして、この伝統はそのまま、古代ローマでも取り入れられ[16]古代ヘブライ人もまた、伝統的な祝典である過越にて、この姿勢を取り入れた[17]

箸を使って食事をする女性


強迫性過食[編集]

強迫性過食(感情的とも)とは、「ネガティヴな感情に反応して食べてしまう傾向」である[18]。実験的な研究では、不安を抱えていると正常体重の人では食事の摂取量が減り、肥満の人では、反対に摂取量が増えることが指摘されている。[19]

手を使って食事をするひとたち(エチオピア)

さらに、多くの実験に基づく研究では、標準体重を超えている人のほうが、より強い感情的な反応性を持っており、その人たちは、標準体重の人と比べ、悩んでいるときに過食しやすい傾向があると指摘されている[20]

正常な女子大生と肥満の女子大生の感情的な食事をもとに、感情による反応性を比較した、ある自然的な研究では、肥満者の過食傾向が明らかになった。しかし、その研究結果は、間食のみにあてはまり、ふつうの食事にはあてはまらなかった。要するに、肥満者は、食事の最中に食べる量そのものが増える傾向はみられず、むしろ食事と食事のあいだに間食をたくさん摂っていたことが判明した。そこから、肥満の人は他人といっしょに食事をすることが多いが、他の人がいることで苦痛が軽減されることを理由に、平均より多く食べないこと、そして、肥満の人は食事の際、社会的な望ましさゆえに、他の人よりも多く食べないことが説明できる 。逆に、間食は一人で食べることが多い[20]

空腹と満腹感[編集]

人間の手で手伝われながら食事を行う子犬(ドイツ)

食事の開始と終わりを制御する生理学的な構造は数多くある。食物摂取の制御は、生理学的に複雑かつ意図的な行動様式である。コレシストキニンボンベシンニューロテンシン英語版アノレクチン英語版カルシトニンエンテロスタチン英語版レプチン副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンなどのホルモンは、どれも食物摂取を抑制するはたらきがあることがわかっている[21][22]

食事の開始[編集]

空腹を感じさせる信号は数多くある。空腹を感じさせる信号には、環境によるもの、消化管によるもの、代謝によるものがある。環境による信号は、身体の感覚により発動される。空腹感は、食べもののにおいや食べものについて考えたこと、皿を目にする、誰かが食べものについて話しているのを聞くことによって起こりえる[23]。胃からの信号は、ペプチドホルモンであるグレリンが放出されることでは開始される。また、グレリンは、空腹感を脳に与えることで、食欲を増進させるホルモンである[24]

空腹感をもたらす信号は、環境によるものやグレリンだけではなく、他に代謝によるものがある。食事と食事のあいだに時間がたつと、栄養を貯蔵しているところから、栄養をからだに吸収し始める[23]。細胞内のグルコース濃度の低下を感知すると、からだは空腹感を感じ始め、また、細胞内の脂質の低下を感知することで、からだは食べることを促す。

食事の終了[編集]

食事は、普通、腸や胃、肝臓などからの命令、もっと具体的に言うと、脂肪由来の複雑な組織による命令によって、食事の開始・終了が調節される[23]

食事のにおいや味覚は、短期満腹感に寄与することができ、身体が、食べることをやめる時期を、知ることができる。腸には、満腹信号を送る受容体の働きがあり、また、コレシストキニンは、十二指腸から放出され、胃が空になる割合を制御する働きがある[25]。ペプチド YY 3-36、インスリン、は、満腹信号を脳に送る働きがある(そしてのちに脳は、血液中のそれらのホルモンを検出する。)

長期間における満腹感は、脂肪組織に蓄えられた脂肪分に由来する。脂肪組織は、食欲を抑える働きのある、レプチンというホルモンを分泌する。脂肪組織由来の長期満腹信号は、短期満腹信号を調節する働きがある。

満腹感は生理現象以外に、生体の嗜好の認知にも左右される。例えば、同じ食品を食べ続けた場合「美味しい」という感性が低下し、それ以上食べることができなくなるが、食後のデザートが現れると別の食欲が湧き美味しく食べられる、いわゆる「デザートは別腹」現象がある。こういった現象は感性満腹感と呼ばれている[13]

脳の役割[編集]

脳幹は、身体から空腹および満腹信号を検出する神経回路を持っているため、食物摂取を制限することができる[23]。脳幹における食物摂取の関与は、ネズミを使った動物実験によって研究されている。脳幹内のニューロンが脳半球の神経回路からり離されたネズミは、食べ物に接近したり、食事を行ったりすることができない[23]。代わりに、そのネズミらは液体の形で栄養を摂らなければならなくなる。この実験は、脳幹が食事の役割をしているという事を指名している。

視床下部には、メラニン濃縮ホルモン英語版オレキシンという二つのペプチドが存在する。メラニン濃縮ホルモンは、空腹感を引き起こす役割がある。ネズミの場合、メラニン濃縮ホルモンは摂食を刺激し、それを過敏産生を引き起こす突然変異は過食および肥満を引き起こした事例がある[26]。オレキシンの場合、食事と睡眠の関係を制御する上で大きな役割を果たしている。視床下部の摂食を誘導する他のペプチドは、神経ペプチドY(NPY)とアグーチ関連タンパク質(AGRP)である[23]

視床下部における満腹感は、レプチンによって刺激される。レプチンは、弓状核上の受容体を標的とし、MCHおよびオレキシンの分泌を抑制する。弧状の核には、飢えを抑える2つのペプチドも含まれている。それぞれ、コカインおよびアンフェタミン調節転写物(CART)英語版とα-MSH(α-メラノサイト刺激ホルモン)である[23]

疾患[編集]

食事は、一般に空腹感英語版により引き起こされる。しかし、食欲に影響を及ぼし正常な食事パターンを崩させるような身体的および心理的な異常というものが数多く存在する。うつ病食物アレルギー、特定の化学物質の摂取、過食症拒食症脳下垂体の機能不全、内分泌の異常、そしてその他多くの病気や摂食障害がこれに含まれる。

栄養のある食物が慢性的に不足すると、さまざまな病気の原因となり、最終的には飢餓につながる。ある地域で大規模に発生するものは、飢饉と見なされる。

手術後の回復期によく見られるが、食べたり飲んだりができない場合には経腸栄養[27]および非経口栄養英語版で摂食を代替する[28]


関連項目[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ John Raulston Saul (1995), "The Doubter's Companion", 155ページ
  2. ^ David Grazian (2008), "On the Make: The Hustle of Urban Nightlife", 32
  3. ^ Lhuissier, Anne; Tichit, Christine; Caillavet, France; Cardon, Philippe; Masulo, Ana; Martin-Fernandez, Judith; Parizot, Isabelle; Chauvin, Pierre (December 2012). “Who Still Eats Three Meals a Day? Findings from a Quantitative Survey in the Paris Area.”. Appetite 63: 59–69. doi:10.1016/j.appet.2012.12.012. PMID 23274963. https://www.researchgate.net/publication/234011608 2020年9月19日閲覧。. 
  4. ^ Sen, Debarati (2016年7月27日). “How often should you eat?”. The Times of India. http://timesofindia.indiatimes.com/life-style/health-fitness/diet/How-often-should-you-eat/articleshow/15616282.cms 2017年5月25日閲覧。 
  5. ^ Be calorie smart 400-600-600”. nhs.uk. 2017年5月25日閲覧。
  6. ^ Cut down on your calories”. nhs.uk (2015年10月15日). 2017年5月25日閲覧。
  7. ^ Vegetables and Fruits”. The Nutrition Source (2012年9月18日). Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
  8. ^ Daily Calorie Requirements of An Adult Male, Female”. www.iloveindia.com. Template:Cite webの呼び出しエラー:引数 accessdate は必須です。
  9. ^ Sharia and Social Engineering: 143ページ, R. Michael Feener - 2013
  10. ^ FOOD & EATING IN MEDIEVAL EUROPE - 73ページ, Joel T. Rosenthal - 1998
  11. ^ Conscious Eating: Second Edition -9ページ, Gabriel Cousens, M.D. - 2009
  12. ^ How to combine breast and bottle feeding”. nhs.uk. 2017年10月5日閲覧。
  13. ^ a b c d 三浦佳世・河原純一郎(編著)『美しさと魅力の心理』 ミネルヴァ書房 2019年、ISBN 978-4-623-08659-7 pp.132-133.
  14. ^ Donovan, Sandy (2010). The Middle Eastern American Experience. United States: Twenty-First Century Books. pp. 68. ISBN 9780761363613 
  15. ^ Brito, Leonardo Barbosa Barreto de; Ricardo, Djalma Rabelo; Araújo, Denise Sardinha Mendes Soares de; Ramos, Plínio Santos; Myers, Jonathan; Araújo, Claudio Gil Soares de (2012-12-13). “Ability to sit and rise from the floor as a predictor of all-cause mortality” (英語). European Journal of Preventive Cardiology 21 (7): 892–898. doi:10.1177/2047487312471759. ISSN 2047-4873. PMID 23242910. 2013-01-12時点におけるアーカイブ。. エラー: |archivedate=を指定した場合、|archiveurl=の指定が必要です。. http://cpr.sagepub.com/content/early/2012/12/10/2047487312471759. 
  16. ^ The Roman Banquet”. The Met. Metropolitan Museum of Art. 2019年4月13日閲覧。
  17. ^ Reclining”. A Virtual Passover. 2019年4月13日閲覧。
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  19. ^ R. J., McKenna (1972). “Some Effects of Anxiety Level and Food Cues on the Eating Behavior of Obese and Normal Subjects: A Comparison of Schachterian and Psychosomatic Conceptions”. Journal of Personality and Social Psychology 22: 311–319. doi:10.1037/h0032925. 
  20. ^ a b Fisher, E. B. Jr (1983). “Emotional Reactivity, Emotional Eating, and Obesity: A Naturalistic Study”. Journal of Behavioral Medicine 6: 135–149. doi:10.1007/bf00845377. 
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  24. ^ Funai, M.D. Edmund. “Ghrelin, Hormone That Stimulates Appetite, Found To Be Higher In PWS”. 2012年4月29日閲覧。
  25. ^ Role of cholecystokinin in appetite control and body weight regulation.. 6. pp. 297-306. doi:10.1111/j.1467-789X.2005.00212.x. PMID 16246215. 
  26. ^ Shimada M. “MCH (Melanin Concentrating Hormone) and MCH-2 Receptor”. 2012年4月29日閲覧。
  27. ^ (英語)Pediatric Feeding Tube”. Feeding Clinic of Santa Monica. 2017年1月7日閲覧。
  28. ^ Heisler, Jennifer. "Surgery." About.com. N.p., May–June 2010. Web. 13 Mar. 2013.