天宮号宇宙ステーション (完成型)

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天宮号宇宙ステーション
(中国宇宙ステーション)
Tiangong Space Station Rendering 2022.07.jpg
2022年7月時点の天宮号宇宙ステーションを再現したCG
詳細
乗員数最大: 未定
現在: 3
(神舟14号)
打上げ日時天和コアモジュール: 2021年4月29日
問天実験棟モジュール: 2022年7月24日
夢天実験棟モジュール: 2022年10月(予定)
運用状況運用中, 建設中
質量100,000 kg
全長~ 20.00 m
直径~ 4.20 m
居住空間110㎥
近地点389.5 km[1]
遠地点395 km[1]
軌道傾斜角41.58°[1]
高度389.2 km[1]
平均速度7.68 km/s[1]
公転周期92.2分[2]
周回日数1年, 3ヶ月, 2日
(2022年7月31日)
滞在日数90日, 14時間8分
(神舟12号)

288日, 4時間 and 26分[3]
(神舟13号)

378日, 18時間 and 34分
合計
2021年10月16日現在

天宮号宇宙ステーション(てんきゅうごううちゅうステーション)または中国宇宙ステーション(ちゅうごくうちゅうステーション、Chinese Space Station,CSS)[4]は、中国が天宮計画で建設中の宇宙ステーションである。三つのモジュールで設計されており、総質量は80トンに達すると予想されている。天和コアモジュールは2021年4月に打ち上げられ[5]問天実験棟モジュールは2022年7月に打ち上げられた[6]

概要[編集]

2022年までに打ち上げ予定の宇宙ステーション。試験機ではなく、旧ソ連ミールに匹敵するサイズの完成した宇宙ステーションと位置づけられている。コアモジュール「天和」(てんわ)、2つの実験モジュール「問天」(もんてん) と「夢天」(むてん)、無人補給船「天舟」(てんしゅう) といった構成要素が公表されている。打ち上げには長征5号B型ロケットが用いられる。

2016年6月に国際連合宇宙局中国国家航天局と「天宮」の利用機会を国際連合加盟国にも開放する協定を結んでおり、日本東京大学を含む17ヵ国23機関による9件の科学実験が予定。

計画当初は天宮の名称で呼ばれていたが、2021年現在の公式発表などでは中国宇宙ステーション(China Space Station(CSS), 中国空間站)と呼ばれ、天宮の名称は使用されていない[4]

モジュール[編集]

ミールロシアISSモジュールと同様に、宇宙ステーションのモジュールは完全に組み立てられた状態で打ち上げられる。これに対し、米国のISSモジュールは、ケーブル、配管、構造体の人力による接続が必要であり、設置に宇宙遊泳が必要であった。天和コアモジュールのドッキングポートは軸方向からのみ直接のドッキングに対応しており、横方向にドッキングする際には、先に軸方向にドッキングしてからロボットアームで横のドッキングポートへ移動する[7]

天和[編集]

天和コアモジュール (Tianhe Core Module, CCM) は、最大3人の宇宙飛行士の居住と、宇宙ステーションの誘導、航行、方向制御などに対応している中心モジュール。また、宇宙ステーション全体の電気系統、推進システム、生命維持システムもこのモジュールが中心となっている。

モジュールは居住区、サービス区、ドッキングポートの3つのエリアに分かれており、居住区には、キッチンやトイレ、火器管制装置、大気処理・制御装置、コンピュータ、科学実験装置、北京の地上管制との通信装置などが設置されている。サービス区には、カナダアーム式のロボットアームが収納されている。

2018年の中国国際航空宇宙博覧会で、天和コアモジュールのフルスケールモックアップが公開された。

中国国家航天局の映像から、天和コアモジュールは2つ建造されていることが明らかになっており、天和コアモジュールを2つ連結して宇宙ステーションを拡張した状態を描いたアニメーション等もある[8]

諸元[編集]

打ち上げ日時 (UTC) 打ち上げロケット 全長 直径 重量
2021年4月29日
03:23:15[9]
長征5B 16.6m 4.2m 22,600kg

問天[編集]

問天 (问天, wentian) は2つ打ち上げられる実験モジュールの1つであり、2022年7月24日に打ち上げられた[6]

宇宙ステーションの制御・管理機能を持ち、天和コアモジュールのバックアップとしても機能する。中国宇宙ステーションで2つ目のエアロックとロボットアームを備えており、エアロックは主に宇宙遊泳に使用される[10]

諸元[編集]

打ち上げ日時 (UTC) 打ち上げロケット 全長 直径 重量
2022年7月24日
06:22:32
長征5B 17.9m 4.2m ~20,000kg

夢天[編集]

夢天 (梦天, mengtian) は2つ打ち上げられる実験モジュールの1つであり、後に打ち上げられる。補給や機材運搬に用いる専用のエアロックを備えている[10]

諸元[編集]

打ち上げ日時 (UTC) 打ち上げロケット 全長 直径 重量
2022年10月 (予定) 長征5B (予定) 17.9m 4.2m ~20,000kg

巡天[編集]

巡天 (じゅんてん, Xuntian) は2022年現在開発中の2024年に打ち上げが予定される宇宙望遠鏡である。

直径2メートルの主鏡と2.5ギガピクセルのカメラを搭載し、ハッブル宇宙望遠鏡の300倍の視野を持つとされており、10年間で全天の40%を撮影することが期待されている。

また、天宮宇宙ステーションと同一の軌道に設置され、修復等を行う際には天宮宇宙ステーションとのドッキングが可能とされている。

打ち上げ日時 打ち上げロケット 運用開始日時 全長 直径 重量 画像
2024年 (予定) 長征5B (予定) 2024年 (予定) ~13 m (43 ft) ~4.2 m (14 ft) ~20,000 kg (44,000 lb)
CSST 巡天(Xuntian)

デザイン[編集]

構成 (T字型の宇宙ステーション)[編集]

公募、投票、研究者や科学家の意見などから、中国載人航天工程辦公室は2013年10月末、中国の有人宇宙ステーション全体を「天宮」、コアモジュールを「天和」、無人宇宙補給機を「天舟」、2つの実験モジュールをそれぞれ「問天」と「夢天」と命名したと発表した[11]

天宮(てんきゅう)号
完成型天宮号

主要ミッション[編集]

  • ランデブーとドッキング技術の更なる進歩
  • 長期間の宇宙飛行と居住、軌道上での宇宙機の長期飛行、再生的な生命維持、無人宇宙補給機による補給等の主要技術の飛躍的な進歩
  • 宇宙船の性能と機能の検証
  • 中大型的な軌道上宇宙実験を実行

乗組員[編集]

神舟12号[編集]

  • 機長: 聶海勝 (聂海胜, Nie Haisheng)
  • オペレーター: 劉伯明(刘伯明, Liu Boming)
  • システムオペレーター: 湯洪波(汤洪波, Tang Hongbo)

神舟13号[編集]

  • 機長: 翟志剛(翟志刚, Zhai Zhigang)
  • オペレーター: 王亜平(王亚平, Wang Yaping)
  • システムオペレーター: 葉光富(叶光富, Ye Guangfu)

神舟14号[編集]

  • 機長: 陳冬(陈冬, Chen Dong)
  • オペレーター: 劉洋(刘洋, Liu Yang)
  • システムオペレーター: 蔡旭哲(蔡旭哲, Cai Xuzhe)

船内環境[編集]

宇宙ステーションにはWi-Fi環境があり、 乗組員はコミニケーション用に骨伝導ヘッドホンとマイクを着用している[12]。また、船内の表記には中国語が用いられている[13]

宇宙食は宇宙飛行士の好みに応じて最大120種類が船内に保管されており、細切りの豚肉を用いた料理、宮保鶏丁、牛肉、キャベツの漬物、お茶やジュースなどがある。補給は天舟無人宇宙補給機で行われ、果物や野菜はクーラーボックスに保管されている。

中国国家航天局の主任宇宙飛行士トレーナーであるHuan Weifenは、"ほとんどの食品を固形で食べることができ、骨等は除去されているほか、微小重力下での味覚の変化を補うため花椒などの調味料を追加している"としている。

天和コアモジュールには調理用の小さなキッチンと、世界の宇宙ステーションで初となる電子レンジが備わっており[14]、乗組員が温食を食べることができるように配慮されている[15][16]

天和コアモジュールの居住区には、3つの個室兼寝室とトイレ、シャワー、ジム設備などがある[17][18][19]

個室兼寝室は国際宇宙ステーションのものより大幅に大きく設計されており、ダブルマットレス、窓、ヘッドホン、換気装置などの設備や、筋萎縮を防ぐための電気刺激装置が備えられている[20][21]

騒音は作業エリアで58dBに保たれており、 寝室では49dBとなっている[20][21]

履歴と予定[編集]

  • すべての日付はUTCで表記されており、打ち上げ予定日は変更される場合がある。
  無人補給船
  有人宇宙船
  モジュール
打ち上げ日時 (UTC) ドッキング日時 (UTC) ドッキング解除日時 (UTC) 結果 ペイロード 打ち上げロケット 発射場 打ち上げ事業者 ドッキング先
2021年4月29日, 03:23:15[9] 成功 天和 長征5B 中華人民共和国の旗 文昌発射場 LC-1 中華人民共和国の旗 CASC なし
2021年5月29日, 12:55:29[22] 2021年5月29日, 21:01[23] 2022年3月27日, 07:59 天舟2号 長征7号 中華人民共和国の旗 文昌発射場 LC-2 中華人民共和国の旗 CASC 天和 後方
2021年6月17日, 01:22:27[24] 2021年6月17日, 07:54[24] 2021年9月16日, 00:56 神舟12号 長征2F 中華人民共和国の旗 酒泉発射場 SLS-1 中華人民共和国の旗 CASC 天和 前方
2021年9月20日, 07:10[25][26] 2021年9月20日, 14:08[26] 未定 天舟3号 長征7号 中華人民共和国の旗 文昌発射場 LC-2 中華人民共和国の旗 CASC 天和 後方
2021年10月15日, 16:23:56[27][28] 2021年10月15日, 22:56[29] 2022年4月15日, 16:44[30] 神舟13号 長征2F 中華人民共和国の旗 酒泉発射場 SLS-1 中華人民共和国の旗 CASC 天和 前方
2022年5月9日, 17:56:37[31] 2022年5月10日, 00:54 未定 天舟4号 長征7号 中華人民共和国の旗 文昌発射場 LC-2 中華人民共和国の旗 CASC 天和 後方
2022年6月5日, 02:44:10[32] 2022年6月5日, 09:42 未定 神舟14号 長征2F 中華人民共和国の旗 酒泉発射場 SLS-1 中華人民共和国の旗 CASC 天和 前方
2022年7月24日, 06:22:32[33][6] 2022年7月25日, 3:13[34] 問天 長征5B 中華人民共和国の旗 文昌発射場 LC-1 中華人民共和国の旗 CASC 天和 左側
2022年8月~9月[35] 未定 未定 夢天 長征5B 中華人民共和国の旗 文昌発射場 LC-1 中華人民共和国の旗 CASC 天和 右側
2022年10月[36] 未定 未定 天舟5号 長征7号 中華人民共和国の旗 文昌発射場 LC-2 中華人民共和国の旗 CASC 天和 後方
2022年11月[37] 未定 未定 神舟15号 長征2F 中華人民共和国の旗 酒泉発射場 SLS-1 中華人民共和国の旗 CASC 天和 下方

ほか、2024年に宇宙望遠鏡モジュールの巡天の打ち上げが予定されている。

参照[編集]

  1. ^ a b c d e The orbital parameters of the core module assembly”. China Manned Space (2021年9月20日). 2021年7月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年7月27日閲覧。
  2. ^ To infinity and beyond: After Space Station, China has plans for a kilometer-long mega spaceship”. India Today (2021年9月8日). 2021年9月8日閲覧。
  3. ^ 神舟十三号3名航天员顺利进驻天和核心舱”. xinhua.news. 2021年10月16日閲覧。
  4. ^ a b 中国が宇宙ステーションをもつ日 - 最初のモジュール「天和」打ち上げ成功”. マイナビニュース (2021年5月3日). 2021年6月22日閲覧。
  5. ^ “宇宙ステーションの中核「天和」の打ち上げ 中国が成功”. 朝日新聞デジタル. (2021年4月29日). https://www.asahi.com/articles/ASP4Y5VV9P4YUHBI00S.html 2021年6月8日閲覧。 
  6. ^ a b c 飞行任务时间表出炉!_绍兴网”. www.shaoxing.com.cn. 2022年7月24日閲覧。
  7. ^ Graham, William (2021年4月28日). “China launches Tianhe module, start of ambitious two-year station construction effort” (英語). NASASpaceFlight.com. 2022年1月16日閲覧。
  8. ^ 星球研究所. “报告地球,这里是中国空间站!_哔哩哔哩_bilibili” (中国語). www.bilibili.com. 2022年1月16日閲覧。
  9. ^ a b Clark, Stephen (2021年4月29日). “Assembly of Chinese space station begins with successful core module launch”. Spaceflight Now. 2021年6月18日閲覧。
  10. ^ a b 周建平:走进新时代的中国载人航天工程”. web.archive.org (2021年5月19日). 2022年1月16日閲覧。
  11. ^ 中國載人航天工程標識空間站名稱誕生全程揭秘”. 人民网. 2013年12月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年12月29日閲覧。
  12. ^ The Shenzhou XII astronauts install WIFI on the space station: they can make video calls with the ground at any time-Communication Technology-Wi-Fi”. breakinglatest (2021年6月18日). 2022年1月16日閲覧。
  13. ^ 央视网快看. “这很合理 中国空间站操作界面都是中文_哔哩哔哩_bilibili” (中国語). www.bilibili.com. 2022年6月7日閲覧。
  14. ^ 神舟十二号里的"广东制造":首台航天微波炉被送入太空,中国太空笔实现新突破” (Chinese). 21 jingji (2021年6月21日). 2022年1月16日閲覧。
  15. ^ Jones, Andrew (2021年6月26日). “Chinese astronauts enjoying 120 dishes during space station stay”. Space.com. 2022年1月16日閲覧。
  16. ^ Howell, Elizabeth (2021年6月28日). “Twinkle, Twinkle, Little Panda: Adorable cartoon shows astronaut life on Chinese space station”. Space.com. 2022年1月16日閲覧。
  17. ^ Reuters (2021年4月29日). “China launches Tianhe, future living quarters for space station planned for 2022”. www.scmp.com. 2022年1月16日閲覧。
  18. ^ Reuters (2021年4月29日). “China launches key module of space station planned for 2022, state media reports”. CNBC. 2022年1月16日閲覧。
  19. ^ Chen, Stephen (2021年6月17日). “First astronauts enter China's Tiangong space station after successful docking operation”. www.scmp.com. 2022年1月16日閲覧。
  20. ^ a b The Bunks in the Chinese Space Station Are Absolutely Enormous”. Futurism. 2022年1月16日閲覧。
  21. ^ a b China launches first crewed mission for space station construction”. Xinhua (2021年6月17日). 2022年1月16日閲覧。
  22. ^ Graham, William (2021年5月29日). “China launches Tianzhou 2, first cargo mission to new space station”. NASASpaceFlight. 2021年6月4日閲覧。
  23. ^ Jones, Andrew (2021年5月29日). “Tianzhou-2 docks with China's space station module”. SpaceNews. 2021年5月29日閲覧。
  24. ^ a b Clark, Stephen (2021年6月17日). “Chinese astronauts enter Tiangong space station for first time”. Spaceflight Now. 2021年6月18日閲覧。
  25. ^ 【2021年9月待定】长征七号 • 天舟三号货运飞船 • LongMarch 7 Y4 • Tianzhou-3” (中国語). spaceflightfans.cn (2021年4月21日). 2021年4月25日閲覧。
  26. ^ a b Tianzhou-3 completes rendezvous, docking with China’s space station - Global Times”. www.globaltimes.cn. 2021年9月21日閲覧。
  27. ^ 关于神舟十三号发射观摩暨"少年宇航技师"训练营活动延期的通知”. www.csaspace.org.cn. 2022年1月16日閲覧。
  28. ^ China expected to name woman for next space station crew”. www.scmp.com (2021年9月22日). 2022年1月16日閲覧。
  29. ^ China’s Shenzhou 13 crew enters space station for 6-month stay”. www.scmp.com. 2021年10月16日閲覧。
  30. ^ 神舟十三号载人飞船撤离空间站组合体” (中国語). China Manned Space (2022年4月16日). 2022年4月16日閲覧。
  31. ^ China Spaceflight [@CNSpaceflight] (2022年3月16日). "According to a travel agency, Long March 7 Y5 will launch Tianzhou 4 on MAY 10" (ツイート). Twitterより。 Cite webテンプレートでは|access-date=引数が必須です。 (説明)
  32. ^ China Spaceflight [@CNSpaceflight] (2022年4月6日). "Shenzhou 14 to be launched by Long March 2F Y14 on June.05 2022" (ツイート). Twitterより。 Cite webテンプレートでは|access-date=引数が必須です。 (説明)
  33. ^ 【22年待定】长征五号乙遥三火箭 • 中国空间站实验舱——问天 • LongMarch-5B Y3” [[2022 TBD] Long March 5B Y3 rocket • Chinese Space Station Laboratory Module—Wentian] (中国語). spaceflightfans.cn (2021年4月21日). 2021年4月25日閲覧。
  34. ^ 问天实验舱与天和核心舱组合体在轨完成交会对接,历时约13小时”. www.guancha.cn. 2022年7月24日閲覧。
  35. ^ 【22年待定】长征五号乙遥四火箭 • 中国空间站实验舱——梦天 • LongMarch-5B Y4” [[2022 TBD] Long March 5B Y4 rocket • Chinese Space Station Laboratory Module—Mengtian] (中国語). spaceflightfans.cn (2021年4月21日). 2021年4月25日閲覧。
  36. ^ 【2022年10月待定】长征七号 • 天舟五号货运飞船 • LongMarch 7 Y6 • Tianzhou-5” (中国語). spaceflightfans.cn (2021年4月21日). 2021年4月25日閲覧。
  37. ^ 长征二号F • 神舟十五号载人飞船(2022年待定)” [Long March 2F • Shenzhou-15 (2022 TBD)] (中国語). spaceflightfans.cn (2021年4月21日). 2021年4月25日閲覧。

外部リンク[編集]

関連項目[編集]