飢え

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飢え(うえ)とは、肉体的空腹感を頻繁に経験する、またはそのことを恐れて生活している人(あるいはその他の生物)の社会的状況を表現する際に使用される、もっとも一般的な用語である。

栄養失調、飢饉、飢餓[編集]

  • 栄養失調は、不適切な食事や栄養によって引き起こされる状況をいう一般的な用語である。
  • 飢饉とは、あらゆる動物相に当てはまるかもしれない、広範囲に及ぶ食糧不足をいう。 この現象は、ふつう局地的な栄養失調、飢餓、伝染病、死亡率の増加などを伴う。
  • 飢餓 とは、「食糧不足に起因する身体の極度の疲労状態」のことをいう。これは死に先行するかも知れない状態である。

飢餓の統計[編集]

2020年7月、全世界の栄養失調者数が2019年で6億8,780万人に達したと報告された。[1] これは世界の総人口のおよそ11分の1に相当する。

2019年の時点での世界の栄養失調者の数は、2005年以降最も低かった2014年の6億2,890万人から約5,890万人増加している[1]FAOは、世界は全人類(すなわち77億人[2])を養うのに十分な食糧を既に生産しており、約1.6倍の120億人にでさえ食糧を供給しうると主張している[3]

年次 1970 1980 1990 2005 2010 2015 2019
発展途上国における栄養失調者の割合[4][5][1] 37 % 28 % 20 % 13 % 10 % 9 % 9 %

注:中国など人口の多い国々の重要なデータの更新の際、2000年まで遡ってより正確に見直された結果、世界の飢餓人口の推定数は減少している。そのため、2000年以降と1999年以前のデータは異なることに留意する[6]

世界の地域別では、2019年時点で、サブサハラアフリカでは、約22.0%(2億3,470万人)もの人々が栄養失調に苦しんでいる。特に、東アフリカ(約27.2%、2億3,470万人)と中部アフリカ(約29.8%、5,190万人)は高い傾向にある。人数では、南アジアが2億5,730万人(地域内の栄養失調者の割合:約13.4%)であり、サブサハラアフリカと南アジアで約71.5%を占める[7]

また、新型コロナウイルの流行による影響により、食料サプライチェーンの混乱や新型コロナ封じ込め措置による季節労働者や移民に経済的依存をする地域での労働移動制限と国内外の市場や輸送された食品へのアクセス困難によって、2020年は約8260万人~約1億3,220万人が栄養失調の危機に瀕していると推測されている。また、最も悲観的なシナリオの場合、2030年は栄養失調者数が9億人が超えることが予測されている[8]

更に2014年以降、栄養失調者数は増加傾向にあり、この傾向が2030年まで続いた場合、栄養失調者数は新型コロナの流行による影響を除いた場合でも、約8億4,140万人となり、約半数がアフリカで栄養失調に苦しんでいることになる[9]。そして、アフリカ地域の栄養失調者の大部分を占めるサブサハラアフリカでは2019年に比べて約1.75倍の約4億1,180万人となり、栄養失調者率は3割近くとなる。特に東アフリカと中部アフリカは3割を超えると予測されている[7]

栄養失調死亡率の統計[編集]

  • 平均すると、栄養不足の直接的もしくは間接的な結果として、3.6秒ごとに1人が死亡している。[10][11][12]
  • 栄養不足の直接的もしくは間接的な結果として、年間約310万人の5歳未満の子どもが死亡している。時間換算すると、10.2秒ごとに1人が死亡している。[13][14]

アメリカ合衆国における飢え[編集]

食事宅配サービスを行っているミールズ・オン・ホイールズ・アメリカ協会(MOWAAF)は、飢えは米国の何百万もの高齢者が直面している深刻な脅威であり、その問題を理解することは救済策を開発するための重要な第一歩であるとした。

2007年にMOWAAFは、ハラーズ 基金による費用負担のもとで、「アメリカにおける高齢者の飢えの原因、結果および展望」と題した調査研究を委託した。[15] その報告は2008年5月ワシントンD.C. で、アメリカ合衆国上院 高齢化に関する特別委員会の公聴会で公表された。

研究の結果、アメリカでは、高齢者の500万人以上(全高齢者の11.4%に相当)が何らかの形の食糧不安を経験している、すなわち言い換えるとわずかに食糧が不足しているのだと分かった。そのうち約250万人が飢えの危険性にあり、およそ75万人が経済的な理由で飢えに苦しんでいる。より飢えの危機にさらされやすい高齢者というのもいる。高齢者人口全体の代表と比べて、限られた収入の人、70歳未満の人、アフリカ系アメリカ人ヒスパニック、未婚者、借家人、及びアメリカ合衆国南部在住の高齢者などはみな飢えの危険性が比較的高い。 特定の高齢者は飢えの危険性がより高い一方で、飢えは所得の程度に関係なく起こりうる。例えば、飢えの危険がある全高齢者の半数以上が貧困線を上回る収入を得ているのだ。同様に、そのようなことは、あらゆる人口集団にも言える。例を挙げると、飢えの危険性がある高齢者のうち、白人が3分の2を超えている。飢えの危険性には、家族構成、特にひとり暮らしや孫と生活をしている高齢者のそれに渡って、著しい相違点がある。ひとり暮らしでは、既婚の高齢者に比べて2倍も飢えを経験しやすい。飢えの危険にさらされているのが、現在孫と同居していない世帯ではおよそ20に1つであるのに比べ、孫と暮らす(が成人した子どもはいない)高齢者世帯では5つに1つである。非都市地域に住む高齢者も、大都市圏に住む高齢者と同じくらい食糧不安を経験しやすい。これは食糧不安が都市と地方のどちらにおいても起こりうるのだということ示唆している。[16]

2013年11月に発表された非営利団体「飢えと闘うニューヨーク市連合英語版」の報告書によると、ニューヨークでは20%を超える子どもたちが十分に食べるものもなく暮らしているとされる。その原因として、ハリケーン・サンディによって多くの人びとがホームレス生活を強いられており、また当局の予算削減やアメリカ経済の低迷が挙げられている[17]

関連項目[編集]

組織[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c FAO; IFAD; UNICEF; WFP; WHO (2020-07-13) (英語). State of food security and nutrition in the world 2020>PART 1 FOOD SECURITY AND NUTRITION AROUND THE WORLD IN 2020>FIGURE 1 THE NUMBER OF UNDERNOURISHED PEOPLE IN THE WORLD CONTINUED TO INCREASE IN 2019. IF RECENT TRENDS ARE NOT REVERSED, THE SDG 2.1 ZERO HUNGER TARGET WILL NOT BE MET(2020年 世界の食糧安全保障と栄養の状況>第1章 2020年に世界中の食料安全保障と栄養>図1 2019年も増加を続けている世界の栄養失調者数。最近の増加傾向が改善しない場合、SDG2.1「2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層及び幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。」は達成されない。). http://www.fao.org/3/ca9692en/online/ca9692en.html#fig1 2020年12月31日閲覧。. 
  2. ^ “世界人口推計2019年版:要旨 10の主要な調査結果(日本語訳)” (プレスリリース), 国際連合広報センター, (2019年7月2日), https://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/33798/ 2019年8月18日閲覧。 
  3. ^ Jean Ziegler. “Promotion And Protection Of All Human Rights, Civil, Political, Economic, Social And Cultural Rights, Including The Right To Development: Report of the Special Rapporteur on the right to food, Jean Ziegler”. Human Rights Council of the United Nations, January10, 2008.“According to the Food and Agriculture Organization of the United Nations (FAO), the world already produces enough food to feed every child, woman and man and could feed 12 billion people, or double the current world population.”
  4. ^ Food and Agriculture Organization Agricultural and Development Economics Division. “The State of Food Insecurity in the World, 2006 : Eradicating world hunger – taking stock ten years after the World Food Summit”. Food and Agriculture Organization of the United Nations, 2006, p. 8. “Because of population growth, the very small decrease in the number of hungry people has nevertheless resulted in a reduction in the proportion of undernourished people in the developing countries by 3 percentage points – from 20 percent in 1990–92 to 17 percent in 2001–03. (…) the prevalence of undernourishment declined by 9 percent (from 37 percent to 28 percent) between 1969–71 and 1979–81 and by a further 8 percentage points (to 20 percent) between 1979–81 and 1990–92.”.
  5. ^ Food and Agriculture Organization Economic and Social Development Department. “The State of Food Insecurity in the World, 2008 : High food prices and food security - threats and opportunities”. Food and Agriculture Organization of the United Nations, 2008, p. 6. “Good progress in reducing the share of hungry people in the developing world had been achieved – down from almost 20 percent in 1990–92 to less than 18 percent in 1995–97 and just above 16 percent in 2003–05. The estimates show that rising food prices have thrown that progress into reverse, with the proportion of undernourished people worldwide moving back towards 17 percent.”.
  6. ^ “世界の飢餓人口 増加続く 2030年の「飢餓ゼロ」達成困難のおそれ ユニセフなど、国連5機関が新報告書” (プレスリリース), ユニセフ, (2020年7月13日), https://www.unicef.or.jp/news/2020/0173.html 2020年12月31日閲覧。 
  7. ^ a b FAO; IFAD; UNICEF; WFP; WHO (2020-07-13) (英語). State of food security and nutrition in the world 2020>PART 1 FOOD SECURITY AND NUTRITION AROUND THE WORLD IN 2020>TABLE 1 Prevalence of undernourishment (PoU) in the world, 2005–2019、TABLE 2 Number of undernourished people in the world, 2005–2019(2020年 世界の食糧安全保障と栄養の状況>第1章 2020年に世界中の食料安全保障と栄養>表1 世界における栄養失調者率(2005-2019年)、表2 世界の栄養失調者数(2005-2019年)). http://www.fao.org/3/ca9692en/online/ca9692en.html#tab1 2020年12月31日閲覧。. 
  8. ^ FAO; IFAD; UNICEF; WFP; WHO (2020-07-13) (英語). State of food security and nutrition in the world 2020>PART 1 FOOD SECURITY AND NUTRITION AROUND THE WORLD IN 2020>BOX 3 How the COVID-19 pandemic may affect hunger in the world(2020年 世界の食糧安全保障と栄養の状況>第1章 2020年に世界中の食料安全保障と栄養>第3節 新型コロナの流行が世界の飢餓にどのような影響を与えるか). http://www.fao.org/3/ca9692en/online/ca9692en.html#box3 2020年12月31日閲覧。. 
  9. ^ FAO; IFAD; UNICEF; WFP; WHO (2020-07-13) (英語). [http://www.fao.org/3/ca9692en/online/ca9692en.html#box3 State of food security and nutrition in the world 2020>PART 1 FOOD SECURITY AND NUTRITION AROUND THE WORLD IN 2020>BOX 3 How the COVID-19 pandemic may affect hunger in the world> Figure 5 If recent trends persist, the distribution of hunger in the world will change substantially, making Africa the region with the highest number of undernourished in 2030(2020年 世界の食糧安全保障と栄養の状況>第1章 2020年に世界中の食料安全保障と栄養>第3節 新型コロナの流行が世界の飢餓にどのような影響を与えるか>図5 最近の増加傾向が続けば、世界の飢餓の分布は大きく変化し、アフリカは2030年に栄養失調者数が最も多い地域となる。)]. http://www.fao.org/3/ca9692en/online/ca9692en.html#box3 2020年12月31日閲覧。. 
  10. ^ Jean Ziegler. “The Right to Food: Report by the Special Rapporteur on the Right to Food, Mr. Jean Ziegler, Submitted in Accordance with Commission on Human Rights Resolution 2000/10”. United Nations, February 7, 2001, p. 5. “On average, 62 million people die each year, of whom probably 36 million (58 per cent) directly or indirectly as a result of nutritional deficiencies, infections, epidemics or diseases which attack the body when its resistance and immunity have been weakened by undernourishment and hunger.”.
  11. ^ Commission on Human Rights. “The right to food : Commission on Human Rights resolution 2002/25”. Office Of The High Commissioner For Human Rights, United Nations, April 22, 2002, p. 2. “every year 36 million people die, directly or indirectly, as a result of hunger and nutritional deficiencies, most of them women and children, particularly in developing countries, in a world that already produces enough food to feed the whole global population”.
  12. ^ United Nations Information Service. “Independent Expert On Effects Of Structural Adjustment, Special Rapporteur On Right To Food Present Reports: Commission Continues General Debate On Economic, Social And Cultural Rights”. United Nations, March 29, 2004, p. 6. “Around 36 million people died from hunger directly or indirectly every year.”.
  13. ^ Maria Caspani (2013年6月6日). “Malnutrition kills more than 3 million children every year - study (栄養失調により毎年300万人以上の子供を死へ追いやっている-研究)” (英語). Thomson Reuters Foundation News. http://news.trust.org//item/20130606171117-f1bwl 2019年8月18日閲覧。 
  14. ^ “栄養失調で死ぬ幼児、世界で年間300万人以上 国連” (日本語). AFP通信. (2014年6月13日). https://www.afpbb.com/articles/-/3017602 2019年8月18日閲覧。 
  15. ^ Ziliak, Gundersen and Haist. (2007) The Causes, Consequences and Future of Senior Hunger in America, University of Kentucky Center for Poverty and Research, Lexington, KY. (88pages. 2MB.)
  16. ^ Excerpt from "The Causes, Consequences and Future of Senior Hunger in America", Executive Summary, pp.i-ii
  17. ^ “NYの子ども、5人に1人は十分な食事とれず NPO報告”. AFPBB News. (2013年11月27日). http://www.afpbb.com/articles/-/3004031 2013年11月28日閲覧。 

外部リンク[編集]