シーローンチ

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シーローンチ (Sea Launch) は、海上からゼニット3SLロケットを使って、人工衛星を打ち上げる商用サービス会社である。

2009年6月22日、10億ドル相当の負債を抱え経営破綻し、連邦倒産法第11章の適用を受けた[1]。2009年4月以降、約2年半に渡ってロケットの商業打ち上げは中断されていたが、2011年9月に打ち上げを再開した[2]

概要[編集]

シーローンチ連合は1995年に設立された、アメリカ合衆国ロシアウクライナノルウェーの企業による共同事業である。最初のロケットは1999年に打ち上げられた。ボーイングが運営している[3][4]

海上発射システムを採用することにより、従来の地上発射の場合のような地理的、物理的制約を受ける事が少なく、海洋上のあらゆる場所から打ち上げが可能となり、地上発射型に比べ経費を減らす事ができる。特に赤道直下まで移動して打ち上げることにより、より効率的に人工衛星を軌道に投入することができ、静止トランスファ軌道に6.1tを投入できる。

打ち上げシステムは司令船「シーローンチ・コマンダー」と打ち上げプラットホーム「オーシャン・オデッセイ」 の2隻で構成されている。母港はカリフォルニア州ロングビーチ。司令船「シーローンチ・コマンダー」も同所で建造された。通信設備・発射管制設備のほか、ロケット整備用格納庫を有する。プラットホーム「オーシャン・オデッセイ」 は石油プラットフォーム改造のものであり、打ち上げ地点でロケットを直立させて発射する。

2008年現在、シーローンチが世界で唯一の海上発射型打ち上げ施設であるが、概念は唯一ではない。1964年から1988年イタリアローマ・ラ・サピエンツァ大学NASAが共同でケニア沖のサン・マルコ・プラットフォームで人工衛星を打ち上げていた。

打ち上げに使用する機体を陸上用に改良し、バイコヌール宇宙基地から打ち上げる「ランド・ローンチ (Land Launch) 」というサービスも展開している[5]

2007年1月30日の打上げは失敗し、これにより経営環境が悪化、2009年6月に経営破綻に至った。

2011年9月24日、ユーテルサット社の通信衛星アトランティックバード7の打ち上げに成功し、商業打ち上げ事業に復帰した[2]

出資[編集]

シーローンチの打ち上げプラットホーム オーシャン・オデュッセイ Ocean Odyssey

4カ国の4社が出資している。当初、ケイマン諸島に英国法人として設立をしたが[6]、後にカリフォルニア州に本店所在地を移転し米国法人となった。

出資構成を以下に示す。

会社 出資割合 役割
ボーイング 米国 40% 打ち上げシステム、フェアリング(打ち上げ時飛翔中の空力加熱から衛星を保護)
エネルギア ロシア 25% ブロックDM-SL (ゼニット3SLの三段目に使用)
アーカー・クバナー ノルウェー 20% 打ち上げプラットホーム (オーシャン・オデッセイ) 、指令船(シーローンチ・コマンダー)
ユージュノエ設計局 / POユズマシュ ウクライナ 15% ゼニットロケット (ゼニット3SLの一段目、二段目に使用)

シーローンチ計画は1995年、ローンチカスタマーとしてヒューズ・エアクラフトが最初の10基とさらに10基のオプション契約を行い、スペースシステムズ/ロラールも5基の打ち上げ契約を行ったことでスタートした[7]

2006年3月、社長のジム・マサー (Jim Maser) が会社を離れてスペースXに社長として加わると発表した[8]

打ち上げ実績[編集]

1999年3月27日、最初の打ち上げが行われた。最初の商業衛星の打ち上げは同年10月9日である。

回数 日付 ペイロード 重量 成否
1 1999年3月27日 DemoSat 4.5 t 成功
2 1999年10月9日 DIRECTV 1-R 3.5 t 成功
3 2000年3月12日 ICO F-1 2.7 t 失敗 (墜落)[a 1]
4 2000年7月28日 PAS-9 3.7 t 成功
5 2000年10月20日 Thuraya-1 5.1 t 成功
6 2001年3月18日 XM-2 ROCK 4.7 t 成功
7 2001年5月8日 XM-1 ROLL 4.7 t 成功
8 2002年6月15日 Galaxy IIIC 4.9 t 成功
9 2003年6月10日 Thuraya-2 5.2 t 成功
10 2003年8月7日 EchoStar IX/Telstar 13 4.7 t 成功
11 2003年9月30日 Galaxy XIII/Horizons-1 4.1 t 成功
12 2004年1月10日 Telstar-14/Estrela do Sul 1 4.7 t 成功
13 2004年5月4日 DIRECTV-7S 5.5 t 成功
14 2004年6月28日 Telstar-18 4.8 t 一部失敗(予定軌道に投入出来ず)[a 2]
15 2005年3月1日 XM-3 4.7 t 成功
16 2005年4月26日 SPACEWAY-1 6.0 t 成功
17 2005年6月23日 Intelsat IA-8 5.5 t 成功
18 2005年11月8日 Inmarsat 4-F2 6.0 t 成功
19 2006年2月15日 EchoStar X 4.3 t 成功
20 2006年4月12日 JCSAT-9 4.4 t 成功
21 2006年6月18日 Galaxy 16 5.1 t 成功
22 2006年8月22日 コリアサット5号 4.9 t 成功
23 2006年10月30日 XM-4 4.7 t 成功
24 2007年1月30日 NSS-8 5.9 t 失敗(点火直後爆発)[a 3]
25 2008年1月15日 Thuraya-3 5.2 t 成功
26 2008年3月19日 DirecTV-11 5.9 t 成功
27 2008年5月21日 Galaxy 18 4.6 t 成功
28 2008年7月16日 EchoStar XI 5.5 t 成功
29 2008年9月24日 Galaxy 19 4.7 t 成功
30 2009年4月20日 SICRAL 1B 3.0 t 成功
31 2011年9月24日 Atlantic Bird 7 4.6 t 成功
32 2012年5月31日 Intelsat 19 5.6 t 成功
33 2012年8月19日 Intelsat 21 6.0 t 成功
34 2012年12月3日 Eutelsat-70B 5.0 t 成功
35 2013年2月1日 Intelsat 27 6.2 t 失敗(墜落)[a 4][9]
36 2014年5月26日 Eutelsat 3B 6.0 t 成功
  1. ^ プログラムエラーにより第二段エンジンが早期に停止し海上へ墜落した
  2. ^ 第三段エンジンが早期に停止し予定より低い軌道に衛星が投入されたが、後に衛星側のエンジンで不足分を補うことで予定軌道に到達した。
  3. ^ 発射台上で爆発し、打ち上げプラットフォームが損傷を受けた。原因究明と修理のため打ち上げが1年間凍結された。後の調査で燃料ポンプに金属片が混入したことが原因と判明した。この失敗により打ち上げ事業が滞ったことが、経営破綻の一因になった。
  4. ^ 発射後に徐々に姿勢を崩し始め、25秒後にエンジンが自動停止して海上へ墜落した。

ランド・ローンチ[編集]

ランド・ローンチ(Land Launch)はシーローンチの子会社であり、ゼニットロケットをバイコヌール宇宙基地の45番射場から打ち上げる。使用されるロケットは2段式のゼニット-2SLBと3段式のゼニット-3SLBである。

最初の打ち上げは2008年4月28日05:00 GMTにゼニット-3SLBでAMOS-3 (AMOS-60)を静止軌道へ投入した。

2回目の打ち上げは2008年8月21日にマレーシアのMEASAT-3A通信衛星を打ち上げる予定だったが打ち上げの準備中にクレーンによって破損した[10]

2回目の打ち上げは2009年2月26日にテルスター11Nを成功裏に打ち上げた。

ランドローンチはゼニット-3SLを用いるシーローンチとは異なり、ロシア製の小型フェアリングを使い軽量化される等、改良されたゼニット-3SLBが用いられ、ペイロードは静止トランスファ軌道を経由せずに直接静止軌道へ投入される。高緯度からの打上げのため、シーロンチに比べ打上げ能力は6割程度の3.7tとなっている。

打ち上げ実績[編集]

回数 日付 機種 ペイロード 重量 ペイロードの種類 軌道 結果 備考
1 2008年4月28日[11] ゼニット 3SLB AMOS-3 1.3t 商業用 通信衛星 静止軌道 成功 ランドローンチの最初の打ち上げ
2 2009年2月26日[12] ゼニット 3SLB テルスター11N 4.0t 商業用 通信衛星 静止軌道 成功
3 2009年6月22日[13] ゼニット 3SLB MEASAT-3a 2.3t 商業用 通信衛星 静止軌道 成功
4 2009年11月30日[14] ゼニット 3SLB インテルサット15 2.4t 商業用 通信衛星 静止軌道 成功
5 2011年10月5日 ゼニット 3SLB インテルサット18 3.2t 商業用 通信衛星 静止軌道 成功
6 2013年8月31日 ゼニット 3SLB AMOS-4 4.2t 商業用 通信衛星 静止軌道 成功

出典[編集]

  1. ^ http://www.reuters.com/article/rbssIndustryMaterialsUtilitiesNews/idUSBNG17593820090623
  2. ^ a b “Sea Launch Returns to Flight with Smooth Satellite Flight”. SPACE.COM. (2011年9月27日). http://www.space.com/13092-sea-launch-rocket-launch-satellites.html 2011年9月29日閲覧。 
  3. ^ “Sea Launch System - Commercial heavy-lift launch services, USA”. Aerospace-technology.com. (2006年). http://www.aerospace-technology.com/projects/sealaunch/ 
  4. ^ “Zenit 3SL”. Orbireport.com. (1997–2000). http://www.orbireport.com/Launchers/Zenit_3SL/Architecture.html 
  5. ^ ただし、運営母体は露SIS社であり、打ち上げもSIS社が担当する。シーローンチ社は打ち上げ計画の立案、顧客との商談などを行う。
  6. ^ “The Sea Launch Partnership”. Energia. http://www.energia.ru/english/energia/sea-launch/partner.html 
  7. ^ “Zenit 3SL”. Orbireport.com. (1997–2000). http://www.orbireport.com/Launchers/Zenit_3SL/Architecture.html 
  8. ^ “Jim Maser to Join SpaceX as President and Chief Operating Officer”. SpaceRef.com. (2006年5月17日). http://www.spaceref.com/news/viewpr.html?pid=19291 
  9. ^ “ゼニート3SL、インテルサット27の打ち上げに失敗”. sorae.jp. (2013年2月1日). http://www.sorae.jp/030810/4770.html 2013年2月2日閲覧。 
  10. ^ Morris, Jefferson (2008年8月12日). “Crane Damages MEASAT 3A At Baikonur”. アビエーションウィーク & スペーステクノロジー. 2010年閲覧。...
  11. ^ Amos 3”. NASA NSSDC. 2010年閲覧。...
  12. ^ Telstar 11N”. NASA NSSDC. 2010年閲覧。...
  13. ^ “MEASAT-3a satellite successfully launched” (PDF) (プレスリリース), MEASAT, (2009年6月22日), http://www.measat.com/pdf/press/pr090622_2.pdf 2010年閲覧。... 
  14. ^ “Land Launch Successfully Deploys Intelsat 15 Satellite to Orbit” (プレスリリース), Sea Launch, (2009年11月30日), http://www.boeing.com/special/sea-launch/news_releases/2009/nr_091130.html 2010年閲覧。... 

外部リンク[編集]