ミッチェル・ファイゲンバウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search
ミッチェル・ジェイ・ファイゲンバウム
Mitchell J Feigenbaum - Niels Bohr Institute 2006.jpg
ミッチェル・ファイゲンバウム(2006年)
生誕 (1944-12-19) 1944年12月19日(73歳)
アメリカ合衆国ニューヨークブルックリン
国籍 アメリカ合衆国
研究分野 数理物理学
研究機関 ロックフェラー大学
出身校

ニューヨーク市立大学シティカレッジ

マサチューセッツ工科大学
博士課程
指導教員
フランシス・E・ロー英語版
主な業績 ファイゲンバウム定数
主な受賞歴 ウルフ賞物理学部門(1986)
ハイネマン賞(2008)
プロジェクト:人物伝

ミッチェル・ジェイ・ファイゲンバウム(Mitchell Jay Feigenbaum、1944年12月19日 -)は数理物理学者。彼のカオス理論の先駆的研究がファイゲンバウム定数の発見につながったことで知られる。

経歴[編集]

ニューヨーク生まれ[1]ポーランドウクライナのユダヤ人移民の間に生まれる。ブルックリン区のSamuel J. Tilden高校、ニューヨーク市立大学と進学した。1964年、マサチューセッツ工科大学(MIT)の大学院で研究を開始した。電気工学の卒業研究に入学し、自身の領域を物理学へ変更した。Francis E. Low教授の指導の下1970年に博士号を取得し、分散関係に関する論文を発表した[2]

コーネル大学(1970年 – 1972年)とバージニア工科大学(1972年 – 1974年)への短期滞在後、ニューメキシコロスアラモス研究所に長期のポストを得て流体の乱流を研究した。そのグループの研究者たちは乱流の難解な理論を最終的に解明することはできなかったが、彼の研究はカオス写像の研究につながった。

1983年にはマッカーサー・フェローを、1986年には「カオスの体系的研究を可能にした非線形システムの普遍的な特性を示す先駆的理論研究」によりウルフ賞物理学部門を受賞した。スクリプス研究所の理事会メンバーである。1986年よりロックフェラー大学のトヨタ教授職を務めている。

ロジスティック写像の分岐図。ファイゲンバウムは1975年に分岐が発生する位置同士の距離の商が4.6692... に収束することに気づいた。

業績[編集]

単一の線形パラメタを持つ一部の数学的写像は、パラメタが特定の範囲内にある場合にカオスとして知られる外見上ランダムな挙動を示す。パラメタをこの領域に向けて増分していくと、ある特定の値で写像が分岐する。初めは1つの安定した点があり、その後2値間の振動に分岐し、その後さらに4値間の振動に分岐して以下同様に続く。1975年、ファイゲンバウムは支給されたHP-65計算機を用いて、このような周期倍分岐が生じる連続した値の差分の比が約4.6692...という定数に収束することを発見した。ファイゲンバウムはこの事実を数学的に証明し、これと同じ振る舞いが、同じ定数を伴って、カオスが生じる前に広いクラスの関数において出現することを示した。この普遍的な結果によって、見たところランダムで難解なカオス現象について、数学者は初めて解明への一歩を踏み出すことができた。この「収束比」は今日では第一ファイゲンバウム定数として知られている[3]ロジスティック写像はこうした写像の中でも有名な例であり、ファイゲンバウムが1978年の著名な論文Quantitative Universality for a Class of Nonlinear Transformationsの中で研究対象とした[4]

ファイゲンバウムの他の業績としては、地図作成における重要で新しいフラクタルな手法の考案がある。これはファイゲンバウムがHammondに雇われてコンピュータで地図作成を支援するための技術開発を行った際に始まった。Hammond Atlas (1992年)の序文は次のように述べている。

海岸線のような自然な形状を描写する際にフラクタル幾何を用いることで、数理物理学者のミッチェル・ファイゲンバウムは海岸線、境界、山裾を再形成して多数の縮尺や投影に適合させることができるソフトウェアを開発した。ファイゲンバウム博士はまた新たな活字配置ソフトを開発した。これによって地名などの何千ものラベルを配置するのに以前は何日間もの地道な作業を必要としたものが、わずか数分で済むようになった[5]

ミッチェル・ファイゲンバウム(右)とrJoel Lebowitz(左)(1998年)

彼の仕事のもう一つの実用的な応用として、1996年にはMichael GoodkinとともにNumerixを設立した。同社の初期製品は新奇なデリバティブ仕組債の価格をモンテカルロ法で設定する所要時間を格段に短縮するアルゴリズムだった。Numerixは金融市場の関係者にとって主要なソフトウェア供給会社の1つであり続けている[6]ウルフ賞受賞時のプレスリリースは彼の業績を次のようにまとめている。

ファイゲンバウムの発見は目覚しい影響を及ぼした。それは数学の理論と実験双方の新しい分野に跨っている。(中略)近年の理論科学の中で、これほど広範な分野の純理論的な面と純応用的な面の双方に広い影響を与えた業績は、他に挙げることが難しい[3]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ http://www-history.mcs.st-and.ac.uk/Extras/Mitchell_Feigenbaum.html
  2. ^ Mitchell Jay Feigenbaum”. University of St Andrews. 2018年4月閲覧。
  3. ^ a b O'Connor & Robertson.
  4. ^ Feigenbaum, M. J. (1978). “Quantitative Universality for a Class of Non-Linear Transformations”. J. Stat. Phys. 19: 25–52. Bibcode 1978JSP....19...25F. doi:10.1007/BF01020332. 
  5. ^ Hammond World Atlas. Hammond Inc.. (1992). ISBN 0-8437-1604-5. 
  6. ^ Numerix Website

外部リンク[編集]