障害者雇用水増し問題

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障害者雇用水増し問題(しょうがいしゃこよう みずましもんだい)とは、2018年に発覚した雇用に関する不祥事で、省庁及び地方自治体等の公的機関において、障害者手帳の交付に至らないなど障害者に該当しない者を障害者として雇用し、障害者の雇用率が水増しされていた問題である。

水増しについて[編集]

障害者手帳の確認が厚生労働省の通知に記載されていなかった事から自己申告で障害者に認定するなどの採用が起こった[1]弱視である、健康診断において異常が確認されたとする職員を障害者と認定していた[2]。障害者認定では本人に確認を取らず勝手に障害者として計上されるケースもあった[3]

発覚の経緯[編集]

  • 2018年5月11日 財務省から厚生労働省へ、雇用対象となる障害者の範囲について問い合わせ[4]
  • 2018年6月20日 厚生労働省より各省庁へ、2017年6月時点での障害者雇用数調査を要請。
  • 2018年8月16日 中央省庁障害者雇用義務化当初から42年間にわたり障害者雇用数を水増しし、厚生労働省は調査していることが判明[5]
  • 2018年8月28日 厚生労働省は各省庁を再点検した結果、合計3460人分について国のガイドラインに反し、不正に障害者ではない職員を障害者として算入していたことを発表[6]
  • 2018年10月22日 厚生労働省は障害者雇用不足数が、3396.5 人から 3478.5 人に、82人増加したと訂正[7]

水増しに対する反応[編集]

問題発覚を受け、厚生労働省が、国の行政機関における障害者雇用に係る事案に関する検証委員会を設置し、委員長松井巌福岡高等検察庁検事長が、委員に今野浩一郎学習院大学名誉教授、渕上玲子日本弁護士連合会副会長、村瀬均東京高等裁判所部総括判事らが就任し、原因究明にあたった[8][9]

国民民主党代表の玉木雄一郎は、隠蔽体質の現れであり、障害者に対する裏切り行為であると批判した[10]が、同党も雇用義務数(1人)を満たしておらず、必要なハローワークへの雇用状況報告もしていなかったことを発表した[11]

日本商工会議所三村明夫会頭は「非常に驚き、かつ残念」と述べ真相究明を求めた。

中央省庁では障害者のみに限定した採用試験が実施されていなかったため、2019年2月3日に676人を採用する障害者統一採用試験を行う事となった。[12]

行政[編集]

内閣官房内閣府宮内庁公正取引委員会消費者庁を含む)、総務省法務省公安調査庁を含む)、外務省財務省国税庁を含む)、厚生労働省農林水産省水産庁を含む)、経済産業省特許庁を含む)、国土交通省海上保安庁観光庁気象庁運輸安全委員会を含む)、環境省防衛省防衛装備庁を含む)、人事院会計検査院の27省庁[13]

行政機関の障害者実雇用は実雇用率2.49%から1.19%、雇用障害者数6,867.5 人から3,407.5人と変化した[14]。なおこの水準は1976年に民間に課された1.5%を下回る。[15]

立法[編集]

衆議院事務局、参議院事務局、参議院法制局、国立国会図書館の4機関[16]

立法機関の障害者実雇用は実雇用立2.36%から1.31%、雇用障害者数84.5人から37.5人と変化した。

司法[編集]

司法機関の障害者数実雇用率は2.58%から0.97%、雇用障害者数は641人から242人と変化した[17][18][19]

いずれも2017年6月1日時点で399人水増しされていた。42年間に渡って水増しがなされていた[2]

この問題を受け国務大臣らは陳謝、規律維持の宣言を行った[20][21]

不適切な採用、水増しが起こった地方自治体など[編集]

以下の府県、政令指定都市、市町村、警察本部で確認されている[22][1][23][24]

独立行政法人[編集]

宇宙航空研究開発機構、国立精神・神経医療研究センター、産業技術総合研究所、日本原子力研究開発機構、国立病院機構、造幣局、地域医療機能推進機構、日本学生支援機構、東北大学、茨城大学、筑波大学、群馬大学、東京工業大学、新潟大学、金沢大学、信州大学、鳥取大学、高知大学、鹿屋体育大学、高エネルギー加速器研究機構、日本司法支援センターの21独立行政法人[45]

独立行政法人及び地方独立行政法人の障害者実雇用は実雇用率2.40%から2.38%、雇用障害者数10,276.5人から10,224.0人と変化した。

その他[編集]

  • 2014年に発覚した労働者健康福祉機構の障害者雇用数水増しでは、厚生労働省は障害者雇用促進法違反で同法人および理事と総務部長を横浜地検に刑事告訴し、機構に罰金30万円、担当者に罰金20万円の略式命令が出されている。この中には現職の愛知労働局長高﨑真一も含まれていて、処分を軽視している厚生労働省には反省の色は全く見られない[46][47][48]

各立法行政司法機関の水増し数[編集]

再点検後の障害者雇用率と不足している障害者雇用人数[編集]

国の行政機関における障害者任免状況再点検結果[49]
立法行政司法機関名 障害者実雇用率 障害者雇用不足人数
内閣官房 0.39 26.5
内閣法制局 2.60 0.0
内閣府 0.90 45.0
宮内庁 1.08 11.0
公正取引委員会 1.84 4.0
警察庁 2.41 0.0
金融庁 2.42 0.0
消費者庁 0.12 8.5
個人情報保護委員会 0.00 2.0
復興庁 0.00 5.0
総務省 0.76 80.0
法務省 0.79 499.5
公安調査庁 0.38 30.0
外務省 0.39 120.5
財務省 0.38 186.5
国税庁 0.67 946.0
文部科学省 0.57 48.0
厚生労働省 2.76 0.0
農林水産省 1.22 173.5
林野庁 1.66 30.0
水産庁 0.95 8.0
経済産業省 0.80 96.0
特許庁 0.48 61.0
国土交通省 0.70 659.5
観光庁 0.48 2.0
気象庁 0.48 45.0
海上保安庁 3.01 0.0
運輸安全委員会 1.06 2.0
環境省 0.55 48.0
原子力規制委員会 2.38 0.0
防衛省 0.97 296.0
防衛装備庁 0.54 26.0
人事院 0.75 10.0
会計検査院 1.57 9.0
衆議院事務局 1.58 10.0
衆議院法制局 2.48 0.0
参議院事務局 0.82 16.0
参議院法制局 1.45 0.0
国立国会図書館 1.28 9.0
最高裁判所 0.50 18.0
高等裁判所 0.99 19.0
地方裁判所 0.98 195.0
家庭裁判所 1.02 69.0
地方公共団体・独立行政法人[50]
分類 障害者雇用率 障害者雇用人数不足
都道府県 2.36 647.5
市町村 2.29 1,586.0
教育委員会 1.85 2,500.5
独立行政法人 2.38 334.5

出典[編集]

  1. ^ a b “水増し拡大 静岡、長崎、島根と埼玉県教委も”. 毎日新聞. (2018年8月21日). https://mainichi.jp/articles/20180822/k00/00m/040/122000c 2018年8月28日閲覧。 
  2. ^ a b “「視力弱い」で障害者 不正認識か、中央省庁雇用水増し”. 東京新聞. (2018年8月18日). http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018081801001660.html 2018年8月28日閲覧。 
  3. ^ 障害者雇用水増問題 小声で「視力いくつ?」 元横浜家裁職員が証言”. 東京新聞. 2018年9月2日閲覧。
  4. ^ 2018.10.23 東京朝刊毎日新聞
  5. ^ 障害者雇用省庁水増し 義務化当初から42年 2018.8.18 東京新聞
  6. ^ 国の機関の8割、雇用率半減 2018.8.28 11:48日本経済新聞
  7. ^ “平成 30 年8月 28 日に公表した「国の行政機関における平成 29 年6月1日現在の障害者の任免状況の再点検結果について」及び同年9月7日に公表した「立法機関及び司法機関における平成29年6月1日現在の障害者の任免状況の再点検結果について」の訂正について”. 厚生労働省. (2018年10月22日). https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000369693.pdf 2019年3月18日閲覧。 
  8. ^ 第一回「国の行政機関における障害者雇用に係る事案に関する検証委員会」 【議事要旨】 厚生労働省
  9. ^ 【障害者雇用水増し】原因究明へ検証委が初会合2018.9.11 07:43産経新聞
  10. ^ 「隠ぺい体質が現れている。障害者雇用に対する大きな裏切り行為だ」玉木共同代表”. 2019年3月8日閲覧。
  11. ^ 国民、公明が雇用義務満たさず 障害者巡り | 共同通信”. 2019年3月8日閲覧。
  12. ^ 国家公務員 障害者選考試験”. 人事院. 2019年1月1日閲覧。
  13. ^ “【障害者雇用水増し】27機関で3460人水増し 最多は国税庁”. 産経ニュース. 経済産業新聞社. (2018年8月28日). https://www.sankei.com/life/news/180828/lif1808280011-n1.html 2018年8月30日閲覧。 
  14. ^ 国の行政機関における平成 29 年6月1日現在の障害者の任免状況の再点検結果について (PDF)”. 厚生労働省 (2018年8月28日). 2018年8月28日閲覧。
  15. ^ 障害者雇用関係資料 (PDF)”. 厚生労働省 (2018年8月). 2019年3月18日閲覧。
  16. ^ 立法機関及び司法機関における平成 29 年6月1日現在の障害者の任免状況の再点検結果について”. 厚生労働省. 2018年9月9日閲覧。
  17. ^ 裁判所でも水増し 300人超の見通し”. 2018年8月30日閲覧。
  18. ^ 衆議院でも障害者雇用水増し、参議院に続き”. 2018年8月30日閲覧。
  19. ^ 参院、国会図書館でも水増し=障害者雇用問題”. 2018年8月30日閲覧。
  20. ^ 総務省の障害者雇用率、0・76%と判明 2・3%と報告 野田聖子総務相「国民の信頼傷つけ申し訳ない」”. 産経新聞. 2018年9月2日閲覧。
  21. ^ 国の障害者雇用水増し 大臣ら「ゆゆしき問題」「残念」”. 朝日新聞. 2018年9月2日閲覧。
  22. ^ 障害者雇用 37府県水増し 自治体も拡大解釈まん延”. 2018年9月9日閲覧。
  23. ^ “障害者雇用水増し 29県で同様の問題 厚労省が全国調査を検討”. NHK. (2018年8月24日). https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180824/k10011592641000.html 2018年8月28日閲覧。 
  24. ^ 障害者雇用、鯖江市も3人水増し”. 2018年9月9日閲覧。
  25. ^ “<山形県障害者雇用水増し>「あり得ない」「法を無視」福祉関係者強い憤り”. 河北新報. (2018年8月22日). https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201808/20180822_51061.html 2018年8月28日閲覧。 
  26. ^ “障害者雇用、栃木県教委も水増し”. 共同通信. (2018年8月22日). https://this.kiji.is/404817208087413857?c=39546741839462401 2018年8月28日閲覧。 
  27. ^ “県、障害者雇用水増し 半数の169人”. 上毛新聞. (2018年9月22日). https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/81023 2018年12月4日閲覧。 
  28. ^ “千葉県も障害者雇用率を水増し”. 日本経済新聞. (2018年8月22日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO34465860S8A820C1L71000/ 2018年8月28日閲覧。 
  29. ^ “山梨県でも45人確認せず 障害者雇用水増し”. 日本経済新聞. (2018年8月25日). https://www.nikkei.com/article/DGKKZO34581380U8A820C1L92000/ 2018年8月28日閲覧。 
  30. ^ 長野県でも障害者雇用水増し 手帳確認せず11人算入”. ザ・ペイジ (2018年8月24日). 2018年8月28日閲覧。
  31. ^ 県教委、障害者雇用58人水増し”. 岐阜新聞 (2018年8月29日). 2018年8月28日閲覧。
  32. ^ 県も障害者雇用を水増し”. 岐日高新報 (2018年8月29日). 2018年9月2日閲覧。
  33. ^ 障害者雇用 自治体水増し3800人”. 東京新聞 (2018年11月25日). 2018年12月4日閲覧。
  34. ^ “水増し問題 18人を不適切算入 県「意図的ではない」 /鹿児島”. (2018年9月29日). https://mainichi.jp/articles/20180929/ddl/k46/010/629000c 2018年12月4日閲覧。 
  35. ^ “大阪府警も障害者雇用水増し…「今後は適正に」”. @niftyニュース. (2018年8月27日). https://news.nifty.com/article/domestic/society/12213-20180827-50039/ 2018年8月28日閲覧。 
  36. ^ 三重県警も不適切算入 障害者雇用” (2018年8月28日). 2018年8月28日閲覧。
  37. ^ a b 障害者雇用水増し問題で「ルールの把握を」 愛知・豊川市と豊橋市の発覚受け大村知事”. 名古屋テレビ (2018年8月27日). 2018年8月28日閲覧。
  38. ^ “山梨など4県で新たに判明 障害者雇用の水増し”. 中日新聞. (2018年8月25日). http://www.chunichi.co.jp/s/article/2018082401002399.html 2018年8月28日閲覧。 
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  40. ^ “障害者雇用、県と市町村が213人水増し 昨年6月時点 埼玉労働局が再点検”. 東京新聞. (2018年10月23日). https://web.archive.org/web/20181106171957/https://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201810/CK2018102302000164.html 2019年3月9日閲覧。 
  41. ^ “障害者雇用、県と市町村が213人水増し 昨年6月時点 埼玉労働局が再点検”. 東京新聞. (2018年10月23日). https://web.archive.org/web/20181106171957/https://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/list/201810/CK2018102302000164.html 2019年3月9日閲覧。 
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  44. ^ [http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/687401 “障害者雇用、福井市も水増し発覚 手帳など確認せず最大10人”]. 東福井新聞. (2018年8月28日). http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/687401 2018年9月9日閲覧。 
  45. ^ 都道府県の機関、市町村の機関、都道府県等の教育委員会及び独立行政法人等における平成 29年6月1日現在の障害者の任免状況等の再点検結果について”. 2018年12月4日閲覧。
  46. ^ “障害者雇用数水増し 労働者健康福祉機構の担当者3人を刑事告発 塩崎厚労相「決して看過できぬ」”. 産経新聞. (2014年12月26日). https://www.sankei.com/affairs/news/141226/afr1412260011-n1.html 2018年11月19日閲覧。 
  47. ^ “障害者雇用状況を水増報告し 労働者健康福祉機構の担当者3人に罰金刑”. 産経新聞. (2015年3月20日). https://www.sankei.com/economy/news/150320/ecn1503200025-n1.html 2018年11月19日閲覧。 
  48. ^ “塩崎大臣閣議後記者会見概要”. 厚生労働省. (2016年12月26日). https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000070210.html 
  49. ^ “平成 30 年8月 28 日に公表した「国の行政機関における平成 29 年6月1日現在の障害者の任免状況の再点検結果について」及び同年9月7日に公表した「立法機関及び司法機関における平成29年6月1日現在の障害者の任免状況の再点検結果について」の訂正について”. 厚生労働省. (2018年10月22日). https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/000369693.pdf 2019年3月18日閲覧。 
  50. ^ 都道府県の機関、市町村の機関、都道府県等の教育委員会及び独立行政法人等における平成29年6月1日現在の障害者の任免状況等の再点検結果について”. 厚生労働省. 2019年3月23日閲覧。

関連項目[編集]